がんかたうるふ Hermony Loop 金曜日 午後 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終わりました。
あと3回で終了。






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「Hermony Loop」 金曜日 夕方






わざとリズムをつけてノックをし、陽気な声と共に上半身だけドアの内側へと滑り込ませると、ルキーノは陰鬱な表情で窓際で煙草をふかしていた。足音を全て打ち消してしまいそうな分厚い絨毯の上で何を苦悩していたのかは知らないが、ジャンの顔を見た瞬間にそれは驚愕表情へと変わってしまっていた。
「は~い、ダーリン♪ 可愛い金髪ワンワンのご到着だぜ」
「ジャ、ジャン!? お前どうしてここに!?」
「役員会のジイさんの一人や二人、たらし込むことぐらい朝飯前だって……あ、ルキーノ腹減ってないか?」
「たいした奴だよ、お前は……せっかくの差し入れだ、ありがたく食わせてもらうさ」
「だってさ、ジュリオ。良かったな、パパがお前のお手製パイを食ってくれるらしいぜ」
「…………あいつにやるために……作ったわけじゃ………」
後ろでぶつぶつと文句を言うジュリオの手を引っ張り、一緒に室内になだれ込む。
その後ろから苦笑いとも孫を見守る祖父の目線ともつかない眼差しで二人を見守る、顧問の部下である初老の男。
巨大なバスケットの中から拳を連想させる形のパイをとりだし、律儀に顧問の部下にいくつか渡すジュリオを暖かい目線で見守りながら、ジャンはこの部屋の主よりも先にソファーの一番日当たりのいい場所を陣取った。
それに素早くジュリオも続く。
「いや~、泣きながら閉じ込められてるって聞いたから、どんな部屋かと思ったんだけどさ。俺の部屋より立派じゃんかよ」
「今はここだけが俺の世界だ……狭くてイライラしてくるな」
「………………自業自得だ」
ぽそっと呟くジュリオはそっぽを向いたまま。
昨日は家に帰ってきたと思ったらすぐルキーノに対する悪口大会になってしまったので、まあこうなるとは思っていたが。ルキーノ自体を嫌いになったのではなく、ルキーノの昨日のベルナルドに対する態度が気に入らなかったというのがジュリオらしいというか。
今日ここにどうしても来たいが、ベルナルドが動けないので無理だとジャンに相談してきた時はどうしようかと思ったが。とんとん拍子の話が進み、その日のうちに面会できるようになったのはやはり自分の幸運のおかげなのだろう。
最初はイヴァンを飛び越えて云々と小言ばかりだった堅物の顧問が、周囲の口添えで考えを変えなければならなくなる姿は見ていて可哀想な程だった。顧問を説得するために、ジャンを可愛がってくれている役員連中の家を回っている間、ルキーノについての発言をいくつか聞いた。
ルキーノの気持ちはわかるが、ルールとしてそれを許すわけにはいかない。
今のルキーノのような苦悩が刻まれた表情でそう言ってきた彼らは、全てをジャンに託すと言ってくれた。ジャンならば、もしかしたらルキーノの心を軟化させ、この件を円満に終わらせればできるのではないかと。それを行うのはジャンの役割ではないのだが、少しでも手助けになればいいのだが。
未だに窓際から動かないルキーノへ湯気を立てるパイを放り投げると、煙草を持っていない方の手が器用に空中でつかみ取った。
「ほらよ、アツアツだからさっさと食えよ」
「すまんな……結構美味いな。ジュリオ、お前マフィアやめて店でも開いたらどうだ」
「ジャンが……そうするなら」
真剣な顔でそう答えるジュリオの膝をぽんと叩いてやり、ベルナルドも美味しいと言ったミートパイにかぶりつくルキーノに真剣な顔で話しかける。
「大体の話はジュリオから聞いてる。イヴァンも心配してるぜ……まああいつは素直には言わないんだけどな」
「で、ベルナルドのいない場で俺に何を説教してくれる気だ?」
「説教とかは俺の仕事じゃないし、ミサで聞き飽きてるだろ? それに今日用があるのは俺じゃなくてジュリオなんだよ、な?」
「はい」
こくりと頷いたジュリオの目には、何の迷いも存在していなかった。
どうしてもルキーノに会いたい、話したいことがある。そう言ってきた時、最初は断るつもりだった。必死にベルナルドが動いている状態で、自分が余計なことをすれば顧問の機嫌を損ねる可能性が高いし、もしかしたらベルナルドも面会を拒否されることになるかもしれない。
ベルナルドのことはちらっと様子をうかがっただけだが、あの忙しさでは今日はここを訪問することは出来ないだろう。昔から仕事というものを多面的に見ることが出来る希有な人材だとは思っていたが。
ルキーノのためとはいえ、あんなに鬼気迫る様子のベルナルドは初めて見た。
通常の仕事をこなすのと同時にルキーノの仕事も代行し、更に自分の望む結果を引き寄せる為に最善の努力を尽くす。ろくに寝ていない上に何も食べていないとジュリオが言っていたが、そんな状態には決して見えなかった。
己の余計な物を削ぎ落とし、望みの物を手に入れようとする。
そのためならば、ルキーノを守る為なら、それこそなんでもするつもりなのだろう。ベルナルドにそこまで思われているくせに、こんなところで一人で意地を張っているルキーノにイライラするのは事実だが。
今日のジャンの役目はジュリオをここへ連れてくること、そして。
「で、ジュリオ。お前は俺に何を言いに来たんだ?」
「…………殴りに、来た」
ジュリオがやり過ぎないように止めることだった。
言葉と共に立ち上がり、窓際で佇んだままのルキーノへジュリオは足早に近づく。事情を飲み込むどころか、何を言われたのかを理解していないルキーノの前に立つと、事前に言い含めておいた通りの平手で、ルキーノの頬を一気に張り飛ばした。

凄まじい轟音が、室内を一気に蹂躙していく。

拳を作って殴るとルキーノの顔が崩壊しかねない、なので一応平手で殴るように言っておいたのだが。
「よく飛んだな……ジュリオ~、少しはすっきりしたか?」
自分が座っている場所のすぐ側まで吹っ飛んできたルキーノと、彼の体を受け止めでひっくり返った高そうなソファーを見ると、自分の言葉はあまり意味がなかったらしい。
骨組みが大きく歪んで、ソファーは所々表張りの皮がひきつったり緩んだりしてしまっている。その横のぴくりと動こうとしないルキーノを見ながら、ジャンは内心の動揺を押し隠しながら、できるだけ気楽そうな声でジュリオに話しかけた。
「少しだけ……」
ジュリオは息一つ乱すことなく、冷ややかな目線を床に這いつくばっているルキーノに投げかけている。
 さすがにこの事態を見て同席した顧問の部下が慌て始めるが、ジャンは手を振ってなんでもないということを示してみせた。ここでジャンまで慌ててしまえば、これは台本のないハプニングだと思われてしまう。
最初からジュリオがこうするのだとジャンが理解しており、何かあった時には責任持って収拾する立場である。そのためにいるのだということを、一挙手一投足で表現する。
動かないルキーノが死んでいたらどうしようとか、ジュリオにやりすぎだと怒鳴りつけたい気持ちを抑え込むのに内心忙しいのだが、それを出すわけにいかないのがこの立場の辛いところ。
自分より身長の高い大の大人を数メートル吹き飛ばす勢いで殴ったジュリオは、狂犬の名に相応しい声をルキーノへと叩きつける。
「……立て、このまま……逃げる気か」
「立てねえんだよ……お前は手加減でも人を殺せるな」
「ジャンがそうしろと言ったから手加減してやった……そうじゃなければ……殺してやってもよかった」
「で、俺の何にそんなに腹を立てたわけだ? マンマをいじめた腹いせか?」
「違う」
きっぱりと否定したジュリオは、優雅な仕草で服を軽く整えてからジャンの元へと戻ってくる。褒めて欲しいとでも言いたいのか、肩を擦り寄せてきたジュリオの頬に軽く手を触れてやると、一気に表情を柔らかく緩めた。
一応見張られていると言うことは理解しているのか、それ以上を求めてこないジュリオは後で思いっきり褒めて可愛がってやろうと心に決め、ジャンは顔を半ば絨毯に埋めたまま動けなくなっているルキーノへと声をかけた。
「お~い、動けそうか?」
「この忠犬に言い聞かせておけ、理由を言ってから人は殴れとな」
「言ったんだよな、ジュリオ?」
「昨日……言った」
「昨日?」
すうっと、ジュリオは息を吸い込む。
「俺なら……一人に何てしない……ずっと一緒にいて、一緒に考えて……そして……」

一緒に、幸せになる。

短期間の間に人として欠けてはいけない様々な物を取り戻してきたジュリオは、ある意味誰よりも純粋だった。
大切な人がいるのなら決して離れない、そして誰よりも愛してずっと守っていく。シンプルでだが決して忘れてはいけない、この世知辛くも悲しい世界を生き抜く上での真理。それをジュリオはルキーノへと伝えようとしている。
今は平穏な時間を過ごすことが出来ていても、ジャンがカポになれば二人の間には様々な苦難が降りかかってくるだろう。それでも戦い続けると、どんな事態にも抗ってみせると決めているであろうジュリオは、ジャンから体を離すことなくその手をきゅっと握りしめた。
ジャンから力を分けてもらっているかのように。
「ずっと……昔の夢を見ていた……お爺様……父さん母さん……ジャンも……いてくれた。俺は辛かったけど……苦しかったけど……俺のことを本気で憎んだ人はいなかった……ただ、どうしていいかわからない……そんな人がいただけだ」
「ジュリオ……」
「俺の夢の最後には、必ず……ジャンがいてくれる。ルキーノ……お前にはいるのか? 今のお前は……夢で……会えるのか? 大好きな人を泣かせるのが……困らせるのが……お前の………やり方なのか?」
この時点で、ジュリオを抱きしめてやりたくてたまらなかった。
辛い過去から逃げずに向き合い、自分がつらさや苦しさの中で得たことを誰かに伝えようとする。話し方は淡々としているが、決してルキーノが憎いわけでも、ただ腹が立ったから殴ったわけでもないのだろう。
ベルナルドの思いを無視して己の意見を曲げないルキーノに、以前の自分を重ねたのだ、きっと。
  抑えきれない思いで愛する人を傷つける恐怖を、ジュリオは誰よりも知っている。状況や過程は全く違えど、ベルナルドの思いを理解できずに傷つけているルキーノを他人とは思えないのだろう。
自分の過去を見つめ、他者を思いやり、そして誰かのために動こうとする。
それができるようになったジュリオは、もう狂犬なんかじゃない。ジャンにとっては世界で一番愛おしい、自分とジャンだけではなく周囲も愛することが出来る青年になりつつあるのだ、彼は。
ジュリオの手を強く握り替えし、心の中で声援を送っていると、ようやくのことでルキーノの体に力が入り始めた。手で体を支え、なんとか体を起こすと床に直接膝を立てて座り込み、こちらを見上げてきた。
いつも身長差の関係でルキーノに見下げられてきたジャンにとっては、新鮮な視点。
「…………お前らみたいに、素直になれるような年じゃないんだよ……しがらみってやつもある、逃げられない縁ってやつもある………何とか逃げようとしたがな、逃げられないもんだったわけだ」
「それでも俺は、逃げない」
ちょっとでも後ろ暗い物がある人間なら逃げ出したくなるような、わずかの曇りのない眼差し。強い力を持った目に射貫かれたルキーノは一瞬だけ目をそらし、この状況でも乱れることのない髪に手をやり。
苦笑いとしか言いようのない笑顔で、両手を宙へと投げ出した。
「……俺の負けだな。ベルナルドが俺の嫌なところを見せる鏡なら、ジュリオ……お前は俺に最後の最後で重い決断ってやつを選ばせるんだな」
「気持ち、変わったか?」
「変わりゃしないさ、俺が生半可な気持ちでこんなことすると思うか?」
「無謀な奴だとは思うさ」
「確かにそうだな……勝ち目は薄いし、勝ったとしても俺は余計に追い込まれることになる賭だ。だがな、俺の命をコインにしてでも勝負すべきなんだよ」
これでもうルキーノは大丈夫、彼の周囲にあった重苦しい雰囲気が一気に消え失せているのを見て、ジャンは冗談交じりの祝福を贈ってやった。
「何を考えてこんな事になったかは全然わかんないけどな、カタがついたら次期カポのジャン=カルロ様が望みの物をくれてやるよ」
「そりゃいいな……期待しておくか」
先日ジュリオに全力全開で蹴飛ばされて、今度は顔に指の形までくっきりとわかる跡が刻まれつつあるルキーノの顔。それを見てくすくすと笑い出したジュリオの額を、おどけながらコツンと拳で叩いてやる。
明日は何があっても顔を出す、そうベルナルドは言っていた。
その時までに少しでも顔がまともになりますように、それとルキーノの無事を祈りながら、ジャンはすぐ横に置いたバスケットに手を伸ばす。
外側まで伝わってくる暖かさは、ルキーノへと向けられたジュリオの思いのように。

優しくジャンの手を温めていった。






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BGM「シンシア 愛しい人」  By 岡崎 律子

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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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こんな二人で、ここを更新しております。

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