がんかたうるふ 月孤譚 6章「権現、旧き友と拳を交える」その5 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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変更、6章はその7で終了予定です。

間章を挟んで7章は短め、西国のお爺ちゃん登場予定。



 *****
 家康が三成の部屋を訪問したのは、夜もすっかり更けた頃であった。
 家康と毛利不在のままで夕食を食べ、二人が何をしているのか言葉を濁し何も教えてくれない政宗たちと一緒に風呂に入り。数日ぶりにゆっくりと三人で並んで湯船に浸かっている際に、刑部の生存について話をしてみたが、彼らの反応は予想していたよりも遥かに薄いものだった。
 真田の書簡や三成の態度から何かを察していたのだろう、きっと。
 よかったなと政宗は笑ってくれた反面、小十郎は複雑な顔をして考え込んでいたのは伊達家の今後のことを考えているから。三成が刑部に会いに行きたいと言えば、義に厚い政宗のことだ、普通に三成を送り出してくれるだろう。だが伊達家が三成を家康に対する切り札として扱っている以上、本来それはしてはいけないことなのだ。
 だが小十郎は多少苦い顔をしながらではあったが、雪が溶けたら越後に行くといいでしょうと言ってくれた。
 大切な人に会いたい、三成のその思いを彼らは真剣に受け止め叶えようとしてくれている。そのことがありがたく、そして心に重くのしかかる。
 自分たちの利を捨ててまで三成の望みを叶えてくれようとする彼らに、何を返せばいいのだろう。
 そんなことを考えながら眠るために灯籠の火を消そうとしていると、静かな足音が遠くから聞こえ始めた。三成を起こさぬように、だが己の存在を隠しきれていないどこか間抜けにすら聞こえる足音。
 中の様子を伺うかのように襖に黒い影を刻みこむ彼の様子に違和感を感じ、三成は通常では考えられぬ程あっさりと家康を部屋に招き入れた。通常なら彼を部屋に入れまいと周囲が目覚める程の攻防を繰り広げるというのに。
「すまぬな、もう眠る所だったのだろう?」
「貴様が部屋の外で辛気くさい顔をしていると悪夢を見そうだ」
「三成もうなされることはあるのか」
「ここに来てからはそうでもないがな」
 悪夢の原因の半分は貴様だ、そう言ってやりたかったが、家康の憔悴しきった顔をみてそれを言うのはやめることにした。
 もそもそと緩慢な動作で三成が下半身だけを入れている布団にもぐりこみ、頭まで布団をかぶって何も言おうとしない家康。毛利とどんな話をしたのかはわからないが、あの毒舌知将に散々いたぶられたのだろう。
 辛いときほど人に頼りたがらないのだ、この男は。
 別に慰めてやる気はないし、このまま家康と共に眠るつもりもない。だが彼の苦しみを感じると胸の奥がざわついてしょうがないのだ。今日元親と見に行った海のようにさざめく波のような感情が三成の心を洗い、そして何かを残していく。
 それに同情とか、恋情という名前をつけるわけにはいかない。
 だが自分がゆっくりと休めるように、少し家康の話を聞いてやってもいいだろう。自分をそんな理屈で無理矢理納得させると、三成は布団の中で微妙に動き続ける家康に触れてやるわけでも慰めてやるわけでもなく。
「毛利に何を言われた?」
 いきなり話の核心に切り込んでいった。
 言い終わる前に布団が盛大に波打ったが、我慢強いを通り越して痛々しくなる程堪え忍ぶ男から本音を引き出すにはこれくらいしなければいけない。それを経験上わかっている三成は、更に言葉を続ける。
「長曾我部とのことか? それとも天下人としての心構えでも説かれたか? それでなければ……」
「それ以上言わんでくれ……三成にまで説教されたら、儂は頭が割れてしまうかもしれん」
「説教する気など無い。貴様が何を言っても聞かぬ男なのは、私が一番知っていることだ」
「聞かぬ訳ではないのだがな。さすがに毛利殿との会談はきついものがあるな」
 何を言われたのかは言わない、布団から顔を出そうともしない。
 だがようやく家康が声を発してくれた。その事実に少しほっとしていると、彼の中で心境の変化があったのか、ぽつりぽつりと話をし始めた。
 そして三成は相づちを打ちながら、ただそれを聞く。
「儂は君主として最低らしい。天下分け目の戦で勝ったのだから、この国全ての民を背負う覚悟をせよ……毛利殿にはそう言われた」
「当たり前だろう」
「儂もそう思う。だが毛利殿には今の儂は儂は物足りないのだろうな、散々言われ尽くしたのでさすがの儂も疲れた」
「貴様も疲れることがあるのだな」
「毛利殿の説教を聞いてみろ、儂の気持ちがわかるはずだ」
「私があの男に説教されていないとでも思っているのか? あの男の説教癖は昔から変わらん」
 総大将としての自覚だの、私怨以外で行動しろだの。
 毛利には嫌になって脱走を試みる程何度も怒られているのだ。家康の気持ちは重々わかるし、疲れ果てているのも経験者として理解できるのだが。
 この歯切れの悪い事この上ない言動は何なのだろう。
 三成に言えないことを隠し、言えることだけを口にしている。言葉を選びながら、顔を見せずに話す家康に、三成はそんな印象を抱いた。
 天下人として、今は人質である三成の前で話せない何かが彼にはある。
 話したいが話せないのか、それとも話したくないから隠しているのか。どちらにせよ、今の家康が三成にそれを話すことはないのだろう。
「三成は毛利殿と懇意だったな……それと元親とも、か」
「まあ嫌ではないが……長曾我部と貴様は親友なのだろう? 何故喧嘩腰で話しかける?」
「儂だって元親とは話をしたいし、伝えたいこともある。だが元親が三成にべたべたと触るのがどうもな」
「あの男が触るのは私だけではない。貴様にだって昔はああだったはずだ」
「それもわかってるんだが……儂以外の存在が三成に触れるのはやはり気に入らん」
 ようやく家康が布団から顔を出した。
 気まずそうな顔のまま三成を見やると、当然のように三成の横に己の寝場所を確保するために動き始める。この状況で止めるとまたいじけ出しそうなので今は見守ってやるが、後でちゃんと布団から追い出そうと決心し、三成は自分も布団に横になることにした。
 まだ慣れていない天井が、ほの明るい光に照らされる。
「儂はな、三成。この頃心が狭くなってしまったらしい」
「いきなり何を言い出す?」
「毛利殿に言われた、儂の世界は三成を中心に回っておるとな。そんなつもりはなかったのだが、こうやって三成の顔を見ると違うと言い切れなくなってしまうのが……」

 少し怖い。

 いつものように三成に体を寄せてくるわけでもなく、ただ肩を並べて家康はそこにいる。
 側にいてほしい、自分以外の人間と必要以上に親しくしないで欲しい。まるで子供のような執着だが、先日の松永の来訪をきっかけに自分の思いを素直に表現するようになった家康は、恋という面では実際まだ幼子のようなものなのだろう。
 好きだから側にいて欲しい。
 もっと触れていたい。
 素直で真っ直ぐな思いは確実に三成の心を揺らし、過去に家康に抱いていた感情を凄まじい勢いで蘇らせていく。絶望と憎悪で蓋をすることで奥底に閉じ込めた恋情が戻ってくる、それは秀吉への忠義と敬愛を失うという事でもあった。
 海の上で元親に言われた、忘れてしまえという言葉。
 それは彼なりの三成に対する思いやりだったのだろう。辛い記憶を忘れ、新しい人生を歩んで欲しい。主君の仇討ちなどでは幸せになれないのだから、家康と共に幸せになれる道を探せばいい。


 そんなこと、できるわけがないのに。


 秀吉は三成にとって絶対的な存在だった。
 主君としても、人生の導き手としても。その相手を殺された上に、自分の居場所を全て奪われた。家康が今後どれだけ三成を愛おしんでくれても、三成もその思いに答えようとしても。
 その事実が消えることはない。
家康はその事実を乗り越えようとしているが、加害者である家康とある意味被害者である三成では受け止め方が違う。それを家康がもう少し理解していれば、三成は家康に全てをぶつけていたのだろう。
 貴様が憎い、殺してやりたい、と。
 だが家康は失っていない、三成を憎んでもいない。だから彼にいくら憎しみをぶつけてもその本質を理解できないであろうし、そんな彼を殺して首を秀吉の墓所に供えても何の意味もないことを三成は理解し始めていた。
 殺される間際でも、家康は三成に殺されて良かったと笑って言いかねない。
 今後家康とどう相対すればいいのか、彼との決着をどうつけるべきなのか。枕に頭を埋め、横目でちらちらと家康の顔を見ながら細いため息を漏らす。
 家康に聞こえぬように、だが憂鬱を吐き出すかのように。
「三成……寝てしまったのか?」
「貴様が五月蠅いのに、眠れるわけが無かろう………と思ったが」
「儂よりうるさいのが来たな」
 首をひねり互いに顔を見合わせると、近づいて来るのは賑やかな足音が一つ。そしてそれに付き添うような、控えめな足音も一つ。
 個性的な足音に家康の顔が一気に引きつり、三成もいそいそと布団の中で逃亡の準備を始めた。家康の動きで乱れてしまった夜着を直し、とりあえず政宗の部屋で寝ていることが多いので使われることのない小十郎の部屋にでも避難させてもらおうと考えていると、三成の動きよりも速く襖が派手な音を立てて開かれてしまった。
「石田、起きてるか……って、家康……なにしてんだぁ!?」
「添い寝だ!」
「威張るな家康! 貴様の添い寝を許可した覚えはない!」
「だが儂が布団に入った時、何も言わなかったではないか」
「…………何も言わなければ許可したとでも思ったのか?」
「そうではないのか?」
「違うに決まっているだろう!」
 布団の中で揉め始めた二人を見て、元親の顔が盛大に歪められる。二人の喧嘩を馬鹿らしいと感じたのか、それとも何か別の要因なのか。
 元親についてきたらしい毛利が、彼の思いを代弁するかのように嫌そうに口を開いた。
「いちゃつくでない。この阿呆が熱を出しそうな勢いで色々考えてきたというのに」
「いちゃついてない!」
「そうか、ならば貴様は徳川と同衾して何をしておった?」
「………………………………」
 そう言われながら見下ろされると、何も言い返すことが出来ない。
 この状況を打破するために、何とか布団から出ようとするが。その時には三成の体は家康にがっしりと抱きしめられ逃げられなくなっていた。もがいても家康の馬鹿力からは逃れることが出来ず、鼻で笑う毛利にじっくり観察されながら、三成はせめて布団で顔を隠そうと頑張っていると。
「石田、お前の権利『借りる』ぜ」
 と、元親の声。
 その声に半分隠していた顔を出すと、元親の優しげな瞳と目があった。先程のように顔をしかめてはおらず、まるで三成を慈しむかのように一度頷き。
 やがて何かを決心したかのようにきっと家康を睨み付けた。
「おい家康……俺と一戦やろうや」
「な、なんだと……!?」
「石田とお前の戦い……俺が一戦肩代わりするってことだ。石田の足の調子も悪そうだしな、俺が代わりに戦ってやるってことさ」
「三成がお前に頼んだのか?」
「んなことこいつがするわけないだろうが。俺の勝手な希望ってヤツだ」
 家康は睨み付け、三成には茶目っ気のある笑みを。
 上手に二つの顔を使い分ける元親と、彼の策(毛利と何かを相談したのだろう)にはまって平静さを失った家康を見比べ。
 三成は最後に一度だけ毛利を見た。
彼は元親に全てを言わせ、何も言うことはない。己の伴侶を見るかのような安堵の眼差しで元親を見ており、その奥で燃えているのはちらちらと揺らめく恋という名の炎。
 傍若無人で、毒舌で、我が儘で。
 だが毛利元就という男は、元親をこよなく愛しているのだ。それこそ嫌われるのを覚悟で策略を使い、自分と同じ陣営に引き込むくらいには。
 その毛利が完全に元親に全てを任せているのだ、自分にとって都合の悪いことにはならないだろう。
「任せて……いいのか?」
「み、三成、何を言っている!?」
「長曾我部に代わりに任せる、それでいいな」
「おう、かわりに勝ってやるぜ。欲しいもの考えときな」
 呆然とした家康の手から抜け出し、布団の中で上半身だけ起こす。
 何が起こっているのかまだ理解しきっていない家康の顔は、間抜けと罵ってやりたい程。だが三成は見てみたくなったのだ、元親の企みとその結果を。

 そして、家康と元親の戦いの果てに何が産まれるのかを。

 今すぐに、と言い出した元親の言葉を受けて急いで夜着から袴に着替え始めた三成だったが。横でずっとそれを見ている家康の顔が暗く曇りだしたことには、慌てていたからか気がつくことはなかった。









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毛利さんルートだと、権現vsオクラさんになってました。
そして権現説教されシーンがクローズアップ。


私、自分の妄想とか作品を語るのは苦手なんですが……オクラの人は国主としては有能でもプライベートでは破滅的という、手段と目的がごっちゃになってわからなくなるタイプだな~と思っております。好きとかの言葉が言えなくて、周囲から見ると破滅的な手段でどうにかしようとする感じ……一言言うだけで済むのにねえw



BGM「聖少女領域」 by ALI PROJECT
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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