がんかたうるふ 「しろがねの狂詩曲」  後編 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



新年年下組こばなし後編です。




 *****



「しろがねの狂詩曲」 後編






町中ではジュリオを見かけたという報告はなかった。
この凄まじい吹雪のため港はとっくに閉鎖されているし、市の所有している建物は全て避難民の収容に使われている。まだ家を持たない渡ってきたばかりの移民や、家を雪で潰された市民を受け入れるので手一杯といったところだろう。それを見越して手厚すぎる保護の手を差し出し、将来の儲けの種にする。
人に大勢死なれるよりはマフィアの手でも借りるしかないということなのか、市の職員たちもそれを黙認してしまっているのが現状であった。物資の配給や救助に構成員を総動員しているが、その誰もがジュリオと接していないと言っているのだから、残った場所はもう一カ所しかなかった。
「誰だよ! こんなところに港を作ったファッキンな野郎はよ!」
下手したら腰まで埋まって動けけなくなりそうな雪の中、CR5の一番下っ端の幹部は思いつく限りの悪態をつきながら歩き続けていた。いや、歩くというよりは雪を漕いで進んでいるという方が正しいだろうか。
先ほどまでの強風のためあちこちに吹きだまりができており、小さな雪山のようなそれに突っ込むこと数度。靴だけは防寒用の分厚いのを履いてきたのでまだ大丈夫だが、コートが防寒の役目を果たさなくなりつつある。風がおさまってくれたからよかったが、そうじゃなければ間違えて海に落ちていたかもしてない。
溶けた雪を吸い込んで重くなり、更に雪を張り付かせ重量を増しつつあるコートを脱ぎたくなる衝動に駆られながら、すんでの所でそれを思いとどまった。これを脱いだら、間違いなく近い将来イヴァンは氷の彫像になって数日後に発見されることになるだろう。
ジャンも今頃逆方向を探しているはずだ。カポ自ら何をやっている、と年かさの構成員にはたしなめられたが、彼らは急遽呼び出されたベルナルドとルキーノが押さえてくれた。
後できっと二人からはたっぷりと説教されるだろうが、それはもう甘んじて受けるしかないだろう。
数週間ぶりの休みを邪魔された年上組の目は、全く笑っていなかったのだから。
彼らがジャンを怒るわけが泣く、間違いなく矛先は自分に向けられるとわかっているので、それを思い出すだけで苛立ちが更に深まってくる。ジュリオがここに来ている可能性が高いとしても、なぜ彼が真っ先に閉鎖されたここに来たのか、何か用があったのなら自分やジャンに相談すればよかったのに。
怒りのあまり、進もうとする足でその辺の雪の固まりを盛大に蹴飛ばす。
「チキショウッ!」
体は冷えていくのに心だけが熱く、ジュリオへの怒りが深まっていく。
うっすらと天を覆う雲から止めどなく落ちてくる雪と、雲の切れ間からわずかに周囲を照らしてくれる月の光と。まんまるなキャンディのような雪に体温を奪われながら、明るくなった周囲にわずかに違和感を感じたのはこの時だった。
「なんだ……ありゃ?」
ほんのわずかだが、綺麗にならされた雪原にへこみが生じている。
それも大きなものではなく、まるでなにかの汁をこぼし、その上に雪が降り積もったかのような小さなくぼみがいくつも、点々と。イヴァンの目では追えないほど遠くまで続いているその奇妙な現象が、心を一気にざわめかせ始めた。
慌ててその場所へ向かい、注意しながら雪をかき分けてみると、そこにあったのは。
「…………血……か!?」
凍り付き、固まってはいたが。
雪を貫通し道路にまで染みつくほどの血が、そこには広がっていた。
閉鎖される前に流された血なのか、それともその後のことなのか。こんな状況で長々と推察している訳にいかないので放置しておくが、多分きっとジュリオはこの血の道標の先にいる。
吐く息からも力が失せ、疲労のためかこの寒さの中だというのに眠気が出始めているが。
これを追えば絶対にジュリオにあえるという確信があった。血なんてほとんど流さずに人を殺せるあの超絶技巧の殺人者が、人に刺されるようなへまをするわけがないし、それ以上に彼が跡を残す殺人をするわけがない。
それこそ理由がなければ。
「ジャンのヤツにわかるようにしておかねえとな……」
大声を出しても聞こえない可能性があると判断し、被っていた帽子を脱ぎ、起用に一方向の鍔だけを折りたたんで即席の矢印をこしらえる。風に飛ばされないように上に堅く握った雪玉を置き、それから念のために一度だけ大声でジャンの名を呼んでから、イヴァンはその方向へ足を進めることにした。
そうと決めたらもう迷いはない、ジャンもすぐに気がついてこちらに来るだろう。
不器用で、臆病者で。そのくせ人一倍人の愛情を求めるあの馬鹿に会わなくては。その思いだけで重さを増す足を前に進め、口から吐く白い息が徐々に弱まってきた頃。
降り注ぎ続ける白い雪を従僕のように従え、彼はそこにいた。
「……………ようやく出てきたな、どんだけ探したと思ってんだ」
「………………………………イヴァン……?」
「イヴァン? じゃねぇっ!」
白い雪の塊を頭にまとわりつかせ、黒いトレンチコートの裾をわずかに揺らしながら。雪ですら見惚れそうになる美貌の中、どこか茫洋とした目が、イヴァンへと向けられた。
何も映っていなかった瞳にわずかに戻る人間としての色。
その手が血すら凍り付いてこびりついてしまっているナイフを握りしめていることも、彼の周辺の雪が赤く染まっていることも、イヴァンには全く気にならなかった。雪を蹴立てながら足早に彼の元へと近づき、とりあえず力を込めて。

ぱしんと一発殴っておく。

本来ならもっと力を込めて殴っておきたかったが、寒さに体力を奪われ切った体は本来の力を全く出せなかった。足場が悪すぎたのも影響しているのだろう、ジュリオは殴られた顔を押さえることも、体勢を崩すこともなくきょとんとした顔でこちらを見ている。
なぜ殴られたかわからない、そう言いたげな表情のジュリオの顔を今度は手のひらで包んでやり、手袋越しでもわかる冷え切った頬にぬくもりを分けてやる。
「どんだけ長い間ここにいたんだ? バカは風ひかねえっていうけどな、風邪引く前に凍死すんのがテメーの希望かよ」
「こいつが……ジャンさんを……殺すって言ってた……だから……」
「死体の処理しに来たってんだろ? さすがにこの雪じゃ掃除屋もすぐには来れねえからな……でもよ、オレらに言っていけよ。ジャンが……それとついでにオレも少しはテメーのこと……そのな…………」
「俺を……探しに来てくれた…………?」
「ジャンが行くって言ったからだ! オメルタ使われたら、オレに逆らえるわけねえだろうが!」
「ありがとう」
満面の笑顔とともに、首に暖かい感触。
自分より長く外にいたはずなのに暖かいのジュリオの腕が、首に優しく巻き付いてきていた。そのまま強く抱き寄せられると、頭に積もり始めた雪を片方の手で丁寧に払われる。
「イヴァンが……風邪を引く」
「テメー、寒くねえのかよ?」
「寒かった……だけどイヴァンが暖かい…………から」
「…………オレにしてみりゃ、テメーの方があったかいよ」
足は感覚がなくなり、じんじんと痛み始めているし、体だって心底冷え切っている。おまけに疲れ果てているはずなのに、ようやく見つけたこのお騒がせな男に抱きしめられていると全部忘れてしまうのだから。
自分は救いようのない大馬鹿である。
暖かいのでもう少しジュリオにしがみついていたいが、それをすると確実に彼が調子に乗りそうなので体を離そうとすると。
唐突に幹部としてのジュリオの真面目な声が頭の上から降ってきた。
「ところでイヴァン………どうやってここへ?」
「大変だったぜ、閉鎖されてたからよ……見張りの警官にワイロつかませてそれから……」
「どうやって出る? 入り口の方に人が集まっている、多分隠れて出ることは不可能だ」
「はぁ? テメーなんでわかんだよ……って、テメーなら聞こえるか」
出るときはこっそり入ったのだ、出るときもこっそりでなければならないというのに。
もしCR5の幹部か立ち入り禁止区域にワイロをつかませて進入したとしれてしまえば、組織としての信用は急降下である。それを避けるためにはどうすればいいのか、親愛なるカポと合流してから相談すべきだろう。
キスの代わりに顔を見合わせ。
だが体は離さないまま、疲れ切った体をジュリオに預けたまま、この状況をどう打破するか考え始める。このまま眠ってしまいたいところだが、この選択には自分の今後の人生がかかっているような気がするし、何より。
自分を信じ切った目で見つめるジュリオの信頼に応えなくては、そんな気にさせられてしまうのだ。
そんな自分の甘さに内心ため息をつきながら、今度は背を安心させるかのように優しく包み込んできたジュリオの手に、口では安堵の白く染まった息を吐くイヴァンであった。













オメルタを使われて仕方なしに、そうイヴァンはジュリオに言ったらしい。
自分が命令する前に率先して探しに行こうとしたり、自分の部下を使おうとしていた男が何を言うのやら。思わず苦笑してしまいそうになったが、イヴァンの名誉のためにジュリオには黙っておいてやることにした。
これで恩を着せて、イヴァンが泣いて嫌がるような恥ずかしいことをさせるのもまた一興。
カポになってからあらゆることに対してすっかり開き直ったジャンは、自分そっちのけで密着して離れない二人をじと目でにらみながら、さっさと自分のやるべき事を終わらせた。
雪まみれになりながら抱き合っている二人を発見し、今の状況を聞き。
とりあえず人がいなくなるまでどこか寒さをしのげる場所を探そうということで話がまとまり、ジャンがいつもの運の良さを発揮して鍵のかかっていない小屋を発見して。ストーブに火をつけて、部屋の中をあさって酒を発見し、これまた運良く電話を発見した段階でイヴァンに限界が来ていた。
年末から今まで働きづくめで、おまけにこの大雪の中ずっと外で部下を指揮していたのだ。本人はまだ頑張ると言い張っていたのだが、カポ命令で無理矢理眠らせ、そして今は。
ジュリオの胸板にもたれかかって、ゆっくりとした規則正しい寝息をはき出していた。
麻袋を何重にも重ねて敷き、壁に背を預けたジュリオはまるで抱きくるむかのように腕の中にいるイヴァンを着ているコートの中に招き入れている。ジュリオの肩を枕代わりに、数日ぶりの心地よい睡眠をとっているのだろう。
どんなときでも厳しさが抜けきらない目元が、年相応に柔らかくなっていた。
「おーいジュリオ~? おまえ一人でイヴァン独り占めはずるいんじゃないか?」
「あ、ジャン…………電話は終わりましたか?」
「後のことはベルナルドがやってくれる。俺はこの大吹雪の中身の危険を顧みずにジュリオを探しに行った家族思いのカポってことで話をつけたそうだ」
「話を……つけた?」
「無謀な行為ってヤツは、ひっくり返せば英雄端になるんだとさ……あの眼鏡おじさんの受け売りだけどな」
どんなときでも自分が望む以上の結果を出してくれるベルナルドがいれば、本部は問題ないだろう。イヴァンが先にギブアップしたが、ジャンだってクリスマス前からの行事の連続と今回の吹雪で疲れ果ててしまっている。
ジュリオの腕の中はイヴァンにとられたが、隣で眠る権利くらいはあるはずだ。
「悪い、そっち詰めてくれ」
「どうぞ」
狭い麻袋の絨毯の上で、体をずらしたジュリオの隣に腰を下ろす。
とたんに肩に回される暖かい腕の感触と、ジュリオの優しい声がジャンの瞼の重さを一気に増やしてくれたらしい。
「寒い……ですか?」
「いや、ジュリオがあったかいから大丈夫だ。それにしても……本当に大丈夫か? かなり長い間外にいたんだろ?」
「寒いのには強い、から。俺より……ジャンとイヴァンが…………」
頬をすり寄せてくる勢いで甘えてくるジュリオのするがままにさせてやりながら、その彼の腕の中で安堵の寝息を立てるイヴァンをちらりと見やる。
「先にジュリオを見つけたのがイヴァンで良かったよ……俺じゃ無理だったかもな」
「…………無理って?」
「あ~、おまえの考えてるような意味じゃないって、泣くな! あのな無理ってのはな……俺じゃ死体の処理終えたばっかりのお前に近寄ることはできても、お前を正気に返せたかなって」
自分は先に出会っていたら多分ジュリオは止まらなかった、ジャンはそう思っている。
未だどこか不安定なところがあり、血と屍肉がきっかけでいつ暗い精神の渕に落ちていくかわからないジュリオをジャンなら受け止めることができるだろう。受け止めて受け入れて、そしてジュリオが自らに気がつくまで待つ、言うならば鏡のような存在。
だがイヴァンはそれをすっ飛ばして力尽くで吹っ飛ばすのだ、全ての重苦しいものを。
ジャンが正しいわけではなく、イヴァンが間違っているわけではない。どちらもジュリオにとって必要なもので、今のような状態ではイヴァンの方が即効性があり確実だっただけ。ジャンはきっとイヴァンのそういう部分がいとおしいと感じる反面、自分にはないものをねたましく感じることもあり。イヴァンだってもしかしたらそう思っているのかもしれない。
人の心は清と濁、その両方が混在しており。
それらすべてが合わさって濁りあったものを、愛情と呼び、恋と呼ぶのだろう。その証拠に、他人の血を平気で流し命を奪うジュリオは、ジャンとイヴァンに拒否されれば死ぬことを選ぶだろう。
清らかなのか腐りきっているのかわからない、極端すぎる人間性。
だがそんな彼だからこそ守れるものがあり、愛せるものがある。それがジャンであり、イヴァンなのだろう。
「こうやってみてるだけなら、雪って綺麗だよな」
「はい。今度は3人で……カナダの方に行けたらいいですね」
「のんきにホテル暮らししながら雪でも見物できそうだな、それなら」
「いつか……行きたいです、ジャンと、イヴァンと……」
外ではまだ雪が舞い続けている。
明日の朝にはうまくここを抜け出す算段をしなければならないし、事後処理も一気に肩にのしかかってくる。これは神様がくれたほんのわずかな休息の時間、そう思うことにして、ジャンもジュリオの肩に頭を乗せて目を閉じた。
こうやっていると、二人分の鼓動が伝わってくる。
できれば二人とも自分の鼓動を感じてくれていますように、そう願いながらジャンは意識を手放すことにした。白い雪の中、今度は仕事ではなくバカンスで3人で過ごす夢をみながら。










BGM「nikoensis - 追想」

PR
[40] [39] [38] [37] [36] [35] [34] [33] [32] [31] [30]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

ついったのフォローは下 のアイコンから。




ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カウンター
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone