がんかたうるふ 月孤譚6章その4 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終わりました。
多分6章はその6で終わるはず……終わるといいなあ。



 *****
 今朝の糠漬けは、昨日の物とは違う遥かに深みのある味わいだった。
 糠が変わるとここまで違うものかと舌鼓を打ちながら、三成は気がつかれぬようにちらりと横を見た。
「……………………………」
「…………………………」
 隣に座ってはいるが一切目を合わせず、話しをすることもなく。
 元親と家康は無言で飯をかきこみ続けている。ほとんど噛まずに飲み込んでいる家康に対して、元親は一応噛んではいるようだが味わっているようには到底見えず。互いをちらりと見てはすぐに顔を背け、そしてため息をつく。この微妙すぎる雰囲気の中、三成はあえて口を開く気にはなれず、毛利に至ってはあくびをかみ殺していた。
 昨夜は本当に修羅場だった。
 風呂の外で誰かが話している声が聞こえたので様子を窓から覗いてみれば、元親は自分の事をガキ呼ばわりしている上に、家康は宙を舞ってどこかに飛んでいこうとしている。家康は勝手に戻ってくるので心配いらないが、ガキ呼ばわりはさすがに腹が立ったので元親を説教していると、全裸な上にやけに爽やかな笑顔の家康が風呂場に突入してきて。
 それは脱衣場で待機していた毛利が吹き飛ばしてくれたのだが、騒ぎを聞いて駆けつけた小十郎に何故か全員で説教されることになってしまった。
 拷問にも近い時間が終わった段階で寝ればよかったのだが、何故かどちらが悪かったかで元親と家康が大喧嘩を始めてしまい。毛利は会話のきっかけが出来たので良かったではないか、そう笑っていたが。三成は安易にその言葉に頷くことが出来なかった。
 何せこの二人、三成を間に挟んで揉めるのだ。
 今も三成の隣に当たり前のように陣取った元親に向けて、家康の目線はとてつもなく冷たい上に憎しみに満ちており。そこには友であった名残など少しも感じられない。
 小十郎と政宗が忙しいという理由で朝食の席には居らず、必然的に三成がこの微妙な空気の室内をどうにかしなければならなくなっている中、全く空気を読んでいない男が自らおかわりをよそいながらのんきに口を開いた。
「おい、石田。メシ喰ったら外に出るぞ」
「三成はここの客人だ、勝手に連れ出すな」
「伊達には昨日言っておいたぜ? うちの船を見せてやるんだよ」
「そのまま三成を四国へ連れて行く気か? そんなことは儂が許さぬ」
「貴様ら……私を無視して話を進めるな!」
 話が始まったと思えば、先程からこの調子。
 昔は兄弟のように仲が良かった、毛利が昨夜そう言っていたが。自分は毛利に騙されたのではないかと思う程、この二人の間には険悪な空気が流れていた。
互いに気まずかったのは昨日の行動で何となく理解できる。
 だが歩み寄って仲直りをしたいのだろうと思っていたのに、この二人は何故争い始めるのだか。逆隣に座る毛利を、この状況を何とかしろという思いを込めて見つめるが、当の本人はのんきに食事を楽しんでいる始末。
 当主は休みと昨日言っていたが、揉め事を片付けるのも休みにしたいらしい。
「我はもう少し横にならせてもらう……船を見てくるのであれば貴様らだけで行ってくるがいい」
 完全に三成一人に全てを押しつけ、のんきに休日を楽しもうとしている毛利に、一度は怒りを爆発させようとしたのだが。
「例の件を徳川に言ってもいいのか?」
 と、小声で呟かれると三成はもう何も言うことが出来なくなってしまった。
 家康に知られたくないこと、言いたくないことなんて山程ある。西軍時代に三成を実力で止めては説教し、時には好き放題やらせていた毛利のことだ。
 三成を脅すことの出来る材料は山程持っているはず。
 たとえそれがはったり混じりの言葉であったとしても、後ろ暗いことが山程ある三成は動くことが出来なかった。毛利のことだ、刑部が生きていることを掴んでいる可能性だってあるのだ。
 刑部の身を、危険にさらすわけにはいかなかった。
 出来るだけ平静を装いながら朝食を食べ続けるが、そんな三成の内心の動揺は毛利にすっかり見抜かれていたらしい。
「それで貴様は行くのか?」
「………貴様が行かぬのなら、私が行くしかないだろう」
「五月蠅い蠅は近くで見張るに限る……か。では、我の代わりにこの阿呆の面倒を見てもらおうか。徳川は我が預かる故」
「な、なんだと!?」
 食事の手を止め、くつくつと笑う毛利が言った言葉の意味を最初は理解できなかった。
 家康を預かってくれるのはありがたいし、確かに毛利なら家康を御することも可能な気がする。だが毛利にとってそれに何の利益があるのか。彼は利益がなければ動くような男ではないし、それ以上に元親と自分を二人きりにする意味がわからない。
 毛利なりに元親を大切に思っているはずなのに。
 わざわざ情人を他の相手と二人きりにする理由は?
 まあ彼の意図を読み切れと言うのが無理な話。毛利が自分を害するために来たのではないということは、昨日の風呂でのやりとりでわかっている。自分に害がなく、家康から離れられるならこれほど都合の良いことはない。
 だから素直に頭を下げることにした。
「頼む」
「貴様の頼み方は気に喰わぬが……まあよい。徳川、今日は我の相手をするように」
「三成と元親を二人きりにするだと? そんなことできるわけがないだろうっ!」
「二人きりになるわけがない、あの船にはあれの暑苦しい捨て駒共が乗っておる」
「確かにそうだがな、行き帰りの道とかで何かがあったらどうするのだ?」
「子供の一人や二人……傷物になっても構わぬだろうに」
「き、傷物だと!? 元親! お前、三成を傷物にする気か!」
「こんな細い腰のガキ……抱くわきゃねえだろうが」
 口から米粒を言葉と共に言葉を吹き出すように捲し立て、元親へと詰め寄っていく家康を止めたのは、毛利の無造作な一言だった。

「だが以前よりは育ったであろう? 今なら抱けるのではないのか?」

 場の空気が瞬時に凍り付く。
 毛利は平静な顔で食後のお茶を楽しんでいるが、家康の顔は全ての感情が洗い流されてしまっていた。つきあいが長い三成だからこそわかるが、これは一番危険な兆候。怒れば怒る程、家康の顔から感情が失われていくのだ。全ての力を内に込め、一気に放出する時を冷静に待つのだ、家康という男は。
 頭を抱えてこの場を逃げ出したくなり、茶碗を膳において逃亡の準備を始めた三成を更に追い込んだのは、この状況を全く理解していない元親の遠慮が全く感じられない言葉だった。
「俺はまだ抱く気にゃならねえがよ、だいぶ美味そうになったんじゃねえのか? これで少しでも色気が出ればよ、色街に売ってもいいかもしれね……」
「元親、少し外で儂と話をせぬか?」
「毛利、貴様はこれ以上喋るな!」
 家康を押さえるべきなのだが、一番近くにいるのは元親。
 どう動いていいかわからず、とりあえず毛利の口を止めることを優先した三成だったが。自分の言った言葉が家康の怒りを買ったことを理解していないも土地かは涼しい顔だし、毛利が助けてくれるわけがない。
 最大の危機ともいえる状況をどうさばくか。
 これを放置したら第二の関ヶ原が起こるのではないか。それだけは避けねばならない、そう一瞬考え、そして。
 ぐらりと、視界と意識が回るのを感じた。

 自分は今何を考えた?

 家康と雌雄を決し、彼の首を秀吉に捧げるが望みではなかったのか?

 戦を忌避するなど、それは秀吉への裏切りだ。

 何故私はそのようなことを……

「おい、石田! どうした?」
「………あ………私は………どうしたのだ?」
 ゆらゆらと揺れていた視界が定まった時、両肩を元親に支えられていた。
 毛利の冷徹極まりない視線と家康のこちらを案ずる眼差しに守られながら、三成は何故か荒くなっていた息を整える。部屋の空気よりも自分の吐く息が冷たく感じられ、小さく体が震えると、元親の大きな手のひらが背に当てられた。
 そのまま幼子を宥めるかのように、優しく手が動く。
「少しそのままにしてろ……今日は外に出るのはやめとくか」
「いや、大丈夫だ」
「そうか?」
 顔を歪めておろおろとしている家康には悪いが、今は彼と顔を合わせ続けていたくない。今自分が考えたこと、それは秀吉への裏切りであると同時に。

 今の家康を認めることにもなるのだ。

 秀吉への絶対的な忠誠と、家康への思い。
 その二つが融和することは絶対に有り得ないのに、少しでも自分にとって都合の良い答えを探そうとしている己の浅ましさ。それを家康に見られることだけは、するわけにはいかなかった。
 自分を庇うように包んでくれている元親の腕から抜け出し、準備をするために立ち上がろうとして。
 軽く体をよろめかせた。
「…………………?」
「どうした?」
「………足が少し……動かないわけではないのだが……」
 刃のように鋭い瞳で自分を見通そうとする毛利から目をそらし、違和感を感じる左足に力を込める。痛むわけではない、動かないわけでもない。だというのに、微妙に力が入らない足に首をひねりつつ、三成は準備をするために部屋から立ち去ることを選択した。
 自分を見つめる家康の目を無視して。















 明らかに様子がおかしくなった三成を追うために立ち上がろうとした家康を止めたのは、毛利の声であった。
「待て徳川」
「儂に何か恨みでもあるのか? 先程から儂には容赦がない」
「敗軍の将が勝者に恨みを持っておらぬとでも? 長曾我部、あの子供をあやしてこい。我は用を済ます」
「わかった。じゃ、任せたぜ」
 あっさりと頷き三成の後を追いはじめた元親を言葉で止めようとしたが、それすらも毛利に止められてしまった。後に残されたのは、毛利と家康と米粒一つ残っていない茶碗とそれが乗せられたいくつかの膳。
「我は貴様に話がある……伊達に会談の場を用意してもらっておるのでな、そちらに場所を移すとするか」
「会談……だと?」
「島津、立花、それと尼子に黒田……巫女姫からも受けていたか。我は西国の将の意志を貴様に伝えるために来た……石田を弄んでから貴様の所へ行こうと思っていたのだが、手間が省けたわ」
 自らの前にある空の茶碗が置かれた膳を手で押しのけ、毛利は不遜な態度のまま足を組み直す。
「徳川……今の貴様のやり方を全ての者が認めると思うな。豊臣狩りという大義名分のもとに他国に平然と押し入り、狼藉の限りを尽くす………捨て駒共の身勝手な行動を認めたというのなら……」

 貴様は稀代の暗君だ。
 
 きっぱりとそう言いきった毛利がら家康は目をそらすことが出来なかった。
 いつ会っても毛利から感じるのは、当主としての自信と強い誇りだった。自らの立場を疑わず、そこから生じる義務からも逃げようとしない。
 部下を捨て駒と呼び、使い捨てにしたとしても。
 国を守るという目的の為以外に、無闇に人を使い潰すことはない。そんな彼の潔さにはある意味感服していたのだが、その鋭く冷たい舌鋒を自分に向けられると、ここまで恐ろしいとは。
 部屋の準備が整ったと小十郎が呼びに来たのはそれからすぐだったので、助かったと一瞬思いはしたが。


 立て板に水を流すが如き弁舌が家康を攻撃し尽くすのは、これからすぐ後のことだった。









「足、大丈夫か?」
「大丈夫だ、痺れていたのかもしれないな」
「それならいいけどよ」
 すっかり元の調子に戻った足を板作りの甲板にこつこつと打ち付けることで、調子が良いことを元親に伝える。
 馬を走らせて半時程、奥州随一の港には様々な船が停泊していた。
 小さな漁船だけではなく、大きな船も舳先を並べてゆらゆらと波に巨体を揺らしている姿に、三成は驚きを隠せなかった。異国との通商も細々と行っているのだと聞いてはいたが、これだけの規模の商船が並んでいる光景はなかなか見ることが出来ないだろう。
 青い海に揺らめく船と、荷車や人足の手で運ばれていく荷物。昨夜の雨の名残か、うっすら雲が空にたなびいてはいるが、日の光を遮ることはなかった。どこまでも広く、遠い海に日の光が煌めいて、跳ね返る光が船を優しく彩る。
 そんな中、明らかに他に船と目的も見た目も違うと一目瞭然でわかるのが元親の船だった。
「どうだ? 少しいじっちまったから、お前が覚えてるのとは少し違うだろ」
「これは…………少しではないだろう……」
「駆動系はほとんどいじってねえからな………他の船とぶつかっても壊れねえように少し装甲を増やしたけどよ」
「貴様の少しが当てにならないことは理解した」
 小さな小山、いや山に作った要塞の如し。
 戦の最中に何度か目にしたことはあったが、あの頃はもう少しおとなしめの外観だったはずだ。煉瓦色の装甲を幾重にも貼り合わせ、その装甲の上から鉄の棘を生やし。おまけに山のように大砲が取り付けられてはいなかった、確実に。
 こんな物が入港してしまったら、伊達家もそうとう驚いただろうに。
 自分がおつかい中に感じた地響きの正体はこれだったのだなと納得し、三成は横に立つ元親を無言で見上げる。自分より遥かに背が高いので、彼の目を見て話すと首が痛くなるのが難点なのだが、人の目を見て話をしなさいと半兵衛には昔から言われ続けていた。
 その視線を感じたのか、笑顔で答えてくれる元親に導かれるまま、上から降りてきた縄梯子(この船には入り口という物が存在していなかった)で上へと登ると、そこに広がっていたのも三成の常識を遥かに超える光景だった。
「アニキ、お帰りなさいやし!」
「客人ですかい?」
「毛利のダンナはどうしやした?」
 なんか、見慣れた顔がわらわらと近寄ってくる。
 元親の部下たちはとにかく暑苦しくていつも群れている印象があったが、それは今でも全く変わっていないようだった。久しぶりに会う三成にも遠慮無く近づき、肩を叩いたり頭をぐしゃぐしゃに撫でたりと、まるで親戚の子供を扱うかのように三成を囲んで可愛がる。
 さすがにひどいと思ったのか元親が部下たちに元場に戻れと言ってくれたが、その頃には三成の髪型は元の形を失ってしまっていた。顔全体にかかる前髪を直していると、何かを納得したかのように横で元親が頷いている。
「お前の髪型……伸ばしてないとひでえことになるんだな……」
「好きでしているわけではないのだ!」
「ほら手伝ってやっからよ、少し機嫌直せや」
 全て顔の中央に向けて集まっていく髪の生え方なので、前髪を短くするとそこらへんの童とにた髪型になってしまう。小十郎がよく三成の髪を整えてくれるが、その時も前髪に関してだけは細かく注文をつけていた。
 顔全体に広がっているのに、毛先だけは鼻に向かっているのがおかしいのか。元親は笑いをかみ殺しながら器用に髪を整えてくれた。海から吹く風は冷たい上に塩気を含んでおり、三成の髪を整える端から荒らしていく。
 それでも前髪だけは元に戻ったことに満足しながら、部下の動きを見守っている元親に静かに話しかけた。
「それで、貴様の用はなんなのだ?」
「用? 俺の船を見せてやるって約束したからな……それだけだ」
「約束?」
「お前は覚えてないと思ってたけどよ……それでも俺はお前に約束したんだ。この戦が終わったら、俺の船に乗せて、そっからの景色を見せてやるってな」
「………………覚えて……ない」
「覚えて無くて当然だ。あの頃のお前は、余裕無かったぜ……俺や島津の爺さんが気をもむくらいにな」
 何も覚えていないし、そういう会話があったことすら記憶にない。
 記憶力には自信があったはずなのに、何故自分は覚えていないのだろう。いつ、どのような状況でその言葉を言われたのか。いつもならばわずかの単語から、それを容易に思い出せるというのに。
 自分の中には、欠けた記憶がある。
 例えば真田がいつも通り抱きつきながら話しかけてきた時、ちゃんと言葉を返していたはずなのに自分はその会話の内容を覚えていない。刑部に何かを言われ、叫んでいる自分がいたのも覚えているが、何に対して激高したのか、その記憶がどこにも存在しないのだ。
 些細な記憶とはいえ、どれだけの事を忘れてしまっているのか。
 記憶を探る事に集中するために軽く目を伏せると、それを邪魔するかのように首に巻いていた布が強く引っ張られた。さすがに苦しくなって力のかかっている側を見ると、こちらを心配げに見やる元親の顔。
「…………思い出すな、忘れちまえ。嫌なことまで全部覚えてる必要なんてねえんだからな」 
「貴様の悪行だけは鮮明に覚えている」
「そっちは忘れてくれや」
 気まずそうに笑う元親だったが、三成を寒さから守るかのように風上に立ち、出てくる時に伊達に借りてきた貫頭衣式の外套を脱ぐとそれを三成に巻き付けるようにして着せてくれた。
 そしてそのまま、三成を抱きくるむかのように己の胸に押しつける。
「覚えていたくない程辛かったんだろ……なら思い出すな。島津の爺さんも、お前のことを心配してる……ちいとわかりづらいがアイツもな」
「毛利のことか?」
「ああ、今日だけは我のお気に入りの場所を譲ってやってもよい……ときたもんだ。あの上、わかるか?」
 天を指し示す元親の腕が強い風に大きく揺れる。
「あのてっぺんが毛利のヤツのお気に入りでな、暇を見てはあそこで日向ぼっこしてやがる。もう少し風が弱けりゃ、お前を抱いて上まで登るんだがな、今日はやめておくか」
 
 だから、俺の腕で我慢しろや。

 その言葉と、体が浮き上がったように感じたのはほぼ同時だった。
 腕力も身長も、体格も大きく負けているのはわかっていたが、まさかこの年になって子供のように抱き上げられることになるとは。周囲に元親の部下たちがほほえましい物を見たかのように微笑んでいるのを見、三成はようやく自分がどれだけ恥ずかしい状況になってるかを理解した。
 下肢を抱き上げられているから目線がいつもより高く、元親の頭すら見下ろすことが出来てしまう。
「離せ! 私は子供ではない!」
「いいだろ、ガキで」
「いい訳がない、私は………」
「そんなことより、見えるか? これがお前に見せたかったもんだ………」
 抱き上げられたままぐるっとまわった元親の頭に捕まり、自分の安全を確保した後。

「………………………………青い……」
「綺麗だろ? 海ってのはな、同じ目線で見るんじゃなくて、高い所から見るのがいいんだよ」

 先程見たのとは違う、白く走る波を際立たせる青がそこにはあった。
 空からの光に刻一刻と色を変えていくのはこの船に乗る前に見た海と同じ。だが今見ているこの深く濃密な青はなんなのだろう。
 空と交わる所までその濃い色を失わず。
 決して空と溶け合うことはない。
 踊るように大海原を走る白い波はいつも自由で、決して同じ所にとどまることなく。
「貴様は……海と同じだな」
「あ?」
「ふらふらと自分勝手に動く……だがどこにでもいる」
「褒めてくれてありがとよ」
「ほ、褒めたわけではない! 少しは国に落ち着けと言っているのだ!」
「アイツと同じ事言うなよ」
 抱き上げられ、彼の肩に腰を預けながら。
 口から出るのは最初は他愛もないやりとりだけだった。だが胸の奥に染みこんでくるような青は、少しだけ三成の心を溶かしたのかもしれない。
 少しずつ、話は移り変わっていく。
 過去の秀吉がいた頃の話、関ヶ原の戦の最中の話、そして伊達に来た頃の話。徐々に今に近づいていく話を、元親は何の横やりも入れずに頷きながら聞いてくれる。
 松永来訪時の話まで進み、次は慶次の事でも話してやろうかと思っていると、唐突に元親は三成を甲板へと下ろした。やはり重かったのかと思い元親に謝ろうとすると、少し上から苦々しげな声。
「家康の奴は……お前に何も要求してないんだな?」
「ああ。家康のことだ、きっと何か企んでいるのだろうが……それでも私は欲しいものがある。だから………」

「気にくわねえ」

「長曾我部?」
「お前にじゃねえ、家康がだ」
 厳しい顔で、長曾我部は空を見る。
 海とは違う淡く澄んだ色合いと、元親の褪せた色の元親の髪が優しく溶け合う。家康のしっかりとした濃い色の髪とは違うが、三成はこの色が嫌いではなかった。海と空の青が映える色合いは見ていて気持ちがいい。
 だが、彼の目は何かを思い詰めているかのようで。
 自分の話が悪かったのだろうか、一体彼は何を考えているのか。そんな自分を見つめる三成の視線に気がついたのか、心配ないと言いたげに笑ってみせると。

 もう一度だけ、気にいらねえと呟いた。












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わ、私が書いているのは家三ですよね……あれ?
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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