がんかたうるふ ねこを拾った日の話(現パロ・毛長・関が原) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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○猫の日にあわせてフライング投下。

幼なじみで中学生の長曾我部君と毛利君。ご近所さんで小学生の石田君と徳川君のお話。
毛長ですが関ヶ原にサンドされるアニキめんこいです。毛利さんはハンカチ噛んで眺めていたらいいよ。
アニキ眼鏡、白衣片倉、幼なじみ毛長、関ヶ原サンドされるアニキ。そして猫。自分内萌え要素てんこもりにした結果がこれだよ!!どうみても自分得ですありがとうございます。


○ちなみに私自身は猫大好きですが鳥は苦手です。人んちで飼われている鳥を見た瞬間に逃げ惑う程度には鳥苦手です。なのに相方は鳥大好きなので某動物園の○トリの森に連れて行かれたときは死ぬかと思いました。フラミンゴの群れとか飛び立つ鳥の大群とか見るとパニくるあまりいつも以上に挙動不審になります。猫に関しては好きすぎて猫からうざがられるぐらいには大好きです。まあ飼った事ないんですけどね、猫。雑文終わり。





書いた人;みっしー



 *****
ねこを拾った日の話(現パロ・毛長・関が原)










「…さむいさむいさーむーいー!!」
「元親…寒いと思うなら、まずもっと厚着をしろ。見ているだけで寒気がしてくるわ。」

学校からの帰り道、長曾我部元親と毛利元就は共に歩きながら自宅に帰る所だった。
厚着をしろ、と言われた元親は銀髪と、人よりやや高めの長身、フレームレスの眼鏡、そして何よりも左目を覆う医療用眼帯が印象的な少年だ。着崩したブレザーの上に来ているのは薄手のコート一枚のみで、他の防寒具は一切身につけていない。
確かに見ているだけで寒気を感じる服装だった。
対する毛利元就は元親よりは小柄ながらも十分に平均はあるだろうという身長、男性にしては比較的長めに伸ばされた茶髪と線の細さが印象的な少年だった。そして今は茶色のもこもこしたダッフルコートにマフラー、帽子に手袋、マスクと隣を歩く元親とは対照的にやや着込んだ服装だった。
「…貴様は昔から風邪を引きやすいのだから少しは自衛したらどうだ。」
あまり学習能力がないと思われる幼なじみを前に元就は呆れたように溜息を吐く。物心ついた時から家が隣同士、加えて同じ年ということもあり、二人の付き合いは長い。
それ故にお互い他人には知られていたくないような思い出までも共有している。性格的にはあまり似ていない二人だったが、お互いがお互いの面倒を見ていると思っている点ではとてもよく似ていた。
「…うー…でも熱すぎる方が苦手なんだよ…なら最初から薄着のほうがいーじゃねーか…」
「それで毎年風邪を引いていれば世話ないわ」

そう言いながら二人で見慣れた通学路を歩いていた時の事だった。元親がふと目線をやった右側の細い裏道の突き当たりに見慣れた二つの後ろ姿を見つけたのは。
「ん…?おい、元就。アレって三成と家康じゃね?」
「うむ?…確かにそのようだな。…珍しいな、このような時間にここに居るとは。」
銀髪と黒髪の小柄な後ろ姿は間違いなく、ご近所さんの石田三成と徳川家康のものだろう。同じ小学校に通う2人は喧嘩するほど仲が良い、との言葉通りによく喧嘩はするが仲もとても良かった。揃って家族が多忙な彼らは小学校が終わってすぐに児童館に行くことが多かった。そこから更に元親の家や元就の家に預けられる事もあったが今日はそんな予定は聞いていない。
何故、2人であのような場所にいるのだろうか?

そう思うが早いが、元親は2人に声をかけていた。
「おーい。三成、家康。何やってんだー?」
瞬間、2人の姿が驚いたように跳ね上がる。そして、恐る恐るといった様子で後ろを振り向く。
「…ちょうそかべ…!!」
「…もとちかああああああ!!」
声をかけたのがご近所さんの元親だという事に安堵したのか2人はほっとしたような様子で、そして遠めに見ても分かるような半泣きの表情を見せる。
「あ…?どうしたお前ら。何かあったのか?」
日頃から喧嘩ばかりしている2人だがこのように双方共に泣くことになることは非常に珍しい。
「元親、あやつらの後ろになにやら箱が見える。…それが原因ではないか?」
今まで元親の行動を見ていた元就はそう言って二人の背後を指さす。
元就は非常に目が良いので、元親が眼鏡をかけなくては見えないものも容易に見つける事が出来る。恐らく彼が見つけたもので間違いは無いだろう。
「十中八九その通りだろうな…ったく何があったんだか。」
そう言いながらも元親は足早に二人の元に向かう。狭い裏道ではあるが大人1人は容易に通り抜けられる幅だ。元親の後ろから元就も足早に跡を追う。
「…もとちか!!これどうしたらいいんだ!!」
「…わたしではどうしたらよいのかわからん…わからない…」
半泣きのまま右から家康が元親に抱きつき、三成が左から抱きつく。
「あー…とりあえず、落ち着け。…何があったんだ?」
落ち着かせるように二人の頭を撫でてやりながらそう尋ねたとき、箱の方からなにやら小さい声が聞こえて来たことに気がつく。

まさか、そう思った時には元親はかがみ込んで箱に近づいていた。


そうしておそらく二人によって開けられたと思しきたダンボール箱の中には、か細い声で鳴く二匹の子猫が入っていた。






半泣きの家康と三成、2人から聞いた話は以下のような事情だった。
この日、珍しく石田の家人が家にいるとのことで、2人は児童館に行かず石田の自宅に向かう所だったらしい。しかしそこは小学生、家の近所で寄り道して遊びながら帰っていたらしい。
(恐らくその主犯は家康だが、元親には身に覚えがありすぎるので叱ることは出来ない。)
そうして踏み入れた路地裏で2人はこの場に不似合いなダンボールを見つけた。
興味の有ることには一直線な家康が箱を開けた時、中には子猫が入っていたという。
困ったのはこの後だった。
三成の家は家人が猫アレルギーのために動物は飼えない。
家康にしても自宅にはしつけがされているとはいえ大型犬を一匹飼っている。それも、ドーベルマンだ。
即ち、2人ともこの猫たちを飼うことは出来ないのだ。
しかし見つけてしまった以上は知らない顔をすることも出来ず、半泣きで困り果てていた所に声をかけてきたのが元親だった、という訳だ。自分にくっついて泣く2人の頭を撫でてやりつつ、元親は自身の後ろにいた元就に声をかける。
「…元就。三成の家の番号わかるか?」
「我は知らぬが…母なら知っているはずだ。」
「じゃあ、おばさんでもいい。三成と家康は俺らと一緒にいますから心配しないで下さい、って伝えてもらってくれ。」
時刻は17:00近く。普通の小学生ならば既に帰宅している時間なだけにきっと三成の家族も心配しているだろう。
「了解した。…だが元親、それはどうする?…貴様の家では絶対に飼えまい。」
「うーん…鳥いなきゃ飼えるんだけど…ぴーちゃんいるからうちじゃ無理だよなぁ…。」
元親の家では数年前に亡くなったオウムのピーちゃんを始めとした鳥を何羽か飼っている。
現愛はセキセインコのピーちゃんを飼っているため、天敵とも言える猫を自宅で飼うことは極めて難しかった。
余談だがそれだけ鳥を飼っている家にも関わらず元親は鳥が嫌いで、同じ空間にすらいられない事を追記しておく。他の家族はなんでもないのに元親だけが。そのためしょっちゅう隣である毛利宅に避難しているのだが。

「…でも折角見つけたんだから…生きて欲しいじゃねぇか。」
箱の中でみゃーみゃー鳴く子猫達は自分たちが置かれている状況なんて気づいていないに違いない。それでも、見つけてしまった以上、見つけた二人と関わってしまった以上は、責任もって飼い主を見つけるべきだろう。
「…責任を持てないのなら世話を焼くな、と言っても聞かんのだろうな。」
長年の付き合いで元親のお人好しぶりと諦めの悪さを知る元就は諦念を込めて息を吐いた。
「お前は昔からそうだった。ショコラの時も…同じだったからな。」
ショコラというのは数年前まで毛利家で飼われていた黒猫である。既に成長した姿で野良猫として近所をふらふらしていたところを当時幼稚園児だった元親と元就に見つけられ、色々あった末に元就の家で飼われることになったのだった。名づけたのは元就だ。単に彼がその時見ていた絵本に載っていたケーキの名前から取っていたことを元親は知っている。
 最もそのショコラはもういない。
数年前に老衰でショコラが死んだときは二人で目が溶けるのではないかと思うほどに泣いた。
―もう、猫は飼わぬ。
可愛がっていたショコラが死んだときに元就が言った言葉を元親は覚えている。
元就は家族の誰よりもショコラを可愛がっていた。だから、その言葉は動物が嫌いなのではなく飼い猫を失う悲しさに耐えかねての発言だということは重々承知していた。
「貴様が責任もって信頼の置ける飼い主を探すが良い。」
一見素っ気無い態度の元就の言葉に裏に潜む真意を元親は知っている。
責任を持てないのならば、最初から関わらないほうが良い。子猫も、捨て置いたほうが良い。半端な情けならかけないほうが良いこと暗に伝えているのだ。
0か100か、極端に言ってしまえば、それしか毛利元就の中には存在しないのだ。
だが、その言動から誤解されやすいが誰よりも何よりも、自身が身内と認めた存在には優しい男である事は、幼馴染である元親が誰よりもよく知っている。
「当たり前よ!!男に二言はねぇからな!!」
そう言いながら元親は未だに自分の足にしがみ付いて泣く三成と家康の二人の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「三成、家康。俺が責任持って飼い主を探す。だから安心しろよ?」
二人に不安を与えないような飛び切りの笑顔を添えて二人に伝える。
「……うん……」
「……申し訳…ない……」
ぽろぽろと大粒の涙を流しながらも二人は頷き、安堵から泣き笑いの表情を浮かべる。元親はそんな二人の様子を見ると安心したが、一方で子猫が鳴き続ける箱の中をを見やり考えていた。見たところ傷は無いが原をすかせている様子であることが伺える。
(…どんだけここにいたかわからねぇけど…この寒さだし、無事とは限らねぇな…)
そう思った途端体が動いていた。
元親は三成と家康に断ると箱を抱えあげた。子猫らは突然高くなった目線に不安なのか、にゃーにゃー不安げに鳴いている。
「…だいじょうぶだ。取って喰いやしねぇよ。」
猫を宥めるように伝えると気合を入れて箱を抱えなおす。
「元就、片倉さんとこに行く!!お前は三成と家康を送ってやってくれ。」
ちょうど母親にメールを送り終えた所だったらしい元就が携帯から顔を上げる。
「我は構わぬが…こやつ等は、お前と一緒に行きたそうにしているぞ?」
「え?」
ふと見ると、先程離れたはずの二つの小さな手が左右から元親のズボンを掴んでいた。
「…わ、わしも元親と一緒に、行く…!!」
「…わたしも…行く…!!」
安堵と不安がない交ぜになったような視線で二人は元親を見上げる。
元親に全てを任せてしまった申し訳なさも含まれているのだろうか。
―そんな事、気にしなくていいのになぁ。
「…わかった。一緒に行くか。元就、おばさんにメールで追加。ちょっと遅くなりますって伝えてくれ。」
「承知した。…お前が箱を持つという事は…」
「うん。家康と三成と手をつないでいてくれ」
そうして二人に元就の方に行くよう伝えるが、二人の動きが止まる。
「ほ、本当にもとなりなのか…?」
「顔が全く見えんぞ…声は確かに似ているが…」
あまりの元就の冬用重装備のため当人と認識されなかったらしい。
「…お前やっぱり…もうちょっと薄着にしろよ…」
「断る。冬場の寒さを味わうぐらいなら我は不審者扱いでよいわ。」
「…俺が薄着うんぬん以前にお前はもうちょっと薄着するべきだろ…」
せめて遠目から見ても毛利元就と認識されるぐらいには薄着にしたほうが良い、と元親は思った。このままでは目だし帽を被るとも言いかねない勢いの寒さ嫌いとそれ故に断固として自身のファッションを改めるつもりがないらしい元就の態度にため息をついた。





『かたくら動物病院』というファンシーな動物のイラスト入りの看板のかかった建物に入った時、時刻は既に17時を回っていた。
元親は子猫が入った箱を抱え、家康と三成は元就に手をつながれ、共に小走りで走っていた。
「片倉さーん!!急患!!頼む!!」
玄関に入ると今日は患畜が少なかったのか、既に待合室に人気はなかったがそれでも構わず元親は声を張り上げる。家康と三成は初めて入る動物病院の中が珍しいのかきょろきょろと辺りを見回している。毛利は室内に入ったためか重装備のうち帽子やマフラーを取り除いたためようやく顔が見える状態になっていた。
そのうち、奥の診察室から人が出てきた。
「今日はどうした、長曾我部。また怪我した野良鳩見つけたから保護してくれとかじゃねぇよな…。」
一見すると獣医には決して見えない、偉く厳つい面構えの、顔に傷のある男が出てきた。
白い白衣が似合うことは似合うのだがそれ以上に何か似合う格好があるのではないかと思ってしまう。
スーツとかスーツとか主に黒スーツとか。
見慣れた元親や元就ですら一見戸惑うのだが、初めて片倉と会った家康と三成は片倉のまとう迫力に押され、その動きが完璧に固まってしまった。
「捨て猫!!診察してくれ!!」
「…ここにいる子供らが捨て猫を拾ってな、一応生きてはいるようなのだが、何分不安なので診察してもらいたい、という訳だ。」
端的な物言いの元親の言動を補足するかのように元就は目の前の片倉獣医に伝える。
「…いつも通り説明ありがとよ、毛利。」
この強面の男は片倉小十郎といいれっきとした獣医である。
父親の跡を継ぎ、大学卒業後からこの動物病院に勤めている。強面過ぎて人間のみならず動物にも脅えられるという噂まであるが、腕は良く飼い主にも患畜にも気遣いを忘れない良い人である。
自宅からすると隣の町内会に当たるこの動物病院に、元親と元就は猫のショコラの為に度々通っていたのだ。今ではショコラも老衰のため亡くなってしまい、動物病院に通うことも無くなってしまったが動物好きな元親は毛利を誘って遊びに行くことが度々あった。もちろん業務上の支障にならない程度だが。最も鳥嫌いの元親は、鳥がいると瞬時に逃げ去るのだが、怪我した鳥などを見つけると自分では抱えて運べないので元就を連れては度々この動物病院を訪れていた。
「で、見て欲しいのはこいつらか。」
長身の元親よりも、更に長身の片倉はぬっと上から元親を覗き込むと箱の中を改める。にゃーにゃーと鳴く子猫らは突然の侵入者に驚き、更に鳴き続けている。
「ちっと待ってろ。…良かったな、他の客がいない時間で。お前らはここで待ってろ。」
そう言い、箱を受け取ると奥の診察室に入っていく。すると待合室の内部は一気にシンとした空気が漂っていく。
「…こんな所に動物病院があったなんてワシ知らなかった…」
家康がポツリと呟く。
「あれ?お前んちのドーベルマン、どこに連れて行ってるんだ?」
犬であれば予防注射などが必須のはずだ。かかりつけの獣医も持っているはずだろう…恐らくは。そう思った元親が問う。
「忠勝は…あまり病気もしないし…予防注射には父さんが行ってたから、わしは来た事がない。」
忠勝というのは家康の家で飼っているドーベルマンである。
家康が生まれた年に飼い始めたという彼は見た目は大層おっかないが、家康には大変懐いている。
「ああ、あのドーベルマンか…」
元就が呟く。
元々は多忙な徳川家の両親が息子の友達になってくれればと息子の誕生直後に飼い出した犬らしい。その甲斐あって成長した今でも忠勝と家康は良い友達だ。問題は忠勝の体格が大きすぎて遊んでいると明らかに犬に人間が襲われているようにしか見えない点だろうか。兄弟のいない家康にとっては両親が仕事でいないことの寂しさを埋めてくれる良い友達なのだろう。しかし見た目の怖さ、頭のよさ、主への忠実さも相まって地獄の番犬だとご近所では噂になっている。
というか言い始めたのは初めて忠勝に出くわした時に恐怖の余り大泣きした元親である。当人は覚えていないが、幼馴染の毛利は大泣きしたときも、彼が地獄の番犬と言い出した時も全て覚えている。
いざという時の良いネタになろう、と言わないでいる事はここだけの話である。
元親は生き物を大事にはするが、基本的に猫以外の動物が苦手なのだ。(最も、魚や爬虫類、両生類、虫全般は好きなのでこれは完全に好みだろう)最もそれを知るのは家族と毛利家の人間ぐらいだろうが。
元就はそんな事をぼんやりと思い出していた。

一方の元親が周囲を見やると三成が物珍しそうに周囲を見回している所だった。
普段は憎たらしい程に落ち着いているだけにそのような様子は元親にとって非常に新鮮だった。
「なんか珍しいものでもあったか?」
ふと尋ねると、三成はこくんと頷き、言った。
「私の家は父が猫アレルギーなので…このような所には来たことがないのだ。」
三成の父はアレルギーとは言っても生死に関わるような症状は出たことがないものの、家では父を案じ、動物を一切家に上げたことがない。動物園にも学校の遠足で行ったきり、という三成は動物自体と触れ合う機会が中々ないのだ。
そして、そもそも石田家、というか三成の生い立ちがかなり複雑だったことを元親は思い出した。
三成は生後まもなく父と死別、母親と暮らしていたがその母親も早くに亡くなり主に母方の祖父母と叔父の手によって育てられてきた。そして数年後、高齢のために祖父母が転居することになり、三成は同居していた亡き母の弟、すなわち叔父に引き取られ、現在は生家で叔父と暮らしているのだ。現在はその叔父を父と呼んで慕っているし、叔父も甥っ子である三成をとても可愛がっている。
それが、幼少期から石田家の近所で暮らしていた元親が知る全てだった。
親と死別した子供、かわいそうに、そんな言葉をよく耳にしたような気がする。最もだからといって気を使うような元親ではなかったので至って普通のご近所さんとして接していたが。三成自身もそのような事を周囲に悟らせる子供ではなかったのが一番の理由だった。

そんな三成の目に、捨てられた子猫はどのように写ったのだろうか。

ひょっとしたら実の両親と死別した自身と混同したのかもしれない。
どうにかしたい、でもどうにもできない、わからない。
ないまぜになっていた感情があの涙だとしたら頷ける。

そう思いながら元親は眼鏡の下、眼帯で覆った左目に触れる。
元親は何故か生まれたときから左目だけが赤かった。何代か前のご先祖様にも同じ人がいたので恐らく遺伝だろうとは父方の祖父の言葉だった。おまけにこの左目、視力は一応あるものの、日光に極端に弱かった。さらに言うと、元親は今はそうでもないものの割と病弱な部類に入る子供で、性格こそやんちゃだったが外で遊べることなど稀だった。
外に行きたいのに行けないというジレンマから幼少期の自分は泣いて暴れて癇癪を起こすことがとても多かったと思う。
そんな元親の隣にいたのが幼馴染である元就だった。
『行きたいのなら行けばよい』
そう言いながら自分の母親から預かったという医療用眼帯を渡し、外に出るきっかけをくれたのも、それから見守ってくれたのも元就だった。
それから、元親が日常生活を送る上で眼帯は欠かせないものになった。
フレームレスの眼鏡をかけるようになったのは中学進学する際に視力の低下を指摘されたためだ。お陰で左目の眼帯に加えて眼鏡というえらく厳重な装備で元親は学校に通っている。
長年不便を強いられてきた赤い左目は、今でも好きではない。
だけれども嫌いというほどではない、というのが元親の素直な気持ちだった。
そう思えるようになったのは元就の言葉がきっかけだったはずだけれど、よくは覚えていない。
だけれども元親が色の違う左目を長年疎んでいたように、三成の中にもきっと飲み込めない感情があるのだろう。
何せ彼はまだ小学生だ。学ぶことも知ることも、あまりに多い。
出来る限り、彼が、三成が、笑って幸せに暮らせれば良い。
そのために自分が出来ることなど微々たる物だが、何かが出来ればよいと元親は思った。





そうしているうちに診察室から片倉が出てきた。
箱の中の子猫らは餌を与えられたためか非常に機嫌よい様子でニャーニャーとないている。その元気そうな様子に思わず一同ほっとした様子を見せる。そして片倉は言う。
「見たところ病気とかの心配はねぇ。乳離れも済んでるし…飼い猫が産んだはいいけど、飼い主が見つからなくなって捨てたのかもな。」
一通りの診察を終えた片倉医師の見立てはそのようなものだった。
怪我も病気もない、それに付け加えて、治療したわけじゃねぇから治療費はいらねぇよ、という言葉に元親は二重の意味でほっとする。金欠の状態で飛び込んだものだからまた片倉の趣味である畑仕事の手伝いをさせられるかと思っていただけに元親は安堵したのだ。片倉の趣味は年齢に似合わず畑作りであり、忙しい業務の間を縫って見事な畑を作っている。学生であり万年金欠に近い元親は、どうしても金銭が払えない場合は畑の手伝いをすることで支払いの代わりにしてもらっていたのである。通常であればまずありえないことであり、そのへんは片倉のやさしさに感謝しなくてはならない。

しかし猫の無事が確認されたとはいえ今度こそ難題だ。
箱の中から子猫を持ち上げ無邪気に笑う家康と三成のためにも信用のおける飼い主を見つけなければならない。箱の中に入っていたときは気が付かなかったが黒が一匹、白が一匹でそれぞれ長毛種の猫らしい。ふわふわの毛を恐る恐ると言った様子で三成と家康が撫でている。
どうするべきかと考えうーん、と元親が唸ったその時、片倉が言った。
「悪ぃんだが…その子猫一匹預からせてもらえねぇか?」
「え?マジで?片倉さんちで猫飼えるの??」
獣医師として多忙な彼に猫が飼えるのだろうかと思って問うと予想外の答えが返ってきた。
「いや俺じゃない。昔から世話になっている方の息子さんなんだが…飼い猫の遊び相手になってくれそうな猫が欲しい、と頼まれていてな…ちょうどその猫は年回りを見てもちょうど良さそうだし…駄目か?」
「猫可愛がってくれる人?」
そう元親が問うと、片倉が考えこむ。
「そうだな…間違っても猫をいじめるような人間じゃねぇ。それは俺が保障する。」
獣医の片倉がそこまで言うのであれば大丈夫だろう。
「わかった。お願いします。」
そう言って片倉にお辞儀をする。
「こちらこそ悪ぃな。」
そう言いながら片倉は苦笑する。
何はともあれ、これで一匹の貰い手はついた。
もう一匹はどうするか、と改めて元親が思ったその時、猫がやたらと鳴いていることに気が付いた元親はふと声のする方を見やる。


「…なんだ貴様」
「にゃー」
「…我に着いてきても良いことはないぞ。」
「にゃー」
真っ白な方の子猫はいつの間にか元就が気に入ってしまったようでとことこと跡を着いて回っている。まるで母親の後を追う子供のようだ。
黒猫を抱く三成と家康はその光景を羨望の眼差しで見つめている。
「お前猫好きだもんなぁ…猫の方もわかるんじゃねぇ?」
幼少期から飼っていた猫のショコラを大層可愛がっていた姿を思い出す。明るい茶色のシマを持つ猫は気紛れだったが元就にも元親にも大層懐いていた。
今の子猫の姿はそのショコラの姿を彷彿とさせるものだった。
「…止めぬか、こら」
「みゃー?」
猫は人懐こい様子で相変わらず元就の後ろを追い掛け回している。無邪気な様子は『どこいくの?』と問いかけているようにも見える。
そういう元就の顔が泣くのを堪えるような困った顔だったので元親は思わず目をやる。
あの顔は前にも見たことがある。あれは確か、欲しいものを無理やり我慢している時の顔だ。
子供の頃、元就はあまりわがままの言わない子供だった。
だけれどもごく稀に、本当に欲しいものややりたいことがあってもそれを言わず自分の中で飲み込んでしまうことがあった。それに気づいているのは元就当人ではなく、ずっと隣にいた元親だけだったかもしれない。
―こういう時、俺はいつも何をしていた?
欲しいものが欲しいとは言わない、いや言えない元就に対して、なにが出来たかと元親は考える。
そして思い返せばそれはとても簡単な事だった。

「…信頼の置ける飼い主、発見!!」
そう言いながら元親はびしっと人差し指を元就に向ける。
「は…?元親。貴様、何を…」
一瞬呆気に取られたような表情を見せる元就に対して畳み掛けるように言う。
「いたじゃねーか最初から。猫好きで信頼の置ける飼い主。」
元親が知る限り、最も猫好きで、それ以外の面においても最も信頼の置ける人物がずっとそばにいた。
「だが我は…」
言いよどむ元就に迷いがあるのは明らかだ。
「でもお前、猫飼いたいんだろ?」
顔みりゃわかる、そう付け加えて伝えると元就は押し黙る。
猫を飼いたいのは事実。だけれども元就がそれを躊躇う理由もある。そうしてぽつりと口を開く。
「…ショコラが死んだときに、あのように悲しい思いをするぐらいなら、二度と生き物は飼わぬ。そう誓った。」
だけれども、そう加えて言う。
「…あれがくれた思い出は、何物にも耐え難いものだった。」
そう言いながら白い子猫を撫でる。
撫でる手つきはとても優しく、子猫は楽しそうに「みゃー」と一声鳴いた。
昔からそうだった。元就が撫でると猫は例外なく嬉しそうな様子を見せる。それは野良でも飼い猫でも同じだった。猫マスター?と元親が伝えた所、全く嬉しくないわと言って叩かれたがその顔には若干のテレが含まれていた事を覚えている。最も元親ぐらいにしかわからない表情の変化なので第三者にはわからなかっただろうが。
「別れは辛いが…それ以上に日々の楽しさをくれる。…元親、本当に我で良いのか?」
下から見上げるように元親を見やりながら元就は問う。
「…今更だろ?お前以上に猫好きな奴なんか俺しらねーよ。だからお前に飼ってもらうのが幸せだろ。」
日頃は傍から見ると傲岸不遜な振る舞いが目立つ元就だが、妙なところは気配り屋で肝心な所では一歩を踏み出すことを躊躇う。
それに気づいた元親が彼の背を押す、いつもそうだった。
「そうか…」
そう言って元就は子猫を抱き上げる。表情はあまり変わっていないが口元はかすかに笑んでいるようにも見えた。
「そなたは今日から毛利家の猫よ。」
「にゃー?」
「毛利の家に相応しき猫としてしつけをする故、覚悟するが良い!!」
「みゃー」
高らかに言い放つ元就に対して子猫は『何かわからないけどたのしい』というように喜んでいた。


「…一見落着って事でいいのか?」
二人のやり取りを見守っていた片倉が言うと元親はうん、と言いながら頷いた。
「あれで元就はすんげー喜んでるから。片倉さんにも手間掛けさせたな、悪ぃ。」
「いや別に俺は構わねぇよ…子猫も預からせてもらえるしな。」
「…にゃ?」
白猫とは対照的におとなしく三成に抱かれていた黒猫の子猫は片倉の言葉に反応するかのように一声鳴いた。

「三成と家康も遅くまでつき合わせて悪かったな、そろそろ帰るか。」
いくら連絡を入れていると言えども、どこの家も心配する頃だろう、そう思い元親が声をかけると、家康と三成が手をつないだまま元親が羽織っていたを引っ張った。
「うん?どうした?」
そこから敢えてしゃがみこんで二人の目線を合わせると、二人が恐る恐る口を開く。
「…もうりのいえでねこがかわれるのであれば」
「わしらも遊びにいってもかまわないだろうか…」
表情からも見て取れる必死のお願いを元親が断る謂れもない。
「元就?聞いてたか?」
「こやつも拾い主には会いたかろう。勝手にするがよい。」
白猫を抱き上げたままの元就に尋ねると素っ気無い返事が返ってきた。
恐らくは久々に関わる猫の虜なのだろう、元就は。
「…という訳でアイツの了解ももらえたしな。大丈夫だ。いつでも遊びに行ってやれ。」
そう元親が伝えると、ぱぁっと二人の表情が明るくなる。

そして二人で顔を見合わせると「本当にありがとう」と皆に伝える。

それは、心の底から温まるような笑顔だった。







「ショコラの道具、捨てずにとってあったんだな。」
「愛着があったので一部だけはな…いずれは処分するつもりだったのだが、すっかり忘れていた。」
あれから、黒猫一匹をかたくら動物病院に託し、途中のコンビニでキャットフードを飼い、三成と家康をそれぞれの家に事情を伝えつつ送り届けると結構な時間になっていた。
元親は一度家に帰宅し、夕飯を食べた直後に隣の毛利家を訪れたところだった。最も家の面積が広大なので結構な距離があるのだが、通いなれた元親にはあまり気にならない距離だった。白猫は元就の自室(無駄に広い)にて思う存分に遊んでいた。元親は白猫を構いつつ、元就と話す。
「…しかしやはり足りないものがいくつかあるな…明日にでも買いに行くか。元親、付き合え。」
「いいぜ。…って噛むな、こら。」
子猫に指をあまがみされると痛いようなくすぐったいような不思議な気分になる。
そんな子猫に対し、元就は声をかける。
「これ、止めぬか、もちよ。」
「…元就、今なんていった?」
もち、と確かにそう聞こえたのは気のせいだろうか。
「こやつの名前だが?もち、やめぬか。」
「…お前毎回猫の名前が食い物由来だよな…。」
どんだけ食い意地はってるんだ、と長い付き合いの幼馴染である元親ですらわからなくなる事がある。
「にゃー」
人間が何を言っているのかわかっているのかいないのか、もちと名づけられた子猫は楽しそうに一声鳴いた。







元就が猫好きになった理由にさして大したものはない。

いつも一緒にいた動物が苦手な幼馴染、元親が猫だけは可愛がっていたからだ。一緒に可愛がっているうちに猫自体にも愛着が沸いてきたので猫好きであることを否定はしない。
でも、きっかけは猫自体ではなく、猫と遊んで笑う元親がきっかけだったのだ。

特にその頃の元親は今では考えられないほどに中性的な、もとい女性的な印象の強い容姿の子供だったから動物と猫で遊ぶ、そのインパクトは半端な物ではなかった。
生まれたときは体が弱い子だったので、丈夫に育つようにという願いをこめて家族が女の子のような服を与えていたのも原因かもしれない。かと言って趣味までも女のこのようだったかというとそうでもない。目の関係で外に出られない時期もあったが病弱とはいえ基本的には外遊びが好きなやんちゃな子供だった。
女の子のような外見でありながら趣味は男の子の遊びばかり、そして何よりも自分を案じてくれる元親は元就にとって特別で、大切な、唯一の友人だった。

『なーもとなりー、ねこってかわいいなー』
そう言って笑う元親に対して『もとちかのほうがかわいい』と伝えた事は一度や二度ではない。だがしかし『そうかー?おれ猫みたいにもこもこしてないぞ?やっぱねこかわいいなー』と全てスルーされてきたのだが。
憎らしいほど鈍感なのは長年の付き合いで嫌というほどに知っている。
最もこれにより被害を受けたのは元就だけではなく、元親を狙う他のクラスメートも同様だった。成長し、女の子のような格好をすることをやめてからもその日本人離れした容姿からか元親は男女問わず非常によくモテた。本人はそんな事には一切気がつかず、下級生たちの面倒を見て遊んでいたのだが。元就は影に日向に元親に思いと告げようとした輩を子供とは思えぬ言動と行動で全て葬り去ってきたのだ。そこまでしてきたことには元就なりの理由がある。

可愛かったのだ、本当に。
愛らしかったのだ、何よりも。
青い目と赤い目を持つ幼馴染は、元就にとって何者にも耐え難い存在だったのだ。

最も中学入学直後から急激な第二次性徴期を迎えた元親は、あっという間に元就の身長をも抜かしてしまうし、容姿にしても見るからに男性と分かるものに変わっていった。
だけれども、以前と変わらず、可愛らしいと思っていることを元親は知ったらどうするだろうか。

ありえない、と思ったのは可愛らしい、そう思っていることに気がついた元就当人だった。
何故自分より背も高いしガタイの良い大男を好まなければならないのか、考えた。しばらく考えた。出した結論は、やっぱり好きだ、だった時点で自分は人間として色々終わっているのではないかと元就は思う。
しかし色々考えた末に揺るがないものは仕方がない。
―自分は、元親が好きなのだ。
彼が笑う顔も、おびえて泣く顔も、怒る顔も含めて全部、好きなのだ。
だけれども、一番好きなのは、猫と遊んでいるときの笑顔だった。
元親は、彼自身が思っているよりもずっとずっと猫が好きだ。何よりも猫と遊ぶときの心からの笑顔がそれを証明している。



願わくば、この時間が長く続けば良い。
元親が心の底から楽しそうに笑う、この時間が。

そう、白い子猫と無邪気に遊ぶ元親を見て元就は強く思ったのだった。











○ねこめんこいにゃ→ねこを可愛がる瀬戸内がいたらめんこいにゃ→そこに関ヶ原も加わったらたいへんめんこいにゃ
以上、この話ができあがった理由でした。
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書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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