こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書けたのであぷ。
スマホ投稿たいへん…
スマホ投稿たいへん…
*****
ちびたちのほとんどは前いた場所の記憶を持たなかった。
気がついたらその場所にいた、そして目の前にいた人が優しそうだったのでそこに住むことにした。そういう感じなので名前も覚えていないし、自分がどうしてここにいるのかなんて当然わかるわけがない。
そんな中、佐吉だけは前にいた場所のおぼろげな記憶を持っていた。
そこがどんな場所か、どんな存在が住んでいたのか。霞がかった記憶の中で、それを思い出すことは困難だったが。自分たちが何故ここに来たのかだけは、はっきりと覚えていた。
いいことをして徳を積みなさい。
たくさん徳を積んだら、素敵なご褒美を与えましょう。
それを覚えていたので、最初佐吉は人の役に立つことに最初は躍起になっていた。
いいことをすると尻尾が増える、そして佐吉はその尻尾が9本になったらご褒美がもらえること。前にいた場所でもずっと一緒だった覚えがある竹千代は、この世界が楽しくて仕方がないらしい。目の前にある物が気になれば触り、美味しそうだったら食べる。それがこの世界ではいけないことだというのはわかってきたらしいのだが、どうしても持ち前の好奇心が先走ってしまうらしい。
毎日誰かに怒られては、一瞬だけ反省する。
次の瞬間にはまた新しい珍しい物や美味しい物を探して走り回っているのだから、竹千代恐るべしと言ったところか。そんな竹千代を見ていたら佐吉も頑張って尻尾を増やすのがばからしくなった……という訳ではないが、尻尾を増やせる機会を探すのはやめることにした。
この世界はとても楽しい、そして優しい人がいっぱいいる。
一番大好きなのは竹千代だが、佐吉を拾ってくれた三成には大きな恩がある。佐吉たちに美味しい食べ物を与えてくれ、毎日お風呂に入れてくれ。おまけに尻尾の毛まで梳かしてくれるのだ。
口調は厳しいのだが、三成は優しいから大好き。
そして佐吉たちが暮らすことになった城という大きな場所には、色々な人たちがいた。尻尾の毛を梳かさせれば天下一の半兵衞や、大きな体で歩くので怖い秀吉。そして佐吉のことだけは可愛がってくれる包帯でぐるぐるになっている大谷や、よくわからないけど可哀想な官兵衛。
そして三成が大好きな家康も時々遊びに来る。
家康はいつもは大きな山のような鉄の塊男に乗ってこの城という場所に来るのだが。
「ロボロボ!」
今日は、いつもより小さな鉄の塊に乗ってやってきた。
おまけにどう見ても、声を聞いても、その鉄の塊は女の子だったのだ。
「えっと……家康君、この子誰?」
「忠勝の娘の忠子だ!」
「………………………」
「………………………」
半兵衞の部屋は佐吉たちにとってとてもいい遊び場だった。
仕事で忙しくなければ半兵衞が尻尾の毛を整えてくれるし、ここでは少し暴れても三成に怒られない。半兵衞の本をどちらがより高く積み上げることができるか競争をしていた時はさすがに半兵衞に部屋から追い出されたが、官兵衛の部屋でならやってもいいと教えられたのでその遊びをする時は官兵衛の部屋ですることにした。
しかし今日はそんな遊びをする気にならなかったので、おやつを求めて半兵衞の部屋で遊んでおり。しばらく二人で半兵衞の膝の上でごろごろしていたら、三成が血相変えて家康を引きずってきたのだ。
おまけに家康の手には、女の子の鉄の塊。
『鉄塊斬滅』
「佐吉君、女の子に斬滅は使っちゃ駄目だよ。それにしても本多君の娘……っていうか、その子もちびだよね……?」
「先日の朝、忠勝を起こしに行ったら横に忠子が寝ていてな。そこで儂はピンと来たのだ、これは忠勝の娘だと!」
「貴様は馬鹿か!」
「でもこの子綺麗な子だね……いいなあ……家康君、この子うちにちょうだい」
佐吉よりも頭半分大きな体は、首から下が鉄の鎧に覆われている。
無骨極まりない姿だが、その顔の愛らしさは普段人の美醜を全く気にしない三成でさえため息をついて見とれる程のものだった。
ごつい鋼の板に覆われた肩に先が触れる程度に切りそろえられた金髪、そして大きく澄んだ瞳は大空にうっすらと雲を流したような色合い。自分に集まる周囲の視線が気になるのか、時折困ったように首をかしげると黄金の色の髪がさらりと流れる。
横に家康の身長程ありそうな長く凶悪な武器を持っていなければ、その仕草も愛らしく感じるのだが。愛らしいことこの上ない外見に、鋼の体と強大な武器。
もったいない、と家康以外のこの部屋にいた人物は皆そう思った。竹千代でさえも忠子を見てきゅうきゅうと言いながらにこにこしていたのだから、忠子のかわいらしさは本物なのだろう。
「ロボロボ~?」
「忠子は半兵衞と三成に会うのは始めてだったな、恥ずかしいか」
「家康、貴様このちび娘の言葉がわかるのか?」
「忠勝の娘だ、わからぬわけがないだろう! だが忠勝はどうも照れているらしくてな、自分の娘ではないと必死に言い続けているのだ。せっかくこんなに可愛らしい娘ができたというのに……」
「いくら本多君が戦国最強でも、男は子供を産めないからね……三成君、ちゃんと実地でおしえてあげて」
「お断りします」
きっぱりと言いきった三成は、半兵衞の膝の上を取り合っているかのように竹千代の上に乗っている佐吉を抱き上げる。
そして持ち上げたまま移動させ、地面に下ろした時。
「ロボ! ロボロボ」
『挨拶』
「ロボロボ~」
『忠子父行方不明』
目の前にいたのは大きな目を見開いて佐吉を見つめる忠子の姿だった。
頼れる人間がいない場所で忠子と二人きりになっていたら、佐吉は『斬滅』と書いて威嚇していたのだろうが。今周りにいるのは頼れる人間ばかりだ、おまけに竹千代もいる。
竹千代がいればどんなことも怖くない。
普段は食い意地の張っているのんき者だが、自分を守ってくれるのは竹千代だ。
それがわかっているので、佐吉は積極的に忠子と交流を行っていた。
基本佐吉は声を発することができない。きっと頑張れば声を出すことができる気もするのだがそんな努力をするよりは遊んでいた方が楽しいし、何より書く方が楽だ。
それでも佐吉の声なき声をちびたちの一部は理解してくれるので、誰かと意思疎通を図ろうとする時に困ったことはなかった。そしてこの忠子というちびも、佐吉の声なき声を理解してくれるちびだったらしい。
奥州に行った際は、わかってくれなかったので最初は大変だったのだ。
「本多君今いないの?」
「北條に使いに行ってもらっている。忠子が一緒に行きたがるのでな、危ないのでいつも置いていくのだ」
「全然大丈夫そうだけど……」
「忠子は年端もいかぬ娘だ! 人さらいに連れて行かれたらどうする!」
それはない。
きゅ~きゅ~言いながら半兵衞の膝の感触を楽しんでいる竹千代以外が、手を振って否定の意志を伝える。それを忠子に対するいじめだと感じたのか、家康は動くだけで金属特有の硬質音を立てる忠子を引き寄せ。
人形を抱くかのようにぎゅうっと抱きしめた。
「三成たちには忠子の愛らしさがわからぬのか!?」
「いくら可愛くても、そんな大きな獲物持ってたらねえ……」
「重そうだな」
「た、確かに忠子は重いな……米俵よりも重いことがある」
「人さらいも連れて行くのが大変だろう。忠子をさらうよりもっと楽な相手がたくさんいる」
「そういうことか!」
懇切丁寧な三成の説明で、ようやく家康は納得したらしい。
がしゃんがしゃんと全身が鳴り続けている忠子を膝の上から下ろし、佐吉たちに声を掛けてきた。
「佐吉、竹千代。忠子は女の子なのでな、仲良くしつつ大事にしてやってくれ」
『承知』
「きゅっ!」
「ロボ~」
よろしくお願いします、と優美に忠子は頭を下げる。
忠子の父は教育がしっかりしているなと思いながら、佐吉はちらりとまだ半兵衞の膝の上で遊んでいる竹千代を見た。竹千代の教育がしっかりしていないのは誰のせいなのだろうか。
三成は礼儀にうるさい。
半兵衞はもっとうるさい。
では竹千代の行儀が悪い原因はきっと。
『家康礼儀作法残念』
「わ、儂もそこまで不作法というわけではないのだぞ……佐吉」
『不作法算滅』
指を突きつけ、懇々と説教してやりたい気持ちを紙に込めていると、いつの間にか横に来ていた忠子に肩をつつかれた。
「ロボロボ~ ロボロボ」
どうやら忠子は父親を探しに行きたいようだ。
大きくて強くて優しいお父さんと一緒にいたいのに、いつも置いて行かれる。だから今日こそお父さんを見つけたいと言ってくる忠子に、佐吉が言ってやれることは一つだった。
『北條家東』
「ロボ! ロボロボッ!」
いつも北條家からやってくる忍びは、東の方角へと帰って行く。
だからきっと北條家は東にあるのだ。東に向かっていけば、いつかは忠子の父親と合流できるはず。それを懇切丁重に教えると、忠子は飛び上がる勢いで大喜びした。
いや、実際に飛び上がった。
足の周辺から焼けるような空気を吹き上げ。
全身の鎧をぎゅいんぎゅいんと鳴らすと。
そのまま襖を突き破り、轟音と共に壁も突き破って。
佐吉たちには見えないが、きっと東の方へ飛んでいったのだろう。
「…………家康君、壁と障子弁償してもらうから」
「す、すまない」
「半兵衞様、職人の手配は行っておきますので」
「すまないね三成君」
いえ、と短く言い、三成は家康を睨み付ける。
教えてやった佐吉も、まさか忠子が壁を突き破って飛んでいくとは思わなかった。素直すぎるいい子なのだろうが、佐吉の住処を壊されるのは困る。
今度は外に出てから教えることにしよう。
そう結論づけた佐吉は、竹千代が独り占めしている半兵衞の膝の上に戻ろうとしたが。
『竹千代半兵衞膝佐吉三成膝』
もっといい膝が側に来てくれているのだ。
三成の膝の方が広くて暖かくて、そしておまけがたくさんついてくる。
「佐吉……貴様はまたか……」
『三成膝良好』
「きゅ! きゅきゅきゅっ!」
竹千代も三成の膝が空いていたことに今更ながらに気がついたのだろう。
半兵衞の膝の上で体を回転させながら抗議しているが、今は三成の膝の方が大事。
尻尾の毛を梳かすのは半兵衞が一番上手。
佐吉たちのぽんぽこなお腹を撫でるのは、西に住んでいる毛利の技術が凄まじい。
だが佐吉は三成の側が一番好きだった。
佐吉の声なき声を理解してくれる人間は他にもいるが、同じ感情を共有してくれるのは三成だけ。一見優しく見えない三成だが、大事な存在のためにはどんなことでもしてくれるのだ。
だから三成の願いを叶えてやりたいし、なんでもしてやりたい。
そう思うと、心の中がほんわりと暖かくなるので、きっとそれは間違っていないのだろう。三成の側にいて、三成の願いを叶えて、そして尻尾を増やす。
そうしていれば、きっと素晴らしい物がもらえるのだ。
いつか来るその日を信じて、佐吉は自由気ままにこの城での生活を楽しんでいる。たまに遊びに来たりする他の国のちびと遊ぶのは楽しいし、竹千代と一緒なので退屈はしない。
だが、たまには他の場所に行ってみたくなる。
以前行った奥州というところには佐吉の大好きな野菜の妖怪がいるし、新しくつるつるですべすべな角を持った友達もできた。余所の国に行けば、新しい友達がいる。
だからいつか、別なところに行ってみたい。
その佐吉の願いが叶うまであと数日。
新しい友達ができるどころか、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのだが。
予知能力など持っていない佐吉に、それがわかるわけなど当然無かった。
気がついたらその場所にいた、そして目の前にいた人が優しそうだったのでそこに住むことにした。そういう感じなので名前も覚えていないし、自分がどうしてここにいるのかなんて当然わかるわけがない。
そんな中、佐吉だけは前にいた場所のおぼろげな記憶を持っていた。
そこがどんな場所か、どんな存在が住んでいたのか。霞がかった記憶の中で、それを思い出すことは困難だったが。自分たちが何故ここに来たのかだけは、はっきりと覚えていた。
いいことをして徳を積みなさい。
たくさん徳を積んだら、素敵なご褒美を与えましょう。
それを覚えていたので、最初佐吉は人の役に立つことに最初は躍起になっていた。
いいことをすると尻尾が増える、そして佐吉はその尻尾が9本になったらご褒美がもらえること。前にいた場所でもずっと一緒だった覚えがある竹千代は、この世界が楽しくて仕方がないらしい。目の前にある物が気になれば触り、美味しそうだったら食べる。それがこの世界ではいけないことだというのはわかってきたらしいのだが、どうしても持ち前の好奇心が先走ってしまうらしい。
毎日誰かに怒られては、一瞬だけ反省する。
次の瞬間にはまた新しい珍しい物や美味しい物を探して走り回っているのだから、竹千代恐るべしと言ったところか。そんな竹千代を見ていたら佐吉も頑張って尻尾を増やすのがばからしくなった……という訳ではないが、尻尾を増やせる機会を探すのはやめることにした。
この世界はとても楽しい、そして優しい人がいっぱいいる。
一番大好きなのは竹千代だが、佐吉を拾ってくれた三成には大きな恩がある。佐吉たちに美味しい食べ物を与えてくれ、毎日お風呂に入れてくれ。おまけに尻尾の毛まで梳かしてくれるのだ。
口調は厳しいのだが、三成は優しいから大好き。
そして佐吉たちが暮らすことになった城という大きな場所には、色々な人たちがいた。尻尾の毛を梳かさせれば天下一の半兵衞や、大きな体で歩くので怖い秀吉。そして佐吉のことだけは可愛がってくれる包帯でぐるぐるになっている大谷や、よくわからないけど可哀想な官兵衛。
そして三成が大好きな家康も時々遊びに来る。
家康はいつもは大きな山のような鉄の塊男に乗ってこの城という場所に来るのだが。
「ロボロボ!」
今日は、いつもより小さな鉄の塊に乗ってやってきた。
おまけにどう見ても、声を聞いても、その鉄の塊は女の子だったのだ。
「えっと……家康君、この子誰?」
「忠勝の娘の忠子だ!」
「………………………」
「………………………」
半兵衞の部屋は佐吉たちにとってとてもいい遊び場だった。
仕事で忙しくなければ半兵衞が尻尾の毛を整えてくれるし、ここでは少し暴れても三成に怒られない。半兵衞の本をどちらがより高く積み上げることができるか競争をしていた時はさすがに半兵衞に部屋から追い出されたが、官兵衛の部屋でならやってもいいと教えられたのでその遊びをする時は官兵衛の部屋ですることにした。
しかし今日はそんな遊びをする気にならなかったので、おやつを求めて半兵衞の部屋で遊んでおり。しばらく二人で半兵衞の膝の上でごろごろしていたら、三成が血相変えて家康を引きずってきたのだ。
おまけに家康の手には、女の子の鉄の塊。
『鉄塊斬滅』
「佐吉君、女の子に斬滅は使っちゃ駄目だよ。それにしても本多君の娘……っていうか、その子もちびだよね……?」
「先日の朝、忠勝を起こしに行ったら横に忠子が寝ていてな。そこで儂はピンと来たのだ、これは忠勝の娘だと!」
「貴様は馬鹿か!」
「でもこの子綺麗な子だね……いいなあ……家康君、この子うちにちょうだい」
佐吉よりも頭半分大きな体は、首から下が鉄の鎧に覆われている。
無骨極まりない姿だが、その顔の愛らしさは普段人の美醜を全く気にしない三成でさえため息をついて見とれる程のものだった。
ごつい鋼の板に覆われた肩に先が触れる程度に切りそろえられた金髪、そして大きく澄んだ瞳は大空にうっすらと雲を流したような色合い。自分に集まる周囲の視線が気になるのか、時折困ったように首をかしげると黄金の色の髪がさらりと流れる。
横に家康の身長程ありそうな長く凶悪な武器を持っていなければ、その仕草も愛らしく感じるのだが。愛らしいことこの上ない外見に、鋼の体と強大な武器。
もったいない、と家康以外のこの部屋にいた人物は皆そう思った。竹千代でさえも忠子を見てきゅうきゅうと言いながらにこにこしていたのだから、忠子のかわいらしさは本物なのだろう。
「ロボロボ~?」
「忠子は半兵衞と三成に会うのは始めてだったな、恥ずかしいか」
「家康、貴様このちび娘の言葉がわかるのか?」
「忠勝の娘だ、わからぬわけがないだろう! だが忠勝はどうも照れているらしくてな、自分の娘ではないと必死に言い続けているのだ。せっかくこんなに可愛らしい娘ができたというのに……」
「いくら本多君が戦国最強でも、男は子供を産めないからね……三成君、ちゃんと実地でおしえてあげて」
「お断りします」
きっぱりと言いきった三成は、半兵衞の膝の上を取り合っているかのように竹千代の上に乗っている佐吉を抱き上げる。
そして持ち上げたまま移動させ、地面に下ろした時。
「ロボ! ロボロボ」
『挨拶』
「ロボロボ~」
『忠子父行方不明』
目の前にいたのは大きな目を見開いて佐吉を見つめる忠子の姿だった。
頼れる人間がいない場所で忠子と二人きりになっていたら、佐吉は『斬滅』と書いて威嚇していたのだろうが。今周りにいるのは頼れる人間ばかりだ、おまけに竹千代もいる。
竹千代がいればどんなことも怖くない。
普段は食い意地の張っているのんき者だが、自分を守ってくれるのは竹千代だ。
それがわかっているので、佐吉は積極的に忠子と交流を行っていた。
基本佐吉は声を発することができない。きっと頑張れば声を出すことができる気もするのだがそんな努力をするよりは遊んでいた方が楽しいし、何より書く方が楽だ。
それでも佐吉の声なき声をちびたちの一部は理解してくれるので、誰かと意思疎通を図ろうとする時に困ったことはなかった。そしてこの忠子というちびも、佐吉の声なき声を理解してくれるちびだったらしい。
奥州に行った際は、わかってくれなかったので最初は大変だったのだ。
「本多君今いないの?」
「北條に使いに行ってもらっている。忠子が一緒に行きたがるのでな、危ないのでいつも置いていくのだ」
「全然大丈夫そうだけど……」
「忠子は年端もいかぬ娘だ! 人さらいに連れて行かれたらどうする!」
それはない。
きゅ~きゅ~言いながら半兵衞の膝の感触を楽しんでいる竹千代以外が、手を振って否定の意志を伝える。それを忠子に対するいじめだと感じたのか、家康は動くだけで金属特有の硬質音を立てる忠子を引き寄せ。
人形を抱くかのようにぎゅうっと抱きしめた。
「三成たちには忠子の愛らしさがわからぬのか!?」
「いくら可愛くても、そんな大きな獲物持ってたらねえ……」
「重そうだな」
「た、確かに忠子は重いな……米俵よりも重いことがある」
「人さらいも連れて行くのが大変だろう。忠子をさらうよりもっと楽な相手がたくさんいる」
「そういうことか!」
懇切丁寧な三成の説明で、ようやく家康は納得したらしい。
がしゃんがしゃんと全身が鳴り続けている忠子を膝の上から下ろし、佐吉たちに声を掛けてきた。
「佐吉、竹千代。忠子は女の子なのでな、仲良くしつつ大事にしてやってくれ」
『承知』
「きゅっ!」
「ロボ~」
よろしくお願いします、と優美に忠子は頭を下げる。
忠子の父は教育がしっかりしているなと思いながら、佐吉はちらりとまだ半兵衞の膝の上で遊んでいる竹千代を見た。竹千代の教育がしっかりしていないのは誰のせいなのだろうか。
三成は礼儀にうるさい。
半兵衞はもっとうるさい。
では竹千代の行儀が悪い原因はきっと。
『家康礼儀作法残念』
「わ、儂もそこまで不作法というわけではないのだぞ……佐吉」
『不作法算滅』
指を突きつけ、懇々と説教してやりたい気持ちを紙に込めていると、いつの間にか横に来ていた忠子に肩をつつかれた。
「ロボロボ~ ロボロボ」
どうやら忠子は父親を探しに行きたいようだ。
大きくて強くて優しいお父さんと一緒にいたいのに、いつも置いて行かれる。だから今日こそお父さんを見つけたいと言ってくる忠子に、佐吉が言ってやれることは一つだった。
『北條家東』
「ロボ! ロボロボッ!」
いつも北條家からやってくる忍びは、東の方角へと帰って行く。
だからきっと北條家は東にあるのだ。東に向かっていけば、いつかは忠子の父親と合流できるはず。それを懇切丁重に教えると、忠子は飛び上がる勢いで大喜びした。
いや、実際に飛び上がった。
足の周辺から焼けるような空気を吹き上げ。
全身の鎧をぎゅいんぎゅいんと鳴らすと。
そのまま襖を突き破り、轟音と共に壁も突き破って。
佐吉たちには見えないが、きっと東の方へ飛んでいったのだろう。
「…………家康君、壁と障子弁償してもらうから」
「す、すまない」
「半兵衞様、職人の手配は行っておきますので」
「すまないね三成君」
いえ、と短く言い、三成は家康を睨み付ける。
教えてやった佐吉も、まさか忠子が壁を突き破って飛んでいくとは思わなかった。素直すぎるいい子なのだろうが、佐吉の住処を壊されるのは困る。
今度は外に出てから教えることにしよう。
そう結論づけた佐吉は、竹千代が独り占めしている半兵衞の膝の上に戻ろうとしたが。
『竹千代半兵衞膝佐吉三成膝』
もっといい膝が側に来てくれているのだ。
三成の膝の方が広くて暖かくて、そしておまけがたくさんついてくる。
「佐吉……貴様はまたか……」
『三成膝良好』
「きゅ! きゅきゅきゅっ!」
竹千代も三成の膝が空いていたことに今更ながらに気がついたのだろう。
半兵衞の膝の上で体を回転させながら抗議しているが、今は三成の膝の方が大事。
尻尾の毛を梳かすのは半兵衞が一番上手。
佐吉たちのぽんぽこなお腹を撫でるのは、西に住んでいる毛利の技術が凄まじい。
だが佐吉は三成の側が一番好きだった。
佐吉の声なき声を理解してくれる人間は他にもいるが、同じ感情を共有してくれるのは三成だけ。一見優しく見えない三成だが、大事な存在のためにはどんなことでもしてくれるのだ。
だから三成の願いを叶えてやりたいし、なんでもしてやりたい。
そう思うと、心の中がほんわりと暖かくなるので、きっとそれは間違っていないのだろう。三成の側にいて、三成の願いを叶えて、そして尻尾を増やす。
そうしていれば、きっと素晴らしい物がもらえるのだ。
いつか来るその日を信じて、佐吉は自由気ままにこの城での生活を楽しんでいる。たまに遊びに来たりする他の国のちびと遊ぶのは楽しいし、竹千代と一緒なので退屈はしない。
だが、たまには他の場所に行ってみたくなる。
以前行った奥州というところには佐吉の大好きな野菜の妖怪がいるし、新しくつるつるですべすべな角を持った友達もできた。余所の国に行けば、新しい友達がいる。
だからいつか、別なところに行ってみたい。
その佐吉の願いが叶うまであと数日。
新しい友達ができるどころか、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのだが。
予知能力など持っていない佐吉に、それがわかるわけなど当然無かった。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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