こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ぼちぼちついったで書いていますが続き。
*****
空は一気に明るくなったが、まだ人の動きはない。
淡き光に包まれる廊下を歩きながら、竹中半兵衛は静謐に包まれた一時を楽しんでいた。豊臣軍の侵略は順調、兵たちも日に日に精強になっていく。一人の武将の力だけではなく一兵卒の力を高めることも必要。
半兵衛が提唱した軍としての力の増強は、間違っていなかった。
それも半兵衛の力だけではなく、秀吉の魅力に惹かれて集った様々な人間達のおかげなのだが。
頭脳を誇る者も、武力だけを持つ者も。
半兵衛の計画に従って軍の歯車となってくれる。豊臣軍の力を知れば、更なる優秀な人材が秀吉の元に集ってくるだろう。それを楽しみにし、次なる戦へ思考を巡らせながらのんびりと散歩を楽しんでいると、目についたのは自分と並ぶ頭脳を持つ男の居室。
早朝なのであの男は寝ているはずだが、ちょっと覗いていくのも悪くないだろう。
「官兵衛君? そろそろ起きたら…………って、何やってるの!」
朝早く起こして嫌がらせをしてやろう、その程度の考えで襖を力一杯開けた官兵衛だったが。
そこにあったのは、決して見たくなかった光景だった。
「あぁ? まだ日が昇ったばかりだろうが……小生はともかく、佐吉は寝かしてやれ」
「…………はんべえ……さま…………」
狭い上に書物があちこちに散らばっており、足の踏み場もない上に部屋のど真ん中に布団が敷かれている。そこに大の字になって官兵衛が寝ているのはいつものことなのだが、今日は彼に寄り添うかのように佐吉の細い腕が半兵衛の胴に絡みついていた。
つまり、一緒に寝ていたということだ。
「官兵衛君……僕は君に佐吉君を預かってと言ったけど、添い寝してあげてと頼んだ覚えはないけど」
「小生だってどうせ寝るなら女がいいに決まってるだろうが……おい佐吉、そろそろ小生の布団から出て行け」
「もう朝なのだな?」
「外を見てみろ、もう化け物も幽霊も出ない」
「お化け? なにそれ?」
まだ眠気があるのか、官兵衛の体に抱きついたまま何度も首を振る佐吉の頭を撫でてやっている官兵衛だが、彼も相当眠いらしい。気になる発言をしたまま再度眠りにつこうとした彼の布団を引っぺがし、 枕に膝を乗せると官兵衛の頭だけを膝で叩き落とした。
「なにするんじゃ!」
「僕は君の話が聞きたいんだけど……化け物とか幽霊って何?」
「……首塚です」
「佐吉君起きたんだ。それで、首塚って何?」
官兵衛の大声で完全に目が覚めてしまったのだろう。
寝相が悪かったからか肩を思いっきりはだけさせ、もそもそと体を起こした佐吉が渋面のままそう呟く。体を起こそうとしない官兵衛を放置して半兵衛へと向き直った三成は、まだ半分眠っているらしい頭を全力で回転させながら、ゆっくりとこの状況の意味を説明し始めた。
「城下町の入り口に、首塚ができたのです」
「そんなのができたら、僕に報告が来そうなものだけど」
「はい、正確には首塚ではないのです。首を模した焼き物が山のように積まれている塚でして……」
「誰かの悪戯、にしては趣味が悪いね」
こくりと頷く佐吉は、小さなため息をついてから話を続ける。
「昨日……妙な話を聞いたのです。首塚の上で鬼火が燃えていて、死者がその周囲を歩き回っている……と」
「それで怖くなって官兵衛君の布団に潜り込んだんだ」
「恥ずかしながら……」
しゅんとした顔を下に向ける佐吉に微笑んでやると、二人の話に割って入るような大きないびき。再度眠りに落ちた官兵衛を見ながら、半兵衛はふむと呟いてから顎に指を添えた。
単なる子供の間で広がる噂ですめばいいのだが。
官兵衛が怖がる佐吉が布団の中に入ってきても拒まなかったのは、噂話の中に潜む何かに気がついたからだろう。
さっさと目を覚ましてこの件について何か語ってくれればいいのに。
「寝汚い男だね……本当に」
「返す言葉もないです」
「さっさと起きてよ」
と、手を伸ばして鼻をつまんでやるが、ふごふご言いながらも彼は目を覚まさない。
まだ起きようとしない官兵衛に辟易しながら、布団の上にちょこんと座ってこちらをじいっと見つめる佐吉に微笑みかけてやる。
官兵衛は何かに気がついている、そして佐吉をそれから護ることを選択した。
ならば自分の言うことは一つしかない。
「佐吉君、その首塚の側に行ったりしないようにね……絶対に」
「は、はい……」
少し厳しめにそう言ってやると、体を硬くした佐吉が神妙そうな様子で返事を口にした。
その日佐吉は久しぶりに顔に痣をこしらえて官兵衛の所へと戻ってきた。
「取ってきたぞ、これでいいのだな」
「ずいぶん男前になってきたな……道中で誰に会った?」
「あいつらだ……」
周囲を伺うようにしてからぴしっと襖を閉め、佐吉は口の端に血のかたまりをこびりつかせて寝転がったまま書物を読む官兵衛へと近づいてくる。そのままぺたりとすぐ側に座り込むと、顔を全く隠す様子もなく頼んでいた物を差し出してきた。
ただし、目は合わせようとしない。
「お前さん足は速いだろうに、逃げ出せなかったのか?」
「逃げたのだ、だが……」
「なんだ? 首塚の前で足がすくんだか?」
「………………………」
図星か。
いつも佐吉をいじめる秀吉の小姓連中に首塚の付近まで追い込まれたのだろう。常日頃彼らにあった時は逃げ出すようにと言い含めているのだが、首塚の前では自慢の足も動かなかったということか。
あの小姓たちは豊臣軍の資金を出してくれている豪商の子供達なので、いくら佐吉が有能だろうと表だって逆らうわけにはいかないのだ。親たちはあわよくば未来のこの国の王に投資し、ついでに子供を気に入ってくれればと思って差し出したのだろうが、秀吉はそんな思惑に乗る男ではない。
そして商人の子供として甘やかされてきた子供達が、小姓としての仕事を満足にこなせるわけもなく。当然のようにねたみや憎しみは佐吉へ向けられてしまった。
官兵衛はそれが理由で佐吉を預かることになったわけだが。
それでも彼らが隙を見ては佐吉を痛めつけようとするのは、彼らがこの城での生活を受け入れられないからなのだろう。考えるまでもなく将家と武家の生活は大きく違う。いきなり家のためという理由で生活様式が違う家に放りこまれれば、どんな性格のいい子供だって鬱屈して歪んでしまうだろうに。
彼らの親はそんなこともわからなかったのか。
負の思いをぶつけられる佐吉だって痛みを感じるし、理由のない憎しみをぶつけられて苦しまないわけがないのに。
「お前さんは偉いな…………たいしたもんだ」
「私は偉くなどない、貴様や半兵衛様との約束を破った」
「約束?」
「……首塚に……近づくなと……」
「逃げたらそこに着いただけだろうが。お前さんが望んで行ったわけでもないのに……気にするな。それにあそこは数日後には坊さんを呼んで取り壊す予定だ」
「…………僧を呼ぶのか?」
気にするな、そう言った瞬間に宙をさまよっていた目が勘兵衛へと向けられる。
膝の上でぎゅっと拳を握り、怒られることを覚悟していた佐吉の目に徐々に力が戻ってくるのを確認し、官兵衛は体を起こす。
素直すぎて、そこが愛おしい。
どんな状況であろうと、佐吉は大切な人との約束を守ろうとする。官兵衛の元へ来たのも半兵衛言われたからであるし、官兵衛の元へ来てからも口では貴様呼ばわりではあるが主人として敬愛してくれるようになりつつあるのが彼の態度でわかるのだ。
だから半兵衛と自分の約束は何が何でも守りたかったのだろう。
怒られなかったのでほっとしたようではあるが、まだ自分を責めるかのように時折唇を噛みしめている佐吉の顔をのぞき込むと、急に佐吉の目が見開かれた。
「わ、私は平気だからな! 別に殴られようが蹴られようが……約束を守れなかったことの方が……」
「そういうことを言いたい訳じゃない。顔を上げろ、佐吉」
「…………なんだ?」
「顔を冷やさんと明日の朝に腫れることになる。それとな……お前さんに聞きたいことがある」
手を伸ばし、左の頬骨のあたりを中心に広がる痣を指で触る。
子供の、しかも暴力に慣れていない商家の子供の一撃なので骨にまでは達していないようだ。指で軽く傷口を押すと顔をしかめるが、痛みがひどくてのたうち回る程ではない。それに顔も変形していないので、これなら今から顔を冷やして一日寝れば徐々に落ちつくだろう。
佐吉はこれで大丈夫。
問題は、別なところにあった。
「首塚だがな……お前さんから見てどうだった?」
「気持ち悪かった……前に見たことがある男に似ている感じがする」
「前に見た? 誰だそりゃ」
「秀吉様に会いに来た……南部という男だ。あの男の側に行った時と同じだ、寒気がして気持ちが悪い。足も上手く動かなくてそれで私は……」
「面倒なこった……小生の運の悪さは折り紙付きだな」
「官兵衛……どうした?」
「こっちの話だ」
思わず口に出る程に、面倒な事態。
佐吉の素直な感性ならばあれの正体を素直に見極めることができるかもしれないと思いはしたが。まさかここまで正確に正体を見極めてきてくれるとは。
首塚の処理に関しては官兵衛が一任されているのだ。
僧を呼んでお参りをしてから崩せば民衆の秀吉への忠誠心もあがるだろうと見越して準備を進めていたのだが、どうやらそれで済むような事態ではないらしい。
早く半兵衛を呼んで話をせねば。
最後に一度三成の頬を優しく撫でてやり、立ち上がってこれから半兵衛を呼びに行こうと思った瞬間。
ふと、気がついたことがあった。
「佐吉、それでお前さんの顔に痣をこしらえてくれた奴らは城に戻ってるのか?」
「……わからない」
「厄介ごとがもう一つ、にならなきゃいいがな。すまんがお前さんも一緒に来てくれるか?」
「別に構わんが……何かあるのか?」
「多分、な。正直お前さんが一緒に来てくれると心強いな」
官兵衛に合わせて即座に立ち上がる佐吉を頼もしげに見つめる。
先程までの落ち込んだ様子はどこへやら、官兵衛に頼られていることで自信を取り戻し唇に力を込めている佐吉を見ながら官兵衛は思った。
自分の不運が彼だけは避けて通ってくれるように、と。
それからすぐ後、件の少年達は城にも生家にも戻っていないことがわかり。
竹中半兵衛と黒田官兵衛はそれぞれの立場で事態を収拾するために動き出すことになったのだった。
_______________________________________
首塚編はもう少しで終わり。
次は九州編になる予定です。細切れなのでちょっとずつしか進みませんが、きっとそろそろ佐吉さんが官兵衛様……らぶ、とか言ってくれる……といいなあ。
あ、7月のイベントの無料おまけ本は「輪舞~偽~」の途中まで総集編おためしばん+書き下ろしというか本にする時に最後にのっける用のエピローグ(前編)になる予定です。んで、ここでぽろっと輪舞の構成についてばらす予定です。
いや、そろそろ黙っているのが辛くなってきた……
淡き光に包まれる廊下を歩きながら、竹中半兵衛は静謐に包まれた一時を楽しんでいた。豊臣軍の侵略は順調、兵たちも日に日に精強になっていく。一人の武将の力だけではなく一兵卒の力を高めることも必要。
半兵衛が提唱した軍としての力の増強は、間違っていなかった。
それも半兵衛の力だけではなく、秀吉の魅力に惹かれて集った様々な人間達のおかげなのだが。
頭脳を誇る者も、武力だけを持つ者も。
半兵衛の計画に従って軍の歯車となってくれる。豊臣軍の力を知れば、更なる優秀な人材が秀吉の元に集ってくるだろう。それを楽しみにし、次なる戦へ思考を巡らせながらのんびりと散歩を楽しんでいると、目についたのは自分と並ぶ頭脳を持つ男の居室。
早朝なのであの男は寝ているはずだが、ちょっと覗いていくのも悪くないだろう。
「官兵衛君? そろそろ起きたら…………って、何やってるの!」
朝早く起こして嫌がらせをしてやろう、その程度の考えで襖を力一杯開けた官兵衛だったが。
そこにあったのは、決して見たくなかった光景だった。
「あぁ? まだ日が昇ったばかりだろうが……小生はともかく、佐吉は寝かしてやれ」
「…………はんべえ……さま…………」
狭い上に書物があちこちに散らばっており、足の踏み場もない上に部屋のど真ん中に布団が敷かれている。そこに大の字になって官兵衛が寝ているのはいつものことなのだが、今日は彼に寄り添うかのように佐吉の細い腕が半兵衛の胴に絡みついていた。
つまり、一緒に寝ていたということだ。
「官兵衛君……僕は君に佐吉君を預かってと言ったけど、添い寝してあげてと頼んだ覚えはないけど」
「小生だってどうせ寝るなら女がいいに決まってるだろうが……おい佐吉、そろそろ小生の布団から出て行け」
「もう朝なのだな?」
「外を見てみろ、もう化け物も幽霊も出ない」
「お化け? なにそれ?」
まだ眠気があるのか、官兵衛の体に抱きついたまま何度も首を振る佐吉の頭を撫でてやっている官兵衛だが、彼も相当眠いらしい。気になる発言をしたまま再度眠りにつこうとした彼の布団を引っぺがし、 枕に膝を乗せると官兵衛の頭だけを膝で叩き落とした。
「なにするんじゃ!」
「僕は君の話が聞きたいんだけど……化け物とか幽霊って何?」
「……首塚です」
「佐吉君起きたんだ。それで、首塚って何?」
官兵衛の大声で完全に目が覚めてしまったのだろう。
寝相が悪かったからか肩を思いっきりはだけさせ、もそもそと体を起こした佐吉が渋面のままそう呟く。体を起こそうとしない官兵衛を放置して半兵衛へと向き直った三成は、まだ半分眠っているらしい頭を全力で回転させながら、ゆっくりとこの状況の意味を説明し始めた。
「城下町の入り口に、首塚ができたのです」
「そんなのができたら、僕に報告が来そうなものだけど」
「はい、正確には首塚ではないのです。首を模した焼き物が山のように積まれている塚でして……」
「誰かの悪戯、にしては趣味が悪いね」
こくりと頷く佐吉は、小さなため息をついてから話を続ける。
「昨日……妙な話を聞いたのです。首塚の上で鬼火が燃えていて、死者がその周囲を歩き回っている……と」
「それで怖くなって官兵衛君の布団に潜り込んだんだ」
「恥ずかしながら……」
しゅんとした顔を下に向ける佐吉に微笑んでやると、二人の話に割って入るような大きないびき。再度眠りに落ちた官兵衛を見ながら、半兵衛はふむと呟いてから顎に指を添えた。
単なる子供の間で広がる噂ですめばいいのだが。
官兵衛が怖がる佐吉が布団の中に入ってきても拒まなかったのは、噂話の中に潜む何かに気がついたからだろう。
さっさと目を覚ましてこの件について何か語ってくれればいいのに。
「寝汚い男だね……本当に」
「返す言葉もないです」
「さっさと起きてよ」
と、手を伸ばして鼻をつまんでやるが、ふごふご言いながらも彼は目を覚まさない。
まだ起きようとしない官兵衛に辟易しながら、布団の上にちょこんと座ってこちらをじいっと見つめる佐吉に微笑みかけてやる。
官兵衛は何かに気がついている、そして佐吉をそれから護ることを選択した。
ならば自分の言うことは一つしかない。
「佐吉君、その首塚の側に行ったりしないようにね……絶対に」
「は、はい……」
少し厳しめにそう言ってやると、体を硬くした佐吉が神妙そうな様子で返事を口にした。
その日佐吉は久しぶりに顔に痣をこしらえて官兵衛の所へと戻ってきた。
「取ってきたぞ、これでいいのだな」
「ずいぶん男前になってきたな……道中で誰に会った?」
「あいつらだ……」
周囲を伺うようにしてからぴしっと襖を閉め、佐吉は口の端に血のかたまりをこびりつかせて寝転がったまま書物を読む官兵衛へと近づいてくる。そのままぺたりとすぐ側に座り込むと、顔を全く隠す様子もなく頼んでいた物を差し出してきた。
ただし、目は合わせようとしない。
「お前さん足は速いだろうに、逃げ出せなかったのか?」
「逃げたのだ、だが……」
「なんだ? 首塚の前で足がすくんだか?」
「………………………」
図星か。
いつも佐吉をいじめる秀吉の小姓連中に首塚の付近まで追い込まれたのだろう。常日頃彼らにあった時は逃げ出すようにと言い含めているのだが、首塚の前では自慢の足も動かなかったということか。
あの小姓たちは豊臣軍の資金を出してくれている豪商の子供達なので、いくら佐吉が有能だろうと表だって逆らうわけにはいかないのだ。親たちはあわよくば未来のこの国の王に投資し、ついでに子供を気に入ってくれればと思って差し出したのだろうが、秀吉はそんな思惑に乗る男ではない。
そして商人の子供として甘やかされてきた子供達が、小姓としての仕事を満足にこなせるわけもなく。当然のようにねたみや憎しみは佐吉へ向けられてしまった。
官兵衛はそれが理由で佐吉を預かることになったわけだが。
それでも彼らが隙を見ては佐吉を痛めつけようとするのは、彼らがこの城での生活を受け入れられないからなのだろう。考えるまでもなく将家と武家の生活は大きく違う。いきなり家のためという理由で生活様式が違う家に放りこまれれば、どんな性格のいい子供だって鬱屈して歪んでしまうだろうに。
彼らの親はそんなこともわからなかったのか。
負の思いをぶつけられる佐吉だって痛みを感じるし、理由のない憎しみをぶつけられて苦しまないわけがないのに。
「お前さんは偉いな…………たいしたもんだ」
「私は偉くなどない、貴様や半兵衛様との約束を破った」
「約束?」
「……首塚に……近づくなと……」
「逃げたらそこに着いただけだろうが。お前さんが望んで行ったわけでもないのに……気にするな。それにあそこは数日後には坊さんを呼んで取り壊す予定だ」
「…………僧を呼ぶのか?」
気にするな、そう言った瞬間に宙をさまよっていた目が勘兵衛へと向けられる。
膝の上でぎゅっと拳を握り、怒られることを覚悟していた佐吉の目に徐々に力が戻ってくるのを確認し、官兵衛は体を起こす。
素直すぎて、そこが愛おしい。
どんな状況であろうと、佐吉は大切な人との約束を守ろうとする。官兵衛の元へ来たのも半兵衛言われたからであるし、官兵衛の元へ来てからも口では貴様呼ばわりではあるが主人として敬愛してくれるようになりつつあるのが彼の態度でわかるのだ。
だから半兵衛と自分の約束は何が何でも守りたかったのだろう。
怒られなかったのでほっとしたようではあるが、まだ自分を責めるかのように時折唇を噛みしめている佐吉の顔をのぞき込むと、急に佐吉の目が見開かれた。
「わ、私は平気だからな! 別に殴られようが蹴られようが……約束を守れなかったことの方が……」
「そういうことを言いたい訳じゃない。顔を上げろ、佐吉」
「…………なんだ?」
「顔を冷やさんと明日の朝に腫れることになる。それとな……お前さんに聞きたいことがある」
手を伸ばし、左の頬骨のあたりを中心に広がる痣を指で触る。
子供の、しかも暴力に慣れていない商家の子供の一撃なので骨にまでは達していないようだ。指で軽く傷口を押すと顔をしかめるが、痛みがひどくてのたうち回る程ではない。それに顔も変形していないので、これなら今から顔を冷やして一日寝れば徐々に落ちつくだろう。
佐吉はこれで大丈夫。
問題は、別なところにあった。
「首塚だがな……お前さんから見てどうだった?」
「気持ち悪かった……前に見たことがある男に似ている感じがする」
「前に見た? 誰だそりゃ」
「秀吉様に会いに来た……南部という男だ。あの男の側に行った時と同じだ、寒気がして気持ちが悪い。足も上手く動かなくてそれで私は……」
「面倒なこった……小生の運の悪さは折り紙付きだな」
「官兵衛……どうした?」
「こっちの話だ」
思わず口に出る程に、面倒な事態。
佐吉の素直な感性ならばあれの正体を素直に見極めることができるかもしれないと思いはしたが。まさかここまで正確に正体を見極めてきてくれるとは。
首塚の処理に関しては官兵衛が一任されているのだ。
僧を呼んでお参りをしてから崩せば民衆の秀吉への忠誠心もあがるだろうと見越して準備を進めていたのだが、どうやらそれで済むような事態ではないらしい。
早く半兵衛を呼んで話をせねば。
最後に一度三成の頬を優しく撫でてやり、立ち上がってこれから半兵衛を呼びに行こうと思った瞬間。
ふと、気がついたことがあった。
「佐吉、それでお前さんの顔に痣をこしらえてくれた奴らは城に戻ってるのか?」
「……わからない」
「厄介ごとがもう一つ、にならなきゃいいがな。すまんがお前さんも一緒に来てくれるか?」
「別に構わんが……何かあるのか?」
「多分、な。正直お前さんが一緒に来てくれると心強いな」
官兵衛に合わせて即座に立ち上がる佐吉を頼もしげに見つめる。
先程までの落ち込んだ様子はどこへやら、官兵衛に頼られていることで自信を取り戻し唇に力を込めている佐吉を見ながら官兵衛は思った。
自分の不運が彼だけは避けて通ってくれるように、と。
それからすぐ後、件の少年達は城にも生家にも戻っていないことがわかり。
竹中半兵衛と黒田官兵衛はそれぞれの立場で事態を収拾するために動き出すことになったのだった。
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首塚編はもう少しで終わり。
次は九州編になる予定です。細切れなのでちょっとずつしか進みませんが、きっとそろそろ佐吉さんが官兵衛様……らぶ、とか言ってくれる……といいなあ。
あ、7月のイベントの無料おまけ本は「輪舞~偽~」の途中まで総集編おためしばん+書き下ろしというか本にする時に最後にのっける用のエピローグ(前編)になる予定です。んで、ここでぽろっと輪舞の構成についてばらす予定です。
いや、そろそろ黙っているのが辛くなってきた……
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
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