こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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終わりです……勝手に奥州でこんな話書いて、みっしさんに撲殺されないだろうか……一応許可は取ったんだけどね……
*****
その日の朝、伊達家の屋敷を最初に訪問したのは赤い鋼の親子だった。
鎧を赤く縫った本田忠勝と娘として三河で暮らしている忠子は、今回のさんた役を快く引き受けたらしい。こじゅが希望した小さな荷車、そしてちび政宗用の小さな背負子。その二つを丁寧に地面に置いて去っていった忠勝たちには、まだまだぷれぜんとを配達しなければならない場所が残っているらしい。
政宗が家康に頼んで、その家康が忠勝に命じて。
一日で日本各地を回らなければならないので、今日は一日大忙し。そう言いながらも楽しそうに父親の周りを回っている忠子は、父親とお出かけできるのが楽しくって仕方がないようだ。奥州は雪まみれで花が咲いていないので空腹を訴え続けていたが、赤く塗られたことに不満はないらしい。むしろ女の子っぽくなって可愛いと喜んでいたので、もしかしたらこのままずっとこの色でいたいと言い出す可能性もある。
こじゅとしては、いつもの鋼の色合いの方がかっこいいと思うのだが。
手を振って朝早くから夜遅くまで働くであろう本田親子を見守ってから、こじゅはちび政宗ともらったぷれぜんとを検分し始めた。本田家の親子でなければ運べないほど大きな袋に入っていたのは、こじゅとちび政宗の体の大きさに合わせて作られた荷車と背負子。これで小十郎みたいに畑でとれた野菜を運ぶことができる上に、自分たちも野菜を売りに行ったりすることができるようになる。
小十郎の野菜はとても美味しいので、売って欲しいという友達がいっぱいいるのだ。
大喜びで屋敷中を駆け回るちび政宗は当然の如く大きい政宗に背負子を見せに行ったのだが、当の政宗は小十郎から外出禁止を言いつけられ布団の中で渋い顔をし続けていた。
少しだけ喉が痛い、ちょっと熱っぽい気がする。
昨夜の食事の終わり際になにげなく政宗が口にした瞬間、小十郎は政宗を布団の中に押し込んだ。余所の家の人にはちびを甘やかしすぎだと言うが、小十郎は政宗を大事にしすぎる。こんなの動いていれば直る、そう言い張る政宗だったが。
本気で凄む小十郎の怖い顔にはかなわなかった。
そんな理由でさんた代理が来る所を見ることもできず、布団から出ることも許されずに政宗の一日は終わってしまった。可哀想だと思ってこじゅもお見舞いに行こうとしたのだが、風邪がうつると小十郎に言われ部屋に入れてもらえなかったのだ。そんなわけで政宗に会うことができたのは、勢いで突入して小十郎につまみ出されたちび政宗だけ。
こじゅも荷車のお礼を言いたかったのに。
荷車をお供に室内を疾走して小十郎に怒られたりもしたが、それも楽しい思い出。政宗はいなかったが小十郎や屋敷の人たちと美味しい鍋をつつき、くりすますというのが結局どんなものかはよくわからなかったが楽しい一日をすごした最後に。
真っ暗な部屋の中でこじゅはいきなりちび政宗に手を引っ張れられた。
灯りを消してお布団に入って、今日はもう寝ようとしていたというのにちび政宗は何をこちらに伝えようとしているのだろう。
「みぃみぃ!」
「めぇ?」
「みぃ~」
「めぇめぇ~」
呼ばれてるからお外に行こう。
まだ政宗の部屋にいる小十郎は、二人がもう布団に入って眠ってしまったと思っているだろう。自分たちは夜に外に出るような悪い子ではない、それに今日一日ずっとはしゃいでいたからちび政宗も早く寝た方がいい。
そう伝えたのだが、ちび政宗は決して首を縦に振ろうとはしなかった。
こじゅと一緒に挨拶すると約束した。そう言いながら手を引っ張り続けるちび政宗に根負けし、また着物に着替えて藁の蓑と長靴を身につけて出たのは欠けた月に照らされた雪に埋もれた庭であった。
そういえば数日前に、ここでちび政宗と政宗の父を呼ぶ踊りをした。
結局踊りは途中で失敗した上に、体を冷やした政宗が布団に縛り付けられる要因にもなってしまったのだが。それから何度もちび政宗に政宗の父は死んでしまったのでここに来ることはできないと教えても、結局ちび政宗は理解してくれなかった。
いるから来てくれる。
絶対大丈夫。
よくわからない上に何に裏打ちされているのかわからない自信いっぱいな態度に疑問を感じながら、欲しい物はこっそり書き換えておいた。前から背負子を欲しがっていたのは知っていたし、父親に来て欲しいなんて書かれたら政宗はきっと泣いてしまう。
政宗もちび政宗も、寂しがりやで甘えん坊な所はそっくりなのだ。
誰と待ち合わせているのかはわからないが、できれば昼に会いたかったなあ。そんなことを思いながらさくさくと雪を踏みながら、こじゅはちび政宗に手を引かれて庭を歩く。
風が巻き上げた雪が一カ所に集まっているのか、ところどころに雪が一段と深い所があり埋まりそうになるがそれでもちび政宗は歩みを止めなかった。いつもならば転んだだけで泣き出して動かなくなるというのに、今日のちび政宗は本当によく頑張っている。
どうしてそんなに頑張れるんだろう。
ちび政宗が雪に埋まらないように後ろから声をかけ、雪の深そうな所を通らないように伝えながらこじゅは思う。政宗が大好きだから、政宗のためにできることをしたい。ちび政宗がそう思っていることは、きっとみんなが知っている。
こじゅたちだけでなく、政宗本人も。
だけどちび政宗が頑張る過程で怪我をしたり、泣いたりしたら逆に悲しませてしまうのだ。小十郎はよく政宗に自分一人のお体ではないので自重してくださいと言っている。自重という言葉の意味はこじゅにはよくわからないが、きっと無理したらみんな心配するよ、と言いたいのだろう。
だからちび政宗も無理しちゃだめ。
こじゅも小十郎のようにちび政宗に言ってみたら、返ってきたのは政宗が小十郎に返すのと同じ言葉だった。
信じて。
ただそれだけ。
だけどその言葉を聞いた時、こじゅは胸がずんと重くなって少しだけあったかい気持ちになった。心配だけど嬉しくて、優しくてじんわりと胸に広がる何か。
だからこじゅも小十郎のように、ちび政宗を信じてみることにした。
「…………みぃっ!」
「めぇ」
「みぃ~!」
「めぇ?」
ここで待ち合わせした、そう言ったちび政宗は庭の一番広い平らな場所の真ん中に立った。綺麗な丸い小石がいっぱい敷いてあるその場所で、夏の間は政宗と一緒にお昼寝したりご飯を食べたりしたのだ。
だが一体ここに誰が来るのだろう。
飛び跳ねながら上を向き、みぃみぃと誰かを呼び続けているちび政宗は、こじゅの疑問に答えるつもりはないらしい。昨日よりも遙かに強い月の光の下、両腕を振り回して雪に映る自分の影と戯れている。
今日はいい月だから、これを見られただけでも外に出て良かった。
ちび政宗に倣って同じく上を向き、こじゅも感嘆のため息を漏らしながら日の光と見まごうばかりの月を見る。
そして、おかしな事に気がついた。
「めぇ……?」
首を傾げて、角度を変えて月を見る。
確か昨日……いや、先程までは昨日と同じ欠けた月だったのに、今の月はすごく眩しくておまけに。
見事なほどにまん丸だった。
月が急に丸くなるなんて事、今まで一度も見たことがない。
眼をまん丸にして驚くこじゅだったが、ちび政宗はそうなることをわかっていたのだろう。
「みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
一際大きな声でそう叫ぶと、天で輝く宝玉のような月に向けて両手を差し伸べたのだった。
次の瞬間、キラキラと輝く月が大きく形を変える。月であったはずのものが解け、光の紐のようなものが夜空に広がり。
「めぇっ!?」
それは一直線にこちらを目指してきたのだ。
何かが落ちてきた、当たったら大変。慌ててちび政宗を連れて逃げようとして、だが眩しすぎる光の中ではちび政宗の手がどこにあるのかを探すことができず。
眼を手で覆いながら、なんとかしようとしていると。
「みぃ?」
なにしてるの? という、のんきなちび政宗の声。
その声の調子にどうやら切羽詰まった事態ではないということに気がついたこじゅは、恐る恐る目を開ける。
光は周囲を見ることができるほどの光量になっており、夜空の月も元通り欠けた物に戻っている。だが昼よりも明るくなっているのは事実だし、ちび政宗は喜び表現しているのか軽やかに足を動かして踊り続けていた。
そしてそのちび政宗の前には。
「…………め……めぇ?」
「みぃ!」
「めぇ……」
なんだかすごく大きい生き物がいた。
蛇のように長いがこの屋敷の全てを取り囲めるほどに長いし、おまけにちび政宗とこじゅが抱きついてもまだ足りないほどに体が太い。大きな蛇は友達にいるのでその仲間かと思ったが、蛇にしては鱗の一枚一枚が堅くて大きいし、なによりも全身からすごく綺麗な光を放っている。
もしかしたら、光が蛇の形を取っているのかもしれない。
「みぃみぃ」
「めぇ」
「みぃみぃみぃ!」
政宗やちび政宗と同じ角を持つ頭にぴょんと抱きついたちび政宗は、鼻の辺りに体を乗せるとこじゅに向けて胸を張って紹介して見せた。
政宗のお父さんだよ、と。
大きいし、光っているし、なにより政宗と同じ姿をしていない。
だけどちび政宗は元気いっぱいで信じ切った様子で紹介してくるし、当の長い生き物自体がちび政宗を乗せたままこちらに頭を下げてくるのだ。
「……………………」
「めぇめぇ~」
「…………………………」
「めぇ」
息子がいつもお世話になっています。
声なき声で長い生き物自身にそう挨拶されてしまうと、こじゅも頭を下げて挨拶を返すしかない。
屋敷の周囲を取り巻くかのように長い体を空に浮かせ、ちび政宗を顔に乗せて大きな目を細め。時折政宗の部屋へと慈愛に満ちた眼差しを向ける様子は、小十郎と全く同じ。
政宗が大好きで。
政宗を守るためならどんなことでもしたいと思っている。
姿形は違うけど、どうやらこれは本当に政宗の父らしい。絶対に政宗の父はいる、会いに来てくれる。そう言い続けてきたちび政宗の言葉は本当だったのだ。
ちょっとでもちび政宗を疑ったり、死んだらもう会えないなんて言ってしまって悪かったなと思ったこじゅは素直に政宗に頭を下げて謝る。
「めぇ~めぇめぇ」
「みぃ」
「めぇ……」
「みぃ~ みぃみぃ!」
お父さんが呼んでくれたから、わかったんだよ。
だからこじゅも信じてくれるようになるってわかってた、だから平気。光輝く長い頭の上でにぱっと笑い、ちび政宗はこちらに向けて手を差し伸べた。
政宗へのぷれぜんとを取りに行くから、一緒に行こう。
そう言いながらちょうど鼻の辺りで飛び跳ねたちび政宗を追うかのように、ちびこじゅも一生懸命助走を行い眩い顔の上に飛び乗り。
ぷれぜんとを手に入れるための旅に出発した。
幼い頃は風邪を引いたら、父親が水飴を食べさせてくれた。
甘くて優しい味わいの水飴を食べることができるのが楽しみで、早く風邪を引きたいと思った頃もあったが。
そんな時期はあっという間に終わってしまった。
父を喪い、奥州の命運をこの手に預かることになり。風邪を引いて誰かに甘える暇などなくなってしまった。必死に奥州と民を守るために生き続け、小さな家族たちとようやく暖かな生活を送ることができるようになったというのに。
どうして父の夢を見てしまったのか。
布団から無理矢理起きあがり、昨日より喉の痛みと倦怠感が増しているのを確認する。薄明かりの入っている室内の空気は乾ききっており、それは喉に切り裂くような痛みを与えていった。
気が重い上に体まで重いとは。
それでも屋敷の者に無事な姿だけは見せておくかと枕元を探って眼帯を探していると、ことりという音と共に堅い物が手に当たった。昨夜は眼帯が氷るほどの寒さだったのだろうかと思いながら眼帯を掴もうとすると、別な指にもぞもぞと動く何かが当たる。
「…………?」
寝ぼけ眼をこすり、気合いで目を開き。
周囲を見回すとまず最初に目についたのは、真っ赤で小さなもぞもぞと動く生き物だった。赤い該当のような物を身につけ、政宗の両脇を陣取るかのようにしながらすうすうと寝息を立て。
ちび政宗とこじゅが、政宗の布団に入って気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「……こいつら……ナニやってんだ?」
一応軽く揺すってはみたが、相当疲れているのか寝起きのいいこじゅすら起きる様子を見せない。ちび政宗は起こそうとすると雷が落ちてくることがあるので起こさず、政宗は次に枕元にある物を確認してみることにした。
綺麗で、そして中に何かがぎっしりと詰まっているらしい青い蓋付きの壺。
朝になったらちびたちが横にいて、そして壺があった。ということはこの壺はちびたちからの贈り物なのだろうが、果たして彼等は何を持ってきてくれたのやら。期待半分用心半分でふたを開けてみると、そこに入っていたのは予想だにしないものであった。
「…………水…飴……?」
光を固めたかのような金色の輝きを放つ水飴が、壺いっぱいに詰まっている。
どこでこんなに大量の水飴を手に入れてきたのか、そしてこの高級そうな壺は何なのか。ちびたちに聞きたいことはたくさんあったが、この様子だと昼間で起きることはないだろう。
そして、政宗は昔を思い出す。
遙か昔、まだ子供だった頃。風邪を引いた自分に父が持ってきてくれた水飴を、もっと舐めたいと言ったことがあった。
その時父はこう言ったのだ。
大人になったら壺ごとくれてやる、と。
「まさか……な」
自分で父を殺した『悪い子供』に、サンタがプレゼントをくれるわけがない。
それはわかっているが、もしかしたら。子供の頃の約束を父が果たしに来てくれたのでは、そしてちびたちもその手伝いをしたのでは。
そうであったら、父は死しても自分を気にかけていてくれているのなら。
自分は今日だけ、幸せな子供になれる。
奥州では手に入らない輝くような赤い布を身に纏ったちびたちの頭を順に撫で、政宗は小さく笑い声を上げながら眠る彼等に感謝の言葉を贈ったのだった。
「Thank you ……最高のChristmas presentだ……」
___________________________________________
という感じで、奥州編を始めて書いてみた、ちび政宗がぴゅあ過ぎて扱いに困った。
毒のあるぴゅあさの佐吉のが楽だ……
でも書いてて楽しかったです、うん。
鎧を赤く縫った本田忠勝と娘として三河で暮らしている忠子は、今回のさんた役を快く引き受けたらしい。こじゅが希望した小さな荷車、そしてちび政宗用の小さな背負子。その二つを丁寧に地面に置いて去っていった忠勝たちには、まだまだぷれぜんとを配達しなければならない場所が残っているらしい。
政宗が家康に頼んで、その家康が忠勝に命じて。
一日で日本各地を回らなければならないので、今日は一日大忙し。そう言いながらも楽しそうに父親の周りを回っている忠子は、父親とお出かけできるのが楽しくって仕方がないようだ。奥州は雪まみれで花が咲いていないので空腹を訴え続けていたが、赤く塗られたことに不満はないらしい。むしろ女の子っぽくなって可愛いと喜んでいたので、もしかしたらこのままずっとこの色でいたいと言い出す可能性もある。
こじゅとしては、いつもの鋼の色合いの方がかっこいいと思うのだが。
手を振って朝早くから夜遅くまで働くであろう本田親子を見守ってから、こじゅはちび政宗ともらったぷれぜんとを検分し始めた。本田家の親子でなければ運べないほど大きな袋に入っていたのは、こじゅとちび政宗の体の大きさに合わせて作られた荷車と背負子。これで小十郎みたいに畑でとれた野菜を運ぶことができる上に、自分たちも野菜を売りに行ったりすることができるようになる。
小十郎の野菜はとても美味しいので、売って欲しいという友達がいっぱいいるのだ。
大喜びで屋敷中を駆け回るちび政宗は当然の如く大きい政宗に背負子を見せに行ったのだが、当の政宗は小十郎から外出禁止を言いつけられ布団の中で渋い顔をし続けていた。
少しだけ喉が痛い、ちょっと熱っぽい気がする。
昨夜の食事の終わり際になにげなく政宗が口にした瞬間、小十郎は政宗を布団の中に押し込んだ。余所の家の人にはちびを甘やかしすぎだと言うが、小十郎は政宗を大事にしすぎる。こんなの動いていれば直る、そう言い張る政宗だったが。
本気で凄む小十郎の怖い顔にはかなわなかった。
そんな理由でさんた代理が来る所を見ることもできず、布団から出ることも許されずに政宗の一日は終わってしまった。可哀想だと思ってこじゅもお見舞いに行こうとしたのだが、風邪がうつると小十郎に言われ部屋に入れてもらえなかったのだ。そんなわけで政宗に会うことができたのは、勢いで突入して小十郎につまみ出されたちび政宗だけ。
こじゅも荷車のお礼を言いたかったのに。
荷車をお供に室内を疾走して小十郎に怒られたりもしたが、それも楽しい思い出。政宗はいなかったが小十郎や屋敷の人たちと美味しい鍋をつつき、くりすますというのが結局どんなものかはよくわからなかったが楽しい一日をすごした最後に。
真っ暗な部屋の中でこじゅはいきなりちび政宗に手を引っ張れられた。
灯りを消してお布団に入って、今日はもう寝ようとしていたというのにちび政宗は何をこちらに伝えようとしているのだろう。
「みぃみぃ!」
「めぇ?」
「みぃ~」
「めぇめぇ~」
呼ばれてるからお外に行こう。
まだ政宗の部屋にいる小十郎は、二人がもう布団に入って眠ってしまったと思っているだろう。自分たちは夜に外に出るような悪い子ではない、それに今日一日ずっとはしゃいでいたからちび政宗も早く寝た方がいい。
そう伝えたのだが、ちび政宗は決して首を縦に振ろうとはしなかった。
こじゅと一緒に挨拶すると約束した。そう言いながら手を引っ張り続けるちび政宗に根負けし、また着物に着替えて藁の蓑と長靴を身につけて出たのは欠けた月に照らされた雪に埋もれた庭であった。
そういえば数日前に、ここでちび政宗と政宗の父を呼ぶ踊りをした。
結局踊りは途中で失敗した上に、体を冷やした政宗が布団に縛り付けられる要因にもなってしまったのだが。それから何度もちび政宗に政宗の父は死んでしまったのでここに来ることはできないと教えても、結局ちび政宗は理解してくれなかった。
いるから来てくれる。
絶対大丈夫。
よくわからない上に何に裏打ちされているのかわからない自信いっぱいな態度に疑問を感じながら、欲しい物はこっそり書き換えておいた。前から背負子を欲しがっていたのは知っていたし、父親に来て欲しいなんて書かれたら政宗はきっと泣いてしまう。
政宗もちび政宗も、寂しがりやで甘えん坊な所はそっくりなのだ。
誰と待ち合わせているのかはわからないが、できれば昼に会いたかったなあ。そんなことを思いながらさくさくと雪を踏みながら、こじゅはちび政宗に手を引かれて庭を歩く。
風が巻き上げた雪が一カ所に集まっているのか、ところどころに雪が一段と深い所があり埋まりそうになるがそれでもちび政宗は歩みを止めなかった。いつもならば転んだだけで泣き出して動かなくなるというのに、今日のちび政宗は本当によく頑張っている。
どうしてそんなに頑張れるんだろう。
ちび政宗が雪に埋まらないように後ろから声をかけ、雪の深そうな所を通らないように伝えながらこじゅは思う。政宗が大好きだから、政宗のためにできることをしたい。ちび政宗がそう思っていることは、きっとみんなが知っている。
こじゅたちだけでなく、政宗本人も。
だけどちび政宗が頑張る過程で怪我をしたり、泣いたりしたら逆に悲しませてしまうのだ。小十郎はよく政宗に自分一人のお体ではないので自重してくださいと言っている。自重という言葉の意味はこじゅにはよくわからないが、きっと無理したらみんな心配するよ、と言いたいのだろう。
だからちび政宗も無理しちゃだめ。
こじゅも小十郎のようにちび政宗に言ってみたら、返ってきたのは政宗が小十郎に返すのと同じ言葉だった。
信じて。
ただそれだけ。
だけどその言葉を聞いた時、こじゅは胸がずんと重くなって少しだけあったかい気持ちになった。心配だけど嬉しくて、優しくてじんわりと胸に広がる何か。
だからこじゅも小十郎のように、ちび政宗を信じてみることにした。
「…………みぃっ!」
「めぇ」
「みぃ~!」
「めぇ?」
ここで待ち合わせした、そう言ったちび政宗は庭の一番広い平らな場所の真ん中に立った。綺麗な丸い小石がいっぱい敷いてあるその場所で、夏の間は政宗と一緒にお昼寝したりご飯を食べたりしたのだ。
だが一体ここに誰が来るのだろう。
飛び跳ねながら上を向き、みぃみぃと誰かを呼び続けているちび政宗は、こじゅの疑問に答えるつもりはないらしい。昨日よりも遙かに強い月の光の下、両腕を振り回して雪に映る自分の影と戯れている。
今日はいい月だから、これを見られただけでも外に出て良かった。
ちび政宗に倣って同じく上を向き、こじゅも感嘆のため息を漏らしながら日の光と見まごうばかりの月を見る。
そして、おかしな事に気がついた。
「めぇ……?」
首を傾げて、角度を変えて月を見る。
確か昨日……いや、先程までは昨日と同じ欠けた月だったのに、今の月はすごく眩しくておまけに。
見事なほどにまん丸だった。
月が急に丸くなるなんて事、今まで一度も見たことがない。
眼をまん丸にして驚くこじゅだったが、ちび政宗はそうなることをわかっていたのだろう。
「みぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
一際大きな声でそう叫ぶと、天で輝く宝玉のような月に向けて両手を差し伸べたのだった。
次の瞬間、キラキラと輝く月が大きく形を変える。月であったはずのものが解け、光の紐のようなものが夜空に広がり。
「めぇっ!?」
それは一直線にこちらを目指してきたのだ。
何かが落ちてきた、当たったら大変。慌ててちび政宗を連れて逃げようとして、だが眩しすぎる光の中ではちび政宗の手がどこにあるのかを探すことができず。
眼を手で覆いながら、なんとかしようとしていると。
「みぃ?」
なにしてるの? という、のんきなちび政宗の声。
その声の調子にどうやら切羽詰まった事態ではないということに気がついたこじゅは、恐る恐る目を開ける。
光は周囲を見ることができるほどの光量になっており、夜空の月も元通り欠けた物に戻っている。だが昼よりも明るくなっているのは事実だし、ちび政宗は喜び表現しているのか軽やかに足を動かして踊り続けていた。
そしてそのちび政宗の前には。
「…………め……めぇ?」
「みぃ!」
「めぇ……」
なんだかすごく大きい生き物がいた。
蛇のように長いがこの屋敷の全てを取り囲めるほどに長いし、おまけにちび政宗とこじゅが抱きついてもまだ足りないほどに体が太い。大きな蛇は友達にいるのでその仲間かと思ったが、蛇にしては鱗の一枚一枚が堅くて大きいし、なによりも全身からすごく綺麗な光を放っている。
もしかしたら、光が蛇の形を取っているのかもしれない。
「みぃみぃ」
「めぇ」
「みぃみぃみぃ!」
政宗やちび政宗と同じ角を持つ頭にぴょんと抱きついたちび政宗は、鼻の辺りに体を乗せるとこじゅに向けて胸を張って紹介して見せた。
政宗のお父さんだよ、と。
大きいし、光っているし、なにより政宗と同じ姿をしていない。
だけどちび政宗は元気いっぱいで信じ切った様子で紹介してくるし、当の長い生き物自体がちび政宗を乗せたままこちらに頭を下げてくるのだ。
「……………………」
「めぇめぇ~」
「…………………………」
「めぇ」
息子がいつもお世話になっています。
声なき声で長い生き物自身にそう挨拶されてしまうと、こじゅも頭を下げて挨拶を返すしかない。
屋敷の周囲を取り巻くかのように長い体を空に浮かせ、ちび政宗を顔に乗せて大きな目を細め。時折政宗の部屋へと慈愛に満ちた眼差しを向ける様子は、小十郎と全く同じ。
政宗が大好きで。
政宗を守るためならどんなことでもしたいと思っている。
姿形は違うけど、どうやらこれは本当に政宗の父らしい。絶対に政宗の父はいる、会いに来てくれる。そう言い続けてきたちび政宗の言葉は本当だったのだ。
ちょっとでもちび政宗を疑ったり、死んだらもう会えないなんて言ってしまって悪かったなと思ったこじゅは素直に政宗に頭を下げて謝る。
「めぇ~めぇめぇ」
「みぃ」
「めぇ……」
「みぃ~ みぃみぃ!」
お父さんが呼んでくれたから、わかったんだよ。
だからこじゅも信じてくれるようになるってわかってた、だから平気。光輝く長い頭の上でにぱっと笑い、ちび政宗はこちらに向けて手を差し伸べた。
政宗へのぷれぜんとを取りに行くから、一緒に行こう。
そう言いながらちょうど鼻の辺りで飛び跳ねたちび政宗を追うかのように、ちびこじゅも一生懸命助走を行い眩い顔の上に飛び乗り。
ぷれぜんとを手に入れるための旅に出発した。
幼い頃は風邪を引いたら、父親が水飴を食べさせてくれた。
甘くて優しい味わいの水飴を食べることができるのが楽しみで、早く風邪を引きたいと思った頃もあったが。
そんな時期はあっという間に終わってしまった。
父を喪い、奥州の命運をこの手に預かることになり。風邪を引いて誰かに甘える暇などなくなってしまった。必死に奥州と民を守るために生き続け、小さな家族たちとようやく暖かな生活を送ることができるようになったというのに。
どうして父の夢を見てしまったのか。
布団から無理矢理起きあがり、昨日より喉の痛みと倦怠感が増しているのを確認する。薄明かりの入っている室内の空気は乾ききっており、それは喉に切り裂くような痛みを与えていった。
気が重い上に体まで重いとは。
それでも屋敷の者に無事な姿だけは見せておくかと枕元を探って眼帯を探していると、ことりという音と共に堅い物が手に当たった。昨夜は眼帯が氷るほどの寒さだったのだろうかと思いながら眼帯を掴もうとすると、別な指にもぞもぞと動く何かが当たる。
「…………?」
寝ぼけ眼をこすり、気合いで目を開き。
周囲を見回すとまず最初に目についたのは、真っ赤で小さなもぞもぞと動く生き物だった。赤い該当のような物を身につけ、政宗の両脇を陣取るかのようにしながらすうすうと寝息を立て。
ちび政宗とこじゅが、政宗の布団に入って気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「……こいつら……ナニやってんだ?」
一応軽く揺すってはみたが、相当疲れているのか寝起きのいいこじゅすら起きる様子を見せない。ちび政宗は起こそうとすると雷が落ちてくることがあるので起こさず、政宗は次に枕元にある物を確認してみることにした。
綺麗で、そして中に何かがぎっしりと詰まっているらしい青い蓋付きの壺。
朝になったらちびたちが横にいて、そして壺があった。ということはこの壺はちびたちからの贈り物なのだろうが、果たして彼等は何を持ってきてくれたのやら。期待半分用心半分でふたを開けてみると、そこに入っていたのは予想だにしないものであった。
「…………水…飴……?」
光を固めたかのような金色の輝きを放つ水飴が、壺いっぱいに詰まっている。
どこでこんなに大量の水飴を手に入れてきたのか、そしてこの高級そうな壺は何なのか。ちびたちに聞きたいことはたくさんあったが、この様子だと昼間で起きることはないだろう。
そして、政宗は昔を思い出す。
遙か昔、まだ子供だった頃。風邪を引いた自分に父が持ってきてくれた水飴を、もっと舐めたいと言ったことがあった。
その時父はこう言ったのだ。
大人になったら壺ごとくれてやる、と。
「まさか……な」
自分で父を殺した『悪い子供』に、サンタがプレゼントをくれるわけがない。
それはわかっているが、もしかしたら。子供の頃の約束を父が果たしに来てくれたのでは、そしてちびたちもその手伝いをしたのでは。
そうであったら、父は死しても自分を気にかけていてくれているのなら。
自分は今日だけ、幸せな子供になれる。
奥州では手に入らない輝くような赤い布を身に纏ったちびたちの頭を順に撫で、政宗は小さく笑い声を上げながら眠る彼等に感謝の言葉を贈ったのだった。
「Thank you ……最高のChristmas presentだ……」
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という感じで、奥州編を始めて書いてみた、ちび政宗がぴゅあ過ぎて扱いに困った。
毒のあるぴゅあさの佐吉のが楽だ……
でも書いてて楽しかったです、うん。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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