がんかたうるふ Ambivalent Loop 2日目 朝 薄曇り 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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2日目朝。







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2日目 朝 薄曇り









薄曇りのぱっとしない天気の下、今日の筆頭幹部殿は大層不機嫌だった。
昨日の機嫌の良さはなんだったのかと聞きたくなるほど表情は硬く、おまけにこちらの声かけにも反応が薄いときている。シャワーを浴びてさほど時間がたっていないのか、毛先が水分でまとまり、癖のある髪が水気を得て更にうねっている姿は、確実にいつもの彼ではなかった。
外した眼鏡を指に引っかけ器用にその手で目をこすりながら、もう片方の手はまとまらない髪を苛立たしげに触り続けている。決してスーツを着崩さない彼が、電話機をハンガー代わりにしながらワイシャツ姿で佇む姿は、滅多なことで見られないだろう。
ジャケットを脱いだ彼は、ここしばらくですっかり肉の落ちた体が異様に目立つ。手足がすらりと長く、上背も人並み異常にあるからか、細くなった体は衝撃を与えると砂の塔のように簡単に崩れ落ちてしまいそうに見えた。
「昨日の酒がそんなに美味かったのか? 」
「そんなに深酒はしていない……今日のあの面倒な会議があると思うとな……面倒でしょうがないだけだ。それで…………用があるから来たんだろう?」
「あ…………まあ……な」
機嫌の悪さを隠そうとしない声でそう聞かれると、今日の動きのための金をくれと正直に言うのは気が引ける。しかしこの状況で幹部が金をばらまかなければ、一般市民の信頼は回復できない。
のはわかっていても、この状態のベルナルドに言うのは自殺行為。
いつの時代でも、どんな組織形態でも、一番偉いのは財布の紐を握っている奴。それの機嫌が悪い時にわざわざ金をくれと言って、果たして自分は無事でいられるのか。
その前にベルナルドは何故ここまで機嫌が悪いのか、まずはそれを聞いてから判断しようと、ルキーノは内心の動揺を隠しながらベルナルドに声をかけてみた
「俺が帰ってから何かあったのか?」
「…………ジャンの容態が思わしくない。起き上がれるようになるまであと10日ほどかかるらしい…………………」
「命に別状はないし、足が動かなくなるわけでもないんだろう。ちょっと起き上がるのが遅れるくらい、若いあいつにはあっという間のことだ。逆に全快を祝ってやるこっちの準備する時間が延びたと思えばいいだろう」
「わかってはいる…………んだけどな」
髪から指が離れると、指の先に小さな水滴。
深いため息をつくベルナルドの心の涙があらわれているようなその雫は、気がついたベルナルドによってすぐにソファーの端になすりつけられ、上等な皮に溶け込んでいった。
ベルナルドがジャンを気に入っていることは知っていたが、まさか彼の容態一つでここまで機嫌が悪くなるとは。つきあいが長い、自分が最初は面倒を見ていた、と何度か口にするのを聞いたことはある。だがベルナルドとジャンの関係は、いやベルナルドにとってのジャンは本人たちが口にするより遙かに重いらしい。
組織内では公平に人と接しようとしている彼が、ここまで入れ込むくらいには。
ルキーノにとってのジャンは次のボスになるはずの男であり、自分を刑務所から出してくれた恩人であり、そして鍛え上げれば今のボスを越えるまだ完成しきっていない伸び盛りの大器。表だってジャンに礼を言うつもりはないが、彼を未来のボスとしてふさわしい男に鍛え上げることが彼に対する返礼であると思っている。
素直に懐くジュリオや、一定の距離を保ってはいるが信頼を見せ始めているイヴァンとは違うが、ルキーノなりに彼を評価してはいるが。
ベルナルドのジャンに対する感情だけはどうも読めなかった。
「あまり気にするな、気にすると禿げるのが更に早くなる」
「お前の中でも俺が禿げるのが確定みたいだな……今日の分の金は部下に準備させておいてあるが、お前が俺の髪について語る度に減らしていってやろうか?」
「悪い悪い」
笑ってごまかし、おどけて手を差し出すと、ようやく少しだけベルナルドの表情が柔らかくなった。ジャンの件だけでなく、今日も彼の肩には一人では処理しきれないほどの問題がのしかかってくるのだ。
顔をしかめ今後の苦難を想像するより、少しでいいから笑っていて欲しい。
朝の仕事始めに見た顔が自分より順位が上の幹部のしかめっ面では、自分のやる気も削がれてしまう。それに、自分にとって身近な人間が辛い思いをしながら一人でいるなんてことを想像しながら普通に過ごせる人間なんて、ほとんど存在しないだろう。
そしてルキーノは、自他共に認める義侠心と同胞愛に満ちあふれた人間である。多少暴走することもあるが、まあそれはそれ。
目の前で疲れ果てた体に鞭打ちながら、今日も大忙しの一日を送る予定のベルナルドをどう激励するべきか。
「外で待機している部下に金を持たせてある、帰りに受け取ればいい。ああ、イヴァンに会ったら俺の所へ顔を出すように伝えてくれ」
「わかった……あまり、無理はするなよ」
「全部片付いたら最初にバカンスを取らせてもらうよ」
「無理はし続けるって事か」
「今のところは、な。裁判会議が終われば楽になる……仕込みは昨日のうちにすませたし、あと数日耐えればいいだけだ」
「仕込み?」
「今晩時間は空いてるか? お前とイヴァンにも手伝って欲しいことがある……後でもう一度俺の所に顔を出して欲しい」
「了解」
もうそれでベルナルドからの話は終わりなのだろう。まだ乾ききっていない髪を無理矢理まとめながら、これまた電話機にかけておいた薄手の鮮やかな色合いのネクタイを手にとって、不器用そうに首もとに巻き付け始めた。
それを見て、今の彼にしてやることができる一番の事がわかり、無言で彼の側に近づいた。
「早く行かないと部下が待ってるんじゃないのか?」
「首」
「ん?」
顎に指をやり軽く首を上げさせると、ベルナルドにもルキーノの行動の意図がつかめたようだった。首元を素直に差しだし、ほの青い血管の浮いた肌をこちらに晒してくる。その白さが自分たちがどれだけベルナルドに負担を押しつけているかを如実にあらわしているかのようで、内心ため息をつく。
どれだけ仕事ができようと、頭が回ろうと、体は確実に弱っていっている。
早い内にイヴァンと連絡を取って、ベルナルドの仕事を一部自分たちで肩代わりしなければならないなと考えながら、ルキーノはベルナルドの首にかろうじて巻き付いていたネクタイを取った。
男のネクタイなんて結んだことはないが、自分のネクタイの締め方を思い出せばなんてことはない。ネクタイを結ぶ手順を頭の中で思い返しながら指を動かし、ついでなので日頃彼がしない結び方にしてみることにした。
「お前に結んでもらうなんて……なんだか妙な気分だな」
「妙な気分になったのなら、今晩彼女の所へ行ってこい。少しは気晴らしするんだな」
「残念ながらアナとは別れた、今は優雅な独り身だよ」
「仕事と心中するつもりか?」
「いや、俺が心中するのは仕事なんて安っぽいものじゃない」
「自分が今やっていることを安っぽいというとはな」
「価値観なんて人それぞれ……俺にとって大事なものは、お前にとっちゃ単なるその辺のゴミかもしれない」

だが俺にとっては大事なものなんだ。

ルキーノの指が首筋をかすめる度に軽く震える瞼が、柔らかな呼気と共に閉じられる。ベルナルドにしか理解できない何かが目を閉じることによって感じられるのか。自然に、わずかだけ作られた笑みは、彼にとって本当に自然な歓びの感情の発露なのだろう。
淡く色づいたほのかな感情に過ぎない、だが大切な何か。
昨日見た機嫌の良さそうな姿よりも、不機嫌そうに周囲を睥睨する姿よりも。ささやか過ぎるわずかな感情の動き、それはルキーノの心を静かに突き刺していた。
痛みではない、と思う。
だが奇妙にうずき、胸の奥で渦巻くまだ名前をつけられない何かは、ルキーノの指を予想より遅くしていた。できあがりかけのノットが指に絡みつき、やり直すこと数度。
「できたぞ、たまには違うノットもいいだろ?」
「鏡もないのにわかるわけないだろう。後でじっくり見させてもらうさ……まあ感謝はしておく」
「お望みなら、明日もしてやるが?」
「今日の会議で派手すぎると言われなければ考えてやってもいいな」
いつもと変わらない、穏やかな笑顔。
だがその笑顔は人に向けられるために作られたもので、決して彼の本当の笑顔ではないことをルキーノはその時はっきりと理解したのだった。








BGM「メッセージ・ソング」 byピチカート・ファイブ


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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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こんな二人で、ここを更新しております。

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