こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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3日目夕方。
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3日目 夕 霧雨
会議の終了に合わせて、無理矢理今日の自分の仕事を終わらせた。
頑健かつ絢爛豪華なホテルの最上階で、彼は今頃雑務を片付けながら盛大なため息をついている頃だろうか。彼のの今日のスケジュールを教えてくれた彼の直属の部下によると、今日の会議の最中、ベルナルドはずっと表情を硬くしていたという。
荒れ狂う嵐の海のようであった昨日とは違い、ジュリオの無罪に向け穏やかに話が進んでいったというのに、筆頭幹部の表情にはわずかの柔らかさもなかったらしい。
2日目の3日目の間に、ベルナルドにしかわからない何かがあったのか。それともイヴァンと自分の部下が進めている調査の結果、判明したことがあったのか。
それは情報をとりまとめ判断を下している本人に聞くしかないだろう。
銃弾数発ではぶち破れない分厚いドアと厳重極まりないチェックを抜け、いつもの通り電話機の山が置かれている部屋に足を踏み入れる。ここ数日は街の状態も落ち着いたのでほとんど電話も鳴らなくなっているが、抗争中はひっきりなしにこの電話が鳴り続けていた。
あの頃の賑やかさはもうこの部屋になく、かわりにあったのは机に突っ伏してわずかの間の休息を取る彼の姿。薄暗い部屋の中、机の脇のライトだけがムダに思えるほど派手な光を周囲に放っていた。
わずかな仮眠のつもりなのだろう。眼鏡も外さず器用に顔を傾け、強く結ばれた唇から重苦しい寝息が時々漏れる。今日の会議の疲れが並大抵物ではないのは見た瞬間にわかったが、小さなライトの光が照らし出すベルナルドの顔は、今すぐにでも死神が迎えに来そうな程青白かった。
生者の持つぬくもりがまったく感じられない顔と、椅子にかけたままのコート。まだネクタイすら緩めていないということは、これからまだ予定があるのだろう。せめて予定の時間までゆっくり眠らせてやるべきだろうと判断したルキーノは、机の横のライトに手を伸ばしその明かりを消そうとした。
暗闇の中の方がゆっくりと眠れるだろう、そう考えたのだが、部屋の主はそうは思わなかったようだ。
「消すなよ」
「……起きたのか?」
「完全に寝てはいない……ルキーノ、悪いが部屋の電気をつけてくれ………暗すぎる」
寝息を立てていた人間からとは思えないほどの鋭い声に、ルキーノは無言で従った。確かに暗くなってきてはいるが、細かな雨で濡れた窓からだってわずかな光は差し込んでくる。
ライトだって煌々と輝いているというのに、暗すぎるとはどういうことなのか。
疑問に思いはしたが、苦いものを食べたような顔を崩さないベルナルドを今は刺激しない方がいいだろう。体を起こしながら大きく伸びをし、なんとか活力を全身に吹き込もうとしているが、ここまできてしまうと回復する方法はもう一つしかない。
ゆっくり眠ること、何も考えずに休むこと。
今の彼にとって一番無理な事だが、もうこうなったら無理にでも休ませなければいけないだろう。黒くなった目の下や血管の浮き出た首筋、持ち前の精神力で何とか持ちこたえているが、このままでは会議の最中に倒れかねない。
人に弱みは見せない、ジャンがそう言っていたが。
「ベルナルド、今日のこれからの予定は何だ?」
今回ばかりは見せてもらわなければいけないだろう。
ルキーノの強めの声に何かを察したのか、鋭く固い意志のようだったベルナルドの顔に、柔らかい笑顔が瞬時に貼り付けられた。
「ボスのお伴で役員と飲み会だが……なんだルキーノ、付き合ってくれるつもりか?」
「俺一人で行ってくる。お前は休んでろ」
側へ歩み寄り、椅子に座ったままの彼を見下げる形で声をかけると、きっぱりしたと拒否が返ってきた。
「俺が行かないわけにはいかないだろう? イヴァンの部下が面白い情報を持ってきた、どう繋がるかわからないが、真偽を確かめるために何人か揺さぶっておきたい人間がいるんだ」
「そんなの俺がやっておいてやるさ」
「お前には無理だ。イヴァンにも同じ事を言われたが、会議に出ていない人間では説得力に欠ける」
イヴァンやルキーノの能力が足りないのではなく、会議に参加していないから細かい情報を理解しきれない。本当はどう思っているのかはわからないが、拒否と自分を心配してくれた相手への心遣いの両方を満たす、見事な返答だった。
今まではここで退いていた、だが今日は、はいそうですかと帰るわけにはいかないのだ。頑固極まりない筆頭幹部をせめて今日だけでもいいから休ませ、明日への英気を養わせる必要がある。
それが組織のためであり、今はベッドの上で会議の結果を待つジャンのためであり……きっとルキーノのためになる。内側に一歩踏み込もうとすると偽りの笑顔で自分を覆い、全てを隠してしまうベルナルド。その柔らかくも強固な拒否という名の膜を剥がして、彼の全てを見てみたいという欲求を満たすためにも、まずは彼を休ませなければ。
疲れ切っている人間を無理矢理どうにかするのは、ルキーノの趣味ではない。
「ならどうしたら休んでくれるんだ? 俺が地面に這い蹲って頼めばベッドに入ってくれるのか?」
「お前達に心配されるほど俺はそこまで弱ってない。イヴァンもそうだが気を遣ってくれるのは有り難いがな、俺から仕事を奪わないでくれ」
「奪うつもりなんてないのはお前が一番わかっているだろう、そろそろ少し俺たちにも仕事を回せ。俺たちを陥れようとしている奴らにむざむざスキを与えてやる気はないんだよ俺もイヴァンもな」
「…………イヴァンもお前も、本当に厄介だな」
見上げてくるベルナルドの目にわずかに怒りが、そして声には困惑が混ざる。
頬杖をついてわずかに唇をとがらせ、今日はいつもより遙かに頑固なルキーノをどう攻略すべきか考えているのだろうが、ルキーノだって同じである。このわがままで自分本位なくせに仕事熱心な大馬鹿にどうやって休息を取らせるか、今はそれしか考えていない。
こんなに一人のことだけを考え、それだけで心を満たすのはいつ以来だろうか。
失った大切な存在、嘆き、自らを追い込み、何を憎いんでいいのかわからぬままに過ごした日々。その時ルキーノの心の器を満たしていたのは、大切な人の面影ではなく、濁った自分の感情と悪夢に近い記憶だった。
ただベルナルドの事を思い、彼を心配している今の自分。
どろどろに混ざり合った感情でも、悪夢に彩られた記憶でもなく、ただ一つの思いに塗りつぶされている心は、恐ろしい程落ち着いていた。思い出したかのようにうずく顔の傷も、それによって浮き上がってくる陰惨な過去も、この思いで満たされている今はルキーノの中に入ってくることはない。
どうして、と思いはするが。
「俺はお前が『好き』だからな、気にもなるし、心配もするさ」
口からするっとでたその言葉が、全てを象徴している気がした。
どういう形にしても、どんな思いであっても、彼のことが好きなのだ。
ジュリオのことを語るジャンのように、あんなに幸福そうにベルナルドのことを語れそうにはない。失った妻と娘と同じように、自分の全てを捨てて守りたい、愛したいと思っているわけでもない。
睨め付けたいが自分を心配してくれている人間を睨むのもどうなのか、そう考えているのか微妙な顔でこちらを見つめてくるベルナルドの頭に何も言わずに手をやる。
「なっ、なんだ?」
「……悪い、触りやすい位置にあったんでな。この頃人肌が恋しくてな、誰かに触りたくなるんだよ」
「どんだけ女に飢えてるんだ……イヴァンに後腐れのない女を紹介してもらってくれ」
「俺が女に所にわざわざ行くような人間に見えるか? 女が俺の所に来るんだ」
「そりゃそうだな、だが俺は女じゃない」
外の雨のせいか、癖のある髪はわずかに指を動かしただけでルキーノの指に絡みついてくる。ベルナルドが体を預けている机に手を乗せ、体を更に近づけると、髪の毛を堪能している手に力を込め、彼の頭を自分の胸に押しつけた。
ちょっとどころじゃない抗議の声が上がるがそれは無視することにする。
「俺はお前のことが好きだ…………どうしたらいいのかわからないんだがな」
「……いきなり来て、いきなり起こされて、いきなり好きと言われてこんな事をされている俺の方がどうしていいのかわからないぞ……いい加減にしてくれ」
「やっぱりさっきは寝てたのか、起こしてすまなかったな」
「そう思うならさっさと離れてくれ」
「離れたくないから触ってる、それくらいわかれよ」
「筆頭幹部として離れろと命令してもいいか?」
「断る」
更に強く彼の頭を胸に押しつけると、さすがにもがき始めたが、弱っている彼の抵抗ならルキーノの力で十分に抑え込むことができる。それにベルナルドも本気で逃げてはいないのだろう、頭を振って逃げようとはするが、拘束されているわけでもないのに手を使おうとしない。
本気ではないじゃれあいのような動きがしばらく続いた後、ベルナルドが小さく呟いた。
「……………………………正直、わからない」
「何がだ?」
「今の状況全てだ。ボンドーネ家の動きも、役員達の動きも、そしてお前も。揃いも揃って俺を騙そうとしているとしか思えん」
「俺もあいつらと一緒か……泣けてくるな」
「……ジャンがベッドから出られるようになるまでに、ボンドーネ家からシマの一つくらいはぶんどってやろうと思ってたんだがな……」
顔をルキーノの胸に埋めたまましみじみと言うベルナルドに、心の中で何かが切れた。
自分の腕の中にいる相手に他の男のことを言われた事は今まで何度かあったが、すべてそれは冗談交じり。こちらの目も見ようとせず、自分を寄りかかりがいのある壁か何かのように扱って、その上他の男の名前を呼ぶ相手なんて今まで誰一人いなかった。
ルキーノそっちのけで、ぶつぶつと呟きながら考えを巡らせるベルナルドの髪が柔らかくて触り心地がよいからこそ、余計に腹が立ってくる。
そこはもう色男の意地。
相手が男だろうが何だろうが、自分の胸中に招き入れた相手にないがしろにされるようなことはあってはならないのだ。
「……決めたぞ」
「何をだ? 俺をさっさとここから解放してくれる気になったか?」
「飲み会は何時からだ?」
「8時からだ。行くなと言われても俺は行く、お前がなんと言ってもな」
「俺も行く」
「それは…………ボスと役員の爺さん達のお守りの他に、酒癖の悪い何処かの男の面倒も見ろということか、俺に?」
「そういうことだな」
ベルナルドの様子を見て早く連れて帰るためというのが主目的。
だがそれ以外にも、小さな目的ができてしまった。自分の腕の中でジャンの名前を呼ぶこの男に、自分の名を呼び、自分について語らせてやりたい。
負けず嫌いと言われてもいい、単なる馬鹿扱いでもいい。
男を胸の中に招き入れるなんていう行為をしてしまったのだ、あとは野となれ山となれ。自分が思うがままに進めばいいだけだ。
周囲から見たら意味不明のルキーノの決意を尻目に、額をルキーノの胸に預けたベルナルドの唇から、誰にも聞こえないほど小さな笑い声が漏れた。
それはもう楽しそうな。
BGM「MY WINGS」 by 可憐Girl's
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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