こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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帰ってきました。
あとスパークでスペースに立ち寄ってくださった方、ありがとうございました。
あとスパークでスペースに立ち寄ってくださった方、ありがとうございました。
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領地の視察ついでの遠駆けから戻ると、小十郎が心底疲れ切った顔で紙の束と見つめ合っていた。奥州が稲穂の実りで黄金に染まる季節、竜の右目は毎年この時期になると一気に増える仕事にそれこそ過労死寸前になるのが常である。
勿論最終的な決定は政宗が行うのだが、政宗の手に仕事が回ってくるまでの間に、小十郎や他の人間たちの手によって、仕事の大部分は片付いていると言ってもいい。国の方向性を定めること、そして領民たちが安らいでくらせるように、無事な姿を見せ続けること。
正直、細かい仕事は得意ではない。
小十郎や優秀な臣下がいてくれるからこそ、奥州は政宗のような好戦的な君主でもやっていけているのだ。
「戻ったぜ」
「お帰りなさいませ、政宗様。畑の様子はいかがだったでしょうか?」
「綺麗なもんだ、大豊作ってところだろうな」
「先に刈り入れが始まったところも、おおむね豊作のようです」
「そりゃ良かった。今年は死人も少ないな」
どれだけ善政を行っても、奥州の寒さは民衆を殺していく。
食べ物があれば動くことが出来る、動くことが出来れば立ち止まって凍り付くことはない。幼い頃から小十郎に厳しくそれを教えられている政宗にとって、豊作は何よりもありがたいことだった。
米が大量にとれれば他国と取引をすることも出来る、それによって手に入った金で国を潤してやれる。民がこの冬を乗り切るために今年は何が出来るか、そして冬になると雪に埋もれてしまうこの屋敷から町中に移るための準備もそろそろ始めなければならないだろう。
それを考えながらわずかも姿勢を乱すことなく正座をしている小十郎の隣にどっかりと腰を下ろした。
「うちが豊作って事は他の国も出来はいいだろうな」
「羽州は嵐が来ております故、昨年よりは落ちるかと」
「あの狐も今頃大弱りか……小十郎、羽州に少し高めにふっかけてやるか」
「それがよろしいでしょう、昨日石田殿が諸国の石高の予測を計上してくださいました故、後で目をお通しになっていただけますでしょうか?」
「石田が?」
「見事な手腕です、感服いたしました。豊臣の軍師は、石田殿を己の後継としてしっかり教育していたようです」
君主として人の上に立つことではなく、君主を支える人としての教育。
彼の兵の動かし方は見事だと思ってはいたが、内政に関しても小十郎が褒めちぎるほどの能力を持っている。そして一介の武人としても、一度は政宗を打ち破ったほどの実力を持っているのだ。
竹中半兵衛は、どれだけ彼に期待をかけていたのだろう。
政宗や小十郎と会話をしながら食事を摂るくらいには、三成は伊達家に慣れてきている。だが豊臣軍の事を、彼はほとんど語ろうとしなかった。政宗の稽古につきあい、時には一緒に風呂に入ることもあるが。それでも彼は完全にこちらに心を開こうとしない。
無理に仲良くなる気はないが、政宗は時折思う。
全力で刃をぶつけ合い、時には笑い合うことも出来るのに、自分は彼を過去から解き放つことが出来ないのかと。それを出来るのはきっと家康一人なのはわかるのだが、せめて。
胸を焦がす痛みをぶつける相手として自分と小十郎を受けれて欲しい。
一度この環境を受け入れた後は一切わがままを言わず、家康が来る時をひたすら待ち続けている。そんな三成の潔さを見る度に、政宗は胸が締め付けられるような痛みを覚えるのだった。
そういえば、彼は今どこにいるのやら。
「石田はどこに行った?」
「いつもの場所でございましょう。そろそろ徳川殿が来訪するはずだと言っておりましたので」
「一人にして大丈夫なのか?」
「その件でございますが……嫌な噂を耳にいたしました」
口を動かしている間も止めなかった筆を持つ腕を止め、小十郎は眉をひそめた。
「噂?」
「徳川軍の豊臣の残党狩りが凄まじいことになっているようです。堺の商家に徳川軍が踏み込み、潜伏していた豊臣の残党を見殺しにした……と」
「………oh………やりやがったか……」
敗残の兵を駆り立てるのは勝者の仕事。
総大将である三成が、狩り立てられずに安穏と生活している現状がおかしいのはわかっている。しかし絆を信条とし、大がかりな残党狩りをしなかった家康が今になって何故。
小十郎に怒られるのを構わずあぐらをかき、耳横に手をやりながら思考を巡らせる。
「石田の周辺で豊臣の残党が動いている形跡はない……真田のヤツがおかしな動きをしてたが、その後contactを取ってくる様子もない……」
「石田殿にはあれから常時見張りをつけております。豊臣の残党が接触した気配はございません……伝説の忍びでも使われれば別ですが。それに今日は客人が参られますので、特に石田殿の警護には人を割いております」
「客人? ああ、ヤツか」
「一応、客人でございます。正式に文を送って参りましたし、こちらとしては断る理由がございませんので………石田殿は外に出ているということで、早々に追い出し……ではなく帰っていただくのが得策でしょう」
心底憎々しげにそういった小十郎が、筆をへし折る勢いで指に力を込める。
絶好の遠駆け日和だったというのに、何故こんなに嫌な気分にならなければならないのだろう。口に出すところか名前も思い出したくない『あの男』の姿が脳裏に浮かび、政宗は首を振ってそれを追い払おうとした。
またいつもの如く悠然と輝くような白毛の馬にまたがり、供も連れずに一騎でやってくるのだろう。
裏の山道を悠然と進み、そして。
「おい小十郎………確かヤツは……」
「はい、あの方でしたらそろそろ来訪するかと………っ!」
「まずいことになったな」
「はい。つけている者に早急に連絡いたします」
小十郎も同じような思考の道筋をたどり、同じ事に気がついたのだろう。
sit! と舌打ちしながら、政宗は取る物も取らずに急いで立ち上がった。
来訪するのは構わない、心底嫌ではあるが仕事だと思えば耐えられる。だが、あの男がここを訪れる道と三成が修練を行っているであろう場所がぴたりと重なっているのだ。表門から出たがらない三成は、裏門から出て近くの廃寺のあたりで剣を振るうのが習慣となっていた。
三成とあの男が遭遇して、三成が無事でいられるわけがない。
「小十郎、急ぐぞ!」
「何もなければよろしいのですが……石田殿はどう見ても………」
「好みのtypeってヤツだろうな」
「傷物にされていなければいいのですが………」
「アイツの強運を祈るしかないだろう!」
「政宗様は、あの方に運があるとお思いですか?」
「…………………………………」
運がないからこんな事になっているのだ、あの男は。
多少物理的に傷ついて帰ってくるならそれはそれでいいのだ。政宗と小十郎が一番恐れているのは、三成が精神的にずたずたに引き裂かれ、再起不能な状態に陥ること。
そして柔らかな言い方をすれば、三成の体が傷物にされないか。
戦国最凶の変態、松永久秀。
あの男に見初められ、毒牙にかかったが最後。表を歩くことができない体と心にされ、後戻りの出来ない闇に落とされる。おまけに三成のあの優秀さとそれと相反する無垢と言ってもいいほどの純粋さは、きっと久秀の目にとまるだろう。
おまけに今の彼は豊臣に逆らったことで領地を奪われ、表向きにはただの隠居人と鳴っているのだ。陰で暗躍して今でも様々な事を行っているのは知っているが、豊臣に対して恨み骨髄の松永が三成を逃がすわけがない。
だが文でやんわりと脅しをかけられており、合わせないわけにもいかず。
「家康のヤツが泣くことにならなきゃいいがな……」
「儂を呼んだか?」
「い、家康っ!?」
小十郎の執務室から出ようと足を速めた瞬間、目の前にいたのは今話題に上がっていた東照権現本人だった。忠勝に乗って、また朝早くに三河から出てきたのだろう。まばゆい笑顔をこちらに向けてはいるが、彼のよく動く目が探しているのはこの世で唯一の大切な人間だった。
まさか今ここにいない上に、ある意味とんでもない危機的状況になっているとは言えず。
「石田のヤツは……いつもの場所だと思うぜ。な、小十郎?」
「たまには徳川殿が迎えに行かれるのもよろしいのでは? きっと石田殿も待っておいででしょう」
こいつ、家康に全部丸投げする気だ。
わざとらしいほどの善人な笑顔の小十郎が、家康をせかすかのように詳しい場所を教え始める。それを聞きながら、政宗は三成が松永に遭遇していないことを心底祈りながら、家康の肩越しにトンボが少なくなりつつある空をちらりと見た。
「………………?」
「政宗様、どうかなさいましたか?」
「いや………」
澄んだ青い空の彼方、そこに何か黒い物がうごめいたような気がしたのだ。
大蛇のように空をうねった黒が三成を飲み込む顎のように見え、政宗は感じた身震いを押し殺しながら臣下に三成の保護を手配するために動き始めた。
伊達家の屋敷のそんな状況をつゆ知らず。
「……………………………失敗したな」
石田三成は思いっきり足に怪我をしていた。
いつもの場所だと油断してたのが悪かったのか、土に埋まっていたらしい鏃を踏み抜いてしまったのだ。幸い骨には届かなかったし、かなりの痛みを感じはするが歩けないほどではない。
泥にまみれ、さび付いた鏃であったので後で膿んで寝込む羽目になるだろうが。
傷口を洗って早めに伊達家の屋敷に戻れば、そこまで深刻なことにはならないだろう。血が染みこみ汚らしい色になっていく沓に顔をしかめながら、片足を引きずりながら移動する。
目指していた沢にたどり着くのにいつもの数倍時間がかかり、おまけに足の痛みはじんじんと骨にまで響く勢いで増してきている。流れのすぐ側にある岩に腰を下ろし、刀で脚絆と沓を切り裂くとぬらりとした赤にまみれた足が姿を現した。
鏃を抜いたため出血が多く、傷口が錆のためにどす黒く染まっている。傷口から全身を浸食する熱さと、背筋を這いまわり始めた寒気に歯を食いしばりながら耐え、三成は足を冷たい清水にようやく浸した。
安堵のため息を漏らしながら、足を洗うために手を伸ばそうとする。
と、
「おや、足をどうしたのかね? 凶王殿」
そんな声が上から降ってきた。
「何者だっ!」
「そんなに警戒することはない。今日は卿に会いに来たのだからね」
「………なんだと?」
怪我に気を取られていたとはいえ、声が近くに聞こえるまで接近に気がつかなかった。
その事実に驚愕しながら後ろを向くと、最初に目に映ったのは目を灼くような純白であった。しなやかな尾を振る優しい瞳を持つ馬、その背に跨がっていたのは過去何度か会ったことがある男。
「………松永……久秀……」
「覚えていてくれたとはありがたい。最後に会ったのはいつだったかな……あの頃の卿はまだ咲く事を知らぬ堅い蕾のようであったが………随分花弁がほころんできたようだ」
竹中半兵衛は稀代の軍師であった。
軍略だけでなく政治に関しても、他国に謀略を仕掛けることにかけても最高級の能力を持っていた。そんな彼がただ一人恐れたのではなく関わり合いたくないと口にしたのが、松永久秀の名前であった。
悪巧みをさせたら、右に出る存在がいない。
そう言いながら生前の半兵衛は彼を君主の座から追い落とした。あれから時間は過ぎたが、憎々しげに松永の名を呟く半兵衛の姿は未だに三成の心に残っているし、松永にいい印象を持ったことなど今まで一度もないのに。
「何故……ここに……」
「卿に会いに来たのだと先程も言っただろう?」
薄く唇を歪めて笑うこの男に、奇妙な親近感と懐かしさを感じてしまっているのは、何故なのだろう?
水に浸しているというのに燃え上げるように熱い足と、警戒しなければいけない相手に抱いてしまっている奇妙な親愛の情。それに挟まれながら逃げることも出来ず、三成は困ったように膝の上で拳を握ることしかできなかった。
______________________________________
声を小さく叫んでおく。
松永さん、好きだ~!
勿論最終的な決定は政宗が行うのだが、政宗の手に仕事が回ってくるまでの間に、小十郎や他の人間たちの手によって、仕事の大部分は片付いていると言ってもいい。国の方向性を定めること、そして領民たちが安らいでくらせるように、無事な姿を見せ続けること。
正直、細かい仕事は得意ではない。
小十郎や優秀な臣下がいてくれるからこそ、奥州は政宗のような好戦的な君主でもやっていけているのだ。
「戻ったぜ」
「お帰りなさいませ、政宗様。畑の様子はいかがだったでしょうか?」
「綺麗なもんだ、大豊作ってところだろうな」
「先に刈り入れが始まったところも、おおむね豊作のようです」
「そりゃ良かった。今年は死人も少ないな」
どれだけ善政を行っても、奥州の寒さは民衆を殺していく。
食べ物があれば動くことが出来る、動くことが出来れば立ち止まって凍り付くことはない。幼い頃から小十郎に厳しくそれを教えられている政宗にとって、豊作は何よりもありがたいことだった。
米が大量にとれれば他国と取引をすることも出来る、それによって手に入った金で国を潤してやれる。民がこの冬を乗り切るために今年は何が出来るか、そして冬になると雪に埋もれてしまうこの屋敷から町中に移るための準備もそろそろ始めなければならないだろう。
それを考えながらわずかも姿勢を乱すことなく正座をしている小十郎の隣にどっかりと腰を下ろした。
「うちが豊作って事は他の国も出来はいいだろうな」
「羽州は嵐が来ております故、昨年よりは落ちるかと」
「あの狐も今頃大弱りか……小十郎、羽州に少し高めにふっかけてやるか」
「それがよろしいでしょう、昨日石田殿が諸国の石高の予測を計上してくださいました故、後で目をお通しになっていただけますでしょうか?」
「石田が?」
「見事な手腕です、感服いたしました。豊臣の軍師は、石田殿を己の後継としてしっかり教育していたようです」
君主として人の上に立つことではなく、君主を支える人としての教育。
彼の兵の動かし方は見事だと思ってはいたが、内政に関しても小十郎が褒めちぎるほどの能力を持っている。そして一介の武人としても、一度は政宗を打ち破ったほどの実力を持っているのだ。
竹中半兵衛は、どれだけ彼に期待をかけていたのだろう。
政宗や小十郎と会話をしながら食事を摂るくらいには、三成は伊達家に慣れてきている。だが豊臣軍の事を、彼はほとんど語ろうとしなかった。政宗の稽古につきあい、時には一緒に風呂に入ることもあるが。それでも彼は完全にこちらに心を開こうとしない。
無理に仲良くなる気はないが、政宗は時折思う。
全力で刃をぶつけ合い、時には笑い合うことも出来るのに、自分は彼を過去から解き放つことが出来ないのかと。それを出来るのはきっと家康一人なのはわかるのだが、せめて。
胸を焦がす痛みをぶつける相手として自分と小十郎を受けれて欲しい。
一度この環境を受け入れた後は一切わがままを言わず、家康が来る時をひたすら待ち続けている。そんな三成の潔さを見る度に、政宗は胸が締め付けられるような痛みを覚えるのだった。
そういえば、彼は今どこにいるのやら。
「石田はどこに行った?」
「いつもの場所でございましょう。そろそろ徳川殿が来訪するはずだと言っておりましたので」
「一人にして大丈夫なのか?」
「その件でございますが……嫌な噂を耳にいたしました」
口を動かしている間も止めなかった筆を持つ腕を止め、小十郎は眉をひそめた。
「噂?」
「徳川軍の豊臣の残党狩りが凄まじいことになっているようです。堺の商家に徳川軍が踏み込み、潜伏していた豊臣の残党を見殺しにした……と」
「………oh………やりやがったか……」
敗残の兵を駆り立てるのは勝者の仕事。
総大将である三成が、狩り立てられずに安穏と生活している現状がおかしいのはわかっている。しかし絆を信条とし、大がかりな残党狩りをしなかった家康が今になって何故。
小十郎に怒られるのを構わずあぐらをかき、耳横に手をやりながら思考を巡らせる。
「石田の周辺で豊臣の残党が動いている形跡はない……真田のヤツがおかしな動きをしてたが、その後contactを取ってくる様子もない……」
「石田殿にはあれから常時見張りをつけております。豊臣の残党が接触した気配はございません……伝説の忍びでも使われれば別ですが。それに今日は客人が参られますので、特に石田殿の警護には人を割いております」
「客人? ああ、ヤツか」
「一応、客人でございます。正式に文を送って参りましたし、こちらとしては断る理由がございませんので………石田殿は外に出ているということで、早々に追い出し……ではなく帰っていただくのが得策でしょう」
心底憎々しげにそういった小十郎が、筆をへし折る勢いで指に力を込める。
絶好の遠駆け日和だったというのに、何故こんなに嫌な気分にならなければならないのだろう。口に出すところか名前も思い出したくない『あの男』の姿が脳裏に浮かび、政宗は首を振ってそれを追い払おうとした。
またいつもの如く悠然と輝くような白毛の馬にまたがり、供も連れずに一騎でやってくるのだろう。
裏の山道を悠然と進み、そして。
「おい小十郎………確かヤツは……」
「はい、あの方でしたらそろそろ来訪するかと………っ!」
「まずいことになったな」
「はい。つけている者に早急に連絡いたします」
小十郎も同じような思考の道筋をたどり、同じ事に気がついたのだろう。
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来訪するのは構わない、心底嫌ではあるが仕事だと思えば耐えられる。だが、あの男がここを訪れる道と三成が修練を行っているであろう場所がぴたりと重なっているのだ。表門から出たがらない三成は、裏門から出て近くの廃寺のあたりで剣を振るうのが習慣となっていた。
三成とあの男が遭遇して、三成が無事でいられるわけがない。
「小十郎、急ぐぞ!」
「何もなければよろしいのですが……石田殿はどう見ても………」
「好みのtypeってヤツだろうな」
「傷物にされていなければいいのですが………」
「アイツの強運を祈るしかないだろう!」
「政宗様は、あの方に運があるとお思いですか?」
「…………………………………」
運がないからこんな事になっているのだ、あの男は。
多少物理的に傷ついて帰ってくるならそれはそれでいいのだ。政宗と小十郎が一番恐れているのは、三成が精神的にずたずたに引き裂かれ、再起不能な状態に陥ること。
そして柔らかな言い方をすれば、三成の体が傷物にされないか。
戦国最凶の変態、松永久秀。
あの男に見初められ、毒牙にかかったが最後。表を歩くことができない体と心にされ、後戻りの出来ない闇に落とされる。おまけに三成のあの優秀さとそれと相反する無垢と言ってもいいほどの純粋さは、きっと久秀の目にとまるだろう。
おまけに今の彼は豊臣に逆らったことで領地を奪われ、表向きにはただの隠居人と鳴っているのだ。陰で暗躍して今でも様々な事を行っているのは知っているが、豊臣に対して恨み骨髄の松永が三成を逃がすわけがない。
だが文でやんわりと脅しをかけられており、合わせないわけにもいかず。
「家康のヤツが泣くことにならなきゃいいがな……」
「儂を呼んだか?」
「い、家康っ!?」
小十郎の執務室から出ようと足を速めた瞬間、目の前にいたのは今話題に上がっていた東照権現本人だった。忠勝に乗って、また朝早くに三河から出てきたのだろう。まばゆい笑顔をこちらに向けてはいるが、彼のよく動く目が探しているのはこの世で唯一の大切な人間だった。
まさか今ここにいない上に、ある意味とんでもない危機的状況になっているとは言えず。
「石田のヤツは……いつもの場所だと思うぜ。な、小十郎?」
「たまには徳川殿が迎えに行かれるのもよろしいのでは? きっと石田殿も待っておいででしょう」
こいつ、家康に全部丸投げする気だ。
わざとらしいほどの善人な笑顔の小十郎が、家康をせかすかのように詳しい場所を教え始める。それを聞きながら、政宗は三成が松永に遭遇していないことを心底祈りながら、家康の肩越しにトンボが少なくなりつつある空をちらりと見た。
「………………?」
「政宗様、どうかなさいましたか?」
「いや………」
澄んだ青い空の彼方、そこに何か黒い物がうごめいたような気がしたのだ。
大蛇のように空をうねった黒が三成を飲み込む顎のように見え、政宗は感じた身震いを押し殺しながら臣下に三成の保護を手配するために動き始めた。
伊達家の屋敷のそんな状況をつゆ知らず。
「……………………………失敗したな」
石田三成は思いっきり足に怪我をしていた。
いつもの場所だと油断してたのが悪かったのか、土に埋まっていたらしい鏃を踏み抜いてしまったのだ。幸い骨には届かなかったし、かなりの痛みを感じはするが歩けないほどではない。
泥にまみれ、さび付いた鏃であったので後で膿んで寝込む羽目になるだろうが。
傷口を洗って早めに伊達家の屋敷に戻れば、そこまで深刻なことにはならないだろう。血が染みこみ汚らしい色になっていく沓に顔をしかめながら、片足を引きずりながら移動する。
目指していた沢にたどり着くのにいつもの数倍時間がかかり、おまけに足の痛みはじんじんと骨にまで響く勢いで増してきている。流れのすぐ側にある岩に腰を下ろし、刀で脚絆と沓を切り裂くとぬらりとした赤にまみれた足が姿を現した。
鏃を抜いたため出血が多く、傷口が錆のためにどす黒く染まっている。傷口から全身を浸食する熱さと、背筋を這いまわり始めた寒気に歯を食いしばりながら耐え、三成は足を冷たい清水にようやく浸した。
安堵のため息を漏らしながら、足を洗うために手を伸ばそうとする。
と、
「おや、足をどうしたのかね? 凶王殿」
そんな声が上から降ってきた。
「何者だっ!」
「そんなに警戒することはない。今日は卿に会いに来たのだからね」
「………なんだと?」
怪我に気を取られていたとはいえ、声が近くに聞こえるまで接近に気がつかなかった。
その事実に驚愕しながら後ろを向くと、最初に目に映ったのは目を灼くような純白であった。しなやかな尾を振る優しい瞳を持つ馬、その背に跨がっていたのは過去何度か会ったことがある男。
「………松永……久秀……」
「覚えていてくれたとはありがたい。最後に会ったのはいつだったかな……あの頃の卿はまだ咲く事を知らぬ堅い蕾のようであったが………随分花弁がほころんできたようだ」
竹中半兵衛は稀代の軍師であった。
軍略だけでなく政治に関しても、他国に謀略を仕掛けることにかけても最高級の能力を持っていた。そんな彼がただ一人恐れたのではなく関わり合いたくないと口にしたのが、松永久秀の名前であった。
悪巧みをさせたら、右に出る存在がいない。
そう言いながら生前の半兵衛は彼を君主の座から追い落とした。あれから時間は過ぎたが、憎々しげに松永の名を呟く半兵衛の姿は未だに三成の心に残っているし、松永にいい印象を持ったことなど今まで一度もないのに。
「何故……ここに……」
「卿に会いに来たのだと先程も言っただろう?」
薄く唇を歪めて笑うこの男に、奇妙な親近感と懐かしさを感じてしまっているのは、何故なのだろう?
水に浸しているというのに燃え上げるように熱い足と、警戒しなければいけない相手に抱いてしまっている奇妙な親愛の情。それに挟まれながら逃げることも出来ず、三成は困ったように膝の上で拳を握ることしかできなかった。
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声を小さく叫んでおく。
松永さん、好きだ~!
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
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