がんかたうるふ 月孤譚6章 その7 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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6章終わりです。
次章は「山猫、小さな許しを得る」となっております。
ゲストは島津のお爺ちゃん。



 *****
 嵐のような一夜が過ぎ、与えられた部屋に戻った元親が最初にしたことは、大きな欠伸をすることだった。
 とっくに夜明けを迎えている上に、昨日も家康のせいであまり寝ていない。
 数日寝ていないくらいではびくともしない元親であったが、さすがにほとんど寝ていない上に全力での殴り合いをするというのはかなり堪えた。自分と家康に巻き込まれて同じく眠っていない毛利は自分の横ですうすうと心地よさそうな寝息を立てているし、三成はもう小十郎の部屋で眠っているだろう。

 勿論、突如三成を舐めたいと言い出した家康対策のためである。

 現在の保護者である伊達家の主従を交えた話し合いは、殺伐という言葉がふさわしい雰囲気で始まった。
 元親との殴り合いの前に政宗の部屋に行ったのだが、自分も三成とあのようにじゃれ合いたい。家康の主張はこんな感じだったのだが、それに対する伊達家の反応は凄まじい物であった。鋭く家康を睨み付ける小十郎と、顔色の悪い三成を後ろに庇い異国の言葉混じりに脅しをかける政宗。事前に毛利が武器の持ち込み禁止と言っていなければ、今頃家康の首は胴と別れていたかもしれない。
 だが。
 今にも殴りかかりそうな政宗を制止したのは、家康に陵辱(?)されかかっている三成本人だった。
 さすがに勝ち分一つでそれを受ける気にはならないが、二つ分であれば受けてもいい。
 寝不足と精神的な疲れで更に青ざめた顔色のまま、何かを決心したかのようにそう宣言した三成に対して、家康は満足げに頷き。その後小十郎によって事細かな禁止事項を付け加えられはしたが、二人の間の契約はそれで成立してしまった。
 双竜の静かなる怒りを残したまま。
 伊達家に滞在してまだ日は短いが、政宗たちが三成を身内として愛おしんでいることはすぐにわかった。あの恐ろしい小姑二人相手に、家康が今後どうしていくのか気にはなったが。
 それ以上に気になっているのは三成のことだった。
 伊達家に大切にされていることは元親を少しだけ安心させたが、だからといって彼を取り巻く状況が変わったわけではない、大将さえ生きていれば自分たちの勝ちだと毛利はここに来る前笑っていたが、その笑いも三成の顔を見た瞬間凍り付いていた。彼があそこまで表情を変える何かがあったということなのだろうが、それを毛利は語る気はなさそうだった。
 どんな手を使ってでも西国に石田を連れて行く。
 それだけを口にし、家康を足止めして元親に石田を説得させようとしたが、元親自体がそれは断った。三成が家康との決着をつけたがっている、それを関係のない人間が止めることができるわけがない。
 三成の苦悩を理解せず、己の意志を貫き通す家康に腹が立ったのは事実だが。
 それは彼を思う存分殴ったので、忘れることにした。とはいえ家康に殴られた場所が熱を持ってうずき、眠る為に体を横にしようとすると彼の拳が当たった脇腹がしくしくと痛み始める。
 なので横で眠る毛利の頬にかかる髪を元の位置に戻してやりながら、痛みが治まるのを待っている訳なのだが。
「…………眠れぬのか?」
「家康のヤツ……デカくなったと思ったら、殴るのもうまくなりやがって……」
「そうか」
 ぱちりと開かれた毛利の目が、じっとこちらを見据えてくる。
 責めるように、そして何かを諦めるかのように。それでいて怒っていないのは、元親の性格を理解しきっているからなのか。
 布団に横になり枕に頬を押しつけたまま、毛利は軽いため息をつく。
「我は石田を掠ってでも連れて帰れと言ったはずだが」
「いまのあいつには、ここが一番だ……お前だってそう思ってはいるんだろ?」
「それは認めよう。だがな……」
「なんだよ、はっきり言え」
「貴様にも見えぬか……やはり見えているのは我だけなのだな」
「見えてる? 何がだよ」
「石田の足だ。黒い影のような物が絡みついておる……ここに来る前に巫女姫に無理矢理御祓を受けさせられたのだが……我にだけ見えるのはそのためだろう」
「影!?」
 嘘をついているわけでもなく、いきなり気が狂ったわけでもなく。
 日頃は戦の験担ぎすら信用しない男が、人には見えぬ影が見えるという。それがどのような意味を持つか、わからぬ元親ではなかった。
 彼にはずっと見えていたのだ、三成の足に絡みつく影が。
「だから我は掠ってでも連れてゆけと言ったのだ。少々頭は足りぬが、あの巫女姫ならどうにかできるであろう」
「伊達のヤツに言って、少し借りりゃあいいだけだろうが」
「見えぬ物を信じると思うか? 我であれば信じぬ。石田を連れて行く口実と取られるか、もしくは我らが徳川に攻められる口実にされてしまうか」
国を危険に晒すわけにはいかぬ、幾分渋い顔でそういった毛利は手を伸ばし元親の足に手を置いた。
 相当悩んだのだろう、そして三成を捨てる決断をしたのだ。
 毛利は一見情が通用しない男のように見えるが、私情を挟まぬだけで周囲のことはよく見て動いている。そして自分と安芸に害が及ばないと判断してから、手を貸すのだ。ましてや自分に大きく関わった人間なら、彼はできる限りの手を使って助けるはず。
 冷静に、事実と推察を積み上げ。
 安芸の今後と三成への情を比較し、三成へのこれ以上の手出しはしないと決めたのだろうが。それでも関ヶ原の戦後すっかり甘くなったと評判の毛利は、ちゃんと三成のことを考えていた。
「石田を連れて戻れぬのなら、手を打たねばならぬ。このまま真っ直ぐ安芸へと戻るつもりであったが……もう少し我につきあえるか?」
「ここまで来ちまったらつきあわない道理はないだろうよ。で、どこに行きたい?」
「越後」
「………おい、お前どれだけ自分が無茶言ってるかわかってんのか!?」
「貴様とて石田は可愛いのであろう? 姫巫女には急ぎで文を送っておく、それと事情話さぬ方がよいだろうが、島津の爺にもな」
 奥州から越後まで舟で。
 海路で行けばこの国をぐるっと半周近くする事になる程の距離。通常なら陸から行った方が早いが、元親の舟ならば陸路よりわずかに早く到着できる可能性がある。潮の流れと風を計算し、その可能性を高めるにはどうすればいいか考え始めた自分にあきれつつ、元親はまだ横になったままの毛利の頭に手をやった。
 そしてそのまま力一杯髪の毛をかき回す。
「何をする!」
「迷惑賃だ……俺をこきつかうのなら、あとでたっぷりを礼をもらうぜ」
「鬼を使うのだ、その覚悟はできておる」
 子供のようなふくれっ面だが、その目に宿るのは真摯な願い。
 彼のことだ、三成のためではなく自分の利益も十分考えているのだろうが。あの戦の中で毛利は毛利なりに人と繋がることを覚えたのだろう。
 対等に言い争い、時には叱りつけ。
 自分と国のためだけではなく、他者の目的のために手を貸す。
 その経験と三成との出会いは、毛利をいい方向へと導いてくれたのだ。本人に面と向かって言えば嫌な顔で違うと言い切るだろうが、元親にはちゃんとわかっていた。
 そうでなければ、あの毛利が誰かのために国を置いて動くわけがない。
「………何をじろじろと見ておる」
「なんでもねえよ」
 そして元親はそれが嬉しかった。
 国と己のために、自らの心を切り刻みながら戦い続けていたかつての彼より、人のために自分の動ける範囲で動こうとする彼の方がずっと好ましい。できれば今後もずっと戦が起こらず、彼とこうやってすごしていければ。
 誰かのために動いて、足下を掬われるのは避けたい。
 だがそれが自分と彼の幸せに繋がるのなら、これほど楽しいお節介はないだろう。
「眠いんだろ? さっさと寝ようぜ」
「眠れそうなのか?」
「お前が抱き枕になってくれるのならな」
「越後までの船賃ということならば、引き受けてやってもよい」
「それならあと十回は抱かせてもらわねえとな」
「抱き枕、ではなかったのか?」
「似たようなもんだろ?」
 絶対に違う、そう主張する毛利の体に急に覆い被さり、そのまま言葉と動きを封じてしまう。下で暴れる彼が家康に殴られた部分を確実に刺激してくれるので体が痛むことこの上ないが。
 目の前の美味しそうな抱き枕を味見したいという欲求が勝った。
 腕の中に閉じ込めて体の自由を奪い、その段階でようやく抵抗を諦めたらしい毛利の体の感触を楽しんでいると、部屋の外からどったんばったんと響く足音。
「元親! 儂を助けてくれ!」

 なんか来た。

 無言で顔を見合わせた二人が考えたことは同じだったらしい。
「どうする?」
「貴様の友であろう? 貴様が対処せよ」
「アイツ、一度動き出すと止まらねえんだよ」
「ならば我がどうにかするしかないということか……一つ貸しだ、覚えておけ」
 元親の体の下から、毛利はするりと抜け出してしまう。
 そしてそのまま襖を開けて部屋から出て行くと、家康の声のした方へ向かっていったのだろう。
 何を言っているのかわからない途切れ途切れの話し声を布団の中で注意深く聞いていた元親の耳に、規格外の大きな声が突き刺さった。

「我は眠いのだ、さっさと貴様の部屋に帰れ!」
「わ、わかったっ!」

 ばたばたと逃げていく家康の足音。
 その音を従えて意気揚々と部屋に帰ってきた毛利。髪は自分がぐしゃぐしゃにしたのであちこちほつれているし、その顔は寝不足と疲労で多少やつれてはいるが。心のあり方を現すような怜悧な眼差しも、時折自分のためだけに花の様にほころぶ唇も。
 誰よりも綺麗で、そして愛おしい。
「追い払ってきたぞ」
「おう、ご苦労さん」
「我ではなく貴様が動け……といいたい所だが、此度はしょうがないであろうな」
 眠たげな姿を隠すことなく当然のように自分の隣に戻ってきた彼を見ながら、元親は思った。


 今の自分は心底幸せだ、と。











「寝たか?」
「はい、ようやく」
 小十郎の部屋では、血の気が一切感じられない三成が苦しげな寝息を漏らしながらようやく眠ることができていた。
 枕元には政宗と小十郎。
 本来なら話し合いの後政宗たちもさっさと眠るつもりだったのだが、三成のあまりの顔色の悪さに声をかけたのが、全ての始まりだった。
 家康が去った政宗の部屋、そこで三成が吐き出したのは己への憎悪であった。

 敬愛すべき主君を倒した家康への恋慕を捨てることのできない自分。
 だというのに彼を憎んでもいる自分。

 叩きつけるように、言葉が刃であれば語る度に三成の体から血が噴き出すのではと思う程鋭く。三成は己の言葉で己の心を切り刻んでいった。
 家康への思いを叫ぶごとに心はちぎれ。
 秀吉への忠義を口にするごとに心はすりつぶされていく。
 いつかはこの時が来るとは思っていた。
 家康への思いと、今まで彼の生をつなぎ止めてきた復讐心。三成の中でそれが並び立つことはあってはならないし、不器用な三成にどちらかを飼い慣らして生きる事などできるわけがない。
 何も選べず、家康を拒むこともできず。
 思考の袋小路に迷い込んでしまった三成を、小十郎は救うことができない。彼の憎しみは彼の物、彼の恋情も彼の物。決して小十郎や政宗が肩代わりできるものではなかった。
 きっと家康を受け入れきった時、三成は完全に壊れる。
 伊達での穏やかな生活でようやく己の意志で生きたいと思うことができるようになってきたというのに、この世は何と残酷なのだろう。彼と共に生きたいと思っており、三成自身も心を寄せている家康が、最終的に三成を壊してしまうのだ。
 彼という器には、愛と憎しみを同時に詰め込むことはできない。
「やりきれないですな……」
 悪夢の中にいるのだろう、血の気を失った唇がかすかに動いている。
 読んでいるのが家康の名であり、そこに憎しみが一切込められていないことに小十郎は更に深く嘆きを覚える。
「オレはそうは思わないぜ」
「政宗様……?」
「徳川のヤツは、こいつに与えてやるって言ったんだ。言ったからには責任を果たしてもらわなきゃ困るよな?」
「徳川殿を信じる……と?」
「信じるさ」
 そう言って、三成を挟んで向かい側にいる政宗は見惚れる程艶やかに微笑んだ。

「それにな……こいつらにはHappyになってもらう。オレがそう決めたんだから、きっと幸せになってくれるさ」

 己の天運を信じる、だから自分の元にいる三成の幸福も信じられる。
 自分の主の器の大きさと、その強さに改めて触れ、小十郎の頭が自然と下がっていく。
「感服いたしました、政宗様」
「オレたちが心配するのは家康をどう止めるか……だろ?」
「その問題が残っておりましたな」
 三成の思惑はわかっている。
 家康に現在持っている勝ち分を全て使わせて、もしもの時に自分の行動を阻害させないため。大谷吉継が生きているのならば、いつか三成は彼に会いに行くはずだ。その時家康が勝ち分を使う可能性を少しでも減らしておきたかったのだろう。
 だからといって自分の体を餌に家康を釣ることもないだろうに。
 その件については目が覚めて彼が落ち着いたらゆっくり叱るとして。今は少しでも彼を休ませてやらなければならないだろう。
 何度か様子を見に来た家康は、全力で追い払っている。
 できれば少しでも長く彼に眠りを。
 心地よい夢を見ることは今は無理だとしても、いつか。


 誰かと共に笑い合いながら眠りにつくことができますように。


 三成の額に浮いた珠のような汗を手ぬぐいで拭ってやりながら、小十郎はその日が少しでも早く来るように。
 心の中でそっと祈った。

















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7章は少し明るい方向に戻ります。
ところで私は何を聞きながらこれを書いて……


BGM 「行くぜっ!怪盗少女」byももいろクローバー
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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