こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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2日目 夜 薄曇り
酒の匂いは全くしないというのに、昨日渡した酒瓶の中身は空に近い状態になっていた。
この状況で我を忘れるほど飲むなんてことを、彼の性格上するわけがない。それでも気になったので一応問いただしてみると、先程顔を出したボスに飲まれたとのことだった。酒は好きだが量を飲まない彼が一日で一瓶を空にするわけがないのだから、それは本当なのだろう。
座ったまま何かの書類に目を通している彼の目の前には、綺麗な球形の氷が入った無骨なグラス。残り少ない酒をちびちびとなめるように味わっている姿は、じっくりと味を楽しんでいるというよりは単なる吝嗇家にしか見えなかった。
笑いながらからかってみると、
「もう少ししか残ってないだろうに」
酒のせいで少し血色のいい唇から、耳障りのいい言葉。
「せっかくお前が持ってきてくれたんだ、最後の一滴まで飲むのが礼儀だろう?」
「普段からそう言ってくれればもっと持ってきてやるんだがな」
「何度も言ったらありがたみがなくなる、たまにで勘弁してくれ。今日はこれほどじゃないが、いい酒を選ばせてある。ゆっくり飲んでいってくれ」
「今日の本題は飲む事じゃないんだろ」
「当たり前だ」
偽りの、真実を隠すためにある笑顔を瞬時に消し、向かい側のソファーに腰を落ち着けたルキーノに、自分が読んでいた書類を差しだしてくる。軽く目を通せば、なんのことはないCR:5という組織に関わる人間のリストだった。几帳面極まりないベルナルドの字と、豪快だが決して読みにくくはないボスの字、その二つで無数の書き込みがされている部分を除けば、ルキーノだって何度も見たことがある。
だがそこに書き込まれた文字は、書いた人間の心の奥底を表現するどす黒い想念に満ちあふれていた。
「殺人予告リストか……これは?」
「一部の役員方にはこの世界から『退場』していただく。残りの方々には丁重な説得で今後静かな余生を送ってもらうようにお願いするよ」
「俺に手伝えってことか」
「…………まだ、今日の裁判会議の事を話していなかったな」
「お前がジジイのお片付けを考えるくらいだ、相当なことがあったんだろうな」
ルキーノが朝作り上げた芸術的なノットはそのまま。
首元を緩めて心を休める時間すら与えられなかったのだろう、今日のベルナルドは。酒のおかげで血色がよく見えるが、実際はこのまま倒れ込んで休んでしまいたい程疲れ果てているはずだ。
何が彼をここまで働かせているのか、ルキーノにはまだよくわかっていないのだが。
彼が自分にとって特別な、人生を捧げるべき大切な物のためならば、自分の体や魂を簡単に削ってしまう人間だということは理解できていた。望んで全てをすり減らし、そんな自分を誇るわけでも卑下するわけでもなく、ごく普通に死の瞬間までそうやって生きていく。
普通はもう少し何かのために尽くす自分に対して、何か感慨のようなものを持ってもいいはずなのだが。
そういうところが面白いというか、ルキーノの興味を引くというか。
「昨日も話したとおり、俺とボスの意見は変わらないし、ジュリオには最初から何か余計なことを口にするくらいなら黙っていろと伝えてあった」
「それが賢明だな」
「変な事を口にしたらその段階で全ては終わりだ。ジュリオもそれは理解していたから、ほとんど何も口にしなかった。ボスと立てた予定では、今日中に裁判会議を終わらせて、会議中に尻尾を出した役員連中を締め上げる予定だったんだが……」
「何があった?」
「ボンドーネ家の横槍が入った」
それだけ口にすると、残りの酒をベルナルドは一気に飲み干した。
相当悔しかったのだろう、入ってきた馴染みのボーイに笑顔を向けてやることすらせず、つまみのレーズンバターを添えられたフォークも使わずに口に入れ続けている。
「口の中がバターまみれになるぞ、少し酒でも飲んでおけ」
「ボスは体に悪いから酒は飲まずに何か喰えと言っていたがな……これが飲まずにいられるか」
「俺も喰う物は喰って欲しいが、今は気晴らしの方が先だろう」
グラスと瓶の口を触れあわせると、爛熟した花を思わせる甘さとアルコールが混ざり合った香りが、ベルナルドのグラスを中心に広がっていった。お前の酒ほどじゃないとベルナルドは言っていたが、これだってかなり高価な酒だ。おまけにルキーノにとっては好物と言ってもいいほど好みの銘柄ときている。
ベルナルドが誰のために用意してくれたかは明らかすぎるほど明らかで。
「話を続けるか。ジュリオに関してはしばらく監視をつける事には同意することになったが、ほぼ無罪の方向で話は進んでいた。そこで発言したのがボンドーネ家の傍流の人間でな……名前はなんと言ったかな……雑魚の名前はどうも忘れやすくてな」
「その雑魚の奴、まさかジュリオをボンドーネの家から追い出して財産を奪う気か?」
「それに近いが少し違う。ボンドーネ家の持つ権利を全て組織から引き上げたいと言ってきた。ジュリオが組織に残ろうが、有罪になろうがどうでもいい、ボンドーネの財産は今後自分たちで管理したい。それが向こう側の言い分だ……そして役員達の一部がそれに賛成した」
「自分で自分の首を絞める気か!?」
ボンドーネ家の財産は、金銭や有価証券だけではない。
町の劇場の興行権、港の船舶の乗り入れ料、様々な利権を持ち、そこから上がる収益でさらに一族の力と富を増やしているのが、あの一族だった。CR:5が使わせてもらっている利権もあり、または暴力でその利権を守り収益を得ていることもあり。持ちつ持たれつの関係を今までは維持してきていたのだが。もしボンドーネ家とCR:5が完全に切り離されることになれば、どちらも多大なダメージを受けることになるだろう。
それをボンドーネ家の人間が理解できていないわけがない。
だというのにそれを主張してくるということは……
「ボンドーネのクソジジイはまだその辺でうろうろしているということか」
「あんな雑魚にCR:5と袂を分かつ決断をできるわけがない。ボンドーネ翁はどこから俺たちの状況をじっと見ているんだろうな。そして裁判会議を通じて俺たちに揺さぶりをかけ続けている」
「厄介なことになってきたな……役員どもの裏切り者はわかりやすくなったが、こちらも動きが取れないわけか」
「下手に動けばGDの奴らがまた町に入り込んでくるだろう、ボンドーネの爺さんの手引きでな。俺たちが今しなければならないことは、早急にボンドーネ翁の居場所を見つけることと、そして裁判会議を一刻も早く終わらせた上で裏切り者を処分することだ」
「俺はどっちをやればいいんだ。ジジイの居場所探しか?」
「そちらはイヴァンに頼んである。お前の部下がまわりをうろついてみろ、あっという間にボンドーネ翁にばれるさ…………それに気になる事もいくつかある」
「気になること?」
「俺個人が気になっていることだ、まだ話せる段階じゃない」
バターで濡れた指を舐め上げながら、ベルナルドが静かにそう口にする。
そのまま濡れ光った指を首もとへ持って行こうとし、ネクタイに触れる瞬間にぴたりと止めると、何かを思い出したかのようにルキーノへ顔を向けてきた。
滅多に見せない、唇を尖らせた子供のようなふくれ顔。
「そうだ、これをほどこうとさっきから何度もやってたんだが……どういう結び方をしたんだ?」
「これからはいつも俺にほどいてもらえっていう神のお告げだろうさ」
「そんな神なら俺は即座に無神論者になってやる」
こういう顔もできるのか。
長年のつきあいだというのに、ここ数日で彼の知らない顔をたくさん見た。凪の海のような笑顔、光の差さない深海のような暗い感情。
そして、子供のような生の感情。
一人の人間の中に隠れている重いというのはこれほどまでに多様で、そして見る人間を引きつけるものなのか。深くて、色とりどりで、重くて、決して綺麗なものばかりじゃない。
今日の会議へ向けられた憤りと、思うままにならない状況への苛立ちと、そして旧友への子供のような抗議。様々な思いが積み重なり、混ざり合うことで、その人特有の美しさを形成していくのだろう。
自らの中の闇を隠さず、逆に光を心の奥底に押し込めているようにすら見えるベルナルドは、きっと人として誰よりも美しい。
そんなことを考えながら、ルキーノは彼が自分のために用意してくれた酒を口にする。ホテルマンの多大な努力によって作られた真球型の氷は、グラスを回すと天井のシャンデリアの光を受けて様々な色合いの光を吐き出し始めた。
BGM「東京は夜の7時」 byピチカート・ファイブ
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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