がんかたうるふ 月孤譚4章その5 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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次で4章終了、間章を挟んで次は孫一さん夫婦(妻の方が偉い)の登場です。



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 この男の毒に染まった言葉と手に三成が汚されるくらいなら。
 殴り倒してでも止めようと決意し、松永の部屋を訪れた家康を待っていたのは、柔和な笑顔を浮かべる松永の誘いの言葉だった。怒りを押さえ込み、誘われるがままに伊達家の縁側へと場所を移動した。
 最初に来た時には庭石は割れ、砂利は乱れ、とんでもないことになっていた庭だったが時間をかけてようやく修復されたらしい。灯籠にはまだ三成と政宗がつけた刀傷が残っているが、一国の君主の庭としてふさわしい形を取り戻しつつあった。
 まだ夕の光は庭を照らしていないが、そろそろ日が沈み始める刻限。
「月に杯……とはいかないが、日の光を受けた酒というのもなかなかに風流だ」
「昼間から酒を飲むお前の気持ちがわからん」
「凶王殿と酒を酌み交わしたことはないのかな? 酒が入れば、あの肌は綺麗に染まるのだろう……一度見てみたいものだが」
 苦々しげな顔で小十郎が用意してくれた盆の上には、軽く湯気を立てた数本の飴色の徳利とつまみ代わりに用意してくれた色鮮やかな茄子の浅漬け。乳白色の皿の上で滴を塗れ光らせる茄子の色合いと、朱塗りの盆の取り合わせは用意してくれた人の気遣いを感じさせるに十分なものであったが。
 その用意した本人がわずかに離れた場所で松永を睨み続けているのは、あまり風流ではなかった。
「竜の右目はこのような無粋なことをする男だったかな? 卿もこちらで酒を楽しもうではないか」
 と松永が声をかけても、自分の役割はここで二人を見ていることだと言って聞かず。むしろ松永に声をかけられる度に身をすくめているようにすら感じさせる。
 さすがに気になった家康が、
「昔何かあったのか?」
 と声をかけると、小十郎の顔色が一気にひきつった。何かを思い出したのか、顔を赤らめたり急に首を振って青ざめてみたりと、一人で忙しそうにしているところをみると、 昔松永に散々な目に遭わされたのだろう。
 それでも自分のことを心配してこの場にいてくれる小十郎に心の中で感謝の言葉をかけつつ、家康は改めて盆を挟んで横に座る松永に目をやった。
「話を始めてもいいか?」
「構わぬよ」
「はっきりと言う、三成には今後近づくな」
「それは凶王殿が決めることだ、私や卿が決めることではあるまい」
「駄目だ! お前は三成を傷つける!」
「先に凶王殿を傷つけたのは卿であろう? 豊臣狩りの件、私や伊達家の者が知らぬとでも思っているのか? 凶王殿を伊達という鳥かごに押し込め、その間に全てを奪い……何食わぬ顔で救いの手を差し伸べる気だったか」
「違う」
「凶王殿にとってはありがた迷惑だろうに……」
 松永の酒を含む口から、笑いがこぼれる。
 そこに含まれる自分を嘲弄したような響きに、一度は収まり書けた怒りがふつふつと湧き上がりかけるのを感じ、それを抑え込むために自分も一気に酒を呷る。幼い頃は美味いと思えなかったそれを、味わいながら飲めるようになったのはいつのことだったろうか。
 喉を灼きながら胃の腑にじんわりと熱をもたらす感触に集中し、松永への怒りをそらそうとするが、彼の追撃は緩むことがなかった。
「素直に私に委ねてはどうかね、凶王殿の身柄を」
「儂が認めて三成を渡したとしよう。その時、お前は三成をどうする気だ?」
「閨に鎖で繋いで飼っておくのも悪くないだろうな……いや、あの肌に映えるように赤い飾り紐でも用意させようか。色欲に染まった目で私だけを見るように躾け、私なしでは生きられないようにするのも一興だろう」
「そんなことを考えていたのか」
「卿だって同じであろう? 凶王殿に己だけを見て欲しい、どんな手を使っても手に入れたい……」
「三成は儂の友だ。昔のように共に過ごしたい、それを望んで何が悪い!」
「己の心にすら嘘をつく偽善者だな、卿は。本当は凶王殿が欲しいのだろう? あの澄んだ心と体を己の下に組み敷き、思うがままに汚してやりたい」

 それが卿の本心だ。

 全てを見透かし、貫き通す目が家康を射貫いた。
 猪口を握る手に必要以上に力が入り、首筋が異常に涼しく感じられる。片手を首筋にやると、じっとりとそこが濡れていることに今更ながらに気がつかされた。
 寒い、そして痛い。
 三成は友、それは自分にずっと言い聞かせてきた言葉だった。彼が政宗との会話中に時折見せる兄を慕う弟のような照れた表情、幸村を邪険に扱っているように見えても彼のことを受け入れ気遣う兄の顔。
 そして松永相手に見せた、色に染まった艶やかな姿。
 彼と袂を分かったってしまった家康には手に入れられないもの。手に入れたいと願っても、どれだけ慟哭しても、三成はもう昔のようには自分を受け入れてくれない。
 ただ側にいたかっただけなのに。
 ずっと彼の側にいて、彼だけを見つめて……
「儂はお前のように三成を汚したいとは思ってない」
「体を蹂躙することは汚すことなのかな? 肌を触れあわせ、肉を交わらせることを汚らわしいというのなら、この世の中に赤子は生まれてこないだろう」
「男同士だろう?」
「私は卿のような偽善者ではない。相手が男であろうと欲しいものは欲しいと言い、手に入れるために力を尽くすだけだ。それの何が悪い?」
 剥ぎ取られていく、松永が偽善者と呼ぶ家康の心の一部が。
 三成の側にいるのが好きだった、彼が嫌がろうとも構わずに肩を抱き、後ろから抱きしめ。その肌の感触に酔い、ぬくもりを感じられることに日々感謝していた。脆さと強さを内包し、潔癖なのに妙な所で寛容で。
 だが家康にだけは特別な姿を見せてくれる彼が、本当に愛おしかったのだ。

 そう、彼の事を自分だけの物にしたいと思うほどには。

 男同士で愛をはぐくみなど自分だけは有り得ない、そう固く信じていたはずなのに。この三成への思いが愛情だというのなら、自分が秀吉を討ったのは松永が言うとおり三成から全てを奪うためなのか。そうすれば彼が手に入ると思ったのか、あの時の自分は。
 秀吉様。
 あの時、叫びながら主君の屍を抱き上げる三成を見ながら、優越感を感じてはいなかったか? 秀吉はもういない、あとは自分の内に来るだけだと、ほんのわずかでも思いはしなかったか?
「三成…………儂は…………」
 噛んだ唇から漏れるのはその名だけ。
 自分の姿を酒の肴として楽しんでいる松永の目も、もう気にならなかった。なんのことはない、自分が大儀だと思っていた物は嘘偽りで塗り固められた濁った欲望だった、そういうことだ。
「さてどうするかね権現殿……素直に凶王殿を渡していただければ、私も凶王殿もありがたいのだが」
「…………三成、が?」
「ああ、己から全てを奪う男の側になど、凶王殿もいたくはないだろう?」
 もう何も考えたくない。
 松永の言うとおり、三成は自分の側にいない方が幸せなのかもしれない。そうしなければ、更に三成から様々な物を奪ってしまうかもしれない。

 三成に接触を図ろうとした豊臣の残党を皆殺しにした。

 再度三成を担ぎ上げて自分に戦いを挑もうとした大名も殺した。

 これ以上何を殺し、何を奪うのだ……彼から。
「さあ、権現殿……」
 ついっと、松永の手が顎に伸びてくる。
 獣の子をあやすかのように顎を軽く、くすぐると。自分の望みの言葉を引き出そうとしているのか、ゆっくりと口元へと指を移動させ、耳へと近づきつつある口でそっと囁きかけてきた。
「ただ一言言えばいいだけだ……私に凶王殿を譲る、と」
「儂…………は…………」
「彼をこれ以上不幸にする気かね?」
 その言葉がとどめだった。
 少し離れた場所で真剣な顔で状況を見続けている小十郎のことも、もう気にならない。素直に松永の言うとおりにし、解放されてしまいたい。
 そう、ただ一言を口にすればいいのだ。


「私の事を勝手に決めるな!」


 その声がしたのは、家康が最後の言葉を口にしようとした直前だった。
 日の光の影で冴え冴えと光り続ける月のように、その鋭さと輝きで人を惹きつける極上の刃のように。言葉の毒に侵されたその場の空気をたった一言で切り裂き、そして周囲の目を一度に集めた存在が小十郎の後ろにいた。
「三成?」
「私の射ない場で私の処遇を決めようとするな! 私はここで十分だ、貴様の首を取るまでここを動く気はない」
「あのな……来月には山の下に移動するぜ」
「………そ、そういうことは早く言え! とにかく私は伊達家に滞在すると決めた、貴様らが何を言おうと覆す気はない」
 体を支えてくれている政宗のまぜっかえしを、睨み付けることで制止する。そのまま政宗の手から離れると、三成は上手く動かすことの出来ない足を引きずりながら移動し。
 そのまま家康の前に立った。
「寝てたんじゃなかったのか?」
「貴様が呼んだんだろう?」
「呼んだ? 儂が?」
「聞こえたからな、貴様が情けない声で私を呼んだのが」
 だから来てやった。
 当たり前のようにそう言った三成の足は厚い布に覆われ。熱も上がり始めているのだろう、顔にも朱が昇り始めている。
 確かに三成のことは呼んだ、だが声に出して呼んでなどいないというのに。それでも自分の声を聞いたと言い、足の痛みを構わずまっすぐ自分の元へと来てくれた。
 その事実は、答えのない思考に陥りかけていた家康を瞬時に立ち直らせ、松永の顔を曇らせるには十分すぎるほど。
「三成、あのな」
「なんだ?」
「すまない、助かった」
「貴様を助けるために来たわけではない! 私は貴様に話があるのだ」
 幾分照れくさそうに、だが確固とした意志を持った目で三成は家康を見つめる。
 普段三成が家康を見る時、その目に込められるのは憎しみだけ。だが今日彼の目に込められていたのは、何かを決意し一歩でも前に進もうとする強い輝きだった。




「絆……か」
 二人に聞こえぬよう、小声でそう呟いた松永の顔はつまらない物を見たかのように全ての感情が褪せてしまっていた。







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このあたりはどこかの間章で書こうかと。
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拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
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ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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