がんかたうるふ 「輪舞~偽~」 雨水の刻 ~元親~ その2 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ターニングポイントその一
書き終わりました。



 *****
 石田三成程素直な人間はいないが、彼程扱いにくい人間もいない。
 己の思いのままに真っ直ぐに突き進んでいく故に周囲の話に耳を傾けず、おまけに意見を聞く人間がごく少数に限られている。秀吉も半兵衛も死んでしまった今となっては、三成に言うことを聞かせられるのは大谷くらいなものだろう。
 だから官兵衛はゆっくりと時間をかけてきた。
 家康のために死を選ぼうとし、自らを追い詰めていく三成。彼を死へと向かうが故の苦痛から救い出す方法は、たった一つしかないのだ。
 徳川家康への恋情を捨てさせ、自らの意志で天下人への道を歩ませる。
 半兵衛に命じられたからではなく、家康を救うためでもなく。こうありたい、自分の未来をこの方向へと向けたい。彼自身がそう思わなければ、三成は今後生きていくことすら難しいだろう。
 天下人になりたくない、秀吉の菩提を弔っていきたい。
 そう願っても官兵衛はそれでいいと思っている。そして三成がそれを望むのならば、死ぬまで側にいる覚悟もある程度はできていた。
 しかし家康にはそれができない、彼は天下と三成の両方を望んでいる。
 だからこの戦を乗り越え、時間をかけることができれば三成の心は自分の物になるだろう。そう計算してはいるが、まずはこの戦を目の前にいる連戦で疲れ果てた総大将で乗り切らなければならないのだ。
 宴の後、大事な話があるとこっそり耳打ちし。
 大広間から少し離れた普段は客人用として使われている部屋に三成を連れ込んだのだが。あれだけ飲んだというのに、三成の目には酔いのかけらすら残っていなかった。
 少し酔っててくれれば、話も進めやすかったというのに。
 それでも少し疲れているのか、壁に背を預けて足を伸ばして三成はこちらを見つめている。半兵衛の教育が良かったのか、きちんと相手の話を聞く気になっている三成は相手の目をじっと見据える。曇り空を思わせる色素の薄い、だが澄んだ印象を与える瞳を見つめ返していると。
「さっさと話せ、明日の朝真田と稽古をする約束をしている」
 幾分唇を尖らせて、三成がそんな言葉を口にした。
そういえば真田幸村はあの大きな虎を連れてきていた。しのも久しぶりに仲間に会えて嬉しそうであったし、それは三成も同じなのだろう。
 酔いが顔に出ていないとはいえ相当眠気はあるだろうし、まだ体調も完全には回復しきっていないはず。その上明日真田と稽古するのであれば、早めに就寝し体調を少しでも戻しておきたいはず。
 だが、それでは官兵衛の目的を果たすことができない。
 疲れは判断を間違わせ、そして人を間違った方向へと導いていく。酒で思考が鈍り、体調も万全ではないのなら心には当然の如く隙が生ずる。その証拠にきっとこの部屋の隣当たりで話を聞こうと躍起になっている毛利の存在に、三成は気がついていない。通常であれば真っ先に気がつきそうなものなのだが、酒は彼の鋭敏な感覚を鈍らせてくれているようだ。
 夏ならば草葉に隠れる虫の声や水場の蛙の声で気配が紛れるので良かったのだが。あいにく今はようやく寒さがゆるみ始め、木々の先から芽が生まれ始める季節。気配に敏感な三成を騙せるかが心配だったが、これなら大丈夫だろう。
 先程佐助の話を聞いた時、この話をするならば今しかないと決断した。
 大谷が自分に向け続けている嫌疑も、毛利から今回の内容が伝われば晴れるであろうし、そうすればもっと別な方策をとることもできるようになる。なにせ今回官兵衛が話すことは、大谷にとっても利益になることなのだから。
「それならさっさと話を終わらせるとするか……」
「どうせ大した話ではないのだろう、すぐに終わらせることだな」
「そうだな、そこまで大事な話でもない…………お前さんがこの場で徳川家康をこの手で殺しますって誓えばいいだけだ。お膳立ては小生と刑部でしてやる、お前さんは家康の首を秀吉の墓前に備えればいいだけだ」
 あえて三成の前で『秀吉』と言った。
 話の内容を三成が受け止めることができていれば、いつもの如く秀吉様と言え、そう言ってくるはずなのだが。
「………………………」
 足を畳に投げ出したまま、三成の体が端から見てもわかる程に強張っていた。
 三成にとって家康はもう一人の髪と言ってもいい程に愛おしい存在のはず。それを殺して首を取れ、そう言った官兵衛は怒鳴りつけられても仕方がないというのに。
 三成は無言で唇を噛みしめ、勘兵衛に向けていた目を己の腿へと向ける。
 官兵衛の言葉を受け入れたくない、だが耳に入ってきた言葉を消すこともできず。苦しそうに絞り出された声は、反対側の壁の前で片膝を立てて座る官兵衛へと届くのに少しだけ時間を必要とした。
 その時間の分だけ三成は、考え、悩んだのだ。
「官兵衛……それは本気か?」
「俺が冗談でこんな事を言うと思うか?」
「貴様には世話になったと思っている……貴様が悪い人間ではないのも……」
「そう思ってくれるんなら、話くらいは聞いてくれや」
「話だけは……な」
 少なくとも話だけは聞いてもいい。
 三成が出したその結論に、官兵衛は飛び上がって叫びたくなる気持ちを抑えながら唇を大きく歪ませた。話自体を拒絶されてしまえば今日はこれ以上何も言わないつもりだったが、三成は話を聞いてもいいと思う程には官兵衛を信用してくれているようだ。
 これなら、もう少し強めに押しても大丈夫だろう。
 理屈で説得しようとしても三成は自分の思いを優先しようとするだろうし、秀吉も半兵衛も亡くなってしまった今、豊臣家という枷は三成を縛る役目を果たしはしない。彼は半兵衛の遺志を受け入れ、家康への思いに殉ずるために死を選ぼうとしているのだ。
 ならば、三成を変える方法は一つしかない。
 夜も更け、月は中天へと昇っているのだろう。
 障子にうつるほのかな輝きを見つめながら、官兵衛は心の内にある三成への思いを全て言葉に込める。
「小生はお前さんに死なれたら困る」
「死ぬ前に鍵は渡してやる……私もそこまで馬鹿ではない」
「鍵が欲しいってだけでここまですると思うか? お前さんの言葉を借りるが、小生だってそこまで馬鹿じゃない」
「ならば何故だ? 刑部に何か言われたのか?」
「刑部の奴と目的は一緒だがな、あいつが目指してるものはこの戦が終わった後にあるんだろうよ……小生はそこまでつきあう気はない。どこぞの誰かさんも、そこまではつきあわんだろうな……そうだろう?」
「何を言っているのだ?」
「ちょっとした独り言だ、気にすんな」
 この話を聞いているであろう毛利に聞こえるように言ってやると、背に知っている壁から小さな物音。明日の朝毛利に会ったら言葉でいたぶられるのだろうが、この時くらいは優位を楽しみたい。
 壁を挟んで自分の後ろにいるのなら、三成の言葉は聞こえにくいだろう。
 自分が大きな声で話せば毛利は勝手に内容を推察するだろうと判断し、官兵衛は通常よりも強めに腹に力を込め意識しながら周囲に響き渡る声を発した。
「話を戻すか……簡単に言えば、小生はお前さんに惚れたって事だ」
「………………気でも狂ったか?」
「どこぞの家の逆立った狸に惚れて、死のうとしている馬鹿はどこのどいつだ」
「貴様に私の何がわかるっ!」
「わからんさ。だからこそ小生は何度でも言ってやる……お前さんに惚れた、だから死んで欲しくない……とな」
「惚れただと!? くだらないことを言うな!」
「そのくだらないことってやつに、お前さんは命を賭ける気なんだろうが。お前さんの思いだけでこの世の中が動くと思うな。生きてりゃ誰かに惚れるんだよ……振られようが嫌われようが、な」
「………………………」
「小生はお前さんに惚れた、だからお前さんが欲しい。こんな馬鹿げた戦で死なせる気などないし、お前さんと共に生きていきたい……それが小生の望みだ」
 年下の、それもこんな融通の利かない相手にこんな告白をすることになるとは思ってもいなかった。だが曖昧な言葉では三成には届かない、はっきりとした言葉で彼の心を刺し貫かなければ。
 三成は決してわかってはくれないだろう。
 そしてわかってくれたからといって、素直に受け入れてくれる三成でもない。
「私は貴様を愛してはいない」
「そうだろうな……だがあの馬鹿狸がお前さんに惚れてくれることもないだろう?」
「そんなことはわかっている!」
「報われない思いってやつに殉じて死ぬなんて、小生から見れば馬鹿もいいところだ。別に小生に惚れろとは言わんがな、馬鹿の為に死ぬくらいなら別な相手に惚れてみろや。それが小生ならありがたいがな」
「できるわけがない……あの男は…………家康は…………」
「お前さんの気持ちはわかるがな、もうあいつは敵に回っちまった」
 今三成が口にした『家康』という言葉は毛利の耳に届いてしまっただろうか。
 三成が敵方の誰かを思い、その人物のために死に逝こうとしていることを知られるのは構わない。だがそれが相手の大将だと知られてしまえば、毛利家の離反を招きかねないだろう。
 そして大谷がそれを毛利に告げている可能性は極端に低い。
 上手く三成の言葉を遮ることができたが、彼がまた同じ話をしだすかもしれないと考えると、さっさと本題にいったほうがよさそうだ。
「あいつに気持ちが残ってんのはわかる、惚れた相手だ……未練だって残るよな。それならどうだ? 小生と賭をしてみないか?」
「賭け?」
「次にあいつと会った時……聞いてみりゃいいんだよ、後悔してるかってな。あいつが後悔してるって言えばお前さんの勝ち、死ぬなり首を切られるなり好きにすりゃいい。だがもしあいつが後悔してないって言い切ったのなら、小生の勝ちだ」
「貴様が勝ったら何を求める……貴様のものになれとでもいうのか?」
「そんな簡単にお前さんが気持ちを変えるのなら、小生はこんな賭けなぞ言い出したりはせんよ。小生が望むのはお前さんに生きてもらうことだ、惚れてもらうのはその後でいい」
 半兵衛の言葉のままに家康は秀吉を討った。
 親しいわけではないので彼の内面を読み切ることはできないが、多分家康は公衆の面前で後悔したという言葉を口にすることはないだろう。そして三成の中では家康を思う気持ちに覆い隠されてはいるが、秀吉を討った家康への憎しみだって存在しているはずなのだ。
 その憎しみを打ち消すために、三成はこの官兵衛の提示した賭けにのるはず。
 この賭を拒否すれば家康を信じていないことになり、賭を受け入れれば家康の気持ちを知ることができる。どちらを選んだにしても、将来三成は家康の言葉によって打ちのめされることになるはずなのだが。今の三成にそれを知る術はないだろうし、なにより大きく揺れた心は甘い言葉と優しい態度を欲するはずだ。
 その時じっくり口説けば、三成の気持ちを自分へと向けることができる。
 相手を見ているだけでいい、相手の幸せのためならば自分を犠牲にしてもいい。そんな甘い考えで官兵衛は動く事ができない、三成を思っているからこそ彼の思いを自分に向けるために全力を尽くすのだ。
 賭という名の鎖で縛り上げ、逃げられないようにし。
 徐々に自分の元へと引き寄せ、三成の全てを手に入れる。
 自分の手を縛り上げる枷のように目に見えはしないが、三成の心はもう官兵衛の言葉に絡め取られつつあった。
 本人が気付かぬうちに退路を塞ぎ、己の意志でその決断をしたように思い込ませる。
 それが軍師の話術の真骨頂、軍を、そして人を動かすための方法であった。
「どうした、負けるのがわかってるから受けたくないか?」
「後悔しているに決まっているだろう……望んであの様なことをしたわけではないのだ。半兵衛様が命じたから……」
「お前さんがそう思うのなら、受けられるよな。それとも怖じ気づいたか……まあしょうがないがな」
「怖じ気づくわけないだろう! 受けてやる! そのかわり貴様が負けたら……もう一つ鉄球をつけてやるからな!!!」
 ある意味自分の現在の存在意義を賭けているようなものなのに、対価がそれでいいのか。
 即物的というか直情というか。
 後のことを考えない発言に思わず唇を緩めると、きっと三成に睨み付けられた。
「何が可笑しい!」
「お前さんは相変わらず可愛い奴だと思ってな」
「私が可愛いなど……そんなことを言うのは貴様だけだ」
「あの狸には言われたことなかったのか?」
「言うわけがない」
「なら小生が最初というわけだ」
 ここに酒でもあれば、自分の出した結果を祝うために一気に飲み干したいところだが。
 成功したと思った瞬間に気を緩めて不幸な結果を招き入れるのが官兵衛の悪い癖。三成を言葉で作った罠に捉えた喜びを押し隠しつつ、官兵衛は優しい年長者としての笑顔を形作り。
「明日は真田と稽古なんだろ? さっさと眠っておけ」
「眠るとは言っていない」
「眠れないなら添い寝してやろうか? なんならゆっくり眠れるように閨で疲れることをしてもいいんだが」
「………………馬鹿が」
 そう冷たく言い放ちはしたが、三成の顔に険しさは刻み込まれなかった。
 官兵衛が自分を思っている、だから害を加えてくることはない。それを理解したことで少し安心したのだろう。
 自分を思っていてくれる人がいる、それはどんな形であろうとも力になるのだ。
 家康を思いながら官兵衛に愛されることで心を落ちつかせる。その事実がどれだけ官兵衛を傷つけるのか、三成にもそれはわかったらしい。
 官兵衛に信頼のこもった眼差しを一瞬だけ向け、その後何かに気がついたようにその澄んだ眼差しに暗い影を刻んで。
 話は終わりだと言わんばかりに無言で立ち上がった三成は、官兵衛に見られぬように顔を背けてから。

 小さく、唇を噛んだ。



________________________________________
ということで、アニキの全く出ないアニキの章です。
次からは出ずっぱりだよ!

そんな感じで、三成さんが本気口説きモードの官兵衛さんにどこまで抵抗できるのか……ずるくて欲望に忠実な大人は大好きです。
次のターニングポイントは次の章です。


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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
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ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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