こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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4日目夜明け前。
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4日目 夜明け前 快晴
目が覚めたら知らないベッドの上にいた、昔はよくそんな失敗をしたことがあるが。
まさかこの年になってまでそんな失態を侵すとは。昨日を構成した記憶の要素が飛び交う思考をまとめようとしながら、多少ふらつく体を無理矢理起こす。
豪奢すぎるが派手ではない見慣れた内装は、ここしばらく世話になっているホテルのもの。だが自分が抗争中にいた部屋ではない、自分の部屋はもっと広かったはず。多分もう使われていないイヴァンの部屋だろうと当たりをつけ、とりあえず今の時間を確認するために時計を探そうとして。
少し離れたところですうすうと寝息を立てる存在に気がついた。
「……ぁ…………ベルナルド…………?」
枕元には外した時計と眼鏡が綺麗に並べられている。
一見地味に見えるが、職人が技術を尽くして作られた時計が、ベッドサイドの明るすぎるランプに照らされ、鈍い光を放っていた。気に入っている時計だと常日頃から言っており、片時も手放さないほどの愛情の注ぎっぷりだったが、さすがに眠っているときは外すらしい。大事なものすら自分の体から放し、完全に熟睡している彼の寝顔は安らかではないが、昨日より大分顔色は良くなってきた。
ここしばらくの疲れが一気に出てきたのだろう、ルキーノが起き上がる際にベッドがかなり揺れたというのに、わずかの反応もない。はじめて見る眼鏡を外した顔は、予想よりずっと幼く見える。ライトが作り出す陰影が、同性でも惚れ惚れするほどの美貌を更に浮かび上がらせていた。秀でた額と通った鼻筋、これで目を開いて澄んだ瞳でも見せてくれたら落ちない女はいないだろうに。
素直に感嘆の感情を捧げつつ、手を伸ばして彼の髪に指を埋める。
柔らかい感触だがしっかりとした髪質、昨日も思ったが無理に髪にコテを当てて作った波打つ髪と違い、ごく自然に広がっていく様が実に美しい。外すのすら面倒だったらしく、ルビーのような色合いのネクタイは、適当に緩めて首もとに飾ったままにしてある。それが深い色合いの髪と溶け合い、柔らかい光芒の中で彼の顔を更に美しく飾り付けていた。
だが寝返りでも打ったら首が絞まってしまい位置にあるため、どうも見ていて不安でしょうがない。起こしてしまうかもしれないが、彼の眠りを守るためには外してやった方がいいだろう。そう判断し、ベッドをなるべく揺らさぬように彼の側へと移動してから、首元に手をやる。
すっかり白くなってしまった喉に、うっすらと浮かび上がる血の道。
それに指を這わせると、指先にじわりと暖かさが染みこんできた。あの時はネクタイを締めるため、そして今はネクタイをほどいてやるため。だが、あの時感じたうずきのような熱さはまたルキーノの体を音もなく巡り始めていた。
眠りを邪魔しないよう丁重にほどいていき、首の下からゆっくりと鮮やかな色のネクタイを抜く。かなりの高級品なのだろうが、すっかり皺だらけになったそれを伸ばしながら時計の隣に畳んでおいてやり、さて今度は首元を少し楽にしてやろうかとシャツのボタンに手を伸ばした。
一つ、もう一つ。
ボタンが外れる度に晒されていく肌は、もういい年だと自嘲する男のものとは思えないほど滑らかだった。女性の肌とは違い、どこまでも沈んでいくような柔らかさはないが、受け止めてすぐ跳ね返す弾力の強さは、触っていて心地がよい。
悪戯心でシャツの隙間に手を入れ、鎖骨をくすぐるように指を動かすと、自由奔放な毛先がわずかに動いた。今までの疲れが一気にきているのだろう、ルキーノに触られて軽く身じろぎはするが、目覚める様子はわずかもみられない。
自分が彼をどうしたいのか、ルキーノはまだ答えを出すことができていないが。
体が感じる心地よさは、心の拒否があれば成立しない。相手への少なからずの好意と、肉体への欲望、それが合わさっていなければ相手に触れたいなど思うわけがないのだ。
「男に触れるなんて普通は気持ち悪いんだがな…………」
鎖骨から、今度は唇へ。
疲れと栄養失調のせいか、かなりかさついている唇を指先で撫で回す。このまま口の中に指を突っ込んでやりたいような、だが起こしてしまうのは可哀想なような。沸き上がる獣のような嗜虐心と、それを抑える彼への素直な好意と。
純粋な好意と相手を引き裂きたくなる獣性、男相手に抱くはずのない相反した感情。
好意を抱いているとはいっても相手は男、普通に言葉を交わし、側で働くことができているのだからそれで満足するのが普通なのである。だが今の自分は更に彼に向かって踏み込もうとしており、きっとこのままいけば肉体的な接触だって求めるようになるだろう。
幹部としては上の立場であり、同性であり、おまけに自分ではなく他の『何か』を生きる目的にしている。恋愛をするには非常にやりづらく、おまけに今後の対応次第では、自分の人生を大きく変えることになるだろう。
眠っている男の唇に、ただ指で触れるだけで満足している今の状況。肉欲で唇を貪るわけでもなく、その口から自分に対する愛の囁きが出てくるのを期待しているわけでもない。
それのどこが普通であるというのか。
たった数日で、ほんのわずかな関わりで、こんなに内側変えられてしまったことに、今更ながらに気がつかされる。優しく接してくれるわけでも、自分を特別に扱ってくれるわけでもない、見えない何かを追い求めながら身を削っていく男。
意思という名の輝きでルキーノを惹きつけてやまない、ただ一人の存在。
「俺の負けって事か……情けねぇ…………」
男に恋心を抱いた、そんな頭を抱えて嘆きたくなるような事態に陥っているというのに、ルキーノの指は規則正しい寝息を刻む唇から離れようとしなかった。彼の呼吸を感じることだけが彼と自分を繋ぐ手段、指がそう判断しているかのように。
ただ眠り続ける相手を愛おしみ続ける。
唇に触れ、頬を撫でて、わずかな首の動きで額に落ちる髪を払ってやり。時には己の頬を押しつけて、彼の鼓動を別な方法で確認する。
その全てが、心地よさと精神的満足という形で返ってくるのだから始末が悪い。
挨拶がわりの抱擁以外で年上の男に触れるなんて、通常なら避けて通りたい事態だというのに。どれだけ自分はこのぐうすかと寝こける筆頭幹部に惚れ込んだんだと内心吠えたくなりながらも、ルキーノは空気を振るわせるような声を出さずに、静かな寝息を守ることを選び続ける。
家族を守る獅子のように、周囲に気を配りながら。
これ以上ないほど優しく触れ、愛おしみ、そして愛の言葉は何も囁かない。まだ気持ちが固まりきっていないというのもあるが、芯は強いが一度崩れたら中々立ち直ることができないベルナルドに負担をかけたくない、その思いの方が強かった。
それでもご褒美の一つは欲しくなるもので。
「これくらいは……ま、許されるな」
朝の挨拶がわりのキスくらいはもらっておいてもいいだろう。頬へのキスは挨拶として何度もしているが、唇にするのははじめてになる。
指で触れるのと、唇で触れるの、甘さはどちらが上だろうか。
さすがに寝ている人間に初っぱなから深い方のキスをするのはまずいので、彼の唇をこじ開けないよう、きゅっと引き結んだ唇を彼のそれに近づけようとして。
目をぱっちりと見開いたベルナルドが自分の唇を凝視していることに気がついた。
「降りろ」
まだ完全に目覚めきってはいないが、その瞳になんともいえない感情を宿したベルナルドが静かにそう告げた。
「降りろって……お前の上から?」
「俺の上から降りて、それからベッドの下に降りろ」
「それはお前個人として命令か? それとも筆頭幹部としてか?」
「どっちもだ、この阿呆!」
「もうちょっとだったっていうのに………あと2分ほど寝てろ」
「お前の性欲解消に付き合う義理はないっ!」
有無を言わせぬ態度でそう命じると同時に、寝起きの人間とは思えないほどの蹴りでルキーノをベッドから追放すると、ベルナルドはようやく体を起こした。枕元の眼鏡を素早く装着し、腕時計をちらっと見てから、首もとに手をやって自分の今の状態を確認する。
「俺のネクタイを外したのはお前だな?」
「ああ」
「それには感謝してやってもいいが……ボタンをここまで外す必要はあったのか?」
「俺の趣味だ、悪いか?」
「最悪だな……まったくお前という男は……」
もっと怒るか、オメルタの名の下にきつい制裁をされるか。そのどちらかだと思っていたのに、ベルナルドはどうも何かを悩んでいるようだった。彼の中で形になっていないあやふやな何かが、彼の思考を邪魔している。
なら、この隙に一気に畳みかけるべき。
「こないだも言っただろう、俺はお前が好きだってな」
「俺は嫌いだ、今の変態色魔なお前はな」
「惚れた相手なら、押し倒して色々したいのが男ってもんだろ?」
「寝ている相手をどうにかしようとするのは犯罪だ」
「合意なら犯罪じゃないよな? なら今から合意の上で続きをするのは?」
「…………ルキーノ…………寝ぼけるのもいい加減にしろ…………明らかにおかしい、今のお前は」
「お望みなら愛してるとでも好きだとでも囁いてやるが……どっちが好みだ?」
ここで完全な拒否をしてくれれば、あきらめることができるかもしれない。
蹴り飛ばされベッドから落とされた体は微妙に痛むが、そんな事を気にしている余裕はなかった。しわくちゃになったスーツも、きっと嫌になるほど乱れているであろう髪も、今は全く気にならない。
ベルナルドがどう答え、自分の思いをどう判断するか。
今はそのことにしか関心が持てない。
ルキーノの本気と、真摯な感情はベルナルドにちゃんと伝わったのだろう。綺麗に畳んであったネクタイを膝に乗せ、ベッドの上で足を崩したベルナルドは、一度だけ時計を確認しこちらへと顔を向けてきた。
後どれだけルキーノと向き合うことができるのか、それを確認したのだろう。
「俺の一番大切なものはお前じゃない、今後お前がそうなることもない」
「知ってるさ、それくらいはな」
「お前が俺を本気で……その…………そういう感情を持っているというなら、俺はとことんお前を利用するだろうな。何がどう狂ってお前がそうなったかは知らんが、俺の目的のために骨の髄までしゃぶってやる」
「そしてお前は俺を利用することを後悔し続ける、そうだろ」
「ああ」
きっぱりとしたベルナルドの返答。
大切なもののためなら他者に寄せられる感情も利用し尽くす、そのことを後悔し、自分を追い込みながら。
なんて馬鹿で、どうしようもなくて、それでいて愛おしいのだろう。
好かれる自分を嫌悪し、だがその思いに答えられず。なのに相手を切って捨てることも受け入れることもできない。
思う側も、思われる側も、決して報われることのない。
矛盾だらけの堂々巡り。
わかっていても自分でその負の輪を破壊することができず、その輪に他人を取り込む事も躊躇する。悪人になりきれないのではなく、優しすぎるが故に。不幸になるとわかっているのに誰かを巻き込むことができないのだ、この男は。だから必死に言葉という名の壁で人を上手に遠ざけようとする。
そこまで考え、口から自然と笑い声が漏れた。
「…………情けないな…………」
「そんなのはわかってる」
「お前じゃない、俺のことだ」
ただでさえ弱っているベルナルドに、一番言わせてはいけない言葉を言わせてしまった。
彼の強さは知っている、守る必要はないだろうが、追い込んでしまうことだけは避けなければならなかったのに、彼の口から出る言葉は彼自身を傷つけていく。
「ルキーノ……お前の言葉を信じる気にはならないが……これだけは言っておく……俺とのつきあいは仕事だけだ。これ以上俺になにかしようとしたり、余計なことを言おうとしたら、命はないものと思え」
「やだね」
「………………………………」
「俺は逃げないし、お前を一人にする気もない。いつかお前に俺のことを世界で一番愛してるって言わせてやるさ」
彼を傷つける気はない、邪魔をする気もない。
守りたいものがあるなら守り続ければいいし、そのままでいればいい。ただ自分が彼の作る不毛な思いの輪に入り込んでいくだけ。
いつか、それを打ち破ることができる日が来るまで。
彼の側で愛を歌い、己の思いを誇り続ける。
思いを自覚し、動くことを選んだ自分が負けるわけがない。どんなギャンブルだって、持ち金の続く限り張り続ければ、いつかは必ず勝てるのだ。
そしてルキーノの持ち金という名の愛情は、多分きっと枯渇することはない。
「…………………………少しだけ…………………………考えさせてくれ」
「ああ、いい返事を待ってる」
「今晩、またここで……それでいいか?」
表情に変化はない、だが声がわずかに震えていた。
つきっぱなしのルームランプを消すこともせず、膝の上のネクタイを強く握りしめたまま、ベルナルドはルキーノから目をそらす。
罪悪感からなのか、それとも別の感情からか。
どんな理由であっても、確実に今ベルナルドの心は自分のことで占められている。まだ見ぬ彼にとって大切な何かへ、ほんのわずかな優越感を抱きつつ。
ようやく強く差し始めた窓からの光に目を向けた。
BGM「believe」 by folder5
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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