こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終わりました。
輪舞~偽~から直接の続きです。
輪舞~偽~から直接の続きです。
*****
日の光の差し込む部屋に、小さな咳の響き。
障子越しに差し込む薄明かりに眼を細めながら、石田三成はざらつく呼吸音を生み出す自分の喉をそっと押さえた。そうすれば喉がひりつくような感覚と水を飲んでも治まらない乾きが少しは治まるかと思ったのだが、わずかに圧迫しただけだというのに喉は痛みという名の悲鳴をあげる。
誰かに押さえられているわけでもないのに体は重く、体を起こしているだけで疲労が積み重なっていく中。三成にできるのは、大人しく横になって周囲の人間がこれ以上心配せぬように眠り続ける事だけだった。
秀吉が家康に討たれてから今まで、三成はほとんど休息を取っていない。
静養のために使わせてもらっているこの稲葉山の別邸で半兵衞を看取ってから、数ヶ月の時が経過している。嘆き悲しむ秀吉の体調の変化に三成が気がついた時にはもう、彼は他国への侵略を心に決めていたらしい。臣下を動かし軍の再編成を進めさせていた秀吉を止めるために兵を挙げた徳川家康との激しい戦いの末、稀代の覇王と称された豊臣秀吉はその生涯を終えた。
半兵衞から話を聞いた時からその覚悟はできていたし、病は秀吉の命を猛烈な勢いで削り始めていた。だからこそ秀吉は家康の挙兵を知っても慌てることはなかったし、むしろその時を待ち焦がれていたのだろう。
三成に後を託し、詫びながら。
己の半身である軍師の名を呼びながら、秀吉は死出の道へと旅立っていった。誰よりも敬愛する主君を失ったのだ、三成もその場ですぐに後を追うべきだったのかもしれないが。半兵衞の望みを叶え、家康に天下を渡すために三成はまだ生きなければならなかったのだ。
死に逝く心を奮い立たせ、混乱する豊臣軍をまとめるために全力を尽くした。
絶対的な存在であった秀吉を失った軍。混乱し鋼の規律を失いつつあった軍をまとめるためには、行わなければならないことが山のようにあった。しかし徳川軍との戦で年長の家臣のほとんどを失ってしまっていた豊臣軍に残っていた重臣は三成と刑部のみ。その刑部も患い続けていた病が急速に悪化し、満足に動く事すら出来なくなり始めていた。
あまりにも人手が足りないので枷を嵌めて監禁しておいた官兵衛を引っ張り出してみたのだが、何故か彼は自分の顔を見た瞬間に号泣し始めてしまい。泣いたと思ったら三成の顔を見て感慨深げに頷くことを数日間繰り返し続け、ある日突然三成の元へとやってきて頭を床に擦りつけ懇願し始めたのだった。
豊臣家の親族を根絶やしにするのは止めて欲しい、と。
三成にこのまま付き従い秀吉の仇討ち合戦に向かうか、それとも秀吉の親族を頭に立てて天下を維持し続けるか。武士の出ではない秀吉の親族たちは権力と富だけを欲し、天下が自分たちの元にあるという意味ができていない。つまりそれは彼らに豊臣軍という力を渡してしまえば、周囲を押さえ込む道具に成り果てるということを意味していた。
秀吉と半兵衞が作り上げた軍は、自分たちに逆らう存在を鎮圧する道具ではない。
苦々しく思いはするが秀吉の臣下でしかない三成の言葉と、豊臣の血を受け継ぐ存在の言葉では周囲に与える影響が違う。秀吉が死んでわずかの時間しか経過していないというのに、三成への敵愾心を強めていく親族たちと彼らを支援する一部の人間のために、三成と刑部は一気に劣勢に追い込まれていた。
兵たちの信仰は秀吉と共に戦場を駆けた三成たちの元にある。
だがこのまま若輩者の三成に付き従っていたくない、そう考える人間が多いのも事実なのだ。秀吉の親族たちに従い徳川家を叩き潰して権力を維持するか、それとも三成と共に全てをかなぐり捨ててでも仇討ちに進んでいくか。その二つの意見で割れ始めた豊臣軍を維持し、半兵衞の策を成就させる。そのためには豊臣家の人間をここで滅ぼしておかねばならない。
豊臣軍にはもう旗頭となることができる存在は三成しかいない。
兵たちに恐怖と共にそれを刻み込むために、刑部は津なり自身の手で彼らを虐殺することを提案した。
三成とて秀吉と同じ血を引く人間を殺したいわけではない。
だが天下分け目の戦いを理想とする形で起こすためには、親族たちからの横やりが入る状況を潰しておかなければならないのだ。豊臣の血族という象徴を失えば、軍は必然的に三成たちの望み通りに動くようになり、家康との戦へと向かっていくはず。そしてこのまま豊臣家の血族が生き続ければ、家康は一丸となった豊臣軍に叩き潰され死んでしまうことになるだろう。
半兵衞の策のためにも、今の段階で家康を失うわけにはいかない。
そう刑部に説得され、主君の血族を皆殺しにするという苦痛に満ちた行いを受け入れようとした時、官兵衛は言ったのだ。
彼らを討たずとも家康を護る方法はある、と。
長年の友人である刑部ではなく、何故その時官兵衛を信じたのか。彼は甘い言葉を連ねてきたわけではないし、三成に権力や富を無心したわけではない。逆に何も欲しがらず、ただ豊臣の血族を滅ぼすのは三成が己を傷つけるのと等しい行為だと言い続けた彼を。
三成はその時、ほんの少しだけ信じる気になってしまったのだ。
刑部には反対されたが、官兵衛と共に秀吉の親族たちと話し合いの機会を持ち。秀吉に一番近い血縁者であるまだ言葉を話すことすらできない幼い甥御を預かり、彼を旗頭に徳川軍との弔い合戦を行うことになった後。
今までの疲れと安堵、そして急激な気候の変動に三成の体は限界に達したのだろう。
重い風邪を引いて寝込むことになった三成は、大坂城に乳母と共に住んでいる秀吉の甥秀頼に風邪をうつさぬように自ら稲葉山の別邸での静養を選んだ。三成のことを自分の命を奪わずに後見人になってくれた男だと幼いながら理解しているのか、秀頼は三成のことを誰よりも慕っていた。
三成の腕に抱かれていると機嫌がいいし、ようやくつかまり立ちができるようになったばかりだというのに三成を捜して城内を歩き回る。その微笑ましさに三成のことを子連れ大将と誰からともなく言い出したが、自分の復讐で周囲を動かすのではなく大義名分を得て家康との戦に臨もうとしている三成へ向けられる視線は以前よりずっと優しくなっていた。
そんな秀頼を置いてこの別邸に来たのだ、きっと秀頼は三成を探して毎日大泣きしているのだろう。
早く体を治して帰らねばならないと焦る思い、そしてもう一つ。
三成が横になっているこの部屋からわずかに離れた部屋で、刑部と家康は今話し合いを行っている。
死の床にあった半兵衞が命じた天下分け目の戦をどう行っていくべきか。
本来なら三成が家康の話し合わなければならないのだが、この体調では布団から出る事もままならない。なので三成の代わりに刑部が話し合うことになったのだが、三成が刑部に家康との会談を託した時、官兵衛だけは苦い顔で刑部を睨み付け続けていた。
腕に枷を嵌められながらも甲斐甲斐しく、まるで肉親か何かのように三成の看病をしてくれる官兵衛の優しさ。それはありがたかったし、時には素直に甘えてしまうこともあるのだが。
刑部と官兵衛の意見に挟まれ、頭が痛くなるのも事実。
官兵衛が二人の会談を邪魔しなければいいが……と考えながら目を閉じようとすると、障子紙が強い音を立てて震えたことに気がつく。
誰かが丁寧に風を取り込もうと窓を開けたのか。
一瞬そう考えたが、それにしては障子が揺れる気配はない。障子紙だけが何かの音を受け止めて震えていることに疑問を感じながらも、倦怠感故に目を閉じようとすると。
一気に視界が暗くなった。
それが目を閉じる前に訪れたこと、そして障子に誰かの影が映っていることに気がつき三成はかすれた声でその人物を追い払うための言葉を口にした。それだけで喉が焼けるように痛み、体が急に疲れ果てていく。
「官兵衛か……? 私はこれから眠る、貴様の話につきあう気はない……」
「寝かせてやりたいのは山々なんだがな、小生と……こいつの話を聞いてからにしてくれ」
「…………こい……つ……だと?」
障子に映っている影は官兵衛らしいが、どうやら彼以外にも誰かが来ているらしい。
刑部は今家康と話をしているので、きっと大坂城から来た遣いが三成の無事を確かめるために顔を見たいと言っているのだろう。そう見当を付け、熱と咳で疲れ果てている体を起こすと、三成は官兵衛に入ってもいいと小さな声で告げた。
それだけで関節が軋むように痛む。
「寝ているところすまなかったな」
「……構わん…………客が来ているのではないのか?」
「来てるんだがな……お前さんに会うのは度胸がいるんだとよ」
「度胸?」
障子を開けて入ってきた官兵衛は側に近づくなと三成に言われることを予想しているのか、室内に一歩足を踏み入れたと思ったらすぐにその場に腰を下ろした。わずかに冷たい風が室内に入り込んでくるのを快く受け止めながら三成が眼を細めていると、官兵衛は廊下側に体を倒して誰かを手招きし続けていた。
「何やってんだよ……会いたかったんだろ?」
「………………………」
「三成だって会いたかったに決まってるだろうが。うじうじするな……小生の気持ちになってみろ……今からお前さんたちの再会を見届けなきゃならんのだぞ?」
「………………………」
「じゃあお前さんはそこで見てろ、小生と三成が話しているところをな」
熱のせいで耳まで遠くなっているのか、官兵衛が話しかけている相手の声が聞こえない。
しかし官兵衛の話を聞いていると、どうやら相手は自分と官兵衛のどちらも見知っている相手らしい。今大坂城にいて、二人にとって顔なじみの人物。
きっと官兵衛の部下の誰かだろうと当たりを付け、三成はどうしてか近づいてこない相手に今の体調で出せる一番大きな声で語りかけたのだった。
「貴様が誰だかはわからぬが……顔を見せずに帰るのは無礼だろう」
「だとよ。そろそろ観念してこっちに来いよ」
完全にこの状況を面白がっている官兵衛は、まるで子供にするかのように大げさに手を振って呼んでいる。ここまでしているのに顔を見せないのは一体どこの誰だろう。
周囲の空気が冷えてきたというのに汗ばみ始めた体を持て余しながら重い息を吐いていると、廊下を踏みしめる音と共に三成の体にその影がかかった。
黒く長い、しっかりとした体格の男の影。
「……………………………………っ」
何故、どうして。
ゆっくりとその影を見上げ、目を呆然と見開きながら思うのはただそれだけ。
ずっと恋い焦がれていた、だが敵対することを定められた相手。それが幾分表情を曇らせてはいるが、官兵衛の後ろに立って自分を見つめている。
彼は今、刑部と話をしているはずなのに。
「…………家康…………どうして…………?」
「この戦いは、儂と三成の間で行われなければならないものだ。刑部と話をしても、意味がないだろう?」
「そうではない……何故私に…………っ!」
会いに来てくれたのか。
それを聞こうとしたが盛大に咳き込んでしまい、言葉が途中で止まってしまう。自分より少し背は低いが逞しい体格、そして全身から発せられる日の光のような暖かみのある雰囲気。
彼の暖かさを何よりも愛した。
そして彼が自分を殺すことに同意したと知って、絶望した。
彼を殺すくらいならば自分が死のう、そう決意したというのにどうして家康は自分の元を訪れたのだろう。そんなことをしたら互いに苦しくなることを、わからないわけがないのに。
激しく咳き込み体を折り曲げ苦しみながら、家康に会うことができた喜びと未来の苦しみを思っていると。
「大丈夫か?」
いつの間にか側に来ていた家康の手が、背をさすってくれていた。
「……だ……大丈夫だ」
「官兵衛から話を聞いた……秀吉の親族を斬らなかったそうだな」
「秀吉様の血を継ぐ方々だ、斬らずに済むのなら……その方がいい」
「儂は嬉しい……三成の手が汚れなかったのだからな」
「……………………」
先程までは自分の部屋に入ってくることさえも躊躇っていたというのに。
片膝をついて三成に寄り添い、体を半ば抱くようにして背をさすってくれている家康の顔にはわずかの影も存在していなかった。じいっと三成の顔を見つめ、優しげな笑みを絶やすことなく微笑みかけてきてくれる姿は昔のままで。
自分を殺すことを承諾したとは思えない程、全く変わっていなかった。
本当に家康は自分を討つと決めたのか、もしかしたらそれは何かの間違いではないのか。愛おしむかのように背を撫でてくれる手に勇気づけられ、それを聞こうとした時ふと家康の眉が顰められた。
いや、これは顰められたのではなく。
「家康……貴様は…………」
「三成、すまんが少し我慢してくれ」
「我慢だと? 一体何を…………っ!!」
涙を堪えているのだ。
それに気がついた時にはもう、三成の体は家康に抱きすくめられていた。
熱が巡っている体は家康よりも熱く、逆に彼の体が三成の体を冷やしてくれる。普段であれば、家康の高い体温に三成が暖めてもらっていたというのに。
彼に抱きしめられていることが、ただ心地よい。
昔から三成に触れたがっていた家康は、しょっちゅう突発的に抱きついてきていた。だから彼の突拍子のない行動にはもう慣れきってはいるのだが、熱で体調が悪いので力の強い家康に抱きしめられると全身の痛みが更に増していくのだ。そしてなにより、今の彼は事情があったとはいえ秀吉を殺した仇。
秀吉が死に近づきつつあったとはいえ、主君を殺した相手を素直に許せるわけがない。
どうすればいいのかわからず、思わず少し離れた場所で足を崩してこちらを伺っている官兵衛を見つめる。すると、彼はいい笑顔のまま力強く頷いてみせた。
つまり、自分でどうにかしろということだ。
風邪が治ったらぶん殴ってやる、そう誓いながらそっと手を伸ばしたのは家康の頭。子供のようにしゃくり上げながら、三成にすがって泣き始めている家康にしてやれることはそれしかなかったのだ。
憎悪と愛情という名の熱が、胸の中でゆるりと混ざり合っていく。
「生きて……いてくれているのだな…………」
「何を言っている?」
「…………感謝……する…………たとえどのような……になろうとも……儂は……」
「家康……貴様……どうして泣くのだ? 秀吉様を殺し、私も殺し……この国を手に入れるのだろう? だからこそ貴様は半兵衞様の策を受け入れて……」
「違う!」
「何が違うというのだ!」
咳混じりの枯れた声と、涙混じりの声が激しくぶつかり合った。
久々に感じた家康の暖かさ、それと受け止められるのは嬉しい。だが彼は秀吉を殺した相手なのだ、何があろうとも許してはいけない。
はずなのに、彼に憎しみをぶつけながら三成が感じていたのは喜びだった。
愛しい人にもう一度出会えた、そして言葉を交わすことができた。次に彼に会うことができるのは戦場で、自分が死ぬ時だと決めていたのだ。
優しい光の差す室内で、普通に会話を交わせることがどれだけありがたいか。
二人揃って泣いてしまっては、話が進まなくなってしまう。そして濡れて曇った視界では家康の顔をはっきりと見ることができない。次にいつ会えるかわからない、愛しい相手の顔を少しでも長く見るためには泣くわけにはいかなかったのだ。
「儂は半兵衞と同じ病を得てしまった秀吉を討たねばならぬと思った、それは事実だ。武人である秀吉に戦場での死を与えてやりたかったのだ」
「貴様の勝手な理屈で秀吉様を殺したのか!」
「ああ、儂が自分を許すための思い込みに過ぎぬ。だが三成……儂はお前だけは死なせん、誰に思い込みと言われようがこれだけは変えない……そう決めた」
「半兵衞様に私を殺すと言ったのだろう?」
「儂が半兵衛に言ったのはたった一つだけだ。半兵衞の策は受け入れる……だが儂は三成と共に生き抜いて太平の世を作るのだとな」
「……な…………んだと……?」
家康の言葉からは、嘘や偽りの気配など全く感じられなかった。
己の信じるがままに生き、人との絆を大切とする家康。そんな彼が友である自分を殺すことを受け入れた、それに違和感を感じなかったわけではないが半兵衞の話術にかかれば家康だって気持ちを変えるだろう。
そう思っていたというのに。
嗚咽を漏らしながらもはっきりとした声で三成と共に生きると言いきった家康を呆然と見つめていると、自分を強く捕らえていた腕がわずかに緩んだ。
力尽くで抜け出すこともできたのだが、三成はそれをしなかった。
自分の事を宝物か何かのように愛おしんでくれている家康の腕から抜け出したら、もう彼にこうやって抱き止めてもらえないのでは。そんな子供じみた不安を感じながら、家康の頭に触れていた手をぎこちなく動かす。
そんな三成の気遣いと戸惑いに満ちた動きに力を与えられたかのように、家康の頭がわずかに持ち上げられた。三成の目を濡れた輝きに満ちた瞳で射貫き、熱のせいで火照った頬に愛おしむように触れ。
その言葉を、告げてきたのだ。
「ずっと前から言いたかった……三成……儂はお前のことを愛している。だからお前をもう……死なせたくはないのだ」
「……な……何を……」
「儂は決めた、天下の趨勢を決める戦を三成と行うとしても、誰もが納得できる戦をすると。そして……どちらが勝とうとも遺恨が生まれないようにするのだ。官兵衛も儂の意見に賛同してくれた」
「…………官兵衛?」
敵方に協力するとは、と官兵衛を一喝する気になれぬまま鉄球に体を預けてだらだらとしている彼の方を見る。すると、三成がこちらを見るのを待ちわびていたかのように、にやっと笑ってからこちらに向かって手を上げ。
「おい三成……お前さんからも言ってやらなきゃいけないんじゃないのか? お前さんだってずっと家康のことを……」
「う、うるさい! 黙れ!」
どうしてこの男が自分の気持ちを知っているのか。
家康に官兵衛の言葉が耳に届かぬように咳を堪えて彼の言葉を必死に打ち消すと、官兵衛はくすくすと笑いながら口を閉じた。
さっさと伝えちまえ。
そう口だけ動かして三成に伝えてからであったが。
君主の仇である男に愛していると告げられる、それも以前から自分も恋い慕っていた相手に。この状況にどうしていいかわからず、かといって助言を与えてくれそうな官兵衛にも笑顔で突き放され。
ただおろおろとしている間にも、家康の話は続いていた。
「儂は三成が好きだ……誰よりも愛している。告げれば三成を困らせるので伝えるつもりはなかったのだが……今だからこそ伝えたいと思った」
「わ、私は……」
「三成が儂のことをどう思っていようと構わぬ。ただ儂の気持ちだけは覚えていてくれ、儂は今後も三成以外を愛する気はない」
「貴様は……昔から性急すぎるのだ……何事に対しても」
「だがそれが儂だ」
三成を抱きしめ直しながら嬉しそうに言う家康。
そんな彼に自分も言わなければならないことがあるのだ。秀吉を討った事への恨み、そしてそれを上回る彼への思い。
自分も家康を愛している。
家康が言ってくれたのだ、自分もそう言わなければならないのに。
三成の口から出てくるのは咳と、戸惑いを含んだ呼吸ばかり。
「色々言い過ぎてしまったな……熱も上がってきているようだ、今日は休んでくれ。儂は明日の夕までここに滞在するつもりだ、また後で話をしに来る」
「家康! わ、私は……」
「実は儂も少し気恥ずかしいのだ。お前に愛を告げることなどないと思っていたのでな……」
今まで三成を包んでくれていた、家康の感触が離れていく。
まだ頬を涙で濡らし、頭を掻きながら気恥ずかしそうに笑う彼にどんな言葉をどう言えばいいのか。立ち上がって官兵衛に頭を下げて退出していく家康の姿を目で追い続けながら。
思っている相手に思われている、その喜びを享受することもできずに三成はまた重く鈍い咳を漏らしたのだった。
夕方から夜間にかけて、三成の咳は一番激しくなる。
薬湯を飲んでも治まらぬ咳に周囲が気を揉む中、三成が寝付くことがでいたのはすっかり日が暮れてからのことであった。枕元には薬湯の入った急須と湯飲み、そして彼を案じる男が二人。
部屋の隅に置いた灯籠の光に照らされる三成の顔を見つめながら、交わされる会話はどちらから始めたものだっただろうか。
「…………儂は……気がついたらここにいた」
「そうか、小生はお前さんより二十日ほど前だ」
「官兵衛……お前の中では少し前の出来事かもしれぬが、儂の中ではまだあれから……一日も経っていないのだ」
時折首を動かしながら昏々と眠り続ける三成に時折触れつつ、家康は語りながら自分が今置かれた状況についてゆっくり整理をし始めた。
何故このような僥倖を得ることができたのか、家康は答えを知っている。
そしてこれから自分が何をしなければならないのか、それも知ってはいた。
だが目指す目標のためにこれからどういう選択肢を選んでいけばいいのか、それが全くわからなかったのだ。だからこそ目の前にいる官兵衛に話しながら、己の今置かれている状況を整理する。
そうすれば自分が今後何をすべきがわかるはず。
「あの関ヶ原の戦いで、儂は三成を殺した。骨を砕き……肉を破き……儂は確かに三成の命をこの手で奪ったのだ……そして官兵衛、お前と別れた後に聞こえた『声』と契約を交わした儂は、気がついたらこの場所にいた。三成を殺した時から一年近くも遡った今日に……な」
「小生も似たようなもんだ。気がついたら暗い牢屋にまた閉じ込められていた……まあ、お前さんより前に戻ることができたんで、三成の豊臣家皆殺しを止めることができたわけだが」
三成を挟んで布団の反対側、鉄球に片手を置いている官兵衛は慈愛に満ちた瞳で三成を見つめている。
だが決して触れようとしないのは、彼なりに決めた何かがあるからなのだろうか。布団を直してやったり、薬湯を準備してやったりとこまめに動いてはいるが三成の体には近づこうとしない。
愛おしすぎて触れられないのか、それとも別な何かがあるのか。
どうであったにしても、官兵衛は三成を死に逝く運命から救おうとしている。愛しい者の死という時間を共有し、絶望に塗りつぶされた結果を拒否し。彼が死ぬ前の時間に戻って来た者同士、官兵衛の気持ちは痛いほどにわかる。
目の前で生きてくれている、それだけで十分なのだ。
「三成が秀吉の身内を殺さなかったのは正直ありがたい。血塗れの凶王、非道な将……あの件で三成はそう呼ばれることになったのだからな」
「そんな呼び名で呼ばせるか。これがまずは第一歩だ……小生は三成に汚れた名前など与える気はない、お前さんと同じ立場に立って正々堂々と戦わせてやる」
「…………また……儂は三成と戦うのか…………」
「時代の流れはその方向へと向かっている。止めることはできないだろうよ……半兵衛の奴、上手く仕組んだもんだ。小生も止められないかと思って色々と試してみたんだがな……無理だった。悔しいがあいつの仕込みは完璧だ」
枷を嵌められた手を上へと持ち上げ、お手上げだと言わんばかりに苦笑いしてみる官兵衛。彼にあわせて笑い顔を作ってはみるが、家康の口から漏れたのは苦痛に満ちた響きだけだった。
「もう儂には三成を殺すことはできぬ、戦うことすらままならぬだろうな」
「お前さんが三成を救うためにまた三成と戦う……なんて軽々しく言い出したら、小生はこの場でおまえさんの首を捻り切っていただろうよ」
「戦の場で討ち倒せば三成は止まってくれるとあの時儂は思っていた。止まってくれれば話ができる、そうすれば儂は三成を殺さずにすむと……」
「聞いているこっちが暗くなるようなことを言うのはやめてくれ。やりなおす機会をもらったんだ、今度は同じ事を繰り返さなければいいだけだ。小生も力を貸す、お前さんたちだけじゃなく……もう他の誰にも憎しみで争い合うことなどさせん」
あの絶望の中、気がついたらこの時間へと戻っていた家康にはまだ官兵衛のようにじっくりと物事を考える余裕がない。三成が生きている、そして自分が力を尽くせば彼を失う運命を変えることができる。
その機会を得ることができた喜びに浸っていたいのだ、まだ。
しかし家康より前の時間に戻っており、官兵衛はじっくりと考える時間を与えられていたのだろう。家康と再会するまでの間、彼は様々な事を行い戦を止めるために動き続けてくれていた。何をしようとも、どれだけ力を尽くそうとも。結局戦は止められないと気がついた時、官兵衛は三成に戦いの道を選ばせることを選んだわけだ。
それが三成の命を救う唯一の道だと信じて。
半兵衞と並ぶ軍師と言われた彼のことだ、勝算無しでそんなことを考えるわけがない。官兵衛の言葉を信じなかったことで三成を死なせる原因を作ってしまったに等しい家康は、今度こそ彼の言葉を信じるつもりだが。
また三成と戦わなければならないというのか。
その時に三成がまた自分の拳の前に身を投げ出すかもしれないというのに。
記憶の中にはっきりと刻み込まれてしまった三成の死の瞬間。
心に突き刺さったそれが薄れるほどの時間も経過していないのだ。荒い息を吐いて眠り続ける三成に触れることすら恐怖を感じてしまうというのに、どうやって三成と戦えばいいのか。
そのくせ、先程彼を抱きしめた感触を忘れられないのだから自分という男はどうしようもない。触れれば彼の命を奪った時の感触が如実に思い出されるというのに、目が覚めたら彼をもう一度抱きしめたいと願っているのだ。
三成が自分の事を愛しているはずがないとわかっているのに。
「官兵衛……儂はまず何をすればいいのだ? どうすれば三成の命を救い、争いのない世を作ることができる?」
「三成だけじゃなく天下も望むか。お前さんは相も変わらず欲張りだな」
「そうしなければ儂が秀吉を討った意味はなくなる」
「…………そうだな、お前さんはそういう男だったな」
小さく鎖の鳴る音と共に、どこか寂しげな官兵衛の笑い声。
だがそこに秘められているのが悲しさだけではないことを察し、家康は更に言葉を重ねた。
半兵衞亡き後、彼以上の軍師はこの国に存在しない。
彼を味方に付ければ、家康は天下と三成の両方を手に入れることができるはず。官兵衛の望みは三成の生存であり、天下ではない。
ならばきっと、官兵衛は家康に力を貸してくれる。
「儂は誓う、三成を必ず救ってみせるとな。そしてそれが叶えられぬのならば……儂は三成が死ぬ前に自害しよう」
「お前さんが本気なのはわかっているつもりだ。そうでなければこんな『奇跡』は起こせないだろうからな」
言葉と共に、官兵衛の手が家康の方へと差し出される。
枷に拘束され重い鎖に縛られた手は、三成の眠る布団の上で止まり。意図を察した家康の手が上に重ねられるまで、ずっと待ち続けていた。
「手を組むぞ、家康」
「ああ、わかっている」
言葉はそれだけで十分だった。
目を隠す程に伸びている前髪の隙間から覗く、宝石のように輝く瞳。そこに満ちているのは、眠り続ける三成への深く強い愛情であった。
もう二度とあの様な結末は迎えたくない。
そして三成を救ってやりたい。
それが二人に共通した思いだった。
愛しい人に自ら死を選ばせず、彼と共に未来に怒ることが確定している戦を越え。彼が幸せに笑って過ごすことができる世を作るために。
たとえ恋敵であろうとも協力し合おう。
地獄のような時間を抜け、家康も官兵衛も考えを変えた。自分たちが最初から協力し合えば、そして三成を生き残らせることだけに力を尽くせば。
きっと、あのような悲惨な結末を迎えなくともすむ。
そして後に東照権現と呼ばれるようになる男と、戦国最高の軍師と称される事になる男は無言で頷き合うと。二度と大切な存在を失わないために、そして自分たちが知らぬ幸せに満ちた未来を作り上げるために。
わずかに差し込む月の光と灯籠の明かりの下、互いの記憶と知識を繋ぎ合わせることから始めたのだった。
___________________________________
始まりました。
~偽~から直接続くので、偽の改訂前の版を持っている方は……いや本当にすいません……と、とにかくあのラストから続くのでそっちを読んでから読むとわかりやすいかもです。
~偽~の終わりの直後に、家康さんは~偽~でいうと最初の章の時間に戻ってきていますです。で、~真~がスタート、と。
BGM「moon signal」
障子越しに差し込む薄明かりに眼を細めながら、石田三成はざらつく呼吸音を生み出す自分の喉をそっと押さえた。そうすれば喉がひりつくような感覚と水を飲んでも治まらない乾きが少しは治まるかと思ったのだが、わずかに圧迫しただけだというのに喉は痛みという名の悲鳴をあげる。
誰かに押さえられているわけでもないのに体は重く、体を起こしているだけで疲労が積み重なっていく中。三成にできるのは、大人しく横になって周囲の人間がこれ以上心配せぬように眠り続ける事だけだった。
秀吉が家康に討たれてから今まで、三成はほとんど休息を取っていない。
静養のために使わせてもらっているこの稲葉山の別邸で半兵衞を看取ってから、数ヶ月の時が経過している。嘆き悲しむ秀吉の体調の変化に三成が気がついた時にはもう、彼は他国への侵略を心に決めていたらしい。臣下を動かし軍の再編成を進めさせていた秀吉を止めるために兵を挙げた徳川家康との激しい戦いの末、稀代の覇王と称された豊臣秀吉はその生涯を終えた。
半兵衞から話を聞いた時からその覚悟はできていたし、病は秀吉の命を猛烈な勢いで削り始めていた。だからこそ秀吉は家康の挙兵を知っても慌てることはなかったし、むしろその時を待ち焦がれていたのだろう。
三成に後を託し、詫びながら。
己の半身である軍師の名を呼びながら、秀吉は死出の道へと旅立っていった。誰よりも敬愛する主君を失ったのだ、三成もその場ですぐに後を追うべきだったのかもしれないが。半兵衞の望みを叶え、家康に天下を渡すために三成はまだ生きなければならなかったのだ。
死に逝く心を奮い立たせ、混乱する豊臣軍をまとめるために全力を尽くした。
絶対的な存在であった秀吉を失った軍。混乱し鋼の規律を失いつつあった軍をまとめるためには、行わなければならないことが山のようにあった。しかし徳川軍との戦で年長の家臣のほとんどを失ってしまっていた豊臣軍に残っていた重臣は三成と刑部のみ。その刑部も患い続けていた病が急速に悪化し、満足に動く事すら出来なくなり始めていた。
あまりにも人手が足りないので枷を嵌めて監禁しておいた官兵衛を引っ張り出してみたのだが、何故か彼は自分の顔を見た瞬間に号泣し始めてしまい。泣いたと思ったら三成の顔を見て感慨深げに頷くことを数日間繰り返し続け、ある日突然三成の元へとやってきて頭を床に擦りつけ懇願し始めたのだった。
豊臣家の親族を根絶やしにするのは止めて欲しい、と。
三成にこのまま付き従い秀吉の仇討ち合戦に向かうか、それとも秀吉の親族を頭に立てて天下を維持し続けるか。武士の出ではない秀吉の親族たちは権力と富だけを欲し、天下が自分たちの元にあるという意味ができていない。つまりそれは彼らに豊臣軍という力を渡してしまえば、周囲を押さえ込む道具に成り果てるということを意味していた。
秀吉と半兵衞が作り上げた軍は、自分たちに逆らう存在を鎮圧する道具ではない。
苦々しく思いはするが秀吉の臣下でしかない三成の言葉と、豊臣の血を受け継ぐ存在の言葉では周囲に与える影響が違う。秀吉が死んでわずかの時間しか経過していないというのに、三成への敵愾心を強めていく親族たちと彼らを支援する一部の人間のために、三成と刑部は一気に劣勢に追い込まれていた。
兵たちの信仰は秀吉と共に戦場を駆けた三成たちの元にある。
だがこのまま若輩者の三成に付き従っていたくない、そう考える人間が多いのも事実なのだ。秀吉の親族たちに従い徳川家を叩き潰して権力を維持するか、それとも三成と共に全てをかなぐり捨ててでも仇討ちに進んでいくか。その二つの意見で割れ始めた豊臣軍を維持し、半兵衞の策を成就させる。そのためには豊臣家の人間をここで滅ぼしておかねばならない。
豊臣軍にはもう旗頭となることができる存在は三成しかいない。
兵たちに恐怖と共にそれを刻み込むために、刑部は津なり自身の手で彼らを虐殺することを提案した。
三成とて秀吉と同じ血を引く人間を殺したいわけではない。
だが天下分け目の戦いを理想とする形で起こすためには、親族たちからの横やりが入る状況を潰しておかなければならないのだ。豊臣の血族という象徴を失えば、軍は必然的に三成たちの望み通りに動くようになり、家康との戦へと向かっていくはず。そしてこのまま豊臣家の血族が生き続ければ、家康は一丸となった豊臣軍に叩き潰され死んでしまうことになるだろう。
半兵衞の策のためにも、今の段階で家康を失うわけにはいかない。
そう刑部に説得され、主君の血族を皆殺しにするという苦痛に満ちた行いを受け入れようとした時、官兵衛は言ったのだ。
彼らを討たずとも家康を護る方法はある、と。
長年の友人である刑部ではなく、何故その時官兵衛を信じたのか。彼は甘い言葉を連ねてきたわけではないし、三成に権力や富を無心したわけではない。逆に何も欲しがらず、ただ豊臣の血族を滅ぼすのは三成が己を傷つけるのと等しい行為だと言い続けた彼を。
三成はその時、ほんの少しだけ信じる気になってしまったのだ。
刑部には反対されたが、官兵衛と共に秀吉の親族たちと話し合いの機会を持ち。秀吉に一番近い血縁者であるまだ言葉を話すことすらできない幼い甥御を預かり、彼を旗頭に徳川軍との弔い合戦を行うことになった後。
今までの疲れと安堵、そして急激な気候の変動に三成の体は限界に達したのだろう。
重い風邪を引いて寝込むことになった三成は、大坂城に乳母と共に住んでいる秀吉の甥秀頼に風邪をうつさぬように自ら稲葉山の別邸での静養を選んだ。三成のことを自分の命を奪わずに後見人になってくれた男だと幼いながら理解しているのか、秀頼は三成のことを誰よりも慕っていた。
三成の腕に抱かれていると機嫌がいいし、ようやくつかまり立ちができるようになったばかりだというのに三成を捜して城内を歩き回る。その微笑ましさに三成のことを子連れ大将と誰からともなく言い出したが、自分の復讐で周囲を動かすのではなく大義名分を得て家康との戦に臨もうとしている三成へ向けられる視線は以前よりずっと優しくなっていた。
そんな秀頼を置いてこの別邸に来たのだ、きっと秀頼は三成を探して毎日大泣きしているのだろう。
早く体を治して帰らねばならないと焦る思い、そしてもう一つ。
三成が横になっているこの部屋からわずかに離れた部屋で、刑部と家康は今話し合いを行っている。
死の床にあった半兵衞が命じた天下分け目の戦をどう行っていくべきか。
本来なら三成が家康の話し合わなければならないのだが、この体調では布団から出る事もままならない。なので三成の代わりに刑部が話し合うことになったのだが、三成が刑部に家康との会談を託した時、官兵衛だけは苦い顔で刑部を睨み付け続けていた。
腕に枷を嵌められながらも甲斐甲斐しく、まるで肉親か何かのように三成の看病をしてくれる官兵衛の優しさ。それはありがたかったし、時には素直に甘えてしまうこともあるのだが。
刑部と官兵衛の意見に挟まれ、頭が痛くなるのも事実。
官兵衛が二人の会談を邪魔しなければいいが……と考えながら目を閉じようとすると、障子紙が強い音を立てて震えたことに気がつく。
誰かが丁寧に風を取り込もうと窓を開けたのか。
一瞬そう考えたが、それにしては障子が揺れる気配はない。障子紙だけが何かの音を受け止めて震えていることに疑問を感じながらも、倦怠感故に目を閉じようとすると。
一気に視界が暗くなった。
それが目を閉じる前に訪れたこと、そして障子に誰かの影が映っていることに気がつき三成はかすれた声でその人物を追い払うための言葉を口にした。それだけで喉が焼けるように痛み、体が急に疲れ果てていく。
「官兵衛か……? 私はこれから眠る、貴様の話につきあう気はない……」
「寝かせてやりたいのは山々なんだがな、小生と……こいつの話を聞いてからにしてくれ」
「…………こい……つ……だと?」
障子に映っている影は官兵衛らしいが、どうやら彼以外にも誰かが来ているらしい。
刑部は今家康と話をしているので、きっと大坂城から来た遣いが三成の無事を確かめるために顔を見たいと言っているのだろう。そう見当を付け、熱と咳で疲れ果てている体を起こすと、三成は官兵衛に入ってもいいと小さな声で告げた。
それだけで関節が軋むように痛む。
「寝ているところすまなかったな」
「……構わん…………客が来ているのではないのか?」
「来てるんだがな……お前さんに会うのは度胸がいるんだとよ」
「度胸?」
障子を開けて入ってきた官兵衛は側に近づくなと三成に言われることを予想しているのか、室内に一歩足を踏み入れたと思ったらすぐにその場に腰を下ろした。わずかに冷たい風が室内に入り込んでくるのを快く受け止めながら三成が眼を細めていると、官兵衛は廊下側に体を倒して誰かを手招きし続けていた。
「何やってんだよ……会いたかったんだろ?」
「………………………」
「三成だって会いたかったに決まってるだろうが。うじうじするな……小生の気持ちになってみろ……今からお前さんたちの再会を見届けなきゃならんのだぞ?」
「………………………」
「じゃあお前さんはそこで見てろ、小生と三成が話しているところをな」
熱のせいで耳まで遠くなっているのか、官兵衛が話しかけている相手の声が聞こえない。
しかし官兵衛の話を聞いていると、どうやら相手は自分と官兵衛のどちらも見知っている相手らしい。今大坂城にいて、二人にとって顔なじみの人物。
きっと官兵衛の部下の誰かだろうと当たりを付け、三成はどうしてか近づいてこない相手に今の体調で出せる一番大きな声で語りかけたのだった。
「貴様が誰だかはわからぬが……顔を見せずに帰るのは無礼だろう」
「だとよ。そろそろ観念してこっちに来いよ」
完全にこの状況を面白がっている官兵衛は、まるで子供にするかのように大げさに手を振って呼んでいる。ここまでしているのに顔を見せないのは一体どこの誰だろう。
周囲の空気が冷えてきたというのに汗ばみ始めた体を持て余しながら重い息を吐いていると、廊下を踏みしめる音と共に三成の体にその影がかかった。
黒く長い、しっかりとした体格の男の影。
「……………………………………っ」
何故、どうして。
ゆっくりとその影を見上げ、目を呆然と見開きながら思うのはただそれだけ。
ずっと恋い焦がれていた、だが敵対することを定められた相手。それが幾分表情を曇らせてはいるが、官兵衛の後ろに立って自分を見つめている。
彼は今、刑部と話をしているはずなのに。
「…………家康…………どうして…………?」
「この戦いは、儂と三成の間で行われなければならないものだ。刑部と話をしても、意味がないだろう?」
「そうではない……何故私に…………っ!」
会いに来てくれたのか。
それを聞こうとしたが盛大に咳き込んでしまい、言葉が途中で止まってしまう。自分より少し背は低いが逞しい体格、そして全身から発せられる日の光のような暖かみのある雰囲気。
彼の暖かさを何よりも愛した。
そして彼が自分を殺すことに同意したと知って、絶望した。
彼を殺すくらいならば自分が死のう、そう決意したというのにどうして家康は自分の元を訪れたのだろう。そんなことをしたら互いに苦しくなることを、わからないわけがないのに。
激しく咳き込み体を折り曲げ苦しみながら、家康に会うことができた喜びと未来の苦しみを思っていると。
「大丈夫か?」
いつの間にか側に来ていた家康の手が、背をさすってくれていた。
「……だ……大丈夫だ」
「官兵衛から話を聞いた……秀吉の親族を斬らなかったそうだな」
「秀吉様の血を継ぐ方々だ、斬らずに済むのなら……その方がいい」
「儂は嬉しい……三成の手が汚れなかったのだからな」
「……………………」
先程までは自分の部屋に入ってくることさえも躊躇っていたというのに。
片膝をついて三成に寄り添い、体を半ば抱くようにして背をさすってくれている家康の顔にはわずかの影も存在していなかった。じいっと三成の顔を見つめ、優しげな笑みを絶やすことなく微笑みかけてきてくれる姿は昔のままで。
自分を殺すことを承諾したとは思えない程、全く変わっていなかった。
本当に家康は自分を討つと決めたのか、もしかしたらそれは何かの間違いではないのか。愛おしむかのように背を撫でてくれる手に勇気づけられ、それを聞こうとした時ふと家康の眉が顰められた。
いや、これは顰められたのではなく。
「家康……貴様は…………」
「三成、すまんが少し我慢してくれ」
「我慢だと? 一体何を…………っ!!」
涙を堪えているのだ。
それに気がついた時にはもう、三成の体は家康に抱きすくめられていた。
熱が巡っている体は家康よりも熱く、逆に彼の体が三成の体を冷やしてくれる。普段であれば、家康の高い体温に三成が暖めてもらっていたというのに。
彼に抱きしめられていることが、ただ心地よい。
昔から三成に触れたがっていた家康は、しょっちゅう突発的に抱きついてきていた。だから彼の突拍子のない行動にはもう慣れきってはいるのだが、熱で体調が悪いので力の強い家康に抱きしめられると全身の痛みが更に増していくのだ。そしてなにより、今の彼は事情があったとはいえ秀吉を殺した仇。
秀吉が死に近づきつつあったとはいえ、主君を殺した相手を素直に許せるわけがない。
どうすればいいのかわからず、思わず少し離れた場所で足を崩してこちらを伺っている官兵衛を見つめる。すると、彼はいい笑顔のまま力強く頷いてみせた。
つまり、自分でどうにかしろということだ。
風邪が治ったらぶん殴ってやる、そう誓いながらそっと手を伸ばしたのは家康の頭。子供のようにしゃくり上げながら、三成にすがって泣き始めている家康にしてやれることはそれしかなかったのだ。
憎悪と愛情という名の熱が、胸の中でゆるりと混ざり合っていく。
「生きて……いてくれているのだな…………」
「何を言っている?」
「…………感謝……する…………たとえどのような……になろうとも……儂は……」
「家康……貴様……どうして泣くのだ? 秀吉様を殺し、私も殺し……この国を手に入れるのだろう? だからこそ貴様は半兵衞様の策を受け入れて……」
「違う!」
「何が違うというのだ!」
咳混じりの枯れた声と、涙混じりの声が激しくぶつかり合った。
久々に感じた家康の暖かさ、それと受け止められるのは嬉しい。だが彼は秀吉を殺した相手なのだ、何があろうとも許してはいけない。
はずなのに、彼に憎しみをぶつけながら三成が感じていたのは喜びだった。
愛しい人にもう一度出会えた、そして言葉を交わすことができた。次に彼に会うことができるのは戦場で、自分が死ぬ時だと決めていたのだ。
優しい光の差す室内で、普通に会話を交わせることがどれだけありがたいか。
二人揃って泣いてしまっては、話が進まなくなってしまう。そして濡れて曇った視界では家康の顔をはっきりと見ることができない。次にいつ会えるかわからない、愛しい相手の顔を少しでも長く見るためには泣くわけにはいかなかったのだ。
「儂は半兵衞と同じ病を得てしまった秀吉を討たねばならぬと思った、それは事実だ。武人である秀吉に戦場での死を与えてやりたかったのだ」
「貴様の勝手な理屈で秀吉様を殺したのか!」
「ああ、儂が自分を許すための思い込みに過ぎぬ。だが三成……儂はお前だけは死なせん、誰に思い込みと言われようがこれだけは変えない……そう決めた」
「半兵衞様に私を殺すと言ったのだろう?」
「儂が半兵衛に言ったのはたった一つだけだ。半兵衞の策は受け入れる……だが儂は三成と共に生き抜いて太平の世を作るのだとな」
「……な…………んだと……?」
家康の言葉からは、嘘や偽りの気配など全く感じられなかった。
己の信じるがままに生き、人との絆を大切とする家康。そんな彼が友である自分を殺すことを受け入れた、それに違和感を感じなかったわけではないが半兵衞の話術にかかれば家康だって気持ちを変えるだろう。
そう思っていたというのに。
嗚咽を漏らしながらもはっきりとした声で三成と共に生きると言いきった家康を呆然と見つめていると、自分を強く捕らえていた腕がわずかに緩んだ。
力尽くで抜け出すこともできたのだが、三成はそれをしなかった。
自分の事を宝物か何かのように愛おしんでくれている家康の腕から抜け出したら、もう彼にこうやって抱き止めてもらえないのでは。そんな子供じみた不安を感じながら、家康の頭に触れていた手をぎこちなく動かす。
そんな三成の気遣いと戸惑いに満ちた動きに力を与えられたかのように、家康の頭がわずかに持ち上げられた。三成の目を濡れた輝きに満ちた瞳で射貫き、熱のせいで火照った頬に愛おしむように触れ。
その言葉を、告げてきたのだ。
「ずっと前から言いたかった……三成……儂はお前のことを愛している。だからお前をもう……死なせたくはないのだ」
「……な……何を……」
「儂は決めた、天下の趨勢を決める戦を三成と行うとしても、誰もが納得できる戦をすると。そして……どちらが勝とうとも遺恨が生まれないようにするのだ。官兵衛も儂の意見に賛同してくれた」
「…………官兵衛?」
敵方に協力するとは、と官兵衛を一喝する気になれぬまま鉄球に体を預けてだらだらとしている彼の方を見る。すると、三成がこちらを見るのを待ちわびていたかのように、にやっと笑ってからこちらに向かって手を上げ。
「おい三成……お前さんからも言ってやらなきゃいけないんじゃないのか? お前さんだってずっと家康のことを……」
「う、うるさい! 黙れ!」
どうしてこの男が自分の気持ちを知っているのか。
家康に官兵衛の言葉が耳に届かぬように咳を堪えて彼の言葉を必死に打ち消すと、官兵衛はくすくすと笑いながら口を閉じた。
さっさと伝えちまえ。
そう口だけ動かして三成に伝えてからであったが。
君主の仇である男に愛していると告げられる、それも以前から自分も恋い慕っていた相手に。この状況にどうしていいかわからず、かといって助言を与えてくれそうな官兵衛にも笑顔で突き放され。
ただおろおろとしている間にも、家康の話は続いていた。
「儂は三成が好きだ……誰よりも愛している。告げれば三成を困らせるので伝えるつもりはなかったのだが……今だからこそ伝えたいと思った」
「わ、私は……」
「三成が儂のことをどう思っていようと構わぬ。ただ儂の気持ちだけは覚えていてくれ、儂は今後も三成以外を愛する気はない」
「貴様は……昔から性急すぎるのだ……何事に対しても」
「だがそれが儂だ」
三成を抱きしめ直しながら嬉しそうに言う家康。
そんな彼に自分も言わなければならないことがあるのだ。秀吉を討った事への恨み、そしてそれを上回る彼への思い。
自分も家康を愛している。
家康が言ってくれたのだ、自分もそう言わなければならないのに。
三成の口から出てくるのは咳と、戸惑いを含んだ呼吸ばかり。
「色々言い過ぎてしまったな……熱も上がってきているようだ、今日は休んでくれ。儂は明日の夕までここに滞在するつもりだ、また後で話をしに来る」
「家康! わ、私は……」
「実は儂も少し気恥ずかしいのだ。お前に愛を告げることなどないと思っていたのでな……」
今まで三成を包んでくれていた、家康の感触が離れていく。
まだ頬を涙で濡らし、頭を掻きながら気恥ずかしそうに笑う彼にどんな言葉をどう言えばいいのか。立ち上がって官兵衛に頭を下げて退出していく家康の姿を目で追い続けながら。
思っている相手に思われている、その喜びを享受することもできずに三成はまた重く鈍い咳を漏らしたのだった。
夕方から夜間にかけて、三成の咳は一番激しくなる。
薬湯を飲んでも治まらぬ咳に周囲が気を揉む中、三成が寝付くことがでいたのはすっかり日が暮れてからのことであった。枕元には薬湯の入った急須と湯飲み、そして彼を案じる男が二人。
部屋の隅に置いた灯籠の光に照らされる三成の顔を見つめながら、交わされる会話はどちらから始めたものだっただろうか。
「…………儂は……気がついたらここにいた」
「そうか、小生はお前さんより二十日ほど前だ」
「官兵衛……お前の中では少し前の出来事かもしれぬが、儂の中ではまだあれから……一日も経っていないのだ」
時折首を動かしながら昏々と眠り続ける三成に時折触れつつ、家康は語りながら自分が今置かれた状況についてゆっくり整理をし始めた。
何故このような僥倖を得ることができたのか、家康は答えを知っている。
そしてこれから自分が何をしなければならないのか、それも知ってはいた。
だが目指す目標のためにこれからどういう選択肢を選んでいけばいいのか、それが全くわからなかったのだ。だからこそ目の前にいる官兵衛に話しながら、己の今置かれている状況を整理する。
そうすれば自分が今後何をすべきがわかるはず。
「あの関ヶ原の戦いで、儂は三成を殺した。骨を砕き……肉を破き……儂は確かに三成の命をこの手で奪ったのだ……そして官兵衛、お前と別れた後に聞こえた『声』と契約を交わした儂は、気がついたらこの場所にいた。三成を殺した時から一年近くも遡った今日に……な」
「小生も似たようなもんだ。気がついたら暗い牢屋にまた閉じ込められていた……まあ、お前さんより前に戻ることができたんで、三成の豊臣家皆殺しを止めることができたわけだが」
三成を挟んで布団の反対側、鉄球に片手を置いている官兵衛は慈愛に満ちた瞳で三成を見つめている。
だが決して触れようとしないのは、彼なりに決めた何かがあるからなのだろうか。布団を直してやったり、薬湯を準備してやったりとこまめに動いてはいるが三成の体には近づこうとしない。
愛おしすぎて触れられないのか、それとも別な何かがあるのか。
どうであったにしても、官兵衛は三成を死に逝く運命から救おうとしている。愛しい者の死という時間を共有し、絶望に塗りつぶされた結果を拒否し。彼が死ぬ前の時間に戻って来た者同士、官兵衛の気持ちは痛いほどにわかる。
目の前で生きてくれている、それだけで十分なのだ。
「三成が秀吉の身内を殺さなかったのは正直ありがたい。血塗れの凶王、非道な将……あの件で三成はそう呼ばれることになったのだからな」
「そんな呼び名で呼ばせるか。これがまずは第一歩だ……小生は三成に汚れた名前など与える気はない、お前さんと同じ立場に立って正々堂々と戦わせてやる」
「…………また……儂は三成と戦うのか…………」
「時代の流れはその方向へと向かっている。止めることはできないだろうよ……半兵衛の奴、上手く仕組んだもんだ。小生も止められないかと思って色々と試してみたんだがな……無理だった。悔しいがあいつの仕込みは完璧だ」
枷を嵌められた手を上へと持ち上げ、お手上げだと言わんばかりに苦笑いしてみる官兵衛。彼にあわせて笑い顔を作ってはみるが、家康の口から漏れたのは苦痛に満ちた響きだけだった。
「もう儂には三成を殺すことはできぬ、戦うことすらままならぬだろうな」
「お前さんが三成を救うためにまた三成と戦う……なんて軽々しく言い出したら、小生はこの場でおまえさんの首を捻り切っていただろうよ」
「戦の場で討ち倒せば三成は止まってくれるとあの時儂は思っていた。止まってくれれば話ができる、そうすれば儂は三成を殺さずにすむと……」
「聞いているこっちが暗くなるようなことを言うのはやめてくれ。やりなおす機会をもらったんだ、今度は同じ事を繰り返さなければいいだけだ。小生も力を貸す、お前さんたちだけじゃなく……もう他の誰にも憎しみで争い合うことなどさせん」
あの絶望の中、気がついたらこの時間へと戻っていた家康にはまだ官兵衛のようにじっくりと物事を考える余裕がない。三成が生きている、そして自分が力を尽くせば彼を失う運命を変えることができる。
その機会を得ることができた喜びに浸っていたいのだ、まだ。
しかし家康より前の時間に戻っており、官兵衛はじっくりと考える時間を与えられていたのだろう。家康と再会するまでの間、彼は様々な事を行い戦を止めるために動き続けてくれていた。何をしようとも、どれだけ力を尽くそうとも。結局戦は止められないと気がついた時、官兵衛は三成に戦いの道を選ばせることを選んだわけだ。
それが三成の命を救う唯一の道だと信じて。
半兵衞と並ぶ軍師と言われた彼のことだ、勝算無しでそんなことを考えるわけがない。官兵衛の言葉を信じなかったことで三成を死なせる原因を作ってしまったに等しい家康は、今度こそ彼の言葉を信じるつもりだが。
また三成と戦わなければならないというのか。
その時に三成がまた自分の拳の前に身を投げ出すかもしれないというのに。
記憶の中にはっきりと刻み込まれてしまった三成の死の瞬間。
心に突き刺さったそれが薄れるほどの時間も経過していないのだ。荒い息を吐いて眠り続ける三成に触れることすら恐怖を感じてしまうというのに、どうやって三成と戦えばいいのか。
そのくせ、先程彼を抱きしめた感触を忘れられないのだから自分という男はどうしようもない。触れれば彼の命を奪った時の感触が如実に思い出されるというのに、目が覚めたら彼をもう一度抱きしめたいと願っているのだ。
三成が自分の事を愛しているはずがないとわかっているのに。
「官兵衛……儂はまず何をすればいいのだ? どうすれば三成の命を救い、争いのない世を作ることができる?」
「三成だけじゃなく天下も望むか。お前さんは相も変わらず欲張りだな」
「そうしなければ儂が秀吉を討った意味はなくなる」
「…………そうだな、お前さんはそういう男だったな」
小さく鎖の鳴る音と共に、どこか寂しげな官兵衛の笑い声。
だがそこに秘められているのが悲しさだけではないことを察し、家康は更に言葉を重ねた。
半兵衞亡き後、彼以上の軍師はこの国に存在しない。
彼を味方に付ければ、家康は天下と三成の両方を手に入れることができるはず。官兵衛の望みは三成の生存であり、天下ではない。
ならばきっと、官兵衛は家康に力を貸してくれる。
「儂は誓う、三成を必ず救ってみせるとな。そしてそれが叶えられぬのならば……儂は三成が死ぬ前に自害しよう」
「お前さんが本気なのはわかっているつもりだ。そうでなければこんな『奇跡』は起こせないだろうからな」
言葉と共に、官兵衛の手が家康の方へと差し出される。
枷に拘束され重い鎖に縛られた手は、三成の眠る布団の上で止まり。意図を察した家康の手が上に重ねられるまで、ずっと待ち続けていた。
「手を組むぞ、家康」
「ああ、わかっている」
言葉はそれだけで十分だった。
目を隠す程に伸びている前髪の隙間から覗く、宝石のように輝く瞳。そこに満ちているのは、眠り続ける三成への深く強い愛情であった。
もう二度とあの様な結末は迎えたくない。
そして三成を救ってやりたい。
それが二人に共通した思いだった。
愛しい人に自ら死を選ばせず、彼と共に未来に怒ることが確定している戦を越え。彼が幸せに笑って過ごすことができる世を作るために。
たとえ恋敵であろうとも協力し合おう。
地獄のような時間を抜け、家康も官兵衛も考えを変えた。自分たちが最初から協力し合えば、そして三成を生き残らせることだけに力を尽くせば。
きっと、あのような悲惨な結末を迎えなくともすむ。
そして後に東照権現と呼ばれるようになる男と、戦国最高の軍師と称される事になる男は無言で頷き合うと。二度と大切な存在を失わないために、そして自分たちが知らぬ幸せに満ちた未来を作り上げるために。
わずかに差し込む月の光と灯籠の明かりの下、互いの記憶と知識を繋ぎ合わせることから始めたのだった。
___________________________________
始まりました。
~偽~から直接続くので、偽の改訂前の版を持っている方は……いや本当にすいません……と、とにかくあのラストから続くのでそっちを読んでから読むとわかりやすいかもです。
~偽~の終わりの直後に、家康さんは~偽~でいうと最初の章の時間に戻ってきていますです。で、~真~がスタート、と。
BGM「moon signal」
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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