こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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4日目昼。
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4日目 昼 晴れ
今頃彼は何をしているだろうか。
白い皿の上に広がる鮮やかな赤い色、その上で存在を主張する肉の塊をフォークでつつきながら、思うのはただ彼のことだった。仕事はちゃんとこなしているのか、GDの残党への対策は取っているのか。
今日の夜、自分が返した答えをどう受け止めるのか。
様々な思いが頭の中で踊り、駆け巡っていく。ベルナルド個人ではまず来ないような最高級の店の、これまた賓客専用の個室で最上級の料理を前に、自分は何を考えているのだろうか。
そう思っても、頭の中を占めているのはただ一人の男の事だけだった。
「どうした? 喰わないのならもらうぞ?」
「食べますよ。せっかくのカヴァッリ顧問のお気遣いを別な人の腹に入れてしまうわけにはいきませんから」
そろそろ雪が降ろうというこの季節に、これだけ上質な鹿肉を手に入れることは難しかっただろうに。最高級のバルサミコ酢が使われているであろうソースも、口に入れるだけで肉汁があふれ、甘さすら感じる脂肪の味がしつこくない程度に広がっていく肉の焼き加減も絶妙極まりない。付け合わせのクレソンも、油っぽくなった口の中をさっぱりさせる役割を十分に果たしていた。
この席をセッティングしてくれたカヴァッリ顧問も、今のベルナルドの状況はよく理解しているのだろう。目の前の人物の肉の量とベルナルドの肉の量には明らかな差異があった。全てのメニューが少なく盛りつけられており、消化にいいものは多めに盛りつけられているのは、正直有り難かった。
人の目につかない場所であっても、食事を残すのは気分のいいものではない。
「あまり無理して喰うなよ、会議の最中に吐かれたら俺が困る」
「大丈夫です、昨日はゆっくり眠れましたから」
「部屋から叫び声が聞こえたって聞いたが?」
「…………でかくて赤くて手癖の悪い虫が入り込んでいたので……………まあ、そんなところです」
フォークを置いて髪に手をやりながらそう弁明する。
長時間監禁され、戻ってきてすぐ組織のボスとしての動きを求められ、わずかの休みも取れていないとは思えないほどの余裕。一つの集団をまとめ、維持するにはこれくらいの胆力と気力が必要不可欠なのだろう。ベルナルドはここ数日の彼の動きを見る度に、つくづくそう思わされる。会議の後で連日役員達と打ち合わせという名の食事会を繰り返し、ジュリオにとって有利な条件をもぎ取ってきているボスに、ベルナルドは頭が上がらなかった。
ジャンもきっと、すぐに彼のようになる。
どんなときであろうと笑い続け、疲れや苦悩を部下には見せず、その場にあるだけで人に力を与える存在に。今はまだ幹部しか知らない彼の輝き、その光が組織の人間全てに届いたとき、彼はCR5の王になるだろう。
その時までベルナルドはジャンに尽くし続けるであろうし、その後も自分の人生の全てを捧げながら見守っていくつもりである。
「で、午後はどうする? このまま奴らの要求を呑むつもりか?」
「これ以上会議を長引かせるのは、こちらにとっても向こうにとっても悪手です。イヴァンが持ってきた情報が正しければ、ボンドーネ翁の遺言は確かに一族の手に渡っている。それに期日が書かれているかまではわかりませんが、向こうが何かに対して焦っているのは事実です」
「そうだな。今日はどうも奴らの言葉が薄っぺらかった……こちらが押してくるのを待ってるんだろうな」
「だから退きましょう。奴らの出した条件を呑んで、その上で向こうを泳がせます。ボロを出したら条件を破棄することができる…………それに奴らが何かを企んでいたとしても…………」
「ラッキードッグが俺たちにはついている、か」
「ええ」
ジャンのラッキーがどこまで自分たちにとって有利に働くかはわからないが、少なくともジュリオにとって不利になるようなことを誘発することはないだろう。
イヴァンの部下が持ってきた、ボンドーネ翁がもしもの時のために準備しておいた遺言書が銀行の貸金庫から出されたという事実。そしてそれを取りにあらわれたのが、会議で最初に横槍を入れてきたボンドーネ家の人間という事実は、ベルナルドに今後の動きを取りにくくさせていた。
遺言書を手に入れたということは、ボンドーネ翁が死んでいる、もしくは彼が死ぬことで生まれる利益を計算している人間がいるということ。逃亡中のボンドーネ翁が自分の死後について書かれた書類を書き直す、または破棄するという行動に出ることはまずないだろう。逃げるということは死ぬという選択肢を考えていない、それに逃げている最中に余計なことに気が回るわけがない。
ならば予想されるのは、一つだけだ。
ボンドーネ家の人間が遺言書を使って何かを企んでおり、この動きにはジュリオもボンドーネ翁も関わっていない。それはボスも理解しているのだろう、肉をせわしなく口に運びながら、ベルナルドの意見に耳を傾け静かに頷き続けていた。
「ジュリオの件は任せた……俺はシカゴのボス達との交渉に入る」
「俺たちに一任した、そう判断してよろしいんですね?」
「厄介なことは若い者にまかせろってことだ………クレソン喰うか?」
「自分の嫌いな物を押しつけないでください」
交渉は得意だが策謀は苦手な上司が皿に置いていこうとするクレソンを、皿を引っ込めることで拒否する。
人の思いもこんな風に簡単に拒否したり受け入れたりできれば楽なのだが。
自分を気遣い、冗談を交えながら思いを伝えてきた今朝のルキーノの目。自分を傷つけないように、追い込まないように、だが決して己の感情は曲げずに。
強く、激しく、愛を伝えてきた。
どう答えればいいのか、それ以前に自分が彼をどう思っているのか。冗長で退屈極まりない会議の合間に考えてはみたが、答えらしきものがまったく考えつかなかった。
嫌いではない、むしろ好きだ。
だがそれはジャンとルキーノを比べることになるのではないだろうか、それに同性に肉欲込みで愛されることは、今後の自分にどんなリスクをもたらすのか。明日答えを返すと言ったが、1日にも満たない時間で決められるような問題ではなかった。
まだ皿の上には肉が半分ほど残っているが、一気に無くなった食欲では、これ以上食べるのは難しいだろう。
「すいません……やっぱり食べてください」
「…………何を悩んでるのかは知らないがな…………頭の中で無駄なことを考える前に、たまには体を動かして答えをもぎとってこい」
「答えを…………もぎ取る」
「お前は頭が回りすぎるのがいいところであり悪いところだ。全部頭の中でこねくり回して、勝手に終わったつもりにして後から後悔するんだよ」
後悔するくらいなら、死ぬ気でぶつかってこい。
血よりも鮮やかなワイン、それで口を湿らせながら目の前の男はごく当たり前のようにそう言った。
「死ぬ気で……ですか…………?」
「今手放して後悔しないか? これからの人生、それでいいのか? 忙しい思いをさせて悪いと思っているが、こういう時じゃなきゃできない決断もある」
「…………あの…………ボス」
「なんだ?」
「ボスが後悔しませんか、その……後で」
「俺に関わることか? まさかジャンに例の件を……」
「言ってませんよ。多分ボスには迷惑をかけません、どんな形になっても」
「おいおい、これ以上厄介事を増やしてくれるなよ」
自分で焚きつけておいて、何を言っているのやら。
彼もジャンも、自分が惑い悩んでいるときに導きの光のような言葉をごく自然に贈ってくれる。永遠にその手に掴むことも、寄り添うこともできない光だが、少なくとも自分を見守って幸せを願っていてくれている。
ならば、このまま逃げ出すわけにはいかないだろう。
どんな結果になるとしても、ルキーノからも、臆病な自分からも逃げ出さずに答えを出す。それは午後からの会議よりも困難なことだろうが、解決できるのは自分だけ。
「きっと大丈夫ですよ、どうにかなります」
少しだけ、こちらを心配そうな目で見ているボスにおどけたように笑ってみせる。
理由は知らなくても、自分が悩んでいるのを理解して、助けてくれようとする人間がいるのに、逃げ続けるわけにもいかないだろう。
ボスに倣ってワインに口をつけると、ふんわりとした優しい味がじわりと口の中に広がっていく。あまりアルコール度数も高くないようだし、これならじっくりと時間をかける話し合いを彩る酒にもぴったりだろう。
いい年になってしまった大人は、酒でも飲みながらでないと恋だの愛だの語れないのだ。
「あ、ボス…………お願いがあるんですが」
「なんだ?」
「ボスの家の地下蔵に、ワイン倉庫がありましたよね……?」
「お前もたかる気か? ルキーノといいお前といい、いつの間にワイン飲みに転向しやがったんだ……」
「ルキーノも、ですか?」
「ああ、今朝早くに来たと思ったら、1本盗んでいきやがった」
どうやら向こうも考えることは同じだったらしいが、あの家にあるワインの量と質を考えると、ルキーノが自分が狙っている物を持っていったとは考えにくい。
「1892年のトカイ・エッセンシアがありましたよね、一番奥に」
「……………………よく………覚えてたな」
「俺に厄介事を押しつけていると思うのなら……くれますよね、勿論」
「会議が終わったら取りに来い…………それと、そういうことはさっさと忘れろ」
苦々しげに、だがあきらめがついたのか手をひらひらと振って完敗の意思を示してきたボスに、ベルナルドは頭を下げた。
これからどうなるにしても、きっとルキーノと自分の関係で彼に迷惑をかけることになる。だから今の内に頭を下げて、今回の件がばれてしまったときのために伏線を張っておくが。いい意味でオメルタを重視しないボスとはいえ、幹部同士で恋愛関係でこじれたということを知ったとき、果たして彼はどんな反応を示すのだろう。
ボス的にはジュリオとジャンの関係を知ったときの方が一大事だろうが……まあその時はどんなことをしてでもあの二人を守る。
まずは今は自分のことを。
ワインの件で愚痴り続けるボスに適当な相づちを返してやりながら、ベルナルドは期待とも恐怖ともつかない感情をもてあましながら、ルキーノと再び会う時間を待ち続けていた。
BGM「真実の翼」 by カヒーナ
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
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