がんかたうるふ 月孤譚 6章 その6 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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次で6章終了。



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 動きやすさと瞬発力を重視する故、三成の沓は全体が柔らかく作られている。他者の物より柔らかい皮を鞣した物で底を拵えており、足全体の力を大地に伝えやすいが柔らかい分悪路には弱い。そのせいで以前は鏃を踏み抜いて怪我をしてしまったのだが、もうとっくに癒えたはずの足を理由に戦いを変わってもらうのもおかしな話だった。
 そして、横に座っている毛利が足をじっと見つめているのも。
「石田……その足はどうした?」
「先程は少し調子が悪かったが、特に問題はない。痺れただけだろう」
「そうではない……そうか、わからぬか………」
 冷たい木の床の上に見事な姿勢で正座をしている毛利は、相変わらず三成の足を見つめ続けている。時折首をひねっては何かを考え込み、また目線を足へと戻す。
 目の前で行われようとしている戦いよりも、三成の足の方が大事だと言わんばかりに。
「準備はいいか?」
「ああ」
「先に降参するか地べたに叩きつけられた方が負け……でいいんだな?」
「背中の全面を地面につけると負けだ」
「わかった。家康……すぐに泣かせてやるよ」
「それは儂の言葉だ」
 家康はいつも通りの格好で徒手空拳のまま。
 それに対する元親は、何故か大槍を持たずに極自然体の姿でその場に立っていた。先程と変わった所があるとすれば、滑る木の床の特性を考えて裸足になっていることだけか。
 伊達家の本邸には、政宗や小十郎が剣の技を磨くための小さな道場もある。
 今まさに事に及ぼうとしていた政宗と小十郎の部屋に乱入し、顔を真っ赤にしている二人に無理矢理ここを使う許可を得てきたのは家康だったが。政宗に組み敷かれ、とろりと濁った目で愛撫を受けていた小十郎の顔を思い出すだけで、自然と三成の顔は赤らんでしまう。
 あまりそういうことは気にしないはずだったのだが、日頃自分を怒っている人間のああいう姿を見るのは、また違った意味で恥ずかしいというか。
 冷たい床に正座をしているというのに、体が火照るのはそのせいだけではない。これから目の前で繰り広げられようとしている男たちの戦い、それが三成の武士としての心をも逸らせ滾らせていた。純粋に武を磨き、高めようとする武人としての魂が自分の内に残っている。その事実は、三成の心に小さな変化をもたらしていた。
「どうした? 貴様でも気が逸ることがあるのだな」
「うるさい」
「己も争いに混ざりたいか……貴様も奴らの仲間という事か」
「貴様は気にならんのか?」
「我を殴り合えば全てが解決すると考えておる馬鹿共と一緒にするでない」
 毛利に全てを見透かされた上で一蹴され、思わず顔を背けると、思い思いに体を動かしていた男たちが同時に動きを止めた。
 そしてそのまま、相手を無言で睨み付け始める。
「では、そろそろはじめるとするか」
 これを勝負の開始の兆しと見て取ったのだろう、毛利は気負うことなく開始を宣言した。片腕を叩く掲げ強く息を吸うと、張りのある声と共にその手を下へと一気に振り下ろした。


「始め!」


 その瞬間、二人の体が爆ぜるかのように動いた。
 流れるように動き、己の居場所を確保し。そこから互いの間合いを読んで動き始めるのだろうと三成は踏んでいたのだが、彼らの考えは全く違ったようだった。
 一直線に相手へと突き進み、そのまま拳を相手へと突き出す。
 子供の喧嘩並みの単純な殴り合い、それを見ながら毛利がごく当たり前の感想を口にした。
「馬鹿の争いは野蛮極まりない」
「そんなことをいっている場合か! あれは……」
「放っておけ、奴らなりのやり方なのであろう」
 鈍い打撃音が、三成の耳にまではっきりと聞こえてくる。
 この時代を代表するといってもいい将二人が本気で殴り合っているのだ、簡単に急所に拳が当たることはないが。それでも躱し損ねてかするだけでも骨がきしむ様な痛みを覚えているはずだ。
 顔をしかめ、汗で顔を濡らしながら男たちの戦いは続いていた。
「大体なぁ………最初から自分がやったんじゃねえって言えば良かったんだよ!」
「元親はそうすれば儂を信じてくれたのか!?」
「信じたさ! お前は俺のダチだ!」
「ならば何故……儂の目の前で三成に声をかける! この国で一番性格が悪いくせに嫌になるほど美人でわがままでどうしようもない恋人がおるのであろう?」
「あんなガキに手を出すわけねえだろうがよっ! それに俺はもう少し理想が高くてな!」
 わずかに足下をぐらつかせた家康の耳元を、元親の拳が通り過ぎていく。
 次の瞬間、そこから盛大に吹き出し始めた血はあっという間に家康の衣類をしとどに染めた。濡れた感触でそれに気がついたのか、呼吸を整えながら肩に手をやり、指を染めた色を確認した家康は。
「さすがだな、元親!」
 自らの体に広がる紅を吹き飛ばすかのような笑い声を上げた。
 それに続くかのように、元親の唇からも荒い息と共に雄叫びに近い声が発せられる。
「お前を殴ってやりたかったんだよ……ずっとな」
「儂だってそうだ! 儂の思いをわかっていながら三成のことを……」
「だからそれは誤解だ」
「誤解ではない!」
 防御など全く考えず、相手の体に傷を作ることだけに専念する。
 三成から見ればこれほど馬鹿な戦い方もないのだが、殴り合う男たちは心底楽しそうに笑っているのだ。互いを罵り、肉体だけでなく心も攻撃し合っているというのに、彼らはどうして。
 どうして満たされた顔をしているのだ。
 膝の上で拳を握り、唇を噛みしめ。三成は間に入ってこの戦いを止めたい気持ちを抑えていた。彼らの怪我が増えることを案じているのではない、戦い会うことで互いを理解し、そして己を満たすことができる彼らへの嫉妬なのだ。
 自分と家康ではできないことを、元親はあっさりとやってみせる。
 元親だって部下を毛利に殺されている、それなのに何故彼らは和解し、そして共にある事ができるのか。

 何故自分にはできないのか。

 この空間の空気にすら苛まれているような、胸の奥から湧き上がってくるどす黒い感情をなんとか抑え込もうとしていると、毛利の顔がようやく上へと上げられた。
形のいい顎に添えられた指はそのままに、唇がゆっくりと開き始める。
「あの馬鹿は我のことを一生許さぬと言った。だが愛しているとも言うのだ……愚かだと思わぬか?」
「……………………………」
「あれは我への思いと部下への罪の間で死ぬまで煩悶し続けるであろうな。そして……それは我もだ」
「貴様……も?」
「人を繋ぐのは言葉だけではないが……あやつらのように殴り合えば全てがわかる単純な生き物ばかりではない。言葉でしか伝えられぬ事は当然存在する、それはわかるな?」
 無言で頷いた三成に目元をほころばせて笑って見せ、毛利は鋭く澄んだ目線を戦いあう二人の方へと移す。
 互いにしかわからぬ何かを拳で語り合い、相手が大きくよろめけば立ち上がる猶予を与え。痛みでしか伝わらないものを満足するまでぶつけあう。
「貴様はあやつらの様になる必要はない。怒りを失う必要もないのだ……貴様から豊臣を奪ったのは徳川なのだからな。しかしこれだけは覚えておくがよい、誰かのために、という名目で動くことこそもっとも危ういということをな」
「どういう意味だ?」
「誰かのために動くと言うことを大義名分にしてはならぬ……これは本来ならば貴様にではなく徳川に言ってやるべき言葉だが」
 貴様に預けておいてやろう、必要な時に徳川に言ってやるがよい。
 小さく息を吐き、それを言い終わると。毛利は目の前の争いを見るように三成に命じ、自分も姿勢を直して目の前を見ることに集中した。
 やっていることは殴り合いと罵り合いであり、凄まじく騒々しい。
「大体元親、お前はずるいのだ!」
「どこがずるいってんだ?」
「………三成は………三成は儂には笑いかけてはくれぬっ!! 伊達にも片倉にも笑ってみせるというのに……儂はここに来てから三成に笑いかけてもらった事がないのだっ!」
「そういうことかよ……てめえの度量のなさを見ねえフリして俺に八つ当たりとは……随分と生意気になったもんだな、家康よぉっ!」
 全てを振り絞るような家康の叫びに答えたのは、元親の重い拳だった。
 ちょうど心の臓の下辺りにめり込んだ拳は家康の体を持ち上げ、そして簡単に宙へ放り投げる。数瞬の後、床へとたたきつけられた家康はぴくりとも動かず、息をしているのかも三成のいる場所からは確認することができない。
「落ち着け。今貴様に出来ることは見守ることのみよ」
「だが……っ」
「我らには終わった後にせねばならぬ事がある、その時まであの馬鹿者どものあがきを見せてもらおうではないか」
 立ち上がろうとして毛利に制止され、渋々と再度腰を下ろす。
 家康程ではないが、元親だって相当傷だらけになっている。顔は殴られて腫れ上がり始めているし、口の端からは血が流れ続けている有様。だというのに、毛利は涼しい顔で見守っているし、元親の目から強い輝きが消えることはない。西海の鬼の名にふさわしい、戦いに喜びを見いだすギラギラとした眼を、毛利は誇らしげに見つめている。
 これが家康の言う『絆』というものなのだろうか。
 強く結びつき合っているからこそ、互いを信じることができる。彼らの間にも憎しみはあるはずなのに、どうしてそこまで信じ合えるのか。
 三成の苦悩、それすらも飲み込むかのように。
 吹き飛ばされた家康の元へ、わずかによろける足と隠そうとせず元親が歩んでいく。
「俺の……価値だな。立てるか?」
「なんとか……な。殴り合いなら元親に勝てると思ったんだがな……」
「しけた面して俺に勝てるわけないだろうがよ。おら、さっさと立て」
「すまぬ」
 相当の痛手を負ったのだろう、床に横たわったまま力なく持ち上がった手を、元親はしっかりと握りしめる。そして力任せに家康を引っ張り起こすと、一気に表情を緩めた。
 優しい兄のような顔で三成を見やり、そして問うてくる。
「勝ったぜ。んで、あんたの望みはなんなんだ? どうせならでけえの言っておけよ」
「でかいの……だと?」
「こいつでも叶えられそうもないヤツなんてどうだ? なんか欲しいものあんだろ?」
 長曾我部が三成の代わりに戦って勝った。
 そして三成はまた一つ何かを取り戻せるわけだが、果たして何を望めばいいのやら。取り戻したい物はたくさんあるのだ、だが今ここで望むべき物は、今一番欲しいものは何なのだろう。
 考えてみなければならないはずなのに。唇は小さく、だがしっかりと持ち主の意に反して願いを口にし始めていた。
「……………………桜」
「なんだ? 桜?」
「大阪城の桜……昔秀吉様や半兵衛様や刑部と一緒に見た桜だ……あれが欲しい」
「ちょ、ちょっと待て三成! あの桜をここに持ってこいと!? そんなの無理に決まっているだろう!」
「別に今すぐとは言わん。だがいつか……あの桜の下をもう一度歩きたい」
「一本や二本で満足する三成ではないだろう? さすがの儂もそれは……」
 半身を血に染め、体を起こすことはできたがまだ立ち上がることができない家康が何度も首を振る。数百本ある大阪城の桜、それを全て移動させるなんて事天下人となった家康でもできるわけがないことは三成にもわかっている。
 だが少しだけ夢を見たい。
 あの桜並木の下で、自分が心寄せる人たちともう一度ささやかな宴をする夢を。その中に家康が入るのか、今はまだわからないが。
 その頃には、何かが変わっているかもしれない。
「家康……お前、そんなに器量の狭い男だったか?」
「器量の問題じゃない! あの桜を見た事がないから元親は気楽にそう言えるのだ。あれだけの桜だ、移動の際に傷つけて花が咲かなくなったら儂は三成に会わせる顔がない」
「家康……貴様が気にしているのはそこなのか?」
「当たり前だ、三成の大切な物を傷つけることなどできるわけがない」

 ヒデヨシサマヲコロシタクセニ、ワタシノタイセツナモノヲキズツケタクセニ。

 薄れかけていた憎悪。
 伊達に来てからの優しい記憶が少しずつ覆い隠し初めていた心の傷口。それが開き、中から濁った感情がどろりとあふれ始める。

 関ヶ原の戦の最中、何度家康を呪ったか。
 彼の首を刎ねる夢を見て、その時が来るのをどれだけ待ったのか。
 殺してやりたい、彼の全てを肉片へと変えてやりたい。

 家康など。



 イエヤスナド、シンデシマエバイイノニ。



「石田!」
 ぱしり、と頬を軽く叩かれた。
「…………………………もう……り……?」
「過去にとらわれるでない。忘れてしまえと言われたのであろう?」
「…………忘れる………」
 そうだ、と今度は毛利の手が優しく肩を叩いた。
 触れてきた手の温かさに安堵し、自分の息が動いてもいないのに上がっていることに気がつくのと同時に。
 左足が、わずかにうずくのを感じた。
「三成、大丈夫か!?」
 自分もろくに動くことができないというのに、ずるずると這いながら家康がこちらへと近づいて来る。そんな家康を見かねたのか、元親が家康の首根っこをひっつかみ、三成の前へと運んでくれた。
 頬まで血にまみれた家康の顔、だがその顔にはわずかに曇りも存在しない。
「桜は儂がどうにかしてみよう……何年かかるかわからぬが……待っていてくれるか」
「当たり前だ」
「それでな、儂も勝ち分があるのだが……今ここで使ってもよいか?」
「な、なんだと!?」
 そういえば、家康の勝ち分が残っていた。
 かれが三成の今の願いを反故にしたいと言えば、それがまかりとおってしまうのだ。さがさすがの家康も今叶えると言ったことをこの場で反故にすることはないはず。
 ならば、彼は何を望むというのだろう。
「…………何を望むのだ、貴様は」
 恐る恐るそう聞くと、家康は子供のように邪気のない笑顔でとんでもないことを言いだした。

「三成の体の全てを舐めたり吸ったりしたいのだ。儂が望む時いつでも」

 一瞬の静寂の後。
「誰が貴様などにぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!」
「一足飛び過ぎるだろうがよ!」
「物事の節度をわきまえよ!」
 と三人に一斉に攻撃された家康だったが、その後騒ぎを聞きつけて嫌そうな顔をしながら起きてきた伊達主従を巻き込んで、さらなる騒ぎを引き起こすことになり。
 三成は今夜も眠ることができないことを内心嘆きながら、奇妙にうずく足を気にかけ始めていた。


















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権現は自重して下さいw


BGM「ナミダバイオレンス」 byギターウルフ
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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