がんかたうるふ イヴァンこばなし 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。




イヴァン関係のこばなし3種、サイトより移動。







 *****



かなりの値打ち物なのだろう重厚な木々で作られた柱時計が、また一つ音を立てた。
もう何度この音を聞いただろうか、最初は気にもとめていなかったこの音が、タイムリミットをあらわしていることに気がついたのは数時間前のこと。そして現在に至るが、事態は何の進展も見せていなかった。
「おいそこのボンクラ……」
「なんだよ」
「そっちはどこまで片付いた?」
「まだ半分だな」
テーブルの向かい側、きつい性格に似合わない淡い色の髪をかきむしりながら、イヴァンが頭を抱えている。彼の前にも、ジャンの前にも、まだ処理が終わっていない領収書の山。
はっきり言えば、処理をサボっていたら明日会計監査が入ることになった、それだけなのだが。
カポ見習いとしてあちこちの手伝いを行っているジャンが、その未処理の領主書の一部に関わったことは事実であり。確実にジャンが関わったとされている領収書だけを回してきたイヴァンは、数倍の厚みの束を処理することに全力を尽くしている。
ばらまくところが多く、血筋のことで常に周囲に疑われなければならないイヴァンの所こそ、金の流れを一番追求される。それをわかっているからこそ完璧な金銭処理を行おうとしているイヴァンであったが、さすがの彼でもこの量を後数時間でというのは確実に無理だろう。
「この量を明日までって無理だろ……もう日付変わってるんだぜ?」
「だったらテメーの分だけでも終わらせろ」
「何言ってんだよ、ここまできたら俺ら連帯責任ってやつだろ?」
「テメーが責められる状況にはなんねーよ、俺が責任取ってテメーにシマの一部を分けてやって終わりってとこだろうさ」
「なんで落としどころがそこになんだよ?」
「耳からたれ落ちそうな腐った脳味噌でもわかるように説明してやろうか? 次期カポ様がシマの一つも持ってないで他の幹部の使いっ走りなんてやってるなんて体裁の悪いことを、ジジイどもがいつまでもさせておくわけねえだろ? シマを分けるなら、俺んとこが一番都合がいい、テメーも俺の仕事ならある程度覚えてるだろ?」
「ま、まあ……お前をお手伝いさんすることが一番多いからな。でもいきなりそれはないって」
「俺の力を削ぐ必要があるって考える馬鹿ジジイばかりってことだ」
  ペンを動かしながら、悔しげにそう呟くイヴァンにジャンはあえて声をかけなかった。
声をかければ同情するなと言われるだろうし、何か彼に書ける慰めの言葉を考える暇があるのなら、少しでも作業の手を進めた方がいい。その結果が彼に返ってくる事を知ってしまった今、真面目に仕事をしないわけにはいかなくなっていた。
決して今まで手を抜いていたわけではないのだが。
  互いに無言のまま、ただ自分の目の前に置かれた物を片付けるだけの時間が経過する。一度柱時計がくぐもった音を立て、外を見て確認する必要がない程室内が明るくなってきた時。
奴が帰ってきた。
「よう、お前らまだ紙と格闘してるのか?」
「ルキーノ……酒臭ぇぞ」
脱いだコートを肩に引っかけ、わずかに赤くなった目元を隠すことなく、だがわずかもふらつくことなくジャンの所まで来たのはさすがと言うべきところか。濃厚なアルコール臭に二人が顔をしかめたことを気にする様子もなく、紙の山とジャンを交互に見つめた後。
唐突にジャンを掴んで引きずり始めた、ドアの方へ。
「ちょ、ルキーノ!」
「帰るぞ」
「いや、俺、イヴァンの手伝い……」
「ほっとけ、別に死ぬわけでもないだろう」
「いやいや、酔っぱらいが言っても説得力が……」
何が起こったのか、まだ体と頭脳が完全に理解していない上にほぼ徹夜状態ということもあり、ジャンの抵抗はまったく形になっていなかった。体格でも腕力でも勝てないルキーノに引きずられながら、ジャンは唯一というかこの場には自分たち以外には彼しかいないのだが、とにかくあっけにとられたままのイヴァンに救いを求めた。
「イヴァン!」
「……………………」
無言でひらひらと手を振りながら、それでも書類の整理を続行するイヴァンの顔には『テメーらうるせえからさっさと出て行け、仕事の邪魔』とはっきりと書いてあった。
いやいやお前を助ける為に俺徹夜していたんだけど、とか、この酔っぱらいは明日になったら全然覚えてなさそうだよな、とか色々考えながら、とりあえずイヴァンに手を振り返すことにした。
確かに酔っぱらいに乱入されるよりは、一人の方が仕事が進むだろうから。





結局今回の件はベルナルドのフォローのおかげでイヴァンと並んで怒られるだけですんだが、ルキーノがこの件でイヴァンに謝罪をしたのかは、謎としてジャンの中に残ることになった。






_____________________________________________






犬が犬の面倒を見るというのもおかしな話だが。
わずかの汚れもない純白の毛皮をそよ風になびかせながら、足を速めるわけでもなく、だが休むわけでもなくその姿を周囲に見せつけながら歩み続ける姿は、引き綱を持っているジャンが己を恥じる程であった。幸運だけで生き延びている自分だが、自分の存在全てを誇っているかのようなその美しさと気高さを持つ生き物と同じ名で呼ばれていいものかと疑問に思ってしまう。
すらりと長く伸びた足と、それに負けぬ程長く美しい毛並み。
つんと反らせた顎も、すんなりとした首筋も、獣の美の頂点というべきもの。鮮やかな紅の首輪から伸びた革紐の先を自分が握っていなければ、自分の方が侍従か何かのように思われてしまうだろう。
それ以前に、
「俺、確かCR:5の幹部だよな…………」
なんで幹部である自分が犬の散歩を引き受けているのだろう。
幹部会があるというから朝も早くから指定の場所へ行ってみれば、そこにいたのは一匹の美犬だけ。散歩させておけという見慣れた字の手紙と共に、散歩コースの地図まで置かれている始末。
まさかこの犬が新しい幹部かと一瞬でも思ってしまった自分は相当の馬鹿、だが手紙の指示通りに素直に散歩させてしまっているのは馬鹿を通り越した何かとしか思えない。
かなりしっかり躾をされているのだろう。ジャンが知っているそこら辺の野良犬とは違い、そこら辺の壁に小便をすることもなく、決められたコースを全く間違えることない。これだけしっかりしているのに、一緒に散歩をする必要がどこにあるのだろうか。
「なあ、お前なんて名前なんだ? オスか、それともメスか? メスならお前みたいなのは、何もしなくてもオスが嫌になるくらい寄ってくるよな。羨ましい限りだぜ、より取り見取りってやつじゃないか」
ぴったりと横にくっついてきた犬の耳を掻いてやりながら、まるで恋人に語るかのように優しく声をかける。普通に手を伸ばせば頭を撫でることのできる程の大きな体、そしてそれに似合わぬ程につぶらな瞳が一瞬だけジャンを見やり、そしてすぐに前を向いた。
だが、その体はジャンのトラウザースに毛が大量につく距離まで近寄ってきている。
こちらを見ることはほとんどなく、何か特別な態度を示してくるわけでもない。それでも自分との距離を縮め、少しでも好意を表現しようとするその姿は、ジャンにとっては非常に好ましいものだった。
調子に乗って更に耳の後ろを優しく撫でてやると、今度は腰の辺りに鼻の頭をすりつけてくるが、それでもその目は目的地をひたすら見据え続けている。今歩いている通りを抜け、突き当たりの角を曲がれば今回の散歩は終わり。
あとは誰ともわからぬ飼い主に、わずかな時間だけの相棒を返すだけである。日の光を素直に受け止める美しい毛並みの賢い相棒と別れるのはかなり寂しいのだが、どういう事情があるにせよ、最初から返すことが決まっているはずの犬である。
せめて最後にたくさん撫でておこうと、角を曲がる前に紐を軽く引き犬を立ち止まらせた。膝が汚れることを気にせずに砂利と砂で汚れた道路に膝をつくと、待ち構えていたように顔を寄せてきた犬をこちらも遠慮することなく抱きとめ、その首を抱え込む。
「お前可愛いな……あの馬鹿な上に犬の教育も出来なかったり、犬に名前つけようとしたら綴り間違えておかしな名前にしちまったり、ついでに少し毛を刈ってやろうと思ったら間違えて丸刈りにしかねないイヴァンが飼い主じゃなくて良かったな……」
「おい」
「あいつだったら馬鹿の一つ覚えて食事がずっと生肉だとか、犬なんだから番犬になれっておかしな事教え込んだり、ついでに自分で面倒見るのが面倒になったから俺に散歩を押しつけたり……あ~あ、あんな最低な奴に飼われなくて良かったな、マジで」
「俺の悪評をダイアナに吹き込むんじゃねぇぇぇっ!」
角からひょっこりと顔を出した見慣れた顔が、いつもと変わらぬ叫び声を上げながらけたましい足音を立てながら近づいてくる。ああやっぱりこの足音を聞かないと一日が始まらないなあと思いながら、こちらも恒例になった挨拶で返すことにした。
「…………ラズベリー水でも分け合って飲んでるのか、こんな美人のワンちゃんと」
「そいつは知り合いからの預かりモンだ、さっさと返せ。テメーに散歩を頼んだ俺が馬鹿だったよ」
「ねえアン、私たちの友情は永遠よね?」
「その紐で首を絞めてやろうか、あぁ?」
わざとらしい程大きな足音と共に、あっというまに革紐をひったくられた。
それと同時に、ジャンの腕に白くて暖かい高級絨毯のような感触を提供してくれていた巨体が、あっという間に腕からすり抜けていく。
「よーしダイアナ……バカはバカなりに面倒見てくれたみたいだな」
「馬鹿に馬鹿って言われたくねえよ」
「言ってろ」
ジャンに対してはきつい眼差しを崩さず、だがダイアナには笑みを含んだ優しげな顔で。まあよくもころっころと対応を変えられるなと内心感服させられるが、それ以上に驚かされたのはダイアナが彼に相対した時の動きだった。
ジャンに見せたのはこの美しい淑女の柔らかい部分、だが彼に見せたのは人の友として暮らす獣の、普段は見せぬ内なる牙を見せた姿だった。
吠え立てるわけでも、牙を剥くわけでもない。
だがその目に瞬時に宿ったものは、追い詰め駆り立てるものだけが持つ、剣呑としかいいようがない鈍い光。主人の命があれば、すぐに敵の命を食い破りかねない不断の意思が、白い輝くような毛並みの内に隠されていた。
「ダイアナ……面倒かけたな、さっさと戻れ」
器用に片手だけで首輪につけられた革紐を外すと、一条の白い矢のようなその体が跳ねるように大地を蹴り出す。わずかな音すら立てずに去っていくその姿をある意味あっけにとられながら見送ってから、ジャンは目線で追うことすらしないイヴァンに少し不機嫌気味に声をかけた。
あんな綺麗で素直で賢い犬と一緒に過ごせる機会なんて、次はいつあるかわからない。その時間をさっさと終わらせてしまったイヴァンに少しくらいは文句を言いたい気分というのが、正直なところだ。
「別にもう少しいたって俺は構わなかったぜ?」
「あいつにゃあいつのつきあいも、あいつの主人との時間もある。あまり長い時間借りるわけにもいかないだろう」
「借りてた?」
「……………………」
ぷいっとイヴァンの顔が背けられる。
気まずそうな、だがどこかにやけているような微妙な表情で、彼とのつきあいが長くなり始めているジャンには、今回の件のカラクリがなんとなく理解できてしまった。
「……もしかしてお前…………俺のためにダイアナを借りてきてくれたとか?」
「ち、ちげえよっ!」
「動物好きな俺のために色々考えてくれたんだよな……やっさしいなあ、イヴァンは」
「誰がテメーなんかのために! ダイアナの訓練で知らねえ奴が必要だっていうから、テメーみたいなバカならダイアナのやつも怖がらねえだろうって…………」
「へ~、俺のことそんくらいには信頼してくれてるわけだ」
こちらに食いつきそうな勢いで睨みつけてくるイヴァンからわざと目をそらしながら、自分はイヴァンについて知らないことが本当に多いなと、ジャンはふと思った。
彼はこれからもきっと心の全ては自分にさらけ出しても、完全に全てを見せることはなく、自分との時間を過ごしていくのだろう。
自分が決して踏み込めない彼の世界。
あの白く気高い犬は、その世界の中でイヴァンと時を過ごしている。
「なんだろな……」
「なにがだよ? それよりテメー、ダイアナにおかしな事とか教え込んだり、変なものを喰わせたりしてねえだろうな」
「そんなことするわけないだろうが」
ふわりとした白い毛並みを梳いた感触が、まだ指に残っている。
彼もあの毛並みを梳いて褒めそやし、そして自分が知らないものを共有している。


それを考えると、ほんの少しだけ。


彼には死んでも言う気はないが、あの犬の白い毛並みが羨ましくなった。






_____________________________________________




「Rock-a-bye,Baby」




調子っぱずれな音が聞こえてくるのかと覚悟していたら、聞こえてきたのは予想よりはるかに澄んだ、子供を安らがせるための歌声だった。

Rock-a-bye, baby, on the tree top.
When the wind blows, the cradle will rock.
When the bough breaks, the cradle will fall,
And down will come baby, cradle and all.


物騒すぎる歌詞の事は考えないことにして。
「イヴァン……お前…………」
「殺すぞっ!」
「俺はまだ何も言ってないぜ、それともアレか? 音痴って言われるのが怖いのか、イヴァンマンマは?」
「歌えっていったのはてめぇだろうが!」
「歌ったら面白いとは言ったがな、歌ってくれなんてお願いなんてしてないって」
裸で二人ベッドの上。
足を絡ませながらくだらないことで言い争うのはいつものことなのだが、今日のきっかけはジャンのささやか過ぎるおねだり未満の要求だった。要約すれば、夜中だというのに興奮しきって眠れないので子守歌でも歌え。まあそんな感じなのだが、男女の恋人の甘やかな時間のスパイスになるそれも、男が男に要求するとそれは単なるジョークでしかありえない。
そしてそれを実行した馬鹿が目の前にいる。
「ま、まあ元気出せよ……とりあえず誰にも言わないって」
「とりあえずって事は、いつかは言うかもしれないって事だよなぁ?」
「イヴァンが俺に飽きるか、俺がイヴァンに飽きたら言いふらしてやるかもな~」
自分の墓穴を掘る勢いで沈んでいるイヴァンの肩を叩きながらそう宣言してやると、こちらを睨みつける気力も歌に吸われたのか、顔が一気にシーツに沈んだ。鼻をシーツに埋めながらこっちを睨みつけてくる目にも、いつもの力は感じられない。
自分で振ったネタとはいえ、まさかここまで落ち込むとは。
歌が下手だったら大笑いしてその場を軽く収めることも出来たのだが、まさか普通に上手いとは。きっとロザーリアにも時折歌って聞かせてやっていたのだろう、彼の歌いっぷりそれほど堂に入っていた。
そよぐ風が街を駈けていく時のように密やかに。
だがしっかりとした強さを持った声は、室内を静かに渡っていた。
誉めると場がおかしくなる気がするし、かといって下手と言うと嘘になり。すっかりへこんだ様子のイヴァンをどうやって浮上させればよいのか、と考える反面。
「可愛いよなあ……」
「なんだって?」
「いや、落ち込んでるお前って可愛いな」
「誉めてねぇぇぇぇぇぇ! あと可愛い言うんじゃねぇぇぇぇぇ!」
ベッドにバネでも仕込まれているかのように、一気に起き上がったイヴァンを見ながら、人はどれだけ馬鹿な失敗をしてもすぐに立ち直れるんだなあと、変に感心してしまうジャンであった。





PR
[13] [12] [11] [10] [9] [8] [7] [6] [5] [4] [3]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

ついったのフォローは下 のアイコンから。




ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カウンター
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone