こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終わりました。
26日アップのその3で完結予定です。
メリークリスマス!
あ、それと年始年末の通販は12/30~1/4まで発送がおやすみです~
それとメールさせていただきましたが、12/21までに入金完了メールを下さった方には、本日発送いたしますので。
遅くなって申し訳ありませんでした。
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*****
布団の中でさんたの話をしてもらったとき、政宗は本物のサンタはさすがにこの国まで来ることはできないとも教えてくれた。遠い国ではさんたのかわりに両親が贈り物をしてくれるのは当たり前で、ちびたちには家族である自分が代わりにさんたと贈り物を用意する。
そう言ってくれた政宗に、ちび政宗は聞いたのだ。
政宗のお父さんは、政宗にぷれぜんとをしてくれないの? と。
今この屋敷に住んでいないのだから、きっと政宗の父はもういないのだろう。
なんとなくこじゅはそれを理解していたのであえて聞くことはしなかったのだが、ちび政宗は別な考えを持ったらしい。
政宗は自分たちにぷれぜんとをくれる。
じゃあ政宗には誰がぷれぜんとをくれるのだろう。
政宗のお父さんがいれば、きっと政宗にぷれぜんとをくれるはず。
小十郎には何もあげなくていいのか。こじゅはその時そう思ったらしいが、顔がものすごく大人なのでもう贈り物をもらう年ではないとちび政宗は判断したらしい。
政宗はえらくてお仕事をいっぱいしているけど、自分と同じでまだ子供。そう思っているらしいちび政宗は当然のようにそれを聞いたのだが、政宗の反応はこじゅが予想した物よりも遙かに重かった。
口をつぐみ、長い時間考え込み。
遠くに行っているので自分にプレゼントをくれることはない、だから今回はちびたちだけがぷれぜんとをもらえばいい。そう言った後、ちびたちを布団の中に押し込めて自分もそのまま目を閉じた政宗の目は必要以上に濡れ光っていた。
そしてちび政宗はさんたに向けた欲しい物を書いた手紙に、それを書いたのだった。
「で、これか……」
「めぇ」
「お前の言うとおり、これを政宗様に見せるわけにはいかないな……よく気がついてくれたな」
「めぇめぇ めぇ~」
渋くて大きいのと、小さくて渋いのと。
二人の小十郎が顔をつきあわせ、それぞれ腕を組みながら見つめていたのは畳の上に置いた一枚の半紙だった。ちび政宗らしい元気いっぱいの文字が踊っているその紙には、
まさむねのおとうさん
と書かれている。
そのやりとりで政宗がどれだけ傷ついたか、ちび政宗に悪気が一切ない分だけ小十郎はぎりぎりと胃が痛み出すのを感じていた。
政宗は実の父を自らの手で討った。
それがどれだけ苦渋に満ちた決断であったか、その後も苦しみ続けたのか。幼い頃よりずっと側にいた小十郎はわかっているつもりではある。だからこそ政宗が苦しまないように心を砕いてきたし、政宗に父を思い出させる話を一切しないのはの気遣いの一部だったのだが。
ちび政宗はその全てを無にしてしまったわけだ。
今頃政宗はどんな思いを抱え、ちびたちの祭りの準備を進めているのか。その心情を思うだけで胸が切り裂かれるように痛むが、今はそんな事をしている場合ではない。
「政宗様のお父上か……とんでもないことを書きやがって」
「めぇめぇめぇ?」
「ああ、政宗様がまだ子供の頃にお亡くなりになっている」
「めぇ めーめーめー」
「不仲……ではなかったな。むしろ政宗様を溺愛しすぎて……奇矯な行動を取られていた」
「めぇー」
政宗にとってどんなお父さんだったのか。
こじゅに問われるままに思い出していくあの親子の思い出は、普通の親子とは明らかにかけ離れたおかしなものばかりだった。
可愛さあまって泣かすのは当たり前。
時には幽霊が出ると噂の廃寺に置き去りにして、恐怖のあまり泣き叫ぶ様を観察しては悦に入り。剣の稽古の時も奥州の覇王と呼ばれたほどの剣の腕を持って本気で叩き伏せたり。
刀をたくさん持っている方が強い。
そう政宗が思い込むようになったのは、確実に父のおかしな教えのせいである。
施政者としては有能、だが父親としては変態。そんな父親ではあったが、政宗は彼をこの手で討つことになるまで本当に強く愛していたのだ。いや、今でもきっと父との思い出は彼の中に残り続けているはず。
父の命をこの手で奪った、悪夢の記憶と共に。
その全てを横で見続けていた小十郎にとって、その思い出は全て宝そのもの。大小の政宗が風呂に入っている間に手早く話を終わらせようと思っていたのだが、どうやら愛おしさのあまり長く離しすぎてしまったらしい。
遠くから機嫌が良さそうな大小の政宗の声が聞こえてくる。
「めぇめぇ~」
「風呂から上がられたようだな……こじゅ、悪いがちび政宗に話をしておいてくれ。政宗様の父上はもう亡くなられている、ぷれぜんとだろうがなんだろうが、もう会わせてやることは出来ない……とな」
「めぇ」
「なんだと?」
「めぇめぇ めぇ~めぇめぇ」
話はしてみるけど、多分ちび政宗は納得しない。
それがこじゅの答えだった。ちびの中でも精神的にかなり子供のちび政宗には、まだ死という概念は理解できない。そしてちびたちがどれだけ各々が現れた土地に慣れたとしても、彼らは人ではないしこの世界の生き物でもないのだ。ここに来るまで自分たちがどこにいたのかは覚えていないが、多分明確な『死』が存在しない場所だったのだろう。だからこじゅも人はいずれ年老いて死んでいなくなるということをわかるのに少し時間がかかったし、未だに信じたくないという思いがある。
だからこそ『死』という物を根本的に理解するのは、ちび政宗にはまだ難しい。
それをいつものめぇめぇであったが語り終えたこじゅは、腕を組んでしばらく考え続けると。
「めぇ!」
と、唐突に叫び膝をぽんと打った。
「いい考えが浮かんだのか?」
「めぇ」
多分だけど、これでなんとかなるはず。
うんうんと自分を納得させるかのように頷きながら、こじゅは順序立てて小十郎に解決法を説明し始めた。他の所のちびにもかなり会ったのだが、物事を順序立てて考え、それを他者に上手に説明できるちびはきっとこじゅだけだろう。
他のちびは頭は良くても、諸処の問題があって説明に適していない。
「めぇ めぇめぇ~めぇめぇ」
「なるほどな……だがそんなことが可能なのか?」
「めぇめぇ」
「そうか、そのようなことができるのであれば……政宗様のためにも行って欲しいところだが」
こじゅの提示した解決法は、ちびたちと出会う前の小十郎ならば決して信じられぬものであった。だがちびたちが起こす様々な騒動に巻き込まれた今ならば、信じることができる。
彼らならばきっと、奇跡を起こすことができるのだと。
その後政宗達が戻ってくるまでの間に手早く今後についての打ち合わせを行い、二人はそれぞれの準備を行うことになったのだが。
「そういえば……お前は政宗様に何をお願いしたのだ」
そう聞いた小十郎の目の前にこじゅが差し出したのは『ちいさいにぐるま』と書かれた半紙で。
自分が荷車を引いて畑から屋敷へ収穫した野菜を運ぶのを見て、ちびたちがうらやましがっていたことを今更ながらに思い出した。
「めぇぇぇぇぇぇぇ!」
「みぃぃぃぃぃぃぃ!」
小十郎の作成した藁製の蓑と長靴を身につけ、ちび政宗とこじゅが庭でくるくると回っている。いや、正確にいえばくるくる回りながら一心不乱に踊り続けているのがちび政宗で、こじゅはその横で太鼓を叩き続けていた。
なにかあると踊りだすのがちびの特徴だというのはわかっていたのだが、まさか太鼓まで使うようになるとは。
始めて叩くはずの太鼓だというのに、こじゅはどんどこどんどこと規則正しい音を刻み続けている。一体誰に習ったのかはわからないが、太鼓の縁を叩いて軽やかな音を立てたりとなかなかに器用だった。
これが猿回しが猿に叩かせる太鼓でなければ、もっと良かったのだが。
「みぃみぃ~っ!」
「めぇめぇ~!」
「みぃぃぃぃぃぃ~!!!」
何か音が出る者が欲しいから用意して欲しい、こじゅに頼まれてそれを用意したのは小十郎。そしてこれがあればちび政宗に『死』というものについて教えてあげることができる、そう言ったのはこじゅ。
だから用意したというのに、何故いきなり彼等は踊り出すのか。
それも日が昇ったばかりの時間帯から。
踊りの邪魔をしないように庭の隅にある木に蓑姿の体を預け、音を立てぬように見守り続けながら小十郎の疑問は膨らんでいく。踊るのならば外ではなく屋敷の中でもいいはずなのに、どうしてわざわざ外で踊る。それにどうして太鼓なんてものが必要になるのか、別に笛とかでもいいはずだろうに。
笛なら吹き方を教えてやることができたわけだし。
だんだん横道にそれていく考えに気づかぬ小十郎に見守られながら、二人の謎の踊り集会は段々熱を帯びていく。激しくなる動き、そして太鼓を叩くことに慣れてきたのか音の切れが増していく太鼓。
太鼓の音と二人の謎のかけ声で屋敷の住人たちが目覚めてしまっているだろうが、それに関しては後で二人を連れて謝りに行かねばならないだろう。もしかして政宗も起きているかもしれないが、冬になると布団から出たがらなくなる彼は二度寝を決め込むだろう。
さすがの政宗も、自分絡みでちびたちが奇行に走っているとは思わないはず。
木の陰で小十郎が色々な意味ではらはらしながら見守っている間に、ちびたちは完全に踊りに入り込んでしまっていた。指先まで何かの芯が入ったかのような、ぴしりとしたちび政宗の決め姿。そしてこじゅの太鼓も、軽やかさをどんどんと増していく。
そんな中ちび政宗が更に激しく足を踏みならそうとした時、悲劇は起きた。
「みぃ!?」
「めぇ! めぇめぇ!」
「みぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!」
積もった雪の下に張っている氷。
それに足を取られてちび政宗の体が盛大に宙を舞う。次の瞬間地面に叩きつけられ、よりにもよって硬い氷が板のように積み重なっている場所にうつぶせに落ちてしまったのだ。
氷は当たるととても痛い。
ちび政宗がそれを知っていれば体をねじってでもかわしたのだろうが、冬と雪に不慣れなちび政宗はそんなことを考えもしなかった。つるつると滑って冷たいというのはわかったのだろうが、それがぶつかるととても痛いものだとはわからなかったのだ。蓑で全身を覆っていても、氷の上に落ちれば泣くほど痛い。
そしてちび政宗が泣くと、空に輝く太陽でさえも悲しみで曇っていくのだ。
全身を氷の上に叩きつけ、太鼓のバチを放り投げて起き上がろうとしないちび政宗。ふるふると震えたまま固まっているちび政宗を案じて、こじゅが血相を変えて駆け寄っていく。が、こじゅも雪には不慣れなのか、つるつると滑ってなかなか近づくことができなかった。
そんな二人を陰で見守っていた小十郎も慌てて駆け寄ろうとした時、彼よりも早くちび政宗を抱き上げた者がいた。
「みぃぃぃぃ!」
「転んだくらいで泣くな、朝っぱらからおかしなことするから転ぶんだよ」
「みぃ~」
「俺の親父は踊ったくらいで戻ってきやしない。お前の気持ちはありがたいがな……」
雪まみれになった髪と角を、六本の爪を操る指が綺麗に払い落としていく。
その暖かい腕にしがみついて大きな声を上げて泣き出したちび政宗を見ながら、小十郎はまだ氷と格闘しているこじゅを助け上げてやった。
最初にこじゅに聞いたのは、ちび政宗が何を言いながら泣いているのか。
次に聞いたのは、どうしてちび政宗が泣いているのに雨が降らないのか。
「めぇ~めぇめぇ」
「お父さんを呼んであげられなかった……だと?」
「めぇ」
「ちび政宗は踊って政宗様のお父上を呼ぶつもりだったのか?」
「めぇめぇ」
こくりと頷いたこじゅは、泣きじゃくるちび政宗を悲しそうに見つめながらゆっくりと説明し始めた。
踊るだけ踊って政宗の父が現れなかったら、政宗の父はもうこの世にいないということ。だからもう政宗の父に来てもらおうなんて考えないで、別な物を政宗にお願いすればいい。こじゅは踊りの力を増す道具らしい太鼓まで用意してもらって、彼が諦めるまでとことんちび政宗につきあうつもりでいた。
小十郎には政宗の父を呼ぶことはできなくとも、それに近いことはできるかもしれないと説明した。死者を呼び出すことができない、それはわかっているがちび政宗が本気で願って踊れば、正解ではないが不正解ではない答えを出すことができることをこじゅはわかっていたのだ。
ちび政宗はそして脇目もふらずに踊り続けた。
そして頑張って踊ったら政宗の父は政宗に会いに来てくれる、そしてみんなで仲良く暮らせるようになる。子供だからこそできる無垢な願いを込めた踊りが転んだことで途中で終わってしまった上に、当の政宗に助けられてしまったのだ。
ちび政宗がどれだけ悲しんだか、そして無力感を感じたのか。
それはちび政宗の泣き叫び様を見れば、悲愴な顔でそれを受け止めてやっている政宗の顔を見ればわかってしまう。
「政宗様…………」
二人の政宗の悲しみを見せつけられ、思わず顔を伏せる小十郎の顔をこじゅが泣きそうな顔で慰めるために撫でる。
雪の欠片すら降ってこない晴天の朝。
凍り付いた庭に泣き声が響き続ける中、泣くことを許されなかった幼い頃の自分をかき抱くかのように強くちび政宗を抱きしめ。
政宗は、そっと優しく言い聞かせる。
「俺にはお前たちがいる……小十郎とお前とこじゅと……うちの人間たちが……な。だから俺は十分幸せだ……」
「みぃっ!」
「いいんだよ、親父だけが俺の人生じゃねえ」
「みぃ……」
「もう泣くな。お前が泣いたらsantaが来られなくなっちまう」
「…………みぃ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやると、鼻をすすりながらではあったがちび政宗は小さく頷いてみせた。
それをわずかに離れた距離で小十郎とこじゅは見守り続けている。
蓑も着ないで寒いだろうに、政宗も影でずっとちびたちを見守っていたのだろう。髪の毛の先が白く凍り始めているし、唇からは赤みがすっかり消え失せている。おまけに太鼓の音が鳴り響いていたからとはいえ、朝が苦手な彼が布団から這い出してくるとは。
ちびたちの『家族』として政宗が自分のやるべき事をしたのなら、小十郎も自分の役割を果たさなければならない。それが奥州筆頭伊達政宗の右目、片倉小十郎が行うべき事なのだから。
「政宗様、そのお姿では凍えてしまわれます。葛湯を用意させますので……」
「小十郎……」
「湯の支度もさせますので、ちび政宗とこじゅと共にお入りになってください」
「少し眠気覚ましに外を歩いただけだ、そこまでしてもらうほどじゃな……」
「政宗様のお体に何かありましたら、小十郎は生きてはおられませぬ、どうか!」
自らの体調を軽視しがちな政宗の体を労るのは右目である小十郎の役割。
こじゅを腕に抱いたまま真剣な眼差しで政宗を睨み付けると、この世話焼きめと言いたげな顔のままちび政宗を抱いた政宗が素直に屋敷の方へと戻っていった。
その足はいつもの夏用の草鞋しか履いておらず、雪と水にまみれている。目ざとくそれを見つけた小十郎は、湯につかる前に足をぬるま湯で足を温めることも行わなければ政宗の足がおかしくなってしまうと考え。
政宗とちびたちをどう温めるのかを考えながら、主の背を追って屋敷への帰途についたのだった。
___________________________________________
続き間に合った!
ちなみにきっと佐吉とかチカとかちび助も普通に説明できると思いますが、佐吉は漢字の意味を理解するのが困難、ちび助はまず影の中から出てこない、そしてチカは性格が気まぐれというかフリーダムなので説明することの必要性を感じていないはずw
こじゅはえらいなあ……うん
そう言ってくれた政宗に、ちび政宗は聞いたのだ。
政宗のお父さんは、政宗にぷれぜんとをしてくれないの? と。
今この屋敷に住んでいないのだから、きっと政宗の父はもういないのだろう。
なんとなくこじゅはそれを理解していたのであえて聞くことはしなかったのだが、ちび政宗は別な考えを持ったらしい。
政宗は自分たちにぷれぜんとをくれる。
じゃあ政宗には誰がぷれぜんとをくれるのだろう。
政宗のお父さんがいれば、きっと政宗にぷれぜんとをくれるはず。
小十郎には何もあげなくていいのか。こじゅはその時そう思ったらしいが、顔がものすごく大人なのでもう贈り物をもらう年ではないとちび政宗は判断したらしい。
政宗はえらくてお仕事をいっぱいしているけど、自分と同じでまだ子供。そう思っているらしいちび政宗は当然のようにそれを聞いたのだが、政宗の反応はこじゅが予想した物よりも遙かに重かった。
口をつぐみ、長い時間考え込み。
遠くに行っているので自分にプレゼントをくれることはない、だから今回はちびたちだけがぷれぜんとをもらえばいい。そう言った後、ちびたちを布団の中に押し込めて自分もそのまま目を閉じた政宗の目は必要以上に濡れ光っていた。
そしてちび政宗はさんたに向けた欲しい物を書いた手紙に、それを書いたのだった。
「で、これか……」
「めぇ」
「お前の言うとおり、これを政宗様に見せるわけにはいかないな……よく気がついてくれたな」
「めぇめぇ めぇ~」
渋くて大きいのと、小さくて渋いのと。
二人の小十郎が顔をつきあわせ、それぞれ腕を組みながら見つめていたのは畳の上に置いた一枚の半紙だった。ちび政宗らしい元気いっぱいの文字が踊っているその紙には、
まさむねのおとうさん
と書かれている。
そのやりとりで政宗がどれだけ傷ついたか、ちび政宗に悪気が一切ない分だけ小十郎はぎりぎりと胃が痛み出すのを感じていた。
政宗は実の父を自らの手で討った。
それがどれだけ苦渋に満ちた決断であったか、その後も苦しみ続けたのか。幼い頃よりずっと側にいた小十郎はわかっているつもりではある。だからこそ政宗が苦しまないように心を砕いてきたし、政宗に父を思い出させる話を一切しないのはの気遣いの一部だったのだが。
ちび政宗はその全てを無にしてしまったわけだ。
今頃政宗はどんな思いを抱え、ちびたちの祭りの準備を進めているのか。その心情を思うだけで胸が切り裂かれるように痛むが、今はそんな事をしている場合ではない。
「政宗様のお父上か……とんでもないことを書きやがって」
「めぇめぇめぇ?」
「ああ、政宗様がまだ子供の頃にお亡くなりになっている」
「めぇ めーめーめー」
「不仲……ではなかったな。むしろ政宗様を溺愛しすぎて……奇矯な行動を取られていた」
「めぇー」
政宗にとってどんなお父さんだったのか。
こじゅに問われるままに思い出していくあの親子の思い出は、普通の親子とは明らかにかけ離れたおかしなものばかりだった。
可愛さあまって泣かすのは当たり前。
時には幽霊が出ると噂の廃寺に置き去りにして、恐怖のあまり泣き叫ぶ様を観察しては悦に入り。剣の稽古の時も奥州の覇王と呼ばれたほどの剣の腕を持って本気で叩き伏せたり。
刀をたくさん持っている方が強い。
そう政宗が思い込むようになったのは、確実に父のおかしな教えのせいである。
施政者としては有能、だが父親としては変態。そんな父親ではあったが、政宗は彼をこの手で討つことになるまで本当に強く愛していたのだ。いや、今でもきっと父との思い出は彼の中に残り続けているはず。
父の命をこの手で奪った、悪夢の記憶と共に。
その全てを横で見続けていた小十郎にとって、その思い出は全て宝そのもの。大小の政宗が風呂に入っている間に手早く話を終わらせようと思っていたのだが、どうやら愛おしさのあまり長く離しすぎてしまったらしい。
遠くから機嫌が良さそうな大小の政宗の声が聞こえてくる。
「めぇめぇ~」
「風呂から上がられたようだな……こじゅ、悪いがちび政宗に話をしておいてくれ。政宗様の父上はもう亡くなられている、ぷれぜんとだろうがなんだろうが、もう会わせてやることは出来ない……とな」
「めぇ」
「なんだと?」
「めぇめぇ めぇ~めぇめぇ」
話はしてみるけど、多分ちび政宗は納得しない。
それがこじゅの答えだった。ちびの中でも精神的にかなり子供のちび政宗には、まだ死という概念は理解できない。そしてちびたちがどれだけ各々が現れた土地に慣れたとしても、彼らは人ではないしこの世界の生き物でもないのだ。ここに来るまで自分たちがどこにいたのかは覚えていないが、多分明確な『死』が存在しない場所だったのだろう。だからこじゅも人はいずれ年老いて死んでいなくなるということをわかるのに少し時間がかかったし、未だに信じたくないという思いがある。
だからこそ『死』という物を根本的に理解するのは、ちび政宗にはまだ難しい。
それをいつものめぇめぇであったが語り終えたこじゅは、腕を組んでしばらく考え続けると。
「めぇ!」
と、唐突に叫び膝をぽんと打った。
「いい考えが浮かんだのか?」
「めぇ」
多分だけど、これでなんとかなるはず。
うんうんと自分を納得させるかのように頷きながら、こじゅは順序立てて小十郎に解決法を説明し始めた。他の所のちびにもかなり会ったのだが、物事を順序立てて考え、それを他者に上手に説明できるちびはきっとこじゅだけだろう。
他のちびは頭は良くても、諸処の問題があって説明に適していない。
「めぇ めぇめぇ~めぇめぇ」
「なるほどな……だがそんなことが可能なのか?」
「めぇめぇ」
「そうか、そのようなことができるのであれば……政宗様のためにも行って欲しいところだが」
こじゅの提示した解決法は、ちびたちと出会う前の小十郎ならば決して信じられぬものであった。だがちびたちが起こす様々な騒動に巻き込まれた今ならば、信じることができる。
彼らならばきっと、奇跡を起こすことができるのだと。
その後政宗達が戻ってくるまでの間に手早く今後についての打ち合わせを行い、二人はそれぞれの準備を行うことになったのだが。
「そういえば……お前は政宗様に何をお願いしたのだ」
そう聞いた小十郎の目の前にこじゅが差し出したのは『ちいさいにぐるま』と書かれた半紙で。
自分が荷車を引いて畑から屋敷へ収穫した野菜を運ぶのを見て、ちびたちがうらやましがっていたことを今更ながらに思い出した。
「めぇぇぇぇぇぇぇ!」
「みぃぃぃぃぃぃぃ!」
小十郎の作成した藁製の蓑と長靴を身につけ、ちび政宗とこじゅが庭でくるくると回っている。いや、正確にいえばくるくる回りながら一心不乱に踊り続けているのがちび政宗で、こじゅはその横で太鼓を叩き続けていた。
なにかあると踊りだすのがちびの特徴だというのはわかっていたのだが、まさか太鼓まで使うようになるとは。
始めて叩くはずの太鼓だというのに、こじゅはどんどこどんどこと規則正しい音を刻み続けている。一体誰に習ったのかはわからないが、太鼓の縁を叩いて軽やかな音を立てたりとなかなかに器用だった。
これが猿回しが猿に叩かせる太鼓でなければ、もっと良かったのだが。
「みぃみぃ~っ!」
「めぇめぇ~!」
「みぃぃぃぃぃぃ~!!!」
何か音が出る者が欲しいから用意して欲しい、こじゅに頼まれてそれを用意したのは小十郎。そしてこれがあればちび政宗に『死』というものについて教えてあげることができる、そう言ったのはこじゅ。
だから用意したというのに、何故いきなり彼等は踊り出すのか。
それも日が昇ったばかりの時間帯から。
踊りの邪魔をしないように庭の隅にある木に蓑姿の体を預け、音を立てぬように見守り続けながら小十郎の疑問は膨らんでいく。踊るのならば外ではなく屋敷の中でもいいはずなのに、どうしてわざわざ外で踊る。それにどうして太鼓なんてものが必要になるのか、別に笛とかでもいいはずだろうに。
笛なら吹き方を教えてやることができたわけだし。
だんだん横道にそれていく考えに気づかぬ小十郎に見守られながら、二人の謎の踊り集会は段々熱を帯びていく。激しくなる動き、そして太鼓を叩くことに慣れてきたのか音の切れが増していく太鼓。
太鼓の音と二人の謎のかけ声で屋敷の住人たちが目覚めてしまっているだろうが、それに関しては後で二人を連れて謝りに行かねばならないだろう。もしかして政宗も起きているかもしれないが、冬になると布団から出たがらなくなる彼は二度寝を決め込むだろう。
さすがの政宗も、自分絡みでちびたちが奇行に走っているとは思わないはず。
木の陰で小十郎が色々な意味ではらはらしながら見守っている間に、ちびたちは完全に踊りに入り込んでしまっていた。指先まで何かの芯が入ったかのような、ぴしりとしたちび政宗の決め姿。そしてこじゅの太鼓も、軽やかさをどんどんと増していく。
そんな中ちび政宗が更に激しく足を踏みならそうとした時、悲劇は起きた。
「みぃ!?」
「めぇ! めぇめぇ!」
「みぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっっ!」
積もった雪の下に張っている氷。
それに足を取られてちび政宗の体が盛大に宙を舞う。次の瞬間地面に叩きつけられ、よりにもよって硬い氷が板のように積み重なっている場所にうつぶせに落ちてしまったのだ。
氷は当たるととても痛い。
ちび政宗がそれを知っていれば体をねじってでもかわしたのだろうが、冬と雪に不慣れなちび政宗はそんなことを考えもしなかった。つるつると滑って冷たいというのはわかったのだろうが、それがぶつかるととても痛いものだとはわからなかったのだ。蓑で全身を覆っていても、氷の上に落ちれば泣くほど痛い。
そしてちび政宗が泣くと、空に輝く太陽でさえも悲しみで曇っていくのだ。
全身を氷の上に叩きつけ、太鼓のバチを放り投げて起き上がろうとしないちび政宗。ふるふると震えたまま固まっているちび政宗を案じて、こじゅが血相を変えて駆け寄っていく。が、こじゅも雪には不慣れなのか、つるつると滑ってなかなか近づくことができなかった。
そんな二人を陰で見守っていた小十郎も慌てて駆け寄ろうとした時、彼よりも早くちび政宗を抱き上げた者がいた。
「みぃぃぃぃ!」
「転んだくらいで泣くな、朝っぱらからおかしなことするから転ぶんだよ」
「みぃ~」
「俺の親父は踊ったくらいで戻ってきやしない。お前の気持ちはありがたいがな……」
雪まみれになった髪と角を、六本の爪を操る指が綺麗に払い落としていく。
その暖かい腕にしがみついて大きな声を上げて泣き出したちび政宗を見ながら、小十郎はまだ氷と格闘しているこじゅを助け上げてやった。
最初にこじゅに聞いたのは、ちび政宗が何を言いながら泣いているのか。
次に聞いたのは、どうしてちび政宗が泣いているのに雨が降らないのか。
「めぇ~めぇめぇ」
「お父さんを呼んであげられなかった……だと?」
「めぇ」
「ちび政宗は踊って政宗様のお父上を呼ぶつもりだったのか?」
「めぇめぇ」
こくりと頷いたこじゅは、泣きじゃくるちび政宗を悲しそうに見つめながらゆっくりと説明し始めた。
踊るだけ踊って政宗の父が現れなかったら、政宗の父はもうこの世にいないということ。だからもう政宗の父に来てもらおうなんて考えないで、別な物を政宗にお願いすればいい。こじゅは踊りの力を増す道具らしい太鼓まで用意してもらって、彼が諦めるまでとことんちび政宗につきあうつもりでいた。
小十郎には政宗の父を呼ぶことはできなくとも、それに近いことはできるかもしれないと説明した。死者を呼び出すことができない、それはわかっているがちび政宗が本気で願って踊れば、正解ではないが不正解ではない答えを出すことができることをこじゅはわかっていたのだ。
ちび政宗はそして脇目もふらずに踊り続けた。
そして頑張って踊ったら政宗の父は政宗に会いに来てくれる、そしてみんなで仲良く暮らせるようになる。子供だからこそできる無垢な願いを込めた踊りが転んだことで途中で終わってしまった上に、当の政宗に助けられてしまったのだ。
ちび政宗がどれだけ悲しんだか、そして無力感を感じたのか。
それはちび政宗の泣き叫び様を見れば、悲愴な顔でそれを受け止めてやっている政宗の顔を見ればわかってしまう。
「政宗様…………」
二人の政宗の悲しみを見せつけられ、思わず顔を伏せる小十郎の顔をこじゅが泣きそうな顔で慰めるために撫でる。
雪の欠片すら降ってこない晴天の朝。
凍り付いた庭に泣き声が響き続ける中、泣くことを許されなかった幼い頃の自分をかき抱くかのように強くちび政宗を抱きしめ。
政宗は、そっと優しく言い聞かせる。
「俺にはお前たちがいる……小十郎とお前とこじゅと……うちの人間たちが……な。だから俺は十分幸せだ……」
「みぃっ!」
「いいんだよ、親父だけが俺の人生じゃねえ」
「みぃ……」
「もう泣くな。お前が泣いたらsantaが来られなくなっちまう」
「…………みぃ」
ぐしゃぐしゃと頭を撫でてやると、鼻をすすりながらではあったがちび政宗は小さく頷いてみせた。
それをわずかに離れた距離で小十郎とこじゅは見守り続けている。
蓑も着ないで寒いだろうに、政宗も影でずっとちびたちを見守っていたのだろう。髪の毛の先が白く凍り始めているし、唇からは赤みがすっかり消え失せている。おまけに太鼓の音が鳴り響いていたからとはいえ、朝が苦手な彼が布団から這い出してくるとは。
ちびたちの『家族』として政宗が自分のやるべき事をしたのなら、小十郎も自分の役割を果たさなければならない。それが奥州筆頭伊達政宗の右目、片倉小十郎が行うべき事なのだから。
「政宗様、そのお姿では凍えてしまわれます。葛湯を用意させますので……」
「小十郎……」
「湯の支度もさせますので、ちび政宗とこじゅと共にお入りになってください」
「少し眠気覚ましに外を歩いただけだ、そこまでしてもらうほどじゃな……」
「政宗様のお体に何かありましたら、小十郎は生きてはおられませぬ、どうか!」
自らの体調を軽視しがちな政宗の体を労るのは右目である小十郎の役割。
こじゅを腕に抱いたまま真剣な眼差しで政宗を睨み付けると、この世話焼きめと言いたげな顔のままちび政宗を抱いた政宗が素直に屋敷の方へと戻っていった。
その足はいつもの夏用の草鞋しか履いておらず、雪と水にまみれている。目ざとくそれを見つけた小十郎は、湯につかる前に足をぬるま湯で足を温めることも行わなければ政宗の足がおかしくなってしまうと考え。
政宗とちびたちをどう温めるのかを考えながら、主の背を追って屋敷への帰途についたのだった。
___________________________________________
続き間に合った!
ちなみにきっと佐吉とかチカとかちび助も普通に説明できると思いますが、佐吉は漢字の意味を理解するのが困難、ちび助はまず影の中から出てこない、そしてチカは性格が気まぐれというかフリーダムなので説明することの必要性を感じていないはずw
こじゅはえらいなあ……うん
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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