こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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終わらせてしまいました。
*****
朝起きると自分の横からこじゅが消えており、今朝の朝食には青菜の浮いた味噌汁。
「は、半兵衛様…………まさか………」
「違うってば。こじゅ君は、葉っぱがしおれてきたから日向ぼっこしたいって」
「日を当てれば元に戻るのですか?」
「そうみたい、便利だよね」
半兵衛に招かれ、天守閣にある彼の私室で朝食のお相伴にあずかる。
佐吉が器用に小さな箸を使って食事を始めるのを確認してから食べ始めた三成だったが、にこにこしながら食事を続けている半兵衛の態度がおかしいというか。
この裏表のなさそうに見える笑顔は、何かを隠している時のもの。
遠回しに聞いても答えてくれないだろうから、何気なく食事を続けている風を装いながら半兵衛にはっきりと問うてみた。
「半兵衛様、何を隠しているのですか?」
「何も隠してないよ。聞かれないから答えないだけ」
『半兵衛黙秘』
「隠す気はないよ。家康君と秀吉が朝食前の『軽い』鍛錬の最中だなんてね」
「……………………………っ!」
「止めに行こうなんて思わないことだね。家康君は真剣だよ?」
「ですが……!」
箸を置いて立ち上がろうとすると、半兵衛の声に押しとどめられる。
昨日も散々やられたというのに、何故今日も同じ事をするのだろうか。うまく秀吉から逃げてしまえばいいのに。
横でおろおろする佐吉すら目に入らず、膝で潰しそうになったりしている間も半兵衛の言葉は続いていた。
「家康君にとって、君はそれだけの価値を持つ宝物だって事だよ、そして秀吉にとっても……ね。君は君を大切に思ってくれる人たちの思いをちゃんと受け止めなきゃいけないし、自分の気持ちもちゃんと伝えないと」
「半兵衛様……」
「君が秀吉や家康君のことが大好きなのは知ってる。でも、いつかは選ばなきゃいけない日が来るんだよ……豊臣に残るか、それとも家康君と共に行くか」
「私は秀吉様の……豊臣の兵です!」
「家康君の所に行くっていうことは、豊臣から離れるって事だよ?」
『三成離反』
「……そこまで重大な話でもないけど……君にとって家康君は豊臣を離れてもいいほど大事な存在なのかな?」
答えを出さなければ、家康の元へは行かせない。
柔和な笑顔のまま、半兵衛の眼光だけが鋭くなる。
彼はこの笑顔のまま、幾人もの秀吉の敵を今まで切り伏せてきていたのだ。大切な存在の敵を屠ることができる喜びで顔を輝かせ、自ら血にまみれ。
そうして豊臣の天下を作り上げた。
今の三成には家康を救うために秀吉の前に立つ覚悟も、自分を手にいれるために戦う家康を止める力もない。どちらにもつくことができず、ただ見ているだけの三成に半兵衛は告げているのだ。
どちらにつくか決めろ、と。
「………………………………」
このまま半兵衛と共にいればいいのか、それとも家康の所へ行けばいいのか。
主君への忠誠と大切な人への思い、どちらも選べずに動けなくなってしまった体。唇を噛みしめ、拳を畳に突き刺したまま震わせていると。
『三成虐待反対』
そんな事が書かれた紙を目の前に突き出し、もう片方の手で半兵衛の膝をぽかぽかと叩いている佐吉の姿が目に入った。
「別にいじめてるんじゃなくて……そろそろ三成君も自分のことを理解して欲しいなって……」
『三成子供』
『大人庇護必要』
『涙不必要』
次から次へと書いては半兵衛に見せ、そして合間に半兵衛を叩き続ける。
その必死な様子と佐吉の主張に、半兵衛の口元がわずかに緩んだ。作られた笑顔ではなく、自然な笑顔へとなっていき、同時に生み出されたため息。
そこにあったのはあきらめと、小さな満足感だった。
「佐吉君は本当に三成君に甘いよね……確かにまだそういう面では子供だけど」
『子供溺愛希望』
「うん、確かにいなくなったら寂しいのはあるんだけど……僕としては三成君をあげることで徳川が豊臣と縁戚関係になって逆らえなくなるのも希望してたんだけどなあ」
「………そんなこと考えてたんですか………?」
やっぱりこの人は敵に回したくない。
佐吉に膝を叩かれながら、負の感情をわずかも見せなかった半兵衛の器の大きさに感服しながら、三成は体を動かすことにした。
半兵衛の言葉が作り上げた言葉での呪縛は、佐吉のおかげで消え失せてしまっている。
豊臣を取るか、それとも家康と共に行くか。未熟な今の三成ではそれを決めることはできないし、まだこの大阪城という己の家でやりたいことや、やり残したことがたくさんあるのだ。
だが今は家康の所へ行きたい。
「佐吉、行くぞ!」
『了解』
「半兵衛様、いってきます!」
「……色々言いたいことがあるんだけどとりあえずは……気をつけてね」
微妙な物言いの半兵衛の声を背に受け、佐吉の服の襟をひっつかんで三成はそのまま走り出した。人にぶつかりそうになっても、柱に実際にぶつかってしまっても気にしない。
速く走れば、それだけ早く家康の元へたどり着く。
『熱烈応援』
首根っこをひっつかまれたままだというのに応援してくれる佐吉と共に、三成は家康と秀吉がいるはずの場所へと走り続けた。
秀吉と家康が鍛錬できるような場所は大阪城にはいくつもあるが、きっとここにいるだろうと予想した場所に彼らはいた。
ただし、予想外のおまけがたくさんついた状態だったが。
「三成! ちょうどお前を呼びに行こうとしていたところだ!」
「……………これは………………」
竹千代が縛られていた木の下。
そこに仲良く並んで座っている秀吉と家康の姿、そして秀吉の頭の上にはこじゅの姿。
二人が仲良く並んで談笑している姿は久々に見たのだが、それ以上に三成を驚かせたのは、周囲一体に降る鮮やかな色合いの乱舞だった。
赤。
白。
青。
様々な色合いの欠片が宙から突然生まれ、そして大地へと降り注いでいく。
「…………花……か………」
「三成、手間になるが半兵衛を呼んできてくれ。このような見事な光景だ、半兵衛にも見せてやらなくてはならぬ」
「はい、秀吉様……ですがこれは……」
「このこじゅとやらが出しているらしい」
ひらひらと舞い落ちてくる花びらを手で受け止め、秀吉は笑っていた。
その横で少しだけ困ったように、だがそれ以上の嬉しさで笑む家康の姿を見ると。二人の間で何らかの和解があったのだろう。
秀吉の頭の上で大喜びしているこじゅが何よりの証拠。
二人とも妙な所で不器用な上に男の矜持を何よりも大切にする性格なので、三成に事の次第を教えてくれることはないだろう。だが交わし合う目線が三成に教えてくれる、二人の間でなんらかの決着がついたのだと。
「め~!」
『花見開催希望』
「そうだな……秀吉様、刑部と……一応官兵衛も呼んで花見をしても構わないでしょうか?」
「花のない季節の花見か……面白い趣向だ。家康、今日は我の酒にとことん付き合ってもらうぞ」
「儂は三成と飲みたいのだがな」
「今日だけは許さぬ」
「わかっておるさ」
昨日よりも顔や体にできた傷や痣は増えているが、花の雨の隙間から見える家康の顔も晴れやかだった。三成を見る目の優しさと、秀吉を見るときの尊敬と。木に体を預け、並んで座っている姿は兄弟か親子のように三成には見えた。
「めーめー」
「こじゅも楽しそうだな」
『花見即開催』
「そうだな、行くか」
肩を並べ、笑顔を交わし合う二人に向けて笑いかけ、三成は来た道を戻り始めた。今度はゆっくりと、そしてどんな花見にしようか考えながら。
数日後、北条家に頼んで最速最強の忍びを貸してもらい、こじゅを奥州に戻すことにした。
お土産にこじゅがとても気に入った金柑を山のように持たせ、ついでに道中で頭の葉っぱがしおれないように水も用意して。忍びの背負う背負子にくくりつけられ、金柑の入った籠と水の入った水筒を持つこじゅは、少しだけ寂しげであった。
「めぇ~」
『再会希望』
「めぇめぇ~」
三成の腕に抱かれ、背負われたこじゅとの別れを惜しむ佐吉の目はうっすらと濡れ光っており。こじゅの方もそんな佐吉に手を伸ばし、じたばたしながらなんとか慰めてやろうとしていたが。
いかんせん、二人とも手足が短すぎた。
背にくくりつけられたままじたばたするこじゅと、三成の腕の中で手を伸ばす佐吉というおかしな図式がしばらく展開された後。
「………………………………」
唐突に忍びが動き出し、天守閣の窓から音もなく去っていってしまった。
「めぇ~っ!」
きっと別れをまだ惜しんでいたかったであろうこじゅの悲鳴のような声を残して。
「いっちゃったね……あの頭の葉っぱ、食べてみたかったな……」
「お腹を壊します」
「頭のあれが無くなったら、死んでしまうかもしれん。また遭いたくなったら、奥州に文をやってこちらによこしてもらうか、儂らが会いに行けばいい。その時は竹千代も一緒にな」
「そうだな……だがあの悪戯ちび狸……本当にどこへ行った?」
腕の中では途端にむっとした顔になる佐吉。
空の彼方に遠ざかっていくこじゅを見送りながら、三成は天守閣の窓から顔を出す。あの早さから考えると、数日も経たずにこじゅは奥州に帰れるのではないだろうか。
最初は目が死んでいるおかしな生き物が来たと思ったが、佐吉も数日で兄を慕う弟のように懐いていたし、これほど手のかからないちびがいたことが三成には驚きだった。朝起こさなくてもいい、風呂に入るときも自分で体を洗える、おまけに尻尾がないから時間をかけて手入れをする必要がない。
竹千代がいなかったので手入れの時間が半分になっているが、帰って来ればまた大変な日々が始まるのだろう。
最初のうちはそんな竹千代を心配していた佐吉だったが、いなくなってから発覚した悪行の数々を知って、すっかり機嫌が悪くなってしまった。竹千代本人に悪戯をしている気は全くないのだろうが、好奇心のままに動く彼はあちこちで大きな被害を産んでいたのだ。
帰ってきたら竹千代を説教してやろうと最初は思っていた三成たちだったが。それよりも先に佐吉が天誅を食らわすはずなので、やめておくことにした。
ちびにはちびの決まり事があるのだろう。
『迷惑狸斬滅』と一日に何度も書いてはため息をつく佐吉の姿を見ていると、彼らは彼らなりに大変なのだ、きっと。
「さて、と。僕は秀吉とお仕事してくるけど、家康君と三成君はどうするの? しばらく大変だっただろうから、今日は三成君にお休みをあげる」
「いいのですか?」
「こじゅ君もいなくなったし、少し家康君とゆっくりしたら? 佐吉君は僕が預かるから」
その半兵衛の言葉を待ちわびていたかのように、佐吉が三成の腕から飛び降りて半兵衛の側へと移動する。そのまま手を振って部屋から出て行こうとする半兵衛だったが、何かを思い出したかのように、くるっと振り返って一言だけ残していった。
「あ、僕の部屋でいかがわしいことは禁止ね。それ以外は何してもいいから」
そのまま佐吉をお供に従え、すたすたと歩み去っていった半兵衛。
「………いかがわしいことと言われても、昼間からそんなことをするのはな……」
「………………………………」
「とりあえず三成、遠駆けでも行かぬか?」
「……それでいい」
「そうか、では馬の用意をしに行かなくてはな」
部屋に残ったのは家康と三成だけ。
並んで窓の外を見てはいるが、体を寄せているわけでもなく。微妙な距離感と微妙な会話が続く中、ふとこちらを見ている家康と目があった。
いつもと変わらぬ、暖かくも優しい眼差し。
ここ数日は色々とすれ違ったり、ちびたちの世話に忙殺されたりで二人の時間を持つことができなかったが。
「久しぶりに二人になれたな……」
「そうだな」
「儂は焦らぬ事にした」
「?」
唐突にそんなことを話し出した家康は、自然な動きで三成の手を己の手で掴んだ。大切な物は自分の手で掴む、だが性急に手に入れはしない。
それを体現するかのような、ゆったりとした手の動き。
「秀吉に言われたのだ。三成が欲しいのならもっと一人の人間として力をつけろ、そうでなければやれぬとな」
「秀吉様がそんな事を?」
「天下一大きな男でなければ三成をやれぬそうだ。だから儂は大きな男を目指すことにした。秀吉ですら感服するほどの大きな男になり、そして三成を儂の嫁にする!」
「嫁になるとは言っていない!」
戻ってきたいつものやりとり、そしていつもの日常。
家康の手のぬくもりを心地よく感じながら、三成は外に向けてもう片方の手を伸ばした。
「この様子なら、雨も降らないだろう。遠駆けにはちょうどいい天気かもしれな……」
ぽすっ。
軽い音を立てて、冷たいかぇを感じていた三成の手に落ちてきた物。
それを見た瞬間三成は喜びとも驚きとも呆れともつかない表情を浮かべ、家康はあっけにとられた後、嬉しそうに三成の手の中にいる者へと声をかけた。
「帰ってきたか、竹千代! それにしても随分な長旅だったな」
「きゅきゅ~! きゅきゅきゅ!」
「どこで何をしてきたら、そんな姿になるのだ……」
全身埃まみれで、頭には蜘蛛の巣やら葉っぱやらが飾りのように張り付いており。
おまけによほどひどい目にあったのか、ぷるぷると震えながら三成の胸元に飛び込んでくる始末。
「きゅ~きゅ~」
「そんな汚い格好でしがみついてくるな! 風呂に行くぞ!」
「きゅ~」
「三成……遠駆けは……?」
「竹千代を洗ってからだ!」
こんな汚いちびを、このまま城の中を歩かせるわけにはいかない。
自分の着物が汚れぬように指で竹千代の薄汚れた着物をつまみ、自分の体から離すと三成はすたすたと風呂場に向かって歩き始めた。
家康は当然ついてくる、だから後ろは向かない。
少しだけ先に伸びてしまった遠駆けのことを思いながら、口の端に笑みを浮かべ。三成はようやく戻ってきた忙しい日常を、喜びを持って受け入れたのだった。
________________________________________
竹千代がどんな目にあったかは、みっしさんが書いてくれますw
ということで、こじゅ大阪城訪問編は終了です~
ということで、設定は全て消化したので。みっしさん続きを頑張って下さいw ちゃんと花も咲かせたぞ!
「こじゅがでる」 「はながさく」 「家三」 これしか考えてなかったのに、よく無事に話が終わったなあ……
「は、半兵衛様…………まさか………」
「違うってば。こじゅ君は、葉っぱがしおれてきたから日向ぼっこしたいって」
「日を当てれば元に戻るのですか?」
「そうみたい、便利だよね」
半兵衛に招かれ、天守閣にある彼の私室で朝食のお相伴にあずかる。
佐吉が器用に小さな箸を使って食事を始めるのを確認してから食べ始めた三成だったが、にこにこしながら食事を続けている半兵衛の態度がおかしいというか。
この裏表のなさそうに見える笑顔は、何かを隠している時のもの。
遠回しに聞いても答えてくれないだろうから、何気なく食事を続けている風を装いながら半兵衛にはっきりと問うてみた。
「半兵衛様、何を隠しているのですか?」
「何も隠してないよ。聞かれないから答えないだけ」
『半兵衛黙秘』
「隠す気はないよ。家康君と秀吉が朝食前の『軽い』鍛錬の最中だなんてね」
「……………………………っ!」
「止めに行こうなんて思わないことだね。家康君は真剣だよ?」
「ですが……!」
箸を置いて立ち上がろうとすると、半兵衛の声に押しとどめられる。
昨日も散々やられたというのに、何故今日も同じ事をするのだろうか。うまく秀吉から逃げてしまえばいいのに。
横でおろおろする佐吉すら目に入らず、膝で潰しそうになったりしている間も半兵衛の言葉は続いていた。
「家康君にとって、君はそれだけの価値を持つ宝物だって事だよ、そして秀吉にとっても……ね。君は君を大切に思ってくれる人たちの思いをちゃんと受け止めなきゃいけないし、自分の気持ちもちゃんと伝えないと」
「半兵衛様……」
「君が秀吉や家康君のことが大好きなのは知ってる。でも、いつかは選ばなきゃいけない日が来るんだよ……豊臣に残るか、それとも家康君と共に行くか」
「私は秀吉様の……豊臣の兵です!」
「家康君の所に行くっていうことは、豊臣から離れるって事だよ?」
『三成離反』
「……そこまで重大な話でもないけど……君にとって家康君は豊臣を離れてもいいほど大事な存在なのかな?」
答えを出さなければ、家康の元へは行かせない。
柔和な笑顔のまま、半兵衛の眼光だけが鋭くなる。
彼はこの笑顔のまま、幾人もの秀吉の敵を今まで切り伏せてきていたのだ。大切な存在の敵を屠ることができる喜びで顔を輝かせ、自ら血にまみれ。
そうして豊臣の天下を作り上げた。
今の三成には家康を救うために秀吉の前に立つ覚悟も、自分を手にいれるために戦う家康を止める力もない。どちらにもつくことができず、ただ見ているだけの三成に半兵衛は告げているのだ。
どちらにつくか決めろ、と。
「………………………………」
このまま半兵衛と共にいればいいのか、それとも家康の所へ行けばいいのか。
主君への忠誠と大切な人への思い、どちらも選べずに動けなくなってしまった体。唇を噛みしめ、拳を畳に突き刺したまま震わせていると。
『三成虐待反対』
そんな事が書かれた紙を目の前に突き出し、もう片方の手で半兵衛の膝をぽかぽかと叩いている佐吉の姿が目に入った。
「別にいじめてるんじゃなくて……そろそろ三成君も自分のことを理解して欲しいなって……」
『三成子供』
『大人庇護必要』
『涙不必要』
次から次へと書いては半兵衛に見せ、そして合間に半兵衛を叩き続ける。
その必死な様子と佐吉の主張に、半兵衛の口元がわずかに緩んだ。作られた笑顔ではなく、自然な笑顔へとなっていき、同時に生み出されたため息。
そこにあったのはあきらめと、小さな満足感だった。
「佐吉君は本当に三成君に甘いよね……確かにまだそういう面では子供だけど」
『子供溺愛希望』
「うん、確かにいなくなったら寂しいのはあるんだけど……僕としては三成君をあげることで徳川が豊臣と縁戚関係になって逆らえなくなるのも希望してたんだけどなあ」
「………そんなこと考えてたんですか………?」
やっぱりこの人は敵に回したくない。
佐吉に膝を叩かれながら、負の感情をわずかも見せなかった半兵衛の器の大きさに感服しながら、三成は体を動かすことにした。
半兵衛の言葉が作り上げた言葉での呪縛は、佐吉のおかげで消え失せてしまっている。
豊臣を取るか、それとも家康と共に行くか。未熟な今の三成ではそれを決めることはできないし、まだこの大阪城という己の家でやりたいことや、やり残したことがたくさんあるのだ。
だが今は家康の所へ行きたい。
「佐吉、行くぞ!」
『了解』
「半兵衛様、いってきます!」
「……色々言いたいことがあるんだけどとりあえずは……気をつけてね」
微妙な物言いの半兵衛の声を背に受け、佐吉の服の襟をひっつかんで三成はそのまま走り出した。人にぶつかりそうになっても、柱に実際にぶつかってしまっても気にしない。
速く走れば、それだけ早く家康の元へたどり着く。
『熱烈応援』
首根っこをひっつかまれたままだというのに応援してくれる佐吉と共に、三成は家康と秀吉がいるはずの場所へと走り続けた。
秀吉と家康が鍛錬できるような場所は大阪城にはいくつもあるが、きっとここにいるだろうと予想した場所に彼らはいた。
ただし、予想外のおまけがたくさんついた状態だったが。
「三成! ちょうどお前を呼びに行こうとしていたところだ!」
「……………これは………………」
竹千代が縛られていた木の下。
そこに仲良く並んで座っている秀吉と家康の姿、そして秀吉の頭の上にはこじゅの姿。
二人が仲良く並んで談笑している姿は久々に見たのだが、それ以上に三成を驚かせたのは、周囲一体に降る鮮やかな色合いの乱舞だった。
赤。
白。
青。
様々な色合いの欠片が宙から突然生まれ、そして大地へと降り注いでいく。
「…………花……か………」
「三成、手間になるが半兵衛を呼んできてくれ。このような見事な光景だ、半兵衛にも見せてやらなくてはならぬ」
「はい、秀吉様……ですがこれは……」
「このこじゅとやらが出しているらしい」
ひらひらと舞い落ちてくる花びらを手で受け止め、秀吉は笑っていた。
その横で少しだけ困ったように、だがそれ以上の嬉しさで笑む家康の姿を見ると。二人の間で何らかの和解があったのだろう。
秀吉の頭の上で大喜びしているこじゅが何よりの証拠。
二人とも妙な所で不器用な上に男の矜持を何よりも大切にする性格なので、三成に事の次第を教えてくれることはないだろう。だが交わし合う目線が三成に教えてくれる、二人の間でなんらかの決着がついたのだと。
「め~!」
『花見開催希望』
「そうだな……秀吉様、刑部と……一応官兵衛も呼んで花見をしても構わないでしょうか?」
「花のない季節の花見か……面白い趣向だ。家康、今日は我の酒にとことん付き合ってもらうぞ」
「儂は三成と飲みたいのだがな」
「今日だけは許さぬ」
「わかっておるさ」
昨日よりも顔や体にできた傷や痣は増えているが、花の雨の隙間から見える家康の顔も晴れやかだった。三成を見る目の優しさと、秀吉を見るときの尊敬と。木に体を預け、並んで座っている姿は兄弟か親子のように三成には見えた。
「めーめー」
「こじゅも楽しそうだな」
『花見即開催』
「そうだな、行くか」
肩を並べ、笑顔を交わし合う二人に向けて笑いかけ、三成は来た道を戻り始めた。今度はゆっくりと、そしてどんな花見にしようか考えながら。
数日後、北条家に頼んで最速最強の忍びを貸してもらい、こじゅを奥州に戻すことにした。
お土産にこじゅがとても気に入った金柑を山のように持たせ、ついでに道中で頭の葉っぱがしおれないように水も用意して。忍びの背負う背負子にくくりつけられ、金柑の入った籠と水の入った水筒を持つこじゅは、少しだけ寂しげであった。
「めぇ~」
『再会希望』
「めぇめぇ~」
三成の腕に抱かれ、背負われたこじゅとの別れを惜しむ佐吉の目はうっすらと濡れ光っており。こじゅの方もそんな佐吉に手を伸ばし、じたばたしながらなんとか慰めてやろうとしていたが。
いかんせん、二人とも手足が短すぎた。
背にくくりつけられたままじたばたするこじゅと、三成の腕の中で手を伸ばす佐吉というおかしな図式がしばらく展開された後。
「………………………………」
唐突に忍びが動き出し、天守閣の窓から音もなく去っていってしまった。
「めぇ~っ!」
きっと別れをまだ惜しんでいたかったであろうこじゅの悲鳴のような声を残して。
「いっちゃったね……あの頭の葉っぱ、食べてみたかったな……」
「お腹を壊します」
「頭のあれが無くなったら、死んでしまうかもしれん。また遭いたくなったら、奥州に文をやってこちらによこしてもらうか、儂らが会いに行けばいい。その時は竹千代も一緒にな」
「そうだな……だがあの悪戯ちび狸……本当にどこへ行った?」
腕の中では途端にむっとした顔になる佐吉。
空の彼方に遠ざかっていくこじゅを見送りながら、三成は天守閣の窓から顔を出す。あの早さから考えると、数日も経たずにこじゅは奥州に帰れるのではないだろうか。
最初は目が死んでいるおかしな生き物が来たと思ったが、佐吉も数日で兄を慕う弟のように懐いていたし、これほど手のかからないちびがいたことが三成には驚きだった。朝起こさなくてもいい、風呂に入るときも自分で体を洗える、おまけに尻尾がないから時間をかけて手入れをする必要がない。
竹千代がいなかったので手入れの時間が半分になっているが、帰って来ればまた大変な日々が始まるのだろう。
最初のうちはそんな竹千代を心配していた佐吉だったが、いなくなってから発覚した悪行の数々を知って、すっかり機嫌が悪くなってしまった。竹千代本人に悪戯をしている気は全くないのだろうが、好奇心のままに動く彼はあちこちで大きな被害を産んでいたのだ。
帰ってきたら竹千代を説教してやろうと最初は思っていた三成たちだったが。それよりも先に佐吉が天誅を食らわすはずなので、やめておくことにした。
ちびにはちびの決まり事があるのだろう。
『迷惑狸斬滅』と一日に何度も書いてはため息をつく佐吉の姿を見ていると、彼らは彼らなりに大変なのだ、きっと。
「さて、と。僕は秀吉とお仕事してくるけど、家康君と三成君はどうするの? しばらく大変だっただろうから、今日は三成君にお休みをあげる」
「いいのですか?」
「こじゅ君もいなくなったし、少し家康君とゆっくりしたら? 佐吉君は僕が預かるから」
その半兵衛の言葉を待ちわびていたかのように、佐吉が三成の腕から飛び降りて半兵衛の側へと移動する。そのまま手を振って部屋から出て行こうとする半兵衛だったが、何かを思い出したかのように、くるっと振り返って一言だけ残していった。
「あ、僕の部屋でいかがわしいことは禁止ね。それ以外は何してもいいから」
そのまま佐吉をお供に従え、すたすたと歩み去っていった半兵衛。
「………いかがわしいことと言われても、昼間からそんなことをするのはな……」
「………………………………」
「とりあえず三成、遠駆けでも行かぬか?」
「……それでいい」
「そうか、では馬の用意をしに行かなくてはな」
部屋に残ったのは家康と三成だけ。
並んで窓の外を見てはいるが、体を寄せているわけでもなく。微妙な距離感と微妙な会話が続く中、ふとこちらを見ている家康と目があった。
いつもと変わらぬ、暖かくも優しい眼差し。
ここ数日は色々とすれ違ったり、ちびたちの世話に忙殺されたりで二人の時間を持つことができなかったが。
「久しぶりに二人になれたな……」
「そうだな」
「儂は焦らぬ事にした」
「?」
唐突にそんなことを話し出した家康は、自然な動きで三成の手を己の手で掴んだ。大切な物は自分の手で掴む、だが性急に手に入れはしない。
それを体現するかのような、ゆったりとした手の動き。
「秀吉に言われたのだ。三成が欲しいのならもっと一人の人間として力をつけろ、そうでなければやれぬとな」
「秀吉様がそんな事を?」
「天下一大きな男でなければ三成をやれぬそうだ。だから儂は大きな男を目指すことにした。秀吉ですら感服するほどの大きな男になり、そして三成を儂の嫁にする!」
「嫁になるとは言っていない!」
戻ってきたいつものやりとり、そしていつもの日常。
家康の手のぬくもりを心地よく感じながら、三成は外に向けてもう片方の手を伸ばした。
「この様子なら、雨も降らないだろう。遠駆けにはちょうどいい天気かもしれな……」
ぽすっ。
軽い音を立てて、冷たいかぇを感じていた三成の手に落ちてきた物。
それを見た瞬間三成は喜びとも驚きとも呆れともつかない表情を浮かべ、家康はあっけにとられた後、嬉しそうに三成の手の中にいる者へと声をかけた。
「帰ってきたか、竹千代! それにしても随分な長旅だったな」
「きゅきゅ~! きゅきゅきゅ!」
「どこで何をしてきたら、そんな姿になるのだ……」
全身埃まみれで、頭には蜘蛛の巣やら葉っぱやらが飾りのように張り付いており。
おまけによほどひどい目にあったのか、ぷるぷると震えながら三成の胸元に飛び込んでくる始末。
「きゅ~きゅ~」
「そんな汚い格好でしがみついてくるな! 風呂に行くぞ!」
「きゅ~」
「三成……遠駆けは……?」
「竹千代を洗ってからだ!」
こんな汚いちびを、このまま城の中を歩かせるわけにはいかない。
自分の着物が汚れぬように指で竹千代の薄汚れた着物をつまみ、自分の体から離すと三成はすたすたと風呂場に向かって歩き始めた。
家康は当然ついてくる、だから後ろは向かない。
少しだけ先に伸びてしまった遠駆けのことを思いながら、口の端に笑みを浮かべ。三成はようやく戻ってきた忙しい日常を、喜びを持って受け入れたのだった。
________________________________________
竹千代がどんな目にあったかは、みっしさんが書いてくれますw
ということで、こじゅ大阪城訪問編は終了です~
ということで、設定は全て消化したので。みっしさん続きを頑張って下さいw ちゃんと花も咲かせたぞ!
「こじゅがでる」 「はながさく」 「家三」 これしか考えてなかったのに、よく無事に話が終わったなあ……
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
@3missiy3をフォロー
うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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