がんかたうるふ 月孤譚「山猫、小さな許しを得る」 その1 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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1は少し短めですが、次が大山です。
ようやくここまできた………



 *****
「そうか無事に奥州に入ったか。追っ手から逃れながら三成の元にたどり着くまで……半月といったところか」
「………………………………………」
「苦労をかけたな、忠勝。あとは儂の仕事だ、正式に同盟を結んでおる奥州まで無理な追っ手をかけることはないだろう。お前はゆっくり休んでくれ」
「……………!」
「何? それはできぬ?」
「…………………!! …………!」
「そうか、そうしてもらえるとありがたい! 正直儂も毛利殿からの要請があって助かったと思っている。儂に主君としての心がけを説きに来たと言っていたが、おかげで儂も正面から動くことができるのだからな」
「………………………………」
「そうだな、毛利殿の事だ。きっと儂が動きやすいようにしてくれたのだろう。それが安芸の利益に繋がると毛利殿はわかっておったのだろう……さて、わしはそろそろ行くとしよう。しばらく三成の顔を見ていないので恋しくてしかたがなくてな」
「………!!! …………!!」
「わかっておる、無理強いはせぬ。忠勝の三成びいきもいい加減にしてほしいところだが……」
「………………………」
「そうだな、三成にはもう頼るべき身内は誰もおらぬのだったな………儂が……全て奪ったのだった……」











 山のようにたまっている雑事を片付け、久方ぶりに伊達家の屋敷へ向かう。
 さすがに街中まで忠勝に乗せてもらうわけにはいかないので、町から少し離れた所で下ろしてもらったが。そうすると今度は伊達家の屋敷までの道を一人で歩くことになってしまい、日が昇る前に出発しているというのに到着するのは昼過ぎになってしまう。
 屋敷の周囲を囲む高い壁と、常に複数人の兵が配置されている門。
 三成から見れば伊達家にはお祭り好きで口うるさい人間しかいないとのことだが。門を挨拶しながらくぐる家康へ向けられる目線にはわずかの油断もない上に、彼らは決して家康に背を見せようとしない。
 奥州を敵に回さなくて良かったとつくづく思わされながら勝手知ったる他人の屋敷に足を踏み入れると、すぐに廊下で小十郎と顔を合わせることになった。先日の会談以来、小十郎とは微妙な距離感を維持したままだったのだが。
 何故か今日は小十郎が自ら話しかけてきた。
「徳川殿、いらっしゃいましたか」
「三成はどこだ?」
「道場ですが、行かない方がよろしいかと……」
「道場? それはいい、儂も久しぶりに体を動かすとするか」
「……本当に、行くのですか?」
「随分と儂を引き止めようとするが、道場に何かあるのか?」
 どうせ三成と政宗が仲良く稽古している所を邪魔されたくないのだろう。
 最初はそう考えていたのだが、それにしては小十郎の様子がおかしい。
 客人に喰わせる米はないとばかりに家康の分のご飯の盛りが少なかったり(利害の一致故、三成に分けてもらう)、家康だけおやつがなかったり(これは分けてくれない)、寝る前の茶も家康だけは飲めない程熱い物を出す小十郎だったが、今まで行かない方がいいなんて中途半端な言葉で家康を止めることはなかったのだ。断るならきっぱり断る、それが信条のはずの小十郎に一体何が。
 立ち止まり、じっと彼の顔を観察していると渋々といった風情で小十郎が口を開いた。
「昨日より客人が来ております……政宗様も石田殿もあの方のお相手に夢中なようで」
「つまり片倉殿は構ってもらえないというわけだな」
「はっきりと言わないで下さい」
 顔に嘆きをくっきりと刻み、小十郎は深く重いため息をついている。
 さて、今度の客人は誰なのか。
 帰ったばかりの元親ではないだろうし、松永が再度来訪したのなら小十郎が政宗の側を離れるわけがない。また幸村でも来たかと一瞬考えたが、小十郎の幸村を見る目は出来の悪い隣の家の子供を見るような苦笑混じりのものだった気がする。
 三成の生存を知っており、小十郎をここまで落ち込ませる相手。
 どれだけ考えても思いつかないので、これはもう実際に見て確かめるしかないと決め、道場の方へと行くために方向を変える。
「片倉殿の忠告はありがたく受け取っておくが、儂は三成に会いに来たのだ。会わずに帰る訳にもいかぬだろう」
 一応小十郎には断りを入れ、渋い顔のままの彼に軽く手を振ってやるが。
 家康についてくるわけでもなく、かといってどこかへ歩み去るわけでもなく。まるで家康を哀れむかのように、どこか悲しげな目線が家康の背を見つめ続ける。そのことに恐怖心を煽られ、背筋に寒気を感じながら急いで道場まで走っていきそっと中を覗くと。


 心が折れた上に砕け散ってしまいそうな光景がそこには広がっていたのだった。


「ジジイ、今度はオレの相手をしろ」
「島津は私に会いに来たのだ、私の相手をするのが役目だ。それとも……私を裏切る気か?」
「やれ若もんは元気があり余っちょるの……オイではおまはんたちの相手を一度にするのは無理じゃ」
「そんなこと言うなよ。鬼島津の名が泣くぜ?」
「秀吉様ですら一目置いた貴様との修練で、私は家康を倒すのだ」
 年を経ても逞しい巨躯に、獣の鬣を思わせる豊かな白髭。
 荒い息を隠すことなく道場の真ん中にどっかりと腰を下ろす老人を、三成と政宗で囲んでいる様子はまるで道場が孫と祖父の語らいの場と化したようであった。天下に聞こえた鬼島津を客人として迎えたことがよほど嬉しいのか政宗はこれ以上ない程の笑顔を浮かべているし、三成は表情はあまり変わらぬが頬が紅潮しきっている。
 二人がどれだけの喜びをもってあの老将を迎え入れたのは一目瞭然。
 手塩にかけて育てた大事な主君と、大切に守り続けている居候件人質がぽっと出の客人にあんな顔を見せれば、小十郎も落ち込みたくなるだろう。二つの涼やかな目と、一つの凛々しい瞳に熱い眼差しを注がれ、老将の方もまんざらではないようだった。
 巨大な舟の櫂を思わせる木刀を傍らに置き、目を細めて孫のような年の青年たちの言葉に頷く。心の底から歓迎されていることの喜び故か、鬼と呼ばれる程の鋭さを今の彼からは感じはしなかった。
 代わりに彼の目に宿っているのは、限りなく深い慈愛。
 彼が西軍についた時、家康は少しだけ落胆したものだったが。こうやって三成を気遣って様子を見に来てくれているのを見ると、それでよかったのだろうと思うことができる。
 はずなのだが、家康の心を占めるのは島津への嫉妬と羨望であった。
 三成が自分以外の誰かへ何かをねだり、そして頬を紅潮させて喜ぶ。彼もこんな顔をすることができたのだという新たな発見は、家康の心に棘のように後悔を食い込ませていった。
 もし豊臣に反旗を翻さなければ、三成の喜びの顔の先に自分がいたのだろうか、と。
 そんな有り得ないことを考えてもしょうがないことはわかっている。だが、家康は何度も思ってしまうのだ。三成との間に何のわだかまりもなく、普通に語らい思いを育てていくことができる未来がどこかにあったのではないかと。
 こっそり覗く家康に気がつくことなく、三成は島津の肩に手をかけ稽古の続きをねだるかのように揺さぶり続けている。それを見守りながら自分もと言い続ける政宗の目線は我が儘なを弟見守る兄のように優しかった。
 豊臣という帰る場所を失った三成だが、彼を守ってくれる新しい居場所もうここにある。そのことに一抹の寂しさを感じていると、後ろから家康を哀れむかのような声。
「徳川殿………見てしまいましたか……」
「片倉殿、大変だったのだな」
「ずっとあの調子でございます。政宗様も石田殿も……私という者がありながら……」
「三成……儂がいるというのに………」
 いつの間にか後ろに立っていた小十郎の眼差しの切なさに、家康は深く頷き、そして。

「片倉殿、向こうでお茶でもどうだ?」

 お茶という言葉に隠し、一時的な和平を提案してみた。
 今まで散々嫌みを言われたり邪魔をされたりしてきたが、さすがに今回は団結して西からの脅威に対抗すべき。多分島津も数日で帰るのだろうが、その間ずっと三成の嬉しそうな眼差しがあの老人に向けられているのを見るのはかなりきついものがある。
 小十郎も同じ事を考えていたのだろう。
「それがよろしいでしょう。この光景は我らには刺激が強すぎます……」
 ため息混じりにそう言い放つと、道場へちらりと視線を向け、また顔を背けた。
 政宗にとって小十郎は一番大切な存在だし、三成も小十郎には並々ならぬ恩を感じて慕っているのは本人が一番わかっているはずなのだが。それだからこそ二人が自分以外の人間に甘える姿を見るのが辛いのだろう。
 肩を叩いて慰めてやりたい衝動に駆られたが、小十郎の誇りを守るためにそれはやめておき。敗北者に成り下がった男たちは肩を並べてとぼとぼと歩き出した。













________________________________________
ここまでくるのにすごく長かったのですが……やっとここまで~!
7章はその4で終わる予定。
間章を挟んで、8章「山猫、己の影を呑む」 9章「山猫、最後の旅に出る」ときて、ようやく終章に……長かった、本当に長かった!
あとちょっと、がんばる~!


BGM「マブラヴ」 by栗林みな実
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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