がんかたうるふ 月孤譚7章 その2 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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自分的大山こえたのです。
ここに来るまでながかったなあ……



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 突然の島津の来訪は、伊達家の人間と三成を大きく慌てさせた。
 久方ぶりの刑部からの手紙、それを普通に受け取ることができるのは三成にとってはとても喜ばしいことであった。なにせ毎回誰にも気がつかれぬように手紙を受け取るのにとても苦労していたのだ。毎回小声で盛大にぼやいていた配達を請け負っている上杉の女忍びにとっても朗報であったし、彼女は今回屋敷の中でお茶と茶菓子を楽しんでから帰っている。
 こんなにあっさりと受け入れられるなら、もっと早くに言っておけば良かったと一度は思ったが。
 あなたという人間が、伊達家の機密を外に流す人間ではないとわかったからこそ受け入れたのです。冷ややかな物言いに込められた小十郎の信頼に、三成は自分が行ってきたことが伊達家の疑心を煽る行為であったことを理解させられた。
 信じていなければ、領内どころか屋敷に他国の忍びを入れること許すわけがない。
 今までの奥州での暮らしの何が伊達家の信頼を勝ち得る要素となったかはわからなかったが、政宗は笑いながら刑部と文のやりとりをしたいという三成の願いを受け入れてくれた。それは素直にありがたいと思うし、今回も上杉の代筆であった刑部の手紙の中身は三成を少しだけ喜ばせてくれた。
 刑部らしい少し斜に構えた視点で語られる越後での暮らし。
 体調はあまりよくないようだが、あらゆる事象に毒のある言葉を吐く彼特有の物言いは全く変わらなかった。三成に対してだけは優しい兄のように接してくれたが、気に入らなければ秀吉にさえ苦言を呈した彼らしい手紙の内容に、少し浮かれすぎていたのかもしれない。
 手紙を読み返している所に唐突に現れた島津に手紙を見せないようにするのに労力を費やし、鬼島津が来たのなら是非手合わせをと三成ごと道場へと連れ込んだ政宗にのせられ。
 純粋に剣の技を研鑽する有意義な時間を過ごすことができたのだが、道場から出ると何故か家康と小十郎が盛大に機嫌を損ねていた。政宗は瞬時に原因を理解したようだったが、三成はじめじめした梅雨の空のような目で家康に睨まれる理由を理解できなかった。
 政宗は小十郎と上手く話をつけたようで、しばらく後に小十郎と会った時にはも彼の機嫌は直っていたが、家康はつかず離れずの距離でついてくるくせに一度もこちらに話しかけてはこなかった。ただ何かを非難するような目線でこちらを見つめ、時折思い出したかのように肩をがくりと落とす。
 自分何が彼を落ち込ませているのか。
 それがわからず、内から湧き上がる悩みとしてそれを口にした時、西から来た老人はあっさりと答えを返してくれた。
「そりゃやきもちじゃろ」
「やきもち?」
「惚れた相手がジジイと仲良く遊んでいたのでは、家康どんも怒りたくなるじゃろう」
「ほ、惚れた………!?」
 夕食後に湯船に二人で並び、湯の温かさにほっと息をついたところでこの言葉である。
 この老人が何を知っているのか、思わず体を硬くして言葉の続きを待っていた三成を落ち着かせたのは頭に乗せられた硬く大きな掌だった。元親のように頭をぐしゃぐしゃとかき回すわけでもなく、ただ手は頭を守るかのように置かれたまま。
 にかっと笑った顔には子供のように邪気がないのに、目には長年生きてきた者の英知を蓄えたこの男が三成は本当に苦手だったのだ。あけっぴろげな愛情表現でいつも驚かせてくるし、三成の都合なんて考えてくれたことはない。
 だが今はそれがありがたかった。
 相手は自分の都合なんて考えないのだ、だったら自分も好きなように、好きなことを話せばいい。
 三成の言葉を待つかのように、柔らかい眼差しでこちらを見つめてくる島津からあえて目をそらし、三成はゆっくりと。
「惚れて……家康を思っているのは私の方だ。あの男のあれは、私に対する贖罪と同情にすぎぬ」
 全ての虚飾を剥ぎ取った言葉を素直に語り始めていた。
「私はあの男を憎まなければいけないのだ。だというのに、思い出したくないことばかり思い出す……私が家康を……あの男をどれだけ信頼していたのか、そして裏切られたことをどれだけ苦々しく思ったのか………」
「…………………………」
「秀吉様を殺されたというのに、私はあの男に求められることを喜んでいる。あの男の語る未来を受け入れようとしている……それはあの方への裏切りだというのに。もっとも憎むべきものだというのに!」

 愛おしい、だが憎い。

 殺してやりたい、だが愛されたい。

 裏切りたくない、だがもう心は裏切っている。

「……秀吉様に…………どう詫びればいい? あの方に託されたものを私は全て失い、そして己の心まで家康に引き渡そうとしている。あの場で……関ヶ原で家康を殺し、そして私も死ねばよかったのだ! そうすれば秀吉様を裏切ることもなかった……!!」
 涙すらこぼれないのは、悲鳴に近い声が嘆き続けているから。
 島津の掌という傘に守られながら吐き出す言葉は、今まで誰にも言うことができない事だった。周囲の人間は皆うすうす勘づいていただろうが、決して三成に聞くことはなかったし、三成もそれを話す気にはならなかったのだ。
 家康に体を求められた、そして利害を考えてではあるがそれを受け入れた。
 その事は三成の平穏を完全に破壊し、ゆるりと癒されつつあった心に再度大きな罅を入れ始めている。派手な音を立てて壊れかけていく心、そして自分の体が欲しいと言いながらしばらく姿を見せなかった家康。
 久しぶりに顔を見せたと思ったら、よそよそしい態度で自分に近づこうとしない彼の態度は、三成の心を完全なる終焉の縁まで追い込んでいた。
 誰も三成を許すことも、裁くこともない。
 このまま誰にも救ってもらえぬ底なし沼のような絶望に、家康を連れて落ちるしかないのか。涙も出ぬのにしゃくり上げるような息が口から漏れることを朦朧とし始めた頭で不思議に思っていると、予想だにしなかった言葉がそっとかけられた。
 湯の上を走る湯気が、男の言葉でふうわりと揺れる。
「風呂は気持ちよかね」
「……………………………………………」
「………よう頑張った」
「がん……ばった………だと?」
「オイは三成どんのその気骨ば気に入っておる。今まで三成どんは一度も退かんかった……今も退かずに悩んでおる。オイはそれが嬉しいが、今の三成どんは見てられんのう」
「私は秀吉様を裏切ったのだ! 許されるわけがない!」
 駄々をこねる子供のように、島津の手を頭から力尽くではねのける。
 自分を見いだし導いてくれた秀吉、様々な事を教えてくれた半兵衛。自分が生きて家康と通ずることは、彼らへの最大の裏切り。
 そう考え、己を苦悩の鎖で縛り上げる三成に語りかける島津の声音は全く変わらない。豪放磊落な、だが決して大人としての責任を失わず。
 わずかの布も纏わぬ体と、飾り付けぬ心で三成にぶつかってくるのだ。
「三成どんの知っとる秀吉どんは………心の狭い男じゃったか?」
「そんな訳があるわけなかろう。秀吉様は大きな心を持った、素晴らしいお方だった!」
「なら、三成どんが苦しんどるのこそ、見ていて悲しむかもしれんと思わんか?」
「……………悲しむ………秀吉様が?」
 顔を伏せ、揺らめく湯だけを見つめていた三成の顔が静かに、ゆっくりと持ち上げられる。
「秀吉どんの事は三成どん程は知らんがの、あん男が三成どんが苦しんでいることを望むとは、オイは思えん。豊臣の軍を失った事よりも、三成どんが仇討ちで苦しんどる事の方を悲しむ男じゃ」
「……………………………」
「秀吉どんのことを信じとるなら、幸せになりんしゃい。仇討ちが悪いとは思わん、だがそれよりもオイは三成どんには普通に生きて欲しいと思っちょる。きっと秀吉どんもそれを望んどる」
「…………嘘だ………」
「嘘だと思うなら……そうじゃの、どうせオイの方が先にあの世行きじゃ。先に逝ったら、オイが秀吉どんに謝っておくというのはどうじゃ? 先に謝っておけば、三成どんがあの世に逝った時、秀吉どんも少しは機嫌を直しとるじゃろうて」
「…………嫌だ」
「それなら、半兵衛どんにもオイが頭を下げて……」
「違う! 貴様が先に逝くのは許さないと言っているのだ! 私の代わりに謝ってやるだの、先に逝くだの………私はまだ貴様から学びたいことが山程あるのだ、そんなことを口にするな!」
 自分が死ぬのは構わない、それは昔からの三成の持論だった。
 だが関ヶ原の戦いの最中、自分を生かすためのたくさんの人間が死んだ。刑部が生きていてくれたのはありがたかったが、そのために死んだ人間のことを考えると、三成の心は悲鳴を上げるかのように強く軋む。

 何故自分だけが生かされた。

 自分のためのどれだけの豊臣の兵が死んだ。

 だが生かされてしまったのなら、秀吉の仇を取るまで生きようと最初は思った。そして時間は流れ、もしかしたら仇討ちを終えて他に生きる道はあるのかもと思えるようになった。
 家康と生きる事だけはできない、それもわかりはじめていた。
 先日家康に未来について聞いた時、彼は二人で生きられる道を考えたいと言っていた。それを聞いて三成は思ったのだ、家康が過去ではなく未来を生きようとしているのなら、二人の道は決して交わらないと。
 だからこそ、一つの結論を三成は出し。
 そしてそれ故に苦しんでいる。
 だが、この豪快な老人は三成に言ってくれた。代わりに秀吉に謝ってやる、だから幸せになりなさいと。
 そう簡単に思いを一気に変えることなどできはしない、そして秀吉への中心は今後も三成を縛るだろう。
 だが、

 それは三成にとってささやかな、小さな許しであった。

 自分の代わりに先に謝ってくれる人がいる。子供だましの嘘でも、長い年を経てこの世の全てを見通せるようになった老人の口からでれば、それは甘く優しい真実となる。
「三成どんは優しい男になった……」
「私は優しくなどない」
「オイのような年寄りを気遣ってくれる、それだけで十分じゃ。三成どんの罪はオイが全部あの世へ持って行っちゃる。地獄の鬼だろうと閻魔だろうと、三成どんのかわりに先に謝っておいちゃるんでな」
「そんな無駄な気遣いはいらん、地獄の獄卒など私は全て斬滅してやる」
払いのけた手が、再度頭を包み込む。
 こんな大きくて力を持つ手が、昔何度か頭を撫でてくれたことを覚えている。三成を壊してしまうとでも思っていたのか、それとも三成を起こしてしまってはまずいと考えたのか。
 寝所に音もなく現れ、布団を直し。
 何も言わずに頭を撫でて帰って行ったあの手の温かさ、それを三成は忘れることはない。
 表面上は主君と臣下として、決して三成に優しい言葉をかけることがなかった秀吉だったが。言葉に出さずとも、直接的に守ってくれなくても、いつも威厳ある父の様な眼差しで見守っていてくれたのだ。
 何があろうともあの手は自分を最後は守ってくれる。
 それがわかっていたからこそ、三成は秀吉に忠誠を誓ったのだ。
「今日は随分と空気が湿っちょるの……」
「…………そうだな」
「オイの手も大して役にたっちょらんか、本当によく湿るもんじゃ……」
 ぼたぼたとこぼれ落ちる涙を、島津の手は優しく覆い隠す。
 わずかだが許されたと感じた故か、それとも父の様であったあの手を思い出したからか。漏れ始める嗚咽と震える肩を押さえ込もうとすら思わず、三成は飴色の光に照らされ輝く湯の中に、最初の涙を落としていった。







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パワーと勢いで押し切ったので、あとで大幅に書き足すかもです。


BGM「残酷よ希望となれ」結城アイラ
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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