がんかたうるふ 「星の嵐」 後編 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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イヴァン誕生日こばなしです。
12/23 書き上がり。





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「星の嵐」  後編




日付が変わり、乾いた冷たい夜風が遠慮がちに窓を叩き始めた頃。
ドアの方からも、規則正しい無味乾燥的なノックが響いてきた。イヴァンの部屋を来訪する人間で、こんなドアのたたき方をする人間は一人しかいない。入れと言わなければ決して入ってこない相手のために、ドアの外でも聞こえるように大きめの声をだしてやると、いつもと変わらぬ服装のジュリオがどこか落ち着かない様子で入ってきた。
昼間に誕生日がどうだか言っていたので、もしかしたら正装をして祝いに来るのではと思っていたのだが、さすがにそこまで常識を知らないわけではなかったらしい。そのことにほっとしながら椅子代わりにベッドの縁を勧めると、イヴァンの服の袖を引っ張って一緒に座るように促してきた。
「で、ナニしに来たんだよ?」
「……イヴァンの生まれた日……だから」
「言っとくけどよ、テメーのプレゼントなんていらねーからな。どうせろくでもないモンを用意してきたんだろ」
「ジャンさんに聞いてきたから、大丈夫」
「ジャンに!?」
力強く頷きながら、ジュリオはイヴァンの肩に手を回してくる。
「俺は、普通に誕生日を祝われたことがなかったから……イヴァンが喜ぶ祝い方はわからない」
「ま、まあ……な」
「だからジャンさんに聞いた。イヴァンは普通のプレゼントはきっと受け取らないから、別の方向性にしてみればいい……と、ジャンさんが」
肩を引かれジュリオに抱き寄せられながら、イヴァンはジャンの洞察力に内心感服させられていた。
確かに金や物を受け取る気はなかったし、何か持ってきたら説教しながらたたき返して、イヴァンなりの誕生日についての心構えを聞かせてやるつもりだったのだ。ジャンのことだ、そんなことをしている間に貴重な時間が過ぎてしまうと考えたのだろう。

物で心を伝えるのではなく、別なやり方をしてみては?

そう、簡潔で非常にわかりやすいアドバイスをしてやったわけだ。
「あのヤロウ……余計なお節介なんだよ、訳知り顔のジジイよりタチが悪いぜ」
「イヴァン?」
「なんでもねえよっ! それで、テメーのプレゼントってヤツはなんなんだよ」
「ここには持って来られなかった、だから誘いに来た」
どこへ、と聞く前に抱かれた肩ごと胸の中に引き寄せられる。
大きな掌としっかりした腕、そしてイヴァンを縫い止めた胸。通常ならどんな状況でも一定の脈拍を刻み続ける彼の鼓動が、恐ろしい程早く、強く跳ね上がっている。
「あのよ……すっげー緊張してんのか?」
「イヴァンに気に入ってもらえるかわからない、だから……」
よく聞いてみれば、呼吸もいつもより荒いような気がする。
きっとジュリオの今までの誕生日は、単なる人々が集まる言い訳に過ぎず。ただ笑顔を振りまくことだけを強要されていたジュリオには、大事な人に生まれた日を祝ってもらうという感覚がわからないのだろう。
それでも彼は彼なりに必死に考えてイヴァンを誘いに来た、ならばそれにちゃんと答えてやるのは、先程一つを年を取り、成熟した男性にまた一歩近づいた人間の義務。少しだけ、たまにはジュリオに甘えてやるのもいいかなと思ったりもしたが、それは心の奥底に仕舞っておくことにする。
ジュリオへの返答では、少しだけそれが漏れてしまったが、まあそれはしょうがないこととして。
「おい、オレはどこに行けばいいんだ? ヘンなトコに連れてったら、テメーの誕生日の時には思いっきり恥ずかしい事をしてやるからな……ケーキだってロウソクだらけの大きいのを用意してやるし、欲しいモンがあったら何だって買ってやるし……して欲しいことがあるならよ………俺でできることなら………わかったのか、おいっ!」
「…………毛布」
「はぁ!?」
「毛布がいる、たくさん」
イヴァンとしては最大級頑張った甘えの言葉。
だが言われた本人は、気がせいてしまって言葉の意味をよく理解していないようであった。イヴァンが自分の誘いを受けてくれたと理解した瞬間、わたわたと部屋にある毛布をイヴァンそっちのけでかき集め始めたのだから、まだ未熟というか若いというか。
「バーカ」
ジュリオに気がつかれぬよう苦笑いし、小声で軽く罵りながら、イヴァンも毛布を集めるのを手伝い始めた。










「……どんだけボンドーネの力を使いまくったんだよ……」
大量の毛布を抱えながら、感嘆と驚愕、両方の感情が込められた、ため息がもれる。
ホテルの最上階を間借りした本部というだけで、自分たちがおかしな集団であることを理解してはいたが。更にその上の立ち入り禁止の屋上を借り切る人間がいること自体、信じられないというか信じたくない。
抱え込んだ毛布のぬくもりで何とか体温を保ってはいるが、背中に刺さる寒風は容赦なくイヴァンの体温を奪っていく。広い屋上を見渡すまでもなく、すぐ側には古めかしいランプに火を灯しているジュリオの姿。
ちらりと目線を下へ向ければぽつりぽつりと灯る、小さな明かり。
まさかこれを見せるためにわざわざこんな所に、と寒さのあまり悪態をつきそうになった時、鳥肌が立ちそうになっていた背に暖かくも重い感触がかぶせられた。
「風邪を引く」
「テメーも風邪引くぞ」
「俺は今まで風邪を引いたことはほとんど……ないから」
「そういう問題じゃねえだろ、テメーもなんか羽織れ」
分厚い毛布に背を守られ、ジュリオに手を引かれ。
四隅をランプに囲まれ、地面に毛布が敷かれた場所へと導かれる。ランプの脇には大きなポットと、それよりも大きなバスケット。
「座って」
「……お、おう」
地面の冷気を遮断するために何枚も重ねて敷かれた毛布は、イヴァンの体を優しく受け止めてくれた。それを確認してからイヴァンの真後ろに腰を下ろしたジュリオは、幾分慌てた様子でバスケットの中身を取り出そうとして。
「…………っ」
持ち手の部分に思いっきり小指をぶつけていた。
妙なところで不器用なのはどういう状況でも変わらないのだなと思うが、ここで彼を笑うのは失礼な話だろう。イヴァンを祝うために、色々考えて動いてくれたのだから、ここは彼に花を持たせるためにも最後まで見守るべき。
そう考えはしたが、バスケットからようやく取り出すことができたカップを手を滑らせて割りそうになる姿を見ると、自分の平穏な誕生日のためには手伝わなければまずいだろうと考えを変えることになる。
「貸せ、オレがやる」
「でも……」
「デモでもストでも一人で勝手にやってろ……お、コーヒーとサンドイッチか……ここのシェフのはうめえからな」
「…………イヴァン」
恨みがましげなジュリオの目線を無視して、てきぱきと準備を進める。
砂糖が多めに入ったホットコーヒーに、切り口から除く具が食欲をそそるサンドイッチ。ピクルスの盛り合わせやテリーヌまで用意してあるということは、シェフも相当頑張ったのだろう。
毛布の上にそれらを適当に並べ、カップをジュリオに渡す。
「で、テメーはオレにナニを見せたかったんだ?」
「…………あれを」
それぞれカップを手に向かい合いながら、ジュリオが指さした場所を目で追うと、そこには想像を遙かに超えたものが広がっていた。
「………………すっげえな………」
自分を温めてくれる立ち上る湯気すら邪魔に思えるほどのものがそこにはあった。

冷たい空気に磨かれ、輝きを増した満天の星々。

昔はよく空を見上げ星を目で追ったものだが、これほど見事な星を見たのははじめてだった。暗い夜空にぶちまけられたかのような星屑が、自己主張しながら輝き続ける。
まるで嵐の後のように、秩序を失った星達が無軌道に夜空を駆けている。
「ここから見る星は綺麗だから……イヴァンに見せたかった」
「よく来てんのか?」
「俺もしばらく来てない……昔はよく見ていた」
何かを懐かしむような、わずかに苦さを感じさせる声に、イヴァンは彼の心中をわずかだけ覗けたような気がした。
辛いとき、苦しいとき。
自分の中の大切な何かが壊れそうなとき、人は夜空の星に救いを求める。そんな夜をジュリオは越え、ようやくここに人を招くことができた。
空に救いを求めるのではなく、人とこの輝きを分かち合うために彼は今ここにいる。
「一緒に来たのはイヴァンが最初」
はにかみながら毛布にくるまり、コーヒーをすする顔にはわずかの曇りもない。
ランプのほのかな光は、夜空からの光を阻害することなく、二人の手元だけを照らしてくれる。ケーキがあるわけではないし、暖かな室内でもない、本当にささやかで静かな祝いの宴。
だが心の中は優しく、暖かい物に満たされていた。
「イヴァンにお礼が言いたかった……」
「礼だぁ? オレがテメーにナニをしてやったって」
「イヴァンが生まれてくれた、それだけで嬉しい」
「…………バ、バカいうんじゃねえっ! んなこっぱずかしいこと言うな!」
「俺を…………幸せにしてくれて、ありがとう」
声と共に伸びてきた体が、イヴァンを強く抱きとめる。
この流れからいくと、誕生日補正がかかった凄まじく甘い時間がこれからやってきそうな気がしたし、まあそれでもいいかなと一瞬考えたりもしたのだが。
ジュリオには言っておかなければいけないことがあった。
毛布にくるまった体ごと抱きとめてくる腕から逃げ出し、勢い余って立ち上がると、びしっとジュリオを指さしてやる。生まれた日を必ず誰かに祝福してもらっていた人間から、誰にも祝福してもらえなかった人間へ。
心からの思いと愛情を込めて。
「誰がテメーを幸せにしてやったって? オレはオレのやりてえようにやっただけだ、勝手に幸せになったのはテメーだろうがっ! それに今日はオレの誕生日であって、テメーが一人で幸せになる日じゃねえんだよ!」
「……………………」
「いいか、よく聞けよ! 次のテメーの誕生日は、オレがテメーが泣いて感謝するくらいの誕生日をやってやるからな……覚悟しておけよ! テメーがオレの誕生日で幸せになるって言うのなら、オレもテメーの誕生日で幸せになってやるっ!」
「イヴァン………」
「今から泣くんじゃねえ……ったく、ガキじゃねえんだからよ」
体をかがめて、ぽんぽんと小さく丸まった大きな体を撫でてやる。
この調子では、彼の誕生日の日になった途端に滝のような涙を流しそうだが。数日後にはクリスマス、そして新しい年が来て。

ジュリオの誕生日には、さて何をしてやろうか。

祝われる事は嬉しいし、素直に感謝するが。
祝われた分だけ、愛情を注がれた分だけ、それを返したい。そう思うのは間違いじゃないはず。
その証拠に、目に涙をいっぱいためたジュリオは、これ以上ないほど晴れやかに笑っていたのだから。







そんな体は寒いが心は十分に温めてもらった誕生日の数日後、イヴァンだけが盛大に発熱して寝込むことになったのは、やはり普段の鍛え方の差なのか。それともなんとかは風邪を引かないという、お約束故なのか。
責任を持って看病、という名目で年末の行事をほとんどパスすることができたジュリオがとてつもなく嬉しそうだったので、彼の責任を追及することをやめたイヴァンだったりしたが。
「てめっ、体が痛いって言ってるだろ、抱きついてくんな!」
「体……拭いてるだけ」
「んなもんいらねえから、少し寝させろ~!」
ここぞとばかりに甘えてくるジュリオの相手をしながら、彼の誕生日まで生き延びることができるか心配になる今日この頃だった。










BGM「みかん」  by モーニング娘。
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普段は淡々とアップしているだけですが、今回はどうしても。

イヴァン、誕生日おめでとう~!

これからも、苦労性でわがままなように見えて一番空気を読んでいるイヴァンでいてください……
さて、次はジュリオ誕生日か。
みかんは大好きな曲なので、どうしてもこれを聞きながら書きたかったのです。歴代の娘。の曲でもトップクラスに大好きです。
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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こんな二人で、ここを更新しております。

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