こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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自重しない人しかいません……反省。
*****
元親たちが来訪した理由は単純そのものだった。
「つまり……私が心配だから様子を見に来たと」
「放っといたら死ぬだろ、お前」
「貴様らは私をなんだと思っている!」
「自分の世話も出来ぬ子供に決まっておるであろう」
濡れて一気に質量が減った髪を指でいじりながら、毛利はきっぱりとそう言い切った。
風呂から上がった家康と入れ替わりで瀬戸内の両将と一緒に入浴することになった時、まず最初に警戒したのは家康が乱入してくることだった。何が何でも三成と一緒に風呂に入りたがる家康の危険性を三成は必死に訴えたが、毛利の反応はあっさりとしたもの。
こやつがおる限り、風呂には来ぬわ。
そう言って戸惑う三成を引きずるように風呂に連れ込み、一緒に湯船に浸かっているのだった。
今まで寒い外を歩いてきたのだ、暖かめのお湯は体の芯まで三成の体を温めてくれる。
「ま、無事に生きてるようだから安心したけどよ」
「………………………側に来るな」
「別に構わねえだろ? お前には何もしねえって」
「それはわかっている。だがやはり貴様はなんというか………」
全てにおいて開放的すぎる。
透明な湯の中、元親の逞しすぎる体が嫌にでも目につく状況は、はっきり言って好ましくない。三成も男だ、異性の肉体が性的に気になるのと同時に、同性の肉体が気になることもある。
主に自分との比較対象として。
男なら誰しもあこがれるであろう、無駄な肉が一切ない見事な肉体。そして下半身にちらりと目をやれば、これまた同性の尊敬を一身に集めそうなものが足の間に鎮座しているときている。通常の状態でこれという事は、興奮した時はどれほどの大きさになるのやら。
そんなことを考えながら何も言わずに自分と元親の足の間を数度目線を行き来させていると、その行為の意味に気がついた毛利に散々馬鹿にされた。
「貴様もそういうことを気にするのだな」
「き、貴様は気にならんのか!」
「元の体の大きさが違うのだ、比較する気にもならんわ。それにしてもあの凶王が可愛いものよ……これは島津の爺への土産話にせねば」
「それだけはやめろ!」
あの豪快を通り越して全てにおいて破天荒すぎる老人のことを、三成は心底苦手としていた。嫌いではないし、自分のことを常に気にかけてくれるのはありがたかったのは事実。だが酒臭いし、愛情表現が過激すぎるし、おまけに三成の都合を考えない。
あの老人が三成の生存を知ったら、どうなることやら。
と、そこで気がついたことがあった。
「貴様らは……何故私が生きていることを知っていた?」
「うちの若いのが、あの時あんたが伊達に連れて行かれたのを見てたんだよ。だからさっさとあんたを返せって書いて送ったんだが、伊達のヤツ……うんと言わねえときたもんだ」
「それで……私を迎えに……いや、よくわからんが……」
「簡単に言えばそうだな。俺はあんたを迎えに来た、つもりだったんだがな」
風呂の中でも眼帯を外さないのは政宗と同じ。
湯を大きく揺らがせながらずいと距離を詰めてきた元親から、三成は今度は逃げなかった。少し離れた距離で二人を面白そうに見守っていた毛利も、少し表情を改める。
凛とした、当主としての顔に。
「今の貴様を見ておると、連れて行くのが正しいとは思えなくなった。そういうことだ………伊達は田舎だが、貴様には合っているようだな」
「さっきから俺の言葉を先に言いやがって……俺になんか恨みでもあんのか?」
「貴様がなかなか言わぬから我が先に言ってやっているだけのこと。徳川ともその調子だったではないか」
「痛いとこつきやがって……」
隣に並ぶと威圧感すら感じる巨体が気まずそうに頭をかく。
別邸の風呂より幾分狭いが、それでも大人が数人は楽に入ることができる湯船。そこに敗軍の将たちが集まって世間話をしている姿は、他の人間にはどう映るのだろう。共に数多の戦いをくぐり抜け、その体に証である傷跡を幾多も刻み込んではいるが、彼らはそれでも生き延びている。
主君として国を率い、民の安寧のために戦う事を選んだのだ、彼らは。
秀吉の下で彼の望みのために全てを捧げてきただけの三成が、彼らに太刀打ちできるわけがない。正直言えば、豊臣の残党をまとめ上げるのも一人ではできなかっただろう。刑部だけは側にいてくれる、その事実がどれだけあの頃の三成を支えてくれたか。
できれば伊達に全てを話し、すぐに会いに行きたいのだがそれが刑部自身によって止められていた。
下手に動けば互いの身の破滅になる、もう少し待っておれ。
届く手紙は上杉の代筆だが、書いてある文章は刑部の物。常に三成を案じている手紙に心慰められ、そして最後に書き添えられた短い上杉の言葉に時には顔をしかめ。先日も真田に手紙を送る際に、伊達には勘づかれにように刑部への言づてを書き添えておいたが。
彼は彼なりに上杉で生きている。
それだけわかっていれば、今は十分。目の前にはすっかり堕落(?)した家康やら、兄貴風を吹かす海賊やら、とにかく難問が次々に襲いかかってくるのだ。いつかはここで経験した全てを刑部への土産話に出来ればいいのだがと思いながら、三成は先程からずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
さすがに熱くなってきたので、湯船の縁に腰掛け少し体を冷やすことにする。
「何故家康と会っていなかった? 貴様らは『親友』というものなのだろう」
「お前と家康だって『親友』なんだろ?」
「あの男は秀吉様の仇だ! 昔は信じたこともあったが……今は敵だ」
「だけどよ、嫌いじゃねえんだろ?」
「貴様に言われたくはない。一度も貴様から家康に声をかけていないくせに……家康もだがな」
「よく見てるもんだな」
「あれだけ私の後ろで騒がれれば、嫌でも気になる!」
顔をしかめながら、まだ湯に浸かっている元親の頭頂部をじっと見つめる。
別に何かがついているとか、頭頂部の髪が寂しくなっているというわけではないのだが、この男と目を合わすのはやはりまだ少し怖いのだ。自分に害を与えないのだから怖い存在ではない、それはわかったのだが。
刻み込まれたものは、なかなか消えないわけで。
それに元親の体の奥底から湧き上がってくる様な熱さも、三成にとってはできれば避けておきたいものであった。
昼夜問わず、おまけに場所も問わずにただ一人の相手を肉体的に求める。
それだけの情熱に触れてはいけない、そんな思いが三成の内には確実に存在していた。自分の心の内にも眠っているであろうそれを目覚めさせてはいけない、だから熱自体から遠ざかる。
誰かを思うことの熱さ、それを知ってしまえばいつか家康に求められることを喜んでしまう。
そんな気がしてならないのだ。
「…………お前ならわかるかもしれねえな………怖いんだよ」
「怖い?」
「俺がこいつに騙されて勝手に家康の敵に回った……それをアイツにどうやって詫びりゃいい?」
「全て我のせいにしても構わぬと言っておいたであろうが」
「お前は少し黙ってろ!」
言葉と共にお湯の塊が叩きつけられたが、毛利はそれを避けようとしなかった。
時折湯気逃しのために細く開けられた窓を見つめては、楽しそうに笑い。そしてぶつけられたお湯で再度多量の水分を含むことになった髪に手をやり、指で挟むことによって水気を搾り取る。
関ヶ原での戦の最中であれば、こんな事をされたら烈火の如く起こり始めていただろうに、彼にも何らかの心境の変化があったのだろうか。
それについて聞いてみると、
「我は今、安芸の当主を休んでおる」
あっさりとした、そんな答えが返ってきた。
当主というのは、休みたいからといってすぐ休めるものなのか。よくよく考えればしょっちゅう国を空けている元親がここに来るのは納得がいくが、何故毛利までついてきた?
どう考えても答えの階すら見つからない中、毛利本人は相も変わらぬのんきさで言葉を繋げる。
「我の代わりは影武者に任せてきた。周囲の国々にも内紛の計略を仕掛けてきたのでな、しばらくは安芸に攻め入ることも出来まい。それに……」
この機に乗じて安芸を奪い取ろうとする馬鹿共をあぶり出す好機だと思わぬか?
まるで天気の話をするが如く。
あっさりとそう言った毛利に、その場にいた全員が凍り付いた。
「な? こいつ怖いだろ?」
「何故こんなのが良いのだ?」
「惚れちまったらそこで負けなんだよ……お前もその辺覚えておけ」
「小鳥の如くよく囀る……五月蠅いものよ。貴様ら、少し黙らぬか!」
顔を合わせて囁きあう二人に苛立ったのか、毛利の顔が急に険しくなった。
元親と三成から顔を背け、叩きつけるように口を開いた後、おもむろに立ち上がる。
「風情を解せぬ輩よ……我は出るぞ」
「お、おい!」
後を追って元親も立ち上がり、大きく波打った湯船の水位が下がっていく。背も高いが、それに似合う目方の持つ主である元親が去った湯船。
騒がしすぎる二人が立ち去っていった方向を一瞬だけ見てから、三成は風呂に入り直すことにした。
雪がひどくなってきているのか、外からは音と共に強い風が吹き込んでくる。
湯気で消えぬように湯船と同じ高さに置かれている灯籠に目をやり、そのほのかな光が消えてしまわぬうちに体を再度温めさっさと風呂を出ることを選択した。
「よし、毛利が行った!」
「何度も言うけどな、人の家の風呂に勝手に覗き穴を作るんじゃねえよ!」
「儂は三成の裸が見たい、それだけだ!」
「てめえの欲望を正当化するな!」
三成が元親たちが風呂を出るのを見送り再度湯船に浸かった頃、湯気逃しの窓の下では男たちの醜い戦いが繰り広げられていた。
三成が風呂場に入ったのを確認してからいそいそと動き出した家康の後を追跡してみれば、勝手に風呂場の壁に空けた穴から覗きを決行しようとしており。止めるために小声で家康と揉めていると、覗き穴の向こうにいる毛利と目があった。瞬時に状況を察してくれた毛利がちょうど三成が隠れるような位置に座ってくれたことで、最悪の事態は回避できたのだが。
この天下人、あきらめという言葉を知らなかった。
天下人が正々堂々と覗きをするというだけで大問題だというのに、二人がいなくなったのでそのまま風呂に乱入したいと言い出す始末。日頃は小十郎に諫められる立場の政宗だったが、人の無謀な行動を止めるのがこんなに大変だったとは。
今度から少しは小十郎の言うことを聞こう、そう近いながら政宗は風呂場の壁を壊すために力をため始めた家康をまずは言葉で止めようとする。
「毛利のヤツのあれは……オレらにむけられたもんだろ?」
「構うことはない!」
「構えよ!」
「心配するな、この壁は後で儂が直してやる。今は三成の事が心配だ」
「心配する必要はないだろうが!」
三成に気がつかれぬよう、黄金の光が小さく、だが確実に練り上げられていく。通常の力で兵士を数十人ぶっ飛ばしていることを考えれば、この程度でも壁を壊すくらいは十分なのだろうが。
好き好んで自分の家の壁を壊されたい人間はいない。
刀を持ってこなかったことを悔やみながら、後頭部をぶん殴って止めてやろうと三成に気づかれることを覚悟で立ち上がろうとした政宗を止めたのは、ふわりとした湯気を纏った暖かい手だった。
精緻な制御を必要とするのか、集中している家康は気がついていなかったが、思わず振り返った政宗はそこにいた人間の顔を見て。
「………後は頼んだ」
「おう」
その一言だけで場所を譲った。
奥州の寒さには慣れている政宗でも余分に一枚着込む程の寒さの中、薄い異国の衣装を身に纏った男は一度だけ家康をちらりと見ると。
手に持った大槍の刃を寝かせ、そのまま家康へと振り上げた。
「家康、お前そこまで落ちちまったのかよ! ガキの裸見て喜ぶ変態になっちまったなんてなっ!」
「も、元親!?」
盛大な破壊音の後、家康の姿が夜闇の果てへと飛んでいき。
その音で三成が外の状況に気がつき慌てて外を覗きに来ることになるのだが、その間抜けな光景を見ながら政宗が思ったことはただ一つだった。
お前が言うな、その言葉を。
入浴を邪魔された上にガキ扱いされてご立腹な三成に怒られ、大きな体をすくめている元親を見ながら。
西軍がどんな感じだったのかを、実地で理解させられた政宗であった。
_________________________________________
毛利さんは巻き込まれたくないのと寒いので室内で待ってますw
「つまり……私が心配だから様子を見に来たと」
「放っといたら死ぬだろ、お前」
「貴様らは私をなんだと思っている!」
「自分の世話も出来ぬ子供に決まっておるであろう」
濡れて一気に質量が減った髪を指でいじりながら、毛利はきっぱりとそう言い切った。
風呂から上がった家康と入れ替わりで瀬戸内の両将と一緒に入浴することになった時、まず最初に警戒したのは家康が乱入してくることだった。何が何でも三成と一緒に風呂に入りたがる家康の危険性を三成は必死に訴えたが、毛利の反応はあっさりとしたもの。
こやつがおる限り、風呂には来ぬわ。
そう言って戸惑う三成を引きずるように風呂に連れ込み、一緒に湯船に浸かっているのだった。
今まで寒い外を歩いてきたのだ、暖かめのお湯は体の芯まで三成の体を温めてくれる。
「ま、無事に生きてるようだから安心したけどよ」
「………………………側に来るな」
「別に構わねえだろ? お前には何もしねえって」
「それはわかっている。だがやはり貴様はなんというか………」
全てにおいて開放的すぎる。
透明な湯の中、元親の逞しすぎる体が嫌にでも目につく状況は、はっきり言って好ましくない。三成も男だ、異性の肉体が性的に気になるのと同時に、同性の肉体が気になることもある。
主に自分との比較対象として。
男なら誰しもあこがれるであろう、無駄な肉が一切ない見事な肉体。そして下半身にちらりと目をやれば、これまた同性の尊敬を一身に集めそうなものが足の間に鎮座しているときている。通常の状態でこれという事は、興奮した時はどれほどの大きさになるのやら。
そんなことを考えながら何も言わずに自分と元親の足の間を数度目線を行き来させていると、その行為の意味に気がついた毛利に散々馬鹿にされた。
「貴様もそういうことを気にするのだな」
「き、貴様は気にならんのか!」
「元の体の大きさが違うのだ、比較する気にもならんわ。それにしてもあの凶王が可愛いものよ……これは島津の爺への土産話にせねば」
「それだけはやめろ!」
あの豪快を通り越して全てにおいて破天荒すぎる老人のことを、三成は心底苦手としていた。嫌いではないし、自分のことを常に気にかけてくれるのはありがたかったのは事実。だが酒臭いし、愛情表現が過激すぎるし、おまけに三成の都合を考えない。
あの老人が三成の生存を知ったら、どうなることやら。
と、そこで気がついたことがあった。
「貴様らは……何故私が生きていることを知っていた?」
「うちの若いのが、あの時あんたが伊達に連れて行かれたのを見てたんだよ。だからさっさとあんたを返せって書いて送ったんだが、伊達のヤツ……うんと言わねえときたもんだ」
「それで……私を迎えに……いや、よくわからんが……」
「簡単に言えばそうだな。俺はあんたを迎えに来た、つもりだったんだがな」
風呂の中でも眼帯を外さないのは政宗と同じ。
湯を大きく揺らがせながらずいと距離を詰めてきた元親から、三成は今度は逃げなかった。少し離れた距離で二人を面白そうに見守っていた毛利も、少し表情を改める。
凛とした、当主としての顔に。
「今の貴様を見ておると、連れて行くのが正しいとは思えなくなった。そういうことだ………伊達は田舎だが、貴様には合っているようだな」
「さっきから俺の言葉を先に言いやがって……俺になんか恨みでもあんのか?」
「貴様がなかなか言わぬから我が先に言ってやっているだけのこと。徳川ともその調子だったではないか」
「痛いとこつきやがって……」
隣に並ぶと威圧感すら感じる巨体が気まずそうに頭をかく。
別邸の風呂より幾分狭いが、それでも大人が数人は楽に入ることができる湯船。そこに敗軍の将たちが集まって世間話をしている姿は、他の人間にはどう映るのだろう。共に数多の戦いをくぐり抜け、その体に証である傷跡を幾多も刻み込んではいるが、彼らはそれでも生き延びている。
主君として国を率い、民の安寧のために戦う事を選んだのだ、彼らは。
秀吉の下で彼の望みのために全てを捧げてきただけの三成が、彼らに太刀打ちできるわけがない。正直言えば、豊臣の残党をまとめ上げるのも一人ではできなかっただろう。刑部だけは側にいてくれる、その事実がどれだけあの頃の三成を支えてくれたか。
できれば伊達に全てを話し、すぐに会いに行きたいのだがそれが刑部自身によって止められていた。
下手に動けば互いの身の破滅になる、もう少し待っておれ。
届く手紙は上杉の代筆だが、書いてある文章は刑部の物。常に三成を案じている手紙に心慰められ、そして最後に書き添えられた短い上杉の言葉に時には顔をしかめ。先日も真田に手紙を送る際に、伊達には勘づかれにように刑部への言づてを書き添えておいたが。
彼は彼なりに上杉で生きている。
それだけわかっていれば、今は十分。目の前にはすっかり堕落(?)した家康やら、兄貴風を吹かす海賊やら、とにかく難問が次々に襲いかかってくるのだ。いつかはここで経験した全てを刑部への土産話に出来ればいいのだがと思いながら、三成は先程からずっと気になっていたことを聞いてみることにした。
さすがに熱くなってきたので、湯船の縁に腰掛け少し体を冷やすことにする。
「何故家康と会っていなかった? 貴様らは『親友』というものなのだろう」
「お前と家康だって『親友』なんだろ?」
「あの男は秀吉様の仇だ! 昔は信じたこともあったが……今は敵だ」
「だけどよ、嫌いじゃねえんだろ?」
「貴様に言われたくはない。一度も貴様から家康に声をかけていないくせに……家康もだがな」
「よく見てるもんだな」
「あれだけ私の後ろで騒がれれば、嫌でも気になる!」
顔をしかめながら、まだ湯に浸かっている元親の頭頂部をじっと見つめる。
別に何かがついているとか、頭頂部の髪が寂しくなっているというわけではないのだが、この男と目を合わすのはやはりまだ少し怖いのだ。自分に害を与えないのだから怖い存在ではない、それはわかったのだが。
刻み込まれたものは、なかなか消えないわけで。
それに元親の体の奥底から湧き上がってくる様な熱さも、三成にとってはできれば避けておきたいものであった。
昼夜問わず、おまけに場所も問わずにただ一人の相手を肉体的に求める。
それだけの情熱に触れてはいけない、そんな思いが三成の内には確実に存在していた。自分の心の内にも眠っているであろうそれを目覚めさせてはいけない、だから熱自体から遠ざかる。
誰かを思うことの熱さ、それを知ってしまえばいつか家康に求められることを喜んでしまう。
そんな気がしてならないのだ。
「…………お前ならわかるかもしれねえな………怖いんだよ」
「怖い?」
「俺がこいつに騙されて勝手に家康の敵に回った……それをアイツにどうやって詫びりゃいい?」
「全て我のせいにしても構わぬと言っておいたであろうが」
「お前は少し黙ってろ!」
言葉と共にお湯の塊が叩きつけられたが、毛利はそれを避けようとしなかった。
時折湯気逃しのために細く開けられた窓を見つめては、楽しそうに笑い。そしてぶつけられたお湯で再度多量の水分を含むことになった髪に手をやり、指で挟むことによって水気を搾り取る。
関ヶ原での戦の最中であれば、こんな事をされたら烈火の如く起こり始めていただろうに、彼にも何らかの心境の変化があったのだろうか。
それについて聞いてみると、
「我は今、安芸の当主を休んでおる」
あっさりとした、そんな答えが返ってきた。
当主というのは、休みたいからといってすぐ休めるものなのか。よくよく考えればしょっちゅう国を空けている元親がここに来るのは納得がいくが、何故毛利までついてきた?
どう考えても答えの階すら見つからない中、毛利本人は相も変わらぬのんきさで言葉を繋げる。
「我の代わりは影武者に任せてきた。周囲の国々にも内紛の計略を仕掛けてきたのでな、しばらくは安芸に攻め入ることも出来まい。それに……」
この機に乗じて安芸を奪い取ろうとする馬鹿共をあぶり出す好機だと思わぬか?
まるで天気の話をするが如く。
あっさりとそう言った毛利に、その場にいた全員が凍り付いた。
「な? こいつ怖いだろ?」
「何故こんなのが良いのだ?」
「惚れちまったらそこで負けなんだよ……お前もその辺覚えておけ」
「小鳥の如くよく囀る……五月蠅いものよ。貴様ら、少し黙らぬか!」
顔を合わせて囁きあう二人に苛立ったのか、毛利の顔が急に険しくなった。
元親と三成から顔を背け、叩きつけるように口を開いた後、おもむろに立ち上がる。
「風情を解せぬ輩よ……我は出るぞ」
「お、おい!」
後を追って元親も立ち上がり、大きく波打った湯船の水位が下がっていく。背も高いが、それに似合う目方の持つ主である元親が去った湯船。
騒がしすぎる二人が立ち去っていった方向を一瞬だけ見てから、三成は風呂に入り直すことにした。
雪がひどくなってきているのか、外からは音と共に強い風が吹き込んでくる。
湯気で消えぬように湯船と同じ高さに置かれている灯籠に目をやり、そのほのかな光が消えてしまわぬうちに体を再度温めさっさと風呂を出ることを選択した。
「よし、毛利が行った!」
「何度も言うけどな、人の家の風呂に勝手に覗き穴を作るんじゃねえよ!」
「儂は三成の裸が見たい、それだけだ!」
「てめえの欲望を正当化するな!」
三成が元親たちが風呂を出るのを見送り再度湯船に浸かった頃、湯気逃しの窓の下では男たちの醜い戦いが繰り広げられていた。
三成が風呂場に入ったのを確認してからいそいそと動き出した家康の後を追跡してみれば、勝手に風呂場の壁に空けた穴から覗きを決行しようとしており。止めるために小声で家康と揉めていると、覗き穴の向こうにいる毛利と目があった。瞬時に状況を察してくれた毛利がちょうど三成が隠れるような位置に座ってくれたことで、最悪の事態は回避できたのだが。
この天下人、あきらめという言葉を知らなかった。
天下人が正々堂々と覗きをするというだけで大問題だというのに、二人がいなくなったのでそのまま風呂に乱入したいと言い出す始末。日頃は小十郎に諫められる立場の政宗だったが、人の無謀な行動を止めるのがこんなに大変だったとは。
今度から少しは小十郎の言うことを聞こう、そう近いながら政宗は風呂場の壁を壊すために力をため始めた家康をまずは言葉で止めようとする。
「毛利のヤツのあれは……オレらにむけられたもんだろ?」
「構うことはない!」
「構えよ!」
「心配するな、この壁は後で儂が直してやる。今は三成の事が心配だ」
「心配する必要はないだろうが!」
三成に気がつかれぬよう、黄金の光が小さく、だが確実に練り上げられていく。通常の力で兵士を数十人ぶっ飛ばしていることを考えれば、この程度でも壁を壊すくらいは十分なのだろうが。
好き好んで自分の家の壁を壊されたい人間はいない。
刀を持ってこなかったことを悔やみながら、後頭部をぶん殴って止めてやろうと三成に気づかれることを覚悟で立ち上がろうとした政宗を止めたのは、ふわりとした湯気を纏った暖かい手だった。
精緻な制御を必要とするのか、集中している家康は気がついていなかったが、思わず振り返った政宗はそこにいた人間の顔を見て。
「………後は頼んだ」
「おう」
その一言だけで場所を譲った。
奥州の寒さには慣れている政宗でも余分に一枚着込む程の寒さの中、薄い異国の衣装を身に纏った男は一度だけ家康をちらりと見ると。
手に持った大槍の刃を寝かせ、そのまま家康へと振り上げた。
「家康、お前そこまで落ちちまったのかよ! ガキの裸見て喜ぶ変態になっちまったなんてなっ!」
「も、元親!?」
盛大な破壊音の後、家康の姿が夜闇の果てへと飛んでいき。
その音で三成が外の状況に気がつき慌てて外を覗きに来ることになるのだが、その間抜けな光景を見ながら政宗が思ったことはただ一つだった。
お前が言うな、その言葉を。
入浴を邪魔された上にガキ扱いされてご立腹な三成に怒られ、大きな体をすくめている元親を見ながら。
西軍がどんな感じだったのかを、実地で理解させられた政宗であった。
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毛利さんは巻き込まれたくないのと寒いので室内で待ってますw
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
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