がんかたうるふ たったひとつのこと・下(瀬戸内・現パロ) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

続き。これで終わります。毛利さんがピュア?アニキがフリーダムな現パロ。腐要素はありません。
ネタ出し協力してくださったうずみさんともずくずさん、ありがとうございました。


書いた人:みっし





 *****



「珍しい顔を、しておるのう」
「…何が言いたい。大谷」

 その日、午後の病室にて。
 元就は己の様子を見に来たと、差し入れを持ってきた大谷と顔を会わせていた。
「主を幼少の頃から見知っておるが、そんな顔をすることがあるとはなぁ…」
「…気のせいだろう」
 数学のテキストを開いていた元就はげんなりした様子で大谷に言葉を返す。この、全てを見透かしたかのような大谷の言動は苦手だった。そう、昔から。
「つまらんつまらんと言う顔しか見たことは無かった故に、そのように宝物を見つけたような顔は新鮮と思ったのよ」
「………」
 大谷は、恐らく楽しんでいるのだろう。
 元就のその反応を。
「子供らしくない子供よのうと思っていたが、そのような顔もできるのだなぁ…安心した」
 楽しげに細められたその目から感じられる感情は、まさに愉悦と書いてあった。
「階段を落ちたときは主の不幸も相当だのうと思ったが、何やら良いものも見つけたようだ。我はうれしい」
「…相変わらず、人を食ったように言葉しか言わぬ男よ」
 そう元就が呆れたように呟くと、大谷は目を細めて笑った。

 やはり、この男は苦手だ。
 元就は改めて、そう思った。



 それから数日は割合穏やかな日々だった。午前と午後のいずれかで元親と一緒に本を読み、残りの時間は勉強する。ある意味サイクルが固まったとも言える平穏な時間だった。
 ただ、長くは続かなかったのだが。

「やぁ、元気にしていたかね?少年」
「あ、松永のおっさん。どうしたの?」
 きっかけは元親の病室で一緒に本を読んでいたときに壮年の、明らかに堅気とは思えぬ男が元親を見舞ったことだった。

 元就よりも前に入院していた元親だったが、彼を見舞う人間は少ない。というのも彼の家庭環境が大きく影響していた。
 元々この夏に、弟が生まれる予定なのだという。元就には何やらわからないが店を営んでいる元親の両親は母方の祖父母の手伝いもあり、出産ギリギリまで働くことを決断。その間元親と年の離れた弟は父方の祖父母の元に預けられることになったのだが、そこで更に問題が発生した。
「じーちゃんがぎっくり腰になっちゃって、それの看病はばーちゃん一人で見なきゃ行けないから、それに弟もまだ小さいし、俺の所には来られないよ。まぁすぐに退院できるからいいけどさ」

 でも、時間が空いたときには来てくれるんだよ、そういって元親は笑った。

 だがどう見ても、今自分の目の前に立つ男は元親の近親者ではないように思えた。まず、雰囲気が違う。そして何より、顔が似ていない。

 お前は誰だ。

 口に出さずとも、顔に表れていたのだろうか。元親に松永とよばれた男は、ゆるりと笑んでこういった。
「少年、お友達かね?」
「うん。病院で会った。元就にーちゃんだよ。あのねー元就にーちゃん。この人は、松永って言って、うちの近所に住んでる人でしごとはえっちな絵書いてる人」
「…は?」
 どういう肩書きだ、それは。
 困惑を貼り付けたような元就の表情を見抜いたのか、松永は苦笑しながら言う。
「…少年。それだけ聞いても私がただの変態にしか聞こえないと思うのだが…」
「えー?だっていっつもなんか裸の女の人ばっかり書いてるじゃん」
「そりゃあ仕事だからねぇ。官能小説の挿絵画家なんてやってると、どの辺が清純でどの辺が不純かわからなくなってくるし。まぁ、少年は二次元と三次元の違いがわかるから部屋に入れるがね」
「現実の女のひとと松永が絵に描く女の人はちがうだろー。おっぱいとか」
「私はそれでも現実に似せている方だよ?所謂萌え絵は描けないからねぇ。写真よりも写真らしく書くのがこの仕事のポイントだし」

 元就は、正直に言って目が点になりそうな思いで目の前の光景を見つめていた。
 どう頑張って聞いても成人男性と小学生男児がする会話ではない。
 なんだこれは。

 固まる元就に気がついたのか、元親は改めて声をかける。
「えーと…俺のとーさんとかーさん、仕事で忙しくて、その頃はじーちゃんともばーちゃんとも一緒に暮らしてなくて、俺は松永の家に預けられることが多かったんだ」
 元親の言葉に松永は頷く。
「子供が過ごすには不向きな家だとおもったのだがねぇ…それでも少年はおとなしいほうだったので、こちらも仕事をさせてもらったのだけれど」
「それは色々な意味で大丈夫なのか!?」

 官能小説の挿絵画家も立派な職業の一つであると言うことはわかる。だが、何故よりによってそこに子供を預けなければならないというのだろう。
「色々あったのだよ…色々」
「そー、色々。それに松永はえっちな絵書くけど、ちゃんと近所の仕事はやるし、昔から住んでるし、信頼されてるからなー」
「いいのか!?本当にいいのか!?」
 子供の情緒面を考えるとどうなのかと思ってしまい、元就は荒ぶるが彼らはそれでも構わないらしい。
 
 そこでふと松永が、お土産だよと白い紙箱を元親に渡す。
「おお!プリン!!」
「出版社まで行ったついででね。ご両親に頼まれたんだよ。見舞いに行けなくてすまない、とね」
 プリンを持って小躍りする元親を見て、松永はうっすらと笑う。悪人面ではあるが、そうやって笑うと少しはましに見えるような、元就はそんな気がした。

「少年は、夏休みの宿題はやったのかね?」
 プリンを頬張る元親と、そのお相伴に預かる元就に対して松永が問いかける。
「うん。少しは。作文は書いたよ。『しょうらいのゆめ』ってやつ」
「ほほお…何を書いたんだね?」
「えーとねー。まとめると綺麗な女の子の絵をいっぱい描く人になりたいですってかいた!!」
「…ゴホゴホゴホ…!!」
 元就は、思わずむせた。
「あれ?元就にーちゃん、大丈夫?」
「君、若いのに色々大丈夫かい?」
「…我としては、貴様らこそ大丈夫かと問いたいぞ…」
 どこの世界に将来の夢は女の子の絵をいっぱい描きたいですという小学生男児がいる!?いやここにいるが、普通は言わないだろう!?
「まぁ、君が私の家に出入りしている事は知らない人間の方が少ないだろうしね…ああ、松永さんの所に出入りしているなら仕方が無いな、という認識だろう…」
「だってロボットも楽しいけど、女の子をかくの、たのしいじゃん!!」
 どうやら元親は、本気で将来は女の子の絵をいっぱい描く人になりたいらしい。その目は本気だ。そして、元親ならば、それを本当にやってしまいそうな、そんな気がした。

「…君は?」
「…何?」
 気がつけば松永が、元就を見下ろしていた。その視線は元親に対するどこか柔らかいものとは異なる。

「そういう君は一体、何になりたいんだい?」

 そう放たれた問いに、元就は答えを返すことが出来なかった。



 子供の頃から大体のことは何でも出来た。勉強も、運動も、なんでも。だから、親からするととても手のかからない子供だっただろう。褒められた記憶はあるが、喧嘩をした記憶も無い。関わりの薄い家族だった。今思うと、であるが。

 中学生という年齢になって、日々勉強し、元就は気がついた。

 自分が、空っぽな人間である事に。

 勉強は出来る。だけれどもそれは、好きだからやることでは無い。何を差し置いてもこれをやりたいと思うことが、毛利元就には何も無かった。

 だから、松永という男に問いかけられたときは何も答えを返せなかった。

 空っぽである元就には、なりたいものなどなにも描けなかったから。

 学生である今はまだ良い。だがこれからもただ勉強を続けてもきっとやりたいことは見つからない。その時こそ元就はからっぽである事実に打ちのめされるのだろう。
 何でも出来てしまうからこそ、つまらない。


 それが、毛利元就という人間が抱える致命的な欠陥だった。


「お前は何で、将来の夢を志したんだ」

 もうすぐ双方の退院日だと言う日に、元就は元親に対して問いかけた。
 場所は病棟内のサロン。元親は夏休みのドリルを持って、元就は夏休みの課題を前にそれぞれ格闘していた所だった。

「え?女の子の絵をいっぱい描きたいってやつ?」
「…うむ」
 元親は、えーとね、としばし考え込み、とつとつと語りだす。

「絵を描くのは、昔から好きだったんだ」
 今よりも幼かった元親は、現在の明るい姿からは想像出来ないぐらい内向的で、人見知しりな子供であったらしい。
 両親が多忙で、共に過ごす時間も少なかった元親にとって、画用紙とクレヨンはいつでも遊んでくれる数少ない友達だった。
 読んだ本のこと。今日あったこと。様々な事を絵に描いていた。成長し、外に出ることが多くなっても絵を描くことは元親にとって好きな事だったのだ。
 
 そしてある日、学校で宿題が出た。それは、身近な人の職業を調べてくるように、とのことだった。
 元親が選んだのは、いつもえっちな絵ばかり描いている松永だった。
 絵を描くこと、それだけで食べていくのは大変だ。だけど、好きだから、やっていこうと思った。自分で期限を作ってそれまでは頑張ろうと思ったのだと、松永は言った。
 その言葉が、ごく自然に元親の心に落ちた。

 好きな事を、やってみたい。

 そして元親の好きな事は、何よりも絵を描くこと。そして女の子の絵を描くこと。

 漫画家でも画家でも無く、可愛い女の子の絵を描く人になりたいという元親の夢はその瞬間に思い描かれたモノだった。

 当然、家族会議にもかけられた、もめた。えらいことになった。跡取りなのにどうするんだということにもなった。
 だがそれは年の離れた弟の「わたしがもとちかのかわりにあとをつぐのだ!」という言葉でとりあえずは事なきを得た。ちなみに弟がそう言った理由としては「もとちかはほかのなによりもおんなのこのえをかいているときがいきいきしているからな!そのほうがたのしいだろう!」ということだった。

 学校でも問題にはなったらしい。だけど、元親の思い込んだら一直線の馬鹿ぶりは皆が知っていたので、何も止められなかったのだという。一歩間違えたらいじめの対象にもなりかねない将来の夢ではあるが、何というか元親の勢いは誰にも何も止められないと判断されたらしい。

 結果、長曾我部元親は齢十二才にして、ややマニアックな職業を将来の夢に据えたのだという。



「毛利のにーちゃんは?好きな事、ないの?」
 すきなこと。
 嫌いなこと。
 どちらも、ない。

「…なにも、ない」
 声のトーンを落とした元就の声に気がついたのか元親は小首を傾げて尋ねる。
「何も無いの?…じゃあケーキとか、料理とか…あとはつぼとか!!」
 何でツボなのだと思ったが、そこでふと思い出した。
 たった一つ、今までにないぐらい心を奪われたもののことを。美しい輝きを放つ、それの名前は

「…刀」
「え?」
「刀なら、好きかもしれん…」
 一歩間違えたら危険人物かもしれないその発言を元親はきょとんとした顔で聞いていたが、だがやがて破顔して言った。

「じゃあさあ、元就にーちゃんは、刀を作る人になればいいんだよ!!好きなものを作るんだったら大変でも我慢できるよ!」
 元親は、まるで我が事であるかのようにはしゃいで喜んで見せる。
「何かを作る人、か…」
 何かが出来ると思ったことは無かった。
 だけど、空っぽの自分でも何か出来ることがあるのならば、何かを為しえる事が出来るのなら、やってみてもいいかもしれないと思った。
 
 自分が、たった一枚の写真に写った刀身に魅せられたように、誰かを魅了するものが作れたら、と。


 それは、灰色の世界が僅かに色づいた時



 空っぽの中身が、少しずつ満たされ始めた瞬間でもあった。



「…ゲームの取材…?なんだそのふざけた取材内容。メインの原画家がどうしても取材を熱望している、だと……断れないのだろう。そして我しかいないのであれば、仕方があるまい」
 ただし貸し十だがな。

 それだけ言って元就は電話を切った。
 ここ最近、妙な取材が増えたような気がしてならない。『若き刀匠の素顔』など雑誌で特集を組まれても全くもって嬉しくない。客寄せパンダにするのもいい加減にしてほしい。
 自分の刀は、先人のそれには遠く及ばない。



 数十年前、己のやるべき事に悩んでいた少年は、あの夏の出来事をきっかけに、刀匠というマニアック極まりない職業を選んだ。

 世の中、素直に馬鹿になった方が良いこともあるのだと、元就はあの日に知ったのだ。成績優秀な息子の斜め上の進路希望に両親からは良い顔をされなかったものの、元就の意思の堅さを重んじ、最終的には許しをくれた。

「そういえば…あの時の子供は、どうしているのだろうな」
 女の子の絵を描く人になると宣言していた小学生は今何をしているのだろうか。馬鹿みたいに勢いがあったあの少年であれば、夢は叶えたのかも知れない。
 自分より三才下だったはずだったから結構な年にはなっているはずだった。

 別れは、突然訪れた。
 一日だけ早く入院していた元親は、毛利が検査を受けていた僅かな間に、退院の準備を終えて、退院してしまった。なんでも母親の出産絡みで急がなくてはならなくなったようだという話は聞いた。
 元就に、ありがとうと言ってくれという伝言だけの残してあの少年はいなくなった。

 元就が退院する、一日前のことだった。



 一週間程度の期間ではあったが、あの時間が無ければ自分はきっと刀匠という道を選ばなかったであろう。
 自分の好きなモノを愚直なまでに追いかけるあの生き方も知らなかっただろう。
 
 だから、こう思うのは恥ずかしいけれど、あの少年と松永と名乗った男には感謝しているのだ。もう、伝える事は出来ないだろうけれども。



 生きていく上で必要な、たった一つの事を、教えてくれたことを。



 後に取材に訪れた原画家が、成長したあの少年だったりするのだが、それはまた、別な話である。



 





○うずみさんにネタ出し協力していただいたのは二人の将来の職業です。正直詰んだと思いましたがもづくずさんのアイディアをいただき、なんとかなりました。ありがとうございました。
PR
[597] [596] [595] [594] [593] [592] [591] [589] [587] [586] [585]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

ついったのフォローは下 のアイコンから。




ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カウンター
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone