がんかたうるふ 「祈りの手」 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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クリスマスのジュリイヴァこばなしです。
リアルタイム更新中に書きました。






 *****




「祈りの手」







すれ違う瞬間だけわずかに触れあう。


だけどたまには互いに立ち止まり、相手を確認するのもいいだろう。






首の周りを締め付ける感触に息が詰まりそうになる。
壁を軽く触っただけで汚れてしまいそうな鮮やかな白い手袋も、体型に合わせて作られた礼装も、イヴァンを銅像か何かに改造するために用意されたのではないかと思うほどに体を締め付けてくる。
テーブルに飾られた炎よりも輝く燭台と、天井から降り注ぐシャンデリアの光。
海辺の倉庫よりも大きな豪奢すぎる空間の中、あちこちで歓談している似たような格好の人間達と距離を置き、手に持ったグラスの中身をちびちびと口の中に招き入れながら、イヴァンは辺りを注意深く見回していた。
誰が誰と繋がりがあるのか、今後組織にとって必要なのはどの人間なのか。
幹部とはいえ、もうこれ以上上がれないことがわかっているイヴァンにわざわざ媚を売りに来る人間は少ない。その少ない媚を売ってくる人間が何を目的にしてイヴァンに近づいてきたのか、そして何を引き出そうとしているのかはもう理解した。こちらにとって有利な条件を持ってくる人間にはできるだけ協力するし、ただイヴァンという人間を見極めるために近づいてきたのならば、自分という人間を余すところなく見せてやる。
ここではイヴァンの言動イコール組織の評価に繋がる。
普段は荒い口調を隠そうともしないイヴァンであったが、こういう場所ではさすがに大人しくするように心がけている。ルキーノのようにいるだけで人の目線を集めるわけでもなし、ベルナルドのように膨大な人脈を使いこなしているわけでもないイヴァンにできることは、どのようなパーティでもCR5は目を光らせている、ということをアピールすることだけだった。
つまりは、参加しているだけでいいと。
思わず声をかけたくなるような髪を結い上げてうなじを強調する妙齢の美女や、テーブルに並ぶ湯気を上げる食事にもほとんど手をつけず、壁の花になってただ状況を見続ける。ベルナルドは普通に楽しんでこいと言ってくれるが、おそらく他の幹部連中も街全体が華やぐ聖夜だというのに同じような状況になっているのだろう。
救貧院や孤児院への慰問、街の重職との会食、ミサへも参加しなければならない。
自分以上にスケジュールを詰め込まれている人間がいることを考えたら、素直に楽しめるわけがない。気づかれないように天井近くに設置された時計を見ればそろそろ日付が変わる時刻、今回の主催者に挨拶をしてこの場から退散してもいい頃合いだろう。
歩きづらいことこの上ない無駄にふかふかした絨毯を踏みしめ、人が作る壁に囲まれた禿げ頭の主催者に一声かけるために歩き出そうとした時。
「1時に待ってる」
背後から、シャンパンの泡よりも早く消えてしまいそうな淡く儚い声。
神経を集中し後ろにいたはずの人間を探るが、そこにあるのは人がかき回した形跡のある空気ともうすっかりお馴染みになってしまった甘さのかけらもない香水の香り。どうやって、何をしに現れたのかは知らないが、イヴァンとは別の目的でここに来ることになったのだろう。
耳も鼻も鋭い彼のことだ、小さく呟けば聞こえるはず。
「テメーこそ遅れんなよ」
グラスに口をつける振りをしながらそう口にすると、視界の端で自分より頭半分近く背の高い影が嬉しそうに揺れたのが見えた。同じくグラスで緩む口元を隠し、周囲を囲む美女たちを無視することで放置しながら、ふいとイヴァンの視線から逃げるかのように背を向けた。
照明の光で輝く黒の燕尾服に絡みつこうとする美女達から逃げるように足を速め、別な人の輪の中にするりと入り込んでいった。さすがというか慣れているというか、自分にとって利にならない人間への対応が容赦ない。
あれだけの美女達なのだから少しは相手をしてやればいいのに。
そう思いはするが、向こうがイヴァンに対してああいう態度を取っているというのに、わざわざ近寄っていって忠告してやるのも余計なお世話。最初の予定通りに、さっさとこの場から逃げ出すのが得策だろう。
段々遠ざかっていく刃を思わせる香りからイヴァンも背を背ける。
いつの間にか会場内には大きな人だかりが二つ出来ていた。
主催者を中心とする人の山と、イヴァンに背を向けて距離を取った彼を閉じ込めているかのような人々の集まりと。あの人混みの中に入るのはうんざりするが、声をかけずに勝手に帰ったりすれば、ベルナルドに頭痛がするほど怒られるのはわかっている。
無礼な行為と言われぬよう、金の力で飾り立てた淑女達の体に触れぬように丁寧に人をかき分け主催者に挨拶をする。イヴァンのことをCR5の下っ端幹部としか認識していない主催者はあっさりとイヴァンを解放してくれ、ついでに侮蔑に満ちた視線までおまけにつけてくれた。
誰のおかげでそこでふんぞり返っていられるんだ、その言葉を飲み込んで甘く優しい言葉で挨拶を締めくくる。人の真価を見抜けない人間は、人によって潰されていく。それを理解していない主催者とこれ以上話すことはない。
愛想笑いという名の仮面を顔に貼り付け、気を抜くと潰されそうになる人垣から脱出する。
まず最初にしたのは大きなため息にも近い安堵の吐息を吐くこと、そして首を動かさずに周囲を探ること。今の挨拶が周囲に失態として取られなかったかを確認するのと同時に、自分がいなくなることに気がついている人間がどれだけいるか。
いや、彼が自分がいなくなることに気がつくかどうかを知るために。
教育の行き届いたボーイが持ってきたコートを羽織り、車に関しては自分でやるからいいということを伝えようとして、
「…………車は…………今から言うナンバーに電話して、オレが迎えに来いと言っていたと伝えてくれ。それだけでわかる」
ちょっとした悪戯を思いついた。
聖夜にはプレゼントを贈らなければいけないはず。ならば甘くて口溶けが良いだけのプレゼントなどではなく、甘さの中にほろ苦さのある、心に残るプレゼントにしたやりたい。

別件で来ているとはいえ自分を無視したのだ、ちょっとしたお返しをしても罰は当たらないはず。

慌てて電話を死にいこうとするボーイを呼び止め、多額のチップと共にもう一つだけお願いをする。顔を輝かせてイヴァンの頼みを受け取ったボーイを見ながら、CR5の年若き幹部は悠然とその会場を立ち去っていった。









場所は言わなかった。

だが彼がここに来るのはわかっていたし、来ないのならばそれはそれでいいと思っている。


堅苦しい礼服を脱ぎいつもの格好に着替えると、部下が心づくしで用意してくれたいつもより少しだけ豪華な屋台の食事をテーブルに並べる。喜んで欲しいとか、一緒にクリスマスを過ごしたいなんて安っぽい理由はそこには存在しない。
ただ腹が減ったから食事を用意する、来ると言ったのだから一緒に食べる。

だから待つ、それだけだ。

狭い部屋の中でイヴァン以外で唯一音を立てる古めかしい置き時計に目をやれば、約束の時間はとっくに過ぎている。ついでにもうクリスマスが終わってしまっていることにも気がつくが、別にクリスマスを祝いたかったわけではないから、それは忘れることにする。
ここ数日の激務のせいで体は重いし気を抜けば眠気が瞼を下げようと襲来してくるが、今寝てしまえば間違いなく朝まで起きられない。せっかく食事を用意したのだ、空腹で眠るのではなく少し胃袋を満たしてから眠りたいものだ。
「おっせえな……」
無意識のうちに口から出てしまった声。
その声が予想より小さく弱々しかったことで、今の自分がどれだけ疲れているかを改めて自覚させられたイヴァンだったが。ここまで待ったのだ、更にもう少し待つくらい大して体の負担にならないだろう。
でもせめて何処かに座って待っていた方がいいだろうと、大きな音を立ててきしむベッドに腰を下ろすと、それよりも大きく聞き慣れたエンジン音が外から響いてきた。エンジンが止まるとドアを開閉する音が派手に響き、続いて荒い息と共にこちらへ向かって走ってくる。
そんなに慌てなくても誰も逃げも消えもしないというのに。
苦笑いと共に少しだけ厳しく見えるように表情を整えると、手に深紅の薔薇の花束と車のキーを持ったまるで童話の王子のように着飾った青年が重いドアを開けて入ってくるのを、無言で待ち続けた。
彼だけは、彼の足音だけは決して間違えないのがイヴァンの密かな自慢である。
「………遅くなった……………………………………それから…………これ」
荒い息を隠すことなく、手に持った花束とキーを差し出してくる形の良い指。
この指が常日頃より血に塗れ、あまたの命を狩っているなんて誰が想像できるだろうか。イヴァンの顔を見、怒られるのではないかと思っているのか、イヴァンの反応を待つ指はかすかに震えている。
爪の先まで整えられた指からまずはキーを、それから花束を無造作にベッドに放り投げると、イヴァンはきっちりと閉められた彼のタイに目をやりながら話しかけてやった。
「別にテメーなんて待っちゃいねえよ。俺が待ってたのは、こっちだ」
「車…………キーだけ届けられた時は……驚いた」
「オレは昨日から働きづくめなんだよ、運転なんて面倒なことはテメーにやらせようと思っただけだ」
「イヴァンの宝物だから、運転は……緊張した」
「そうか」
聖夜の夜を駆ける純白の戦乙女、さぞかし美しかっただろう。
そしてそれをおっかなびっくり運転してきた彼は、どれだけ真剣をすり減らしただろうか。イヴァンが何よりも大切にしているあの車、そのキーを預けたというのがどういう意味だか、わからない彼ではないはずだ。
その証拠に、緊張の抜けていない顔の中に、隠しきれない喜びが浮かんでいる。
「メシ、喰ってねえんだろ? てきとーに用意させたからさっさと喰えよ、どうせテメーは明日からも忙しいんだろ?」
「慰問の続きと……会食」
「ならさっさと喰って寝ちまえ」
「イヴァンも一緒に…………?」
「オレの家だ、オレがここで寝んのは当たり前だろうがよ」
「そうだな……」
笑み崩れたジュリオが再度差しだしてきた手に、今度は何も握られてはいない。
王子が姫をエスコートするかのように、優雅にイヴァンの手を取った彼の手を握り返してやりながら、ふと思ったことを口に出してしまう。
「握手って……祈ってるみてえだよな」
「祈り?」
「こうくっついてる感じがよ、礼拝の時の祈りの時間みてえだなって……」
イヴァンとしては雑談の一環だったのだが、彼は何か思うところがあったらしい。
長いまつげに彩られた目を伏せ、イヴァンの手を更に強く握り込み。

声に出さず唇だけで、何かを呟いた。

「今、何言った?」
「…………言わない」
「なんだよ、オレに言えないようなことか!?」
「言えないこと」
先程までの幸福そうな表情はどこへやら、つらっとそう言い放ってからイヴァンを無理矢理ベッドから引きはがす。そうしてから、お世辞にも立派とは言えないテーブルの上のメニューを見ながら、何かを宣誓するかのように静かにその言葉を口にした。

「メリークリスマス、イヴァン」

互いに忙しく滅多に会う事なんてできないし、世界中がお祭りであったとしてもきっとこれからも血なまぐさい仕事漬けの日々をすごすことになるのだろう。同じように見えて違う道筋は滅多に交わらないけれど。


たまにはこんな安らぎの一時があってもいい。


互いに手を重ね、相手への思いを祈りのように積み重ねながら。
後数時間後に光と共に訪れる新たな一日までの時間を、どのように使っていこうか考えるイヴァンであった。




BGM「スッペシャルジェネレーション」 by Berryz工房

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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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