がんかたうるふ 「輪舞~偽~」 立夏の刻~三成~ その3 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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この章はこれで終わりです。
次は筆頭のターンという名の終わりの始まり……よくここまで書いたなあ……



 *****
 障子に映る赤い光は、三成の背を赤く染めていた。
「…………水」
「ほらよ」
「腰が痛い」
「そりゃあんだけ頑張って腰を動かせばな……」
「半兵衞様は、夜の営みというものは立場が上の者が上になると仰っていたのだ!」
「今回ばかりは半兵衛の奴に感謝だな」
「……私は間違っていたのか?」
「半分くらい、な」
 水の入った湯飲みを差し出してやると、布団に突っ伏したままだった三成の顔が一気に持ち上がった。
 そのまま官兵衛から奪い取った湯飲みの水を一気の飲み干した三成は、無言で空になった湯飲みを突きだしてくる。苦笑しながらそれを受け取り陶器の大きな急須に入れた水を再度注いでやると、今度はちゃんと礼を言って三成は湯飲みを手にした。
 一杯目で喉の渇きは少し癒されたのだろう。
 今度はゆっくりと、体の全てに水を染み渡らせるように飲み込んでいく。
「美味いか?」
「ああ……」
 それで少しは落ちついたのだろう。
 官兵衛に湯飲みを返すと頭を再度布団に埋め、三成は大きなため息をついた。精神と肉体が大きく疲労しているのも重苦しい息の原因の一つではあるのだろうが、三成の表情を暗く重い物にしているのはきっと。
 自分の心を裏切った、それ故なのだろう。
 合意の上で肌を重ねた相手に好意に近いものを持つのは当たり前。だが潔癖な三成は自分の中にわずかに芽生えそうになり始めている官兵衛への特別な思いを打ち消すことも、受け入れることもできない。
 官兵衛に顔を見せないようにしながら唇を噛む三成の脳裏の浮かぶ名、それは誰のものなのやら。
 聞いてしまえば三成の心を傷つける、だがこのまま互いに無言でいるのは少々どころではなく気まずい。なので官兵衛はふざけた風を装って、三成の尻に手を伸ばしてみた。
 そのままさらりと撫で上げると、先程までの憂鬱な様子はどこへやら。
「貴様、何をする!」
 と、官兵衛の思惑通りにふくれっ面で抗議してきたのだった。
「いい尻だから触らせろって言っただろうが」
「触らせてやると言った覚えはない」
「触るなとも言われてないんでな。嫌ならさっさと起きろ、もう一度風呂入ってから飯にするぞ」
「腰が痛いと言っているだろう……」
「腰だけか?」
「…………中が……少し……な。まだ貴様が入っているような……おかしな感じだ」
 眼を細め、顔を赤らめ。
 聞いているこちらが恥ずかしくなるようなことを言い、三成はまた小さく息をつく。先程までの絶望だけが込められた物とは違い、そこに宿っているのは気恥ずかしさとわずかな希望。
 再度腰が痛いと言いながらもゆっくりと体を起こした三成は、まだ何も纏っていない官兵衛の前に裸身のまま正座し。痛みのためか、顔をわずかに歪めながら凜とした眼差しを勘兵衛へと向けた。
「徳川へ宣戦布告を行う。理由など……言わずとも向こうは察してくれるはずだ」
「今から戦をおっ始めれば、稲刈りの時期には趨勢が決しているだろうからな……いい判断だな」
「刑部には私から話をする。私よりも刑部の方が戦を起こしたがっていたのだ……文句はないはずだ」
「なら西国の連中に文を先に送らないとな。先に準備を始めさせれば、こちらが先に手を打てることが多くなる」
「こちらは水軍が多い、上手く使えばこちらの方が早く動けるはずだ」
「それに関してなんだがな…………一つ、お前さんに提案したいことがある」
「提案だと?」
 幸村と佐助には軽く話をしたことがあった。
 この国を二つに分けて行われる、多分最後になるであろう大戦。望まずとも多くの命が散り、その家族たちが嘆くことになるのはだれもがわかっていること。
だからこそ官兵衛は考えていた。
 たとえ半兵衛の策によって作り上げられた戦だとしても、抗うことはできるのではないだろうかと。
「この戦の布陣……小生に任せてくれないか? 戦なんてものは大勢の人を殺すためのものだがな、小生は一人でも多くの兵を家族の元に帰してやりたい。お前さんと家康が決着を付けるまでの間、全軍が入り交じっての殺し合いにならないように陣を配置すれば……死ぬ兵の数を減らせるかもしれん」
「貴様の好きにしろ。私は貴様に全軍の指揮を任せるつもりだったのだからな……何を考え軍を動かしても構わん。ただし、私を裏切ることは許さない」
「小生の上で腰振ってくれた奴を裏切るわけないだろうが……って、痛ぇっ!」
「おかしな事を言うな!」
 正座することができず、年頃の娘のように膝を崩して座っている三成の拳が官兵衛の腹に突き刺さった。
 本気ではなかったのだろうが、長身の男の一撃はさすがにきつい。体をくの字にして呻く官兵衛を尻目に、三成は多少よろめきながらではあったが立ち上がる。そしてそのまま衣類を置いてある場所へ歩いて行くと、白い体を茜色に染めながら官兵衛の方へ一度だけ振り返った。
「…………官兵衛、一つだけ聞く」
「なんだ?」
「私は…………間違っているのか?」

 この国のことを思ってではなく、ただ一人の愛する男のために戦を起こし。

 戦の中で死ぬことを望んだ。

 恩師である半兵衛の命だからではなく、自分の意志で三成は家康の為に死のうとしている。自分を愛していると言い続ける官兵衛の思いを受け入れず、三成を案じる周囲の人々の言葉も聞かず。三成は自分の命を散らすべき舞台に上がる時を、ただ待ち続けている。
 それを間違っているというのは簡単。
 しかしそれでは今までの三成の全てが否定されてしまう。豊臣のために生き、全てを捧げ。家康と出会いようやく人としての幸せを知り始めた三成が、その象徴である家康を死しても守ろうとするのは当たり前。
 三成の髪の先までが赤く染まる中。
 足元にある衣類を手に取ることなく、官兵衛の返答を待ち続けている三成に、官兵衛はできるだけ優しくその言葉を言ってやった。
「誰が間違ってると言おうともな……小生だけはそんなことは言わん。だから安心して戦を始めることだな」
「………………………」
 わずかの沈黙の後、三成の表情がゆっくりと変わっていった。

 悲しさと嬉しさと、そして幸福感の入り交じった儚げな笑み。

 自らの死ぬ時を決めた時から一度も心の底からの笑いを見せたことがなかった三成のその顔を見て、官兵衛はいい意味で全てを諦めた。どれだけ言葉を交わそうとも、体を重ねようとも。三成が考えているのは、遠き地にいる家康のことだけ。互いの立場が変わり殺し合うことになったとしても、たとえ死すことになったとしても。三成はその思いを捨てる気はないのだ。
 確かに将としては間違っている。
 だが一人の人間としての石田三成として、彼は自分の気持ちを一度も偽ることはなかったのだ。そして凶王ではなく三成という一人の青年を愛した官兵衛も、三成が間違っているとは思わなかった。
 ずっと彼を見てきた、だからそう言いきることができる。
「………………そうか」
 ただそれだけを言い、着物をようやく手にとって肩に掛けた三成は官兵衛に向けて着物を投げつけてくる。さっさと着ろと言うことなのだろうが、投げつけることはないだろうに。
それを素直に言うと、子供のように唇をとがらせ三成がこちらを睨み付けてきたが。次の瞬間遠くの方から聞こえてきた何人もの人間のが作り出す派手すぎるざわめきを聞き、慌てて着物を身につけ始めたのだった。















「猿飛の仇討ちか」
 くだらないとでも言いたげに顎をそらして冷たい目線で睨み付ける三成を前に、前田慶次は傍らに置いた長く大きな刃を握りしめながら必死に耐え続けていた。いきなりの来訪者にも驚いたが、相手は上杉家の食客である慶次である。敵将の元に一人で乗り込んできた男を三成の部下たちは、主に見つかる前に殺すつもりだったらしい。
 刃を抜いて慶次の周りを囲んでいる彼らを止め、慶次を館の内に招き入れた三成の意図はわかっている。
 一騎当千の力を持つ慶次に自分の臣下たちを殺されたくなかったのと、佐助の無事をなんとか彼に伝えたかったのだ。佐助と慶次が敵味方の立場を越えて親しいことは、幸村を通して聞いていたらしい。
 すぐ顔に出る幸村にはまだ話せないが、慶次になら。そう思って慶次と話をすることを選んだのだろうが、慶次は三成を佐助を殺した人間だと思っているのだ。
 真田家の忍びが的方と通じていたとして処刑されたことは、あっという間に各所へ伝わった。
 虎に遺骸を喰わせた凶王、そんな噂が流れているというのに慶次と三成が普通に話し合えるわけがないのだ。後ろに控えていると命じられた官兵衛は、足を組んで悠然と座っている三成の後ろで心配するしかないわけだが。
 主を案じて外で聞いているであろう臣下たちに気付かれることなく、慶次に佐助の無事を伝えられるのだろうか。
「…………佐助を殺したってのは……本当かい?」
「貴様に伝わっていることが、あの場にいた人間の知る事実だ。私は忍びの死などに興味はない」
「佐助が何をしたっていうんだ……? 家康とあんたを争わせたくないから、佐助は動いてくれたんだ、それなのに…………」
「官兵衛、しのはまだ腹を空かせているのか?」
 指の節が浮かび上がる程に拳を握りしめ、必死に斬りかかることを堪えている慶次を前に、三成は突如おかしな事を言いだした。
「あれは小食だが……好き嫌いが激しいのでな」
「客を目の前に、虎の心配かよ」
「鹿一頭すら喰いきれないというのに……私の元に食い残しをいつも持ってくる」
 ふう、とわざとらしいため息をついた三成の様子で、官兵衛は彼の意図に気がつく。
 頭はいいが融通が利かないのが三成の将としての最大の欠点。しかし彼は考えたのだろう、臣下たちに疑われることなく慶次に真実を伝える方法を。
 不器用で口べたなのでおかしな事を言ってしまうかもしれない三成を助けるために、官兵衛もわざとのんびりとした口調で話を合わせる。
「しのの奴なら西の方へ行ったぞ。あんなでかい図体してるくせに、猫に引っかかれて震え出すんだからな…………って、おい。客が来てんだぞ、少しは真面目に話をしてやれ」
「本来ならば私の元に来るべき客ではない」
 きっぱりとそう言いきった三成に、慶次の顔にわずかな困惑が生まれ始める。
 考え込むように唇を噛みしめたと思えば、首を振って髪を結う飾り紐を派手に揺らし。大切な人を殺した仇である三成に、憎しみの薄れ始めた目線を向けると。
「佐助の……墓を教えてもらえないかな」
 静かな、だが内側からにじみ始めている憎しみではない感情を抑え込むながらそんなことを問うてきた。
 佐助の体は全て虎に食い尽くされたことになっている。だというのに三成は虎を小食だと言い、官兵衛は臆病者だと断言する。
 もしかして、という慶次の中に生まれた希望を膨らませるために、官兵衛は三成が口を開こうとする前に体を前に乗り出して答えてやった。
「しのが喰ったんだ、墓なんてあるわけがないだろうよ」
「…………そ、そうか…………そうだ…………ね…………」
「墓参りをしたきゃ、そうだな……島津の爺さんとこに行ってこい。しのが喰いきれなかった骨は、あの爺さんに試し切り用に送ってやったからな」
 慶次の刃を掴む手からは、もう力が抜けていた。
 かわりに顔を染め始めていたのは、誰が見てもわかる程の喜びだった。各国を風来坊として回り続けてきた男が馬鹿なわけがない、そう思ったので生存を臭わせるのではなくこちらの言葉から違和感を感じてもらったわけだが。
 どうやら慶次にはちゃんと通じたらしい。
「…………墓はないわけだ…………わかったよ…………」
 突如慶次が拳を畳に叩きつける。
 この音で外で様子を伺っていた三成の臣下たちが蜘蛛の子を散らすように遠ざかっていくのが、官兵衛の耳でもわかる。しゃくり上げながら涙を流し続け、だが顔だけは晴れやかな笑顔を浮かべ。
 前田慶次は喜びを表現する言葉を必死に飲み込み続ける。
そんな慶次を無言で見つめていた三成は、何かに気がついたのだろう。
「その頭の紐……貴様の物か?」
「そうだけど、それが?」
「付けられない事情があるので代わりに付けて欲しい……猿飛は真田にそう言ってその紐を預けたそうだ。今は真田が持っているはずだ」
「付けられない事情……か、佐助らしいよ」
 髪に触れ表情を和らげた慶次の顔には、もう怒りや憎しみのかけらすら存在していなかった。
佐助の慶次の関係がどのようなものだったのか、官兵衛には想像することしかできない。しかし上杉家に仕えている立場の慶次が、全てをかなぐり捨ててここに来たことの意味くらいはわかっていた。
 それだけ大切な存在なのだ、彼にとって佐助は。
 三成もそれをわかったからか、慶次を挑発したり傷つけるような言葉を口にすることはなかった。昔だったら仇だと疑われた段階で、思いつくがままの悪口雑言で慶次を罵倒していただろうに。
 三成も大人になったものだ。
 しみじみとそんなことを考えていたのだが、ここから先は自分の出番だということに気がつき、官兵衛は慌てて頭を働かせ始める。慶次にこちらの伝えたいことは伝わった、では次は彼をどうやってここから出してやるのか。
 三成の臣下たちが彼に絶対服従なのは知っているが、敵方の将と話をしただけで帰しましたなんて事実は受け入れられないだろう。ならばここは三成と慶次を形だけでも争わせるべきか、それとも別な方法を取るか。
 せっかく皆で掃除したというのにここで斬り合いを始められるのも嫌だったし、なにより半兵衛の館を傷つけることに名ったら三成は悲しむだろう。そんなことを考えた官兵衛が選んだ策はただ一つだった。
「おい三成」
「なんだ?」
 喜びの涙を流し続ける慶次を見つめていた三成の肩を叩き、彼の耳元にそっと囁きかける。
「ちょっと待て、それでいいのか!?」
「そうしないと小生とお前さんも立場がまずくなるだろうよ」
「だがな…………私にそういう趣味はないのだが……」
「安心しろ、小生もない」
「だったら何故そういう……」
「でもそれくらいはしないと、こいつを無事にここから出してやれないぞ」
「わかった……だが貴様も手伝え」
「小生がどうやって手伝うっていうんだよ」
「むりしとるとか、色々とやり方はあるだろう」
 ぼそぼそと小さな声で話す二人に何かを感じ取ったのだろう。
「あの…………俺、何すればいいのかな?」
 まだ目を涙で濡らしている慶次が遠慮がちに聞いてくる。
 その慶次をすまなさそうに一瞥した三成は、心底嫌そうに首を振りながら立ち上がり。そのまま腰の刀へと手を伸ばし、面倒そうにその刃を振るったのだった。




 それからすぐ後、着ていた服を三成の刃に切り裂かれ、這々の体で逃げ帰ることとなった慶次の姿を屋敷にいた人間のほぼ全てが見ているが。
 ほとんど裸にされてしまっていたというのに、彼の顔は何故か喜びで輝いていたのだった。





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実質この話は後2章分+αで終わりです。
本当にもうちょっと……頑張るよ~!


BGM「灯-TOMOSHIBI- 」
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拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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