こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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3日目昼。
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3日目 昼 曇り
結局昨日ベルナルドに頼まれたのは、ボンドーネ家とその一族の動きを見張ることだけだった。
内部の人間にも動きを気取られないように念を押してからいくつかの指示を与え、命じたことすら忘れたように振る舞いながら、日常を過ごす。今回の抗争で巻き込まれた商家へのご機嫌伺い、貧民への施しのためのバザーへの参加、それ以外にもこなさなければならない業務は山程ある。
ルキーノが町を回っている間にも、ベルナルドはあの癖のある役員方相手にジュリオと共に戦っているのだろう。
ただジュリオの無罪を主張するだけなら簡単に終わるはずの会議、だが今回はボンドーネ家が絡んできたことで、事態がややこしくなってしまっている。ボスが役員連中に根回しは行っているのだろうが、それでも一体相手の目的がなんなのかが一切わからない状況では、ベルナルドも事を慎重に進めざるを得ないのだろう。
誰かが手を貸してやれればいいのだが、ルキーノとイヴァンは街の治安回復で手一杯、ジャンはまだ絶対安静をいう状況である。
「いやー、悪いな。こんなに見舞い持ってきてもらって……」
「…………俺はまだ立ち上がれない重傷者だって聞いていたんだがな…………」
「まだ立ち上がれないのは本当だって」
体をベッドから起こし、ルキーノが持ってきた林檎に皮ごとかぶりついている姿は、どう考えてもあと1週間以上起き上がれない怪我人のものではなかった。手の甲にまで巻かれた包帯や、口を大きく開けると引きつる笑顔、そして青黒い痣の浮いた喉元。死線をくぐり抜け、ようやく生還した人間ならもっと生に対する執着や怯えが見えそうな物なのだろうが、彼からは全くそんなものを感じない。
生を必要以上に尊ぶわけでもなく、死に怯えるわけでもなく。
普通に生き、自分の体を大事にし、そして周囲の人間を大事にする、ごく当たり前の人間がそこにいた。通常時ならともかく、死に片足を一歩突っ込んでいたというのに、この明るさと穏やかさは何なのだろう。
そういえば救出したときのボスも、監禁されていたとは思えない朗らかさと落ち着きを持っていた。
組織のボスになる人間は、これくらい大物でなければならないのかもしれないと考えながら、病人とは思えない喰いっぷりのジャンにコーラの瓶を渡してやった。怪我人にそんな物を飲ますなとあとで医者に怒られそうだが、その時にルキーノはもうこの場にいない。
「せっかく生き延びたのに、林檎を喉に詰まらせて死ぬ気か?」
「そん時は王子様がキスで起こしてくれるさ……あんがとさん」
「俺の林檎は毒入りじゃないし、お前の王子は今会議中だ」
栓を抜いてコーラを渡してやると、これも一気に飲み干してしまう。
医者の手配する食事ばかりとっていたら孤児院時代に戻ったような気になる、と先程ぼやいていたが。確かにルキーノもオートミールばかりの食事は勘弁してもらいたい。
トレイにのせられた山盛りのオートミールがのっていた痕跡のある皿を見ながら彼に同情してルキーノだったが、少し声を潜めながら話しかけてきた未来のボスの言葉にそちらに目線をうつす。
「ジュリオ……どうなんだ?」
「一進一退っといった所みたいだな。詳しいことはわからんが、まあベルナルドのことだ、悪い結果にはしないさ」
「だから余計に心配なんだよ」
「お前はもっとベルナルドを信頼してると思ってたんだが……」
「信頼はしてるさ」
そう短く言葉を切ると、ジャンは小さく息を漏らす。
ジュリオが心配というよりは、ベルナルドの方を気遣っている、そんな奇妙なジャンの態度。彼とベルナルドは一番つきあいが長く、ジャンが一方的にベルナルドを頼っているように一見見えるが、実際は互いに寄りかかっているといった方がいい関係だとルキーノは推察している。
「信頼してるなら、もっとどっかり構えてればいいだろ?」
「ベルナルドだからこそ不安なんだよ……あいつ、目的のためなら手段は選ぶけど自分のことはどうでもいいからな」
「結構えげつないこともするぜ、あの筆頭幹部様は」
「たまにわざとそういうことするんだよ、計算した上で。憎いよこの筆頭幹部! って言ってやりたくなることもあるけどな…………」
危ない橋を一人で渡りたがるのはどうにかしてほしい。
冷静に評したジャンに、ルキーノは内心驚きを隠せなかった。
勘が鋭く、人の良いところをちゃんと受け止めることができる人間だと思ってはいたが、まさかここまで洞察力に優れているとは。
あくまで自然体のまま人の本質を掴み、それを損ねることなく正しい方向へ導く。今回のジュリオの件で彼の人間的な大きさは理解できていたつもりだったが、ルキーノが思っているより彼はもっとすごかったようだ。
ボスが後継者として選び、ベルナルドが全力を持ってサポートしようとする。無自覚のまま人を引きつけ、集まった人たちを理解し動かすことができる彼は、将来組織をどれだけ発展させてくれるのだろうか。
今まで関わったことがないルキーノがそんな未来を考えてしまうのだ、長年付き合ってきたベルナルドはどれだけ彼に期待を寄せているのだろう。
「お前がボスになるまでは、ベルナルドも無茶はしないだろうさ」
「久しぶりに会ったら前髪が無くなってたなんて事になってなきゃいいんだけどな」
「それはあるかもしれん」
大の大人が顔を見合わせてくすくすと笑う。
ボスやカヴァッリ顧問のお気に入りとはいえ、脱獄だけが取り柄の若者と笑いあうことになるなんて、一月ほど前ならば考えられなかった。だが彼は組織とこの街を救うきっかけと、未来をくれた。
ルキーノにとっても、組織の誰にとっても大恩人である。
将来的には自分の上司になるかもしれない男を無下にする気はないし、こうやって定期的に見舞いに来てはいるのだが。
「なんか面倒なことでもあったのか?」
「この街は今厄介事だらけだ、怪我人に愚痴りに来たくもなる」
「それだけならいいけどな……ジュリオになんかあったらすぐに教えてくれよ」
「わかった」
ベルナルドの心配はするが、本当に心配なのはジュリオ。
ジュリオの名前を口にする時のジャンの顔は、隠そうとすらしていないわずかの憂いとそれを越える幸福に満ちていた。今後ジュリオと共にいるならば必ずやってくるであろう苦難、それをちゃんとわかった上でささやかな幸せを享受していこうとする固く強い意思。
薄く空を覆う雲から差す光のような、ほのかな意思の輝きがそこにはあった。
ジャンのような人物にここまで思われているジュリオ、彼が心ない役員の言葉に負けるわけがない。すなわちそれは、ベルナルドも決して負けないということだ。
「少し安心したけどな。ジュリオが来れないのはしょうがないにしても、ベルナルドの奴まだ顔見せなかったんで、結構心配してたんだよ。どーせ無茶して顔色が悪いから俺に会いに来れないとかそんなんだろうけど」
「つきあいが長いとそこまでわかるんだな」
「俺のダーリンはそういう男なんでね。多分そろそろ無駄にテンション高くなって、それから一気に沈んで…………あとは病院送りコースへ一直線ってとこだろ。売上金かすめたバカのせいで1週間寝ないで金の工面してて、病院に運ばれた時がそんなんだっ……」
サイドボードが派手な音を立てた。
いや、音の原因になったのは分厚い板に叩きつけられた自分の拳。言葉を切り、目を見開いて驚いていたジャンだったが、生来の頭の良さと勘の良さで事態をすぐに察したらしい。
「ベルナルド………そんなにヤバイわけ?」
「気がつかなかった俺のミスだ…………っ!」
「あの見た目だけ完璧主義のおっさん、結構難物だぜ? 真面目な坊ちゃんに見えてわがままだし、ひねくれてるし、差別主義だし、ついでにそろそろ前髪は危ないわ白髪も出てくるわで、おまけに人に弱みは絶対に見せないしな……もう最悪って感じ?」
「だがお前は気がついたんだろう?」
「そりゃつきあい長いんでね」
飲み終わったコーラの瓶を器用に枕に立てかけながら、にやっとジャンは笑ってみせる。
自分の方がベルナルドを理解している、そう言いたげな姿に多少どころじゃない苛立ちを感じながら、彼を自然と睨みつけそうになる目線を無理矢理自分の膝へと持っていく。
顔色が悪い事なんて最初からわかっていた、痩せていることも。
大丈夫だからと言われ素直にそれを信じた自分ではなく、ジャンが側にいれば無理にでも休ませて、彼の心に余裕を作ってやれたのだろうか。
痛みでうずき始めた拳なんてどうでもいい、ふつふつと燃え上がり始める後悔と怒りの年を沈めたのは、冷め切ったジャンの声だった。
「あのなルキーノ……人のベッドの横で切れるのはあんたの勝手だけどさ、俺だってジュリオの運命をあいつに預けてんだよ。動けるあんたはいいけどな、こっから動けない俺はどうすりゃいいんだ? 寝ていりゃ王子様がキスしに来てくれるっていうなら大人しく待ってるが、この世の中は甘いお菓子とおとぎ話で、できてるわけじゃない」
「………………………………………………」
「しっかりしろよ、ベルナルドが心配なら担いででも病院に連れてって医者に診せてこい。何そんなに慌ててるんだよ」
「慌ててる? 俺が?」
「俺はあんたとまだそんなに長いお付き合いじゃないけどな。身内は本気で守るけど、それ以外はどうでもいい人間に見えるぜ? あんたにとってベルナルドはそんだけ大事な人間なんだろ?」
大事な人間。
ジャンに言われたその言葉を口の中で転がしてみる。この間も感じた、痛みではないのに胸に残る苦い何か、それが胸の中にじわりと染みこんでいく。
ベルナルドが大事なのは事実なのだろう、だがどんな風に大事で、自分が彼をどうしたいのか。その答えは彼に会って、話をしてみなければわからないのだろう。
ぐらぐらと煮えたぎった鍋のようだった心は、ジャンの冷静な言葉で急激に落ち着き始めている。
あとはベルナルドに会って、この思いにどんな名前つくのかを知るだけ。
ただベッドの上で待つことしかできないジャンより自分は恵まれている、歩き回ることも、自ら会わなければいけない人の側に行くことも、その声を聞いて安心することもできるのだから。
自らの内で渦巻いていた熱は、ジャンの口の浮かぶ澄んだ笑みを見た瞬間、吐息となって空気に溶けていった。
BGM「「a perfect world」 byピチカート・ファイブ
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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