こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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4章終了、月は間章はさんで5章です。
*****
三成の行動は、常に周囲に左右されることがない。
助言を聞き入れ己の考えを多少修正することはあっても、決して変えてはいけない思考の軸となる部分、それを三成は揺らがせたことがなかった。
秀吉と豊臣を守ることを自らの存在意義とし。
半兵衛を師として慕い。
目的のために自らを鍛える事を喜びとする。
馬鹿正直すぎるという人も大勢いた、あんな性格ではこの世の中を渡っていけないだろうと哀れむ者もいた。だが彼は決して廻りの思惑に迎合しようとはしなかった。己を変えず望みのままに生きる事の難しさ、人は長ずるとそれを身に刻み込むことになるというのに。
目の前にいる三成は、それで傷ついたとしても変わろうとはしていなかった。
「貴様に言うべきことが決まった」
「儂に言うべきこと?」
「ああ」
周囲に無理矢理着せられた白い夜着のまま前に立ち、家康を見下ろしながら三成はそう口にした。
何の迷いも曇りもない澄んだ瞳には、家康しか映っていない。
それが昔は嬉しかったが、今の家康は三成の目が自分以外もちゃんと見ていることを知ってしまっている。昔のように半兵衛と家康と刑部だけが三成にとって興味のある人間ではないのだ。家康の知らない所で誰かと友誼を暖め、人と関わり、そして人と繋がっていく。
それが辛くて、彼の目を自分だけに向けておきたくて、家臣たちが進言してきた豊臣狩りを了承した。ちょうど幸村と三成の再会を見守った後、じりじりと胸を焦がす感情をもてあましていた時期のことだった。今まで豊臣の下で辛苦を味わってきた家臣たちは、一度許可を出してしまえばもう止まることはできず。
無理矢理止めれば家臣たちは別方面で暴走するであろうし、三成がまだ生きていることをうすうす察知している者も出始めている。この状況で三成に豊臣狩りを向けさせないためには、家臣の暴走を受け入れるしかなかったのだが。
こんな綺麗な目でまっすぐ見つめられたら、迷っていることなど出来ない。
三成が何かを決めたというのなら、自分も豊臣狩りを止めなければならないだろう。たとえそれがどんな結果を生み、三成自身の危機を招くとしても。その時はどんな犠牲を払ってでも三成を守ってみせる。
それが君主として、三成の友としての己がすべきことだ。
裾をわずかな風に揺らし、じっと家康を見下ろしていた三成だったが、何かを思いついたのか、
「み、三成! な、なにをしている!」
「立っているのが面倒だ」
唐突に腰を落とし、器用に怪我を負っている方の膝を先に折り曲げて床に落とし。そのまま家康の前で馬のように四つん這いになることで、家康に目線を合わせてきた。この館にいる時は定番になりつつある袴姿の時ならば家康も動揺はしないのだが、今は薄手の白い夜着しか着ていない。
怪我をしている足に重心がかからないようにしているのか、わずかに前に出された右足は夜着の合わせ目からほぼ剥き出しの状態になっているし、胸元は無茶な動きをしたからか大きく開いてしまっている。
夜着がくすんで見えるほどの白い肌、そこにほんのりと浮かぶ薄い傷跡は体を巡っている熱によってほんのりと浮かび上がり。
「家康! 私の話を聞く気はあるのか!」
「いや、あるんだがな………三成、頼むから少し格好をだな……もう少し……」
「貴様との話が終わればまたすぐ布団に縛り付けられる約束だ。そんな私に着替えろと言うのか?」
「そうじゃなくてな……」
その格好が扇情的すぎて、ついでにこんなに顔を近づけられるのが久しぶりすぎて、色々な意味で限界。そんなことを正直に言ったら三成はその段階で、自分の首を刎ねるだろう。
整った鼻筋とそこにこぼれる前髪に集中し、なんとかこの状況に耐えようとするが、相手はそれを許してくれなかった。
床につけていた掌を一歩前に出し、更に顔を近づけてくる。首を軽くひねれば顔を見ることが出来る位置にいる松永の、嘲笑まじりの吐息が聞こえた気がしたが気にしないことにする。
「人の話を聞く時はちゃんと目を見ろと半兵衛様に教わっただろう」
「ちゃんと見ている」
「貴様は昔からそうだ……大事な話の時ほど人の顔を見ない」
「だから、儂は三成を見ていないわけではない」
「ならば貴様のその言葉を信じてやる……このままでは話が進まん」
多少眉根を寄せはしたが、三成は機嫌を損ねなかったようだった。
わずかずつ日が沈みはじめ、二人の影が濃く障子に刻み込まれるのを一瞥してから、三成は自分の内部から言葉を絞り出すかのように、少しずつ言葉を口にし始めた。
「…………私は………どうやら貴様にまだ情が残っているらしい。あの男に言われてからずっと考えていたのだがな……貴様がこの世にいなくなった後、この世に未練がないと思う程度には貴様を思っているようだ」
「三成、それは……」
「だが秀吉様の許可もなく、貴様を許すわけにはいかない。秀吉様を殺した貴様がのうのうと生き続けることも……許せない。そしてそんな貴様に思いを残している私自身も……許してはいけないのだ」
息のかかる距離にある三成の顔に手を触れさせ、思う存分抱きしめてやりたかった。
罪は全て自分が負う、だから三成は解放されてくれ。
そう彼に言い、そのまま殺されることが出来ればどれほど幸せだろうか。
顔に怒りを表すわけでもなく、悲しみに顔を歪ませるわけでもなく。己の中の事実を冷静に分析して淡々と話し続ける三成の姿は、側で見守っている小十郎と政宗が顔を伏せるほど哀切を誘うものだった。
それが初めて家康に己の罪を自覚させた。
武将として己とは信念を違える存在を討った事への罪悪感ではない。自分にとって大切な存在をここまで追い詰め、そして悲しむための涙すら奪い取った。
何を三成に言えばいいのか、彼に何をしてやるべきなのか。
答えのない難問を突きつけられ、唇を噛みながら言葉の続きをただ待つ。
「貴様をそのまま殺し、秀吉様にその首を捧げれば私は全てを終わらせられると思っていた。だが少し事情が変わった…………やらなければいけないことができた」
「やらなければならないこと?」
「まだ言えん、言う気もない。しかしそれを成し遂げなければ私は死ぬわけにはいかない、だから決めた……貴様からそれをもぎ取るとな」
「儂が持っている物なのか、それは?」
「貴様が持っている物もある、今の貴様ならどうにかできる物もある。今までの貴様との勝負は貴様の首を取るためのものだったが、次からは……私が貴様を地に叩きつける度に、私の望みを一つ叶えてもらう。勿論、最終的にもらうのは貴様の首だ」
まっすぐに、決して迷うことなく。
生真面目に己の望みについて考え、それを達成しようとする三成の姿を見て、家康はもう己の気持ちを偽ることも隠すこともできなくなっていた。
三成が愛しい、彼が好きだ。
誰に何を言われようと、将来この思いがどんな禍根を生むことになっても構わない。彼と共に生き、彼だけを愛し続けたい。
自分を殺した後、三成に自刃などさせるものか。
顔が触れる距離で目線を重ね、呼吸を交わらせ。誓詞のように、互いの思いを言葉に乗せて重ねていく。
「儂から奪うか……面白い。ならば儂も同じ事を望んでもいいのだな」
三成が奪うのならば。
「ああ、私から何でも奪っていくがいい」
儂はお前に様々な物を与えよう。
「ならば、共に海を見よう」
この輝く世界の全て、そこに住まう三成を愛してくれる人々。
「その前に私は貴様から奪い尽くしてやる」
細い腕では持ちきれないほどの幸と安らぎを。
「三成が可愛がっていたあの馬……名はなんといったかな。あれも儂が探してきてやろう」
与えるだけ与え、心を触れあわせながら共に時を過ごし。
「それは私が貴様から奪う物だ……それと名前は夏荻だ、忘れるな」
もうこれ以上の望みはないと笑って言ってくれるまで。
「忘れないさ。もう二度と………絶対にな」
君に全てを捧げること。
それを誓おう。
じっと互いを見つめ合い、神聖なる儀式のように互いの心を触れあわせていた二人の間に冷たい風が一気に吹き込んだ。薄着な上に熱が出始めている三成が身を震わせ、風にあおられて一瞬めくれ上がった三成の夜着の内側を見て家康がいきなり体を折り曲げたのもわずかの間。
「なあ三成……ということは先日のあれも儂が勝ったことにしてもいいのか」
ちょっとどころじゃなく元気になった下半身をなだめつつ、家康はふと思いついたことを口にした。足が痛むからちゃんと座れず、だが何とか体の周辺を風が通らない姿勢にしようと四苦八苦している三成は、首をかしげながら家康の方を見る。
「あれだと?」
「三成が途中で倒れたことがあっただろう」
「あれは………」
「戦の最中にあんなことをしていたら、すぐに首を刎ねられるだろうな。あれは儂の勝ちだ、それでいいな?」
「………………秀吉様………申し訳ありません………それで……貴様の望みは何だ……」
「簡単なことだ」
まずは簡単なことから。
これから自分と三成は、多くの物を取り戻し、そして新しい物を生み出していかなければいけない。いずれは豊臣狩りについて彼に言わなければならないだろうし、三成にも今後の生き方について考えてもらわなければならないだろう。松永のように三成を色々な意味で付け狙う人間も出てくるだろうし、徳川の家臣たちも三成を殺せといつかは口にしてくるはずだ。考える事は山積みで、越えなければいけない壁は多すぎて。
だが今はとりあえず。
「まずは部屋に戻って温かい甘茶でも飲もう、二人きりでな。儂の最初の望みはそれだけだ……どうだ、できそうか?」
「それで……いいのか?」
「ああ、儂は三成と久しぶりにゆっくりと茶が飲みたい」
「貴様は馬鹿だな……本物の大馬鹿だ………」
「お前に言わせると儂がとんでもない馬鹿のようだ。それでお前の返事は?」
最初の落日の光の一片が三成の頬をわずかに染める。
熱が生む朱と、夕日の橙、そして別な赤さが三成の頬を染めたような気がしたのは気のせいだろうか?
わずかの逡巡の後、三成は初めて出会った頃のように素直にこくりと首を縦に振ってくれた。
BGM 「DISCOTHEQUE」 by水樹奈々
「ストライクウィッチーズ2~笑顔の魔法~」 by石田耀子
_______________________________________
これで前半戦終了ということで!
ここから家康さんと石田さんの関係はようやく降り出し近くまで戻ることに……まあまだまだ色々な問題は堆積しておりますが。ラストまでおつきあいしてくれる人がいてくれると……こ、怖いけど幸いです。
臆病者な上に人見知りなもので……
毎回長いのを書く時には自分に課題を一つ作るのですが、今回は家康さんにとある場面まで一度も「……」を使わせませんでした。4章その3ですな、今確認したら。もうそこに到達するまでなんど間違えて三点リーダーを使いそうになったことか。
迷わない、躊躇しない、だった家康に無理矢理惑いとかためらいをねじ込んでやりたかった。そんな理由で登場してもらうことになった松永さんですが、結構いい味出してくれたので後一度くらい登場してもいいかな~と思っています。次の間章の後、少し出番が遠のきますがどこかで悪巧みしてるんだろうなあ……
前半部分の没シーンとして……
・松永VS石田さん
没理由~早々に足を怪我させたので、シーンごと消滅。この足の怪我もいずれ……まあそういうことで。
・干し柿を石田さんに持ってきて思いっきり拒否される家康
没理由~干し柿が可哀想だった(笑)
・石田さんと忠勝の絡み
没理由~ねじ込める場所がなかった。次の間章でちらりとやってます。
・石田さんと小十郎の絡み
没理由~同じくねじ込むと話がそっちにいってしまいそうだったので。5章でぼちぼちと。
あと、面白いイベントが行われるらしいので、前半戦+間章をもう一つくらい書き下ろしてイベント参加するのも面白いかなあと思っております、現在検討中。
あともう一つ。
この話のプロットを立てていた時にずっと聴いていた曲があるのでご紹介というか……まあいい曲なので聞いてくれ、と。
モエかんというPCゲーム(エロ)のサントラに入っている曲でございます。サントラが現在絶版状態らしいので……あとサントラに入っていない曲もあったのですけど。
風の中の青い鳥
ttp://www.youtube.com/watch?v=9I6P4coR7a4&feature=related
a pocket clock
ttp://www.youtube.com/watch?v=oiDAFGmEUjk
a pocket clockはサントラ未収録なので……是非とも入れて欲しかった所ですが。
月孤譚のラストはこの二曲をモチーフに作っております、ラスト書く時にこれかけるんだ~と、今から一応気合い十分…………だと思うのですが。
こんな感じで日々書いております。
いつもついったとかで遊んでくれるヒイラギさん、リアルでご迷惑をかけているみっしさん……構ってくれるBASARA友だちの皆様ありがとうございます。人見知りだけど友だちは欲しいという矛盾の中、これからも引きこもりながら書いていきます。
助言を聞き入れ己の考えを多少修正することはあっても、決して変えてはいけない思考の軸となる部分、それを三成は揺らがせたことがなかった。
秀吉と豊臣を守ることを自らの存在意義とし。
半兵衛を師として慕い。
目的のために自らを鍛える事を喜びとする。
馬鹿正直すぎるという人も大勢いた、あんな性格ではこの世の中を渡っていけないだろうと哀れむ者もいた。だが彼は決して廻りの思惑に迎合しようとはしなかった。己を変えず望みのままに生きる事の難しさ、人は長ずるとそれを身に刻み込むことになるというのに。
目の前にいる三成は、それで傷ついたとしても変わろうとはしていなかった。
「貴様に言うべきことが決まった」
「儂に言うべきこと?」
「ああ」
周囲に無理矢理着せられた白い夜着のまま前に立ち、家康を見下ろしながら三成はそう口にした。
何の迷いも曇りもない澄んだ瞳には、家康しか映っていない。
それが昔は嬉しかったが、今の家康は三成の目が自分以外もちゃんと見ていることを知ってしまっている。昔のように半兵衛と家康と刑部だけが三成にとって興味のある人間ではないのだ。家康の知らない所で誰かと友誼を暖め、人と関わり、そして人と繋がっていく。
それが辛くて、彼の目を自分だけに向けておきたくて、家臣たちが進言してきた豊臣狩りを了承した。ちょうど幸村と三成の再会を見守った後、じりじりと胸を焦がす感情をもてあましていた時期のことだった。今まで豊臣の下で辛苦を味わってきた家臣たちは、一度許可を出してしまえばもう止まることはできず。
無理矢理止めれば家臣たちは別方面で暴走するであろうし、三成がまだ生きていることをうすうす察知している者も出始めている。この状況で三成に豊臣狩りを向けさせないためには、家臣の暴走を受け入れるしかなかったのだが。
こんな綺麗な目でまっすぐ見つめられたら、迷っていることなど出来ない。
三成が何かを決めたというのなら、自分も豊臣狩りを止めなければならないだろう。たとえそれがどんな結果を生み、三成自身の危機を招くとしても。その時はどんな犠牲を払ってでも三成を守ってみせる。
それが君主として、三成の友としての己がすべきことだ。
裾をわずかな風に揺らし、じっと家康を見下ろしていた三成だったが、何かを思いついたのか、
「み、三成! な、なにをしている!」
「立っているのが面倒だ」
唐突に腰を落とし、器用に怪我を負っている方の膝を先に折り曲げて床に落とし。そのまま家康の前で馬のように四つん這いになることで、家康に目線を合わせてきた。この館にいる時は定番になりつつある袴姿の時ならば家康も動揺はしないのだが、今は薄手の白い夜着しか着ていない。
怪我をしている足に重心がかからないようにしているのか、わずかに前に出された右足は夜着の合わせ目からほぼ剥き出しの状態になっているし、胸元は無茶な動きをしたからか大きく開いてしまっている。
夜着がくすんで見えるほどの白い肌、そこにほんのりと浮かぶ薄い傷跡は体を巡っている熱によってほんのりと浮かび上がり。
「家康! 私の話を聞く気はあるのか!」
「いや、あるんだがな………三成、頼むから少し格好をだな……もう少し……」
「貴様との話が終わればまたすぐ布団に縛り付けられる約束だ。そんな私に着替えろと言うのか?」
「そうじゃなくてな……」
その格好が扇情的すぎて、ついでにこんなに顔を近づけられるのが久しぶりすぎて、色々な意味で限界。そんなことを正直に言ったら三成はその段階で、自分の首を刎ねるだろう。
整った鼻筋とそこにこぼれる前髪に集中し、なんとかこの状況に耐えようとするが、相手はそれを許してくれなかった。
床につけていた掌を一歩前に出し、更に顔を近づけてくる。首を軽くひねれば顔を見ることが出来る位置にいる松永の、嘲笑まじりの吐息が聞こえた気がしたが気にしないことにする。
「人の話を聞く時はちゃんと目を見ろと半兵衛様に教わっただろう」
「ちゃんと見ている」
「貴様は昔からそうだ……大事な話の時ほど人の顔を見ない」
「だから、儂は三成を見ていないわけではない」
「ならば貴様のその言葉を信じてやる……このままでは話が進まん」
多少眉根を寄せはしたが、三成は機嫌を損ねなかったようだった。
わずかずつ日が沈みはじめ、二人の影が濃く障子に刻み込まれるのを一瞥してから、三成は自分の内部から言葉を絞り出すかのように、少しずつ言葉を口にし始めた。
「…………私は………どうやら貴様にまだ情が残っているらしい。あの男に言われてからずっと考えていたのだがな……貴様がこの世にいなくなった後、この世に未練がないと思う程度には貴様を思っているようだ」
「三成、それは……」
「だが秀吉様の許可もなく、貴様を許すわけにはいかない。秀吉様を殺した貴様がのうのうと生き続けることも……許せない。そしてそんな貴様に思いを残している私自身も……許してはいけないのだ」
息のかかる距離にある三成の顔に手を触れさせ、思う存分抱きしめてやりたかった。
罪は全て自分が負う、だから三成は解放されてくれ。
そう彼に言い、そのまま殺されることが出来ればどれほど幸せだろうか。
顔に怒りを表すわけでもなく、悲しみに顔を歪ませるわけでもなく。己の中の事実を冷静に分析して淡々と話し続ける三成の姿は、側で見守っている小十郎と政宗が顔を伏せるほど哀切を誘うものだった。
それが初めて家康に己の罪を自覚させた。
武将として己とは信念を違える存在を討った事への罪悪感ではない。自分にとって大切な存在をここまで追い詰め、そして悲しむための涙すら奪い取った。
何を三成に言えばいいのか、彼に何をしてやるべきなのか。
答えのない難問を突きつけられ、唇を噛みながら言葉の続きをただ待つ。
「貴様をそのまま殺し、秀吉様にその首を捧げれば私は全てを終わらせられると思っていた。だが少し事情が変わった…………やらなければいけないことができた」
「やらなければならないこと?」
「まだ言えん、言う気もない。しかしそれを成し遂げなければ私は死ぬわけにはいかない、だから決めた……貴様からそれをもぎ取るとな」
「儂が持っている物なのか、それは?」
「貴様が持っている物もある、今の貴様ならどうにかできる物もある。今までの貴様との勝負は貴様の首を取るためのものだったが、次からは……私が貴様を地に叩きつける度に、私の望みを一つ叶えてもらう。勿論、最終的にもらうのは貴様の首だ」
まっすぐに、決して迷うことなく。
生真面目に己の望みについて考え、それを達成しようとする三成の姿を見て、家康はもう己の気持ちを偽ることも隠すこともできなくなっていた。
三成が愛しい、彼が好きだ。
誰に何を言われようと、将来この思いがどんな禍根を生むことになっても構わない。彼と共に生き、彼だけを愛し続けたい。
自分を殺した後、三成に自刃などさせるものか。
顔が触れる距離で目線を重ね、呼吸を交わらせ。誓詞のように、互いの思いを言葉に乗せて重ねていく。
「儂から奪うか……面白い。ならば儂も同じ事を望んでもいいのだな」
三成が奪うのならば。
「ああ、私から何でも奪っていくがいい」
儂はお前に様々な物を与えよう。
「ならば、共に海を見よう」
この輝く世界の全て、そこに住まう三成を愛してくれる人々。
「その前に私は貴様から奪い尽くしてやる」
細い腕では持ちきれないほどの幸と安らぎを。
「三成が可愛がっていたあの馬……名はなんといったかな。あれも儂が探してきてやろう」
与えるだけ与え、心を触れあわせながら共に時を過ごし。
「それは私が貴様から奪う物だ……それと名前は夏荻だ、忘れるな」
もうこれ以上の望みはないと笑って言ってくれるまで。
「忘れないさ。もう二度と………絶対にな」
君に全てを捧げること。
それを誓おう。
じっと互いを見つめ合い、神聖なる儀式のように互いの心を触れあわせていた二人の間に冷たい風が一気に吹き込んだ。薄着な上に熱が出始めている三成が身を震わせ、風にあおられて一瞬めくれ上がった三成の夜着の内側を見て家康がいきなり体を折り曲げたのもわずかの間。
「なあ三成……ということは先日のあれも儂が勝ったことにしてもいいのか」
ちょっとどころじゃなく元気になった下半身をなだめつつ、家康はふと思いついたことを口にした。足が痛むからちゃんと座れず、だが何とか体の周辺を風が通らない姿勢にしようと四苦八苦している三成は、首をかしげながら家康の方を見る。
「あれだと?」
「三成が途中で倒れたことがあっただろう」
「あれは………」
「戦の最中にあんなことをしていたら、すぐに首を刎ねられるだろうな。あれは儂の勝ちだ、それでいいな?」
「………………秀吉様………申し訳ありません………それで……貴様の望みは何だ……」
「簡単なことだ」
まずは簡単なことから。
これから自分と三成は、多くの物を取り戻し、そして新しい物を生み出していかなければいけない。いずれは豊臣狩りについて彼に言わなければならないだろうし、三成にも今後の生き方について考えてもらわなければならないだろう。松永のように三成を色々な意味で付け狙う人間も出てくるだろうし、徳川の家臣たちも三成を殺せといつかは口にしてくるはずだ。考える事は山積みで、越えなければいけない壁は多すぎて。
だが今はとりあえず。
「まずは部屋に戻って温かい甘茶でも飲もう、二人きりでな。儂の最初の望みはそれだけだ……どうだ、できそうか?」
「それで……いいのか?」
「ああ、儂は三成と久しぶりにゆっくりと茶が飲みたい」
「貴様は馬鹿だな……本物の大馬鹿だ………」
「お前に言わせると儂がとんでもない馬鹿のようだ。それでお前の返事は?」
最初の落日の光の一片が三成の頬をわずかに染める。
熱が生む朱と、夕日の橙、そして別な赤さが三成の頬を染めたような気がしたのは気のせいだろうか?
わずかの逡巡の後、三成は初めて出会った頃のように素直にこくりと首を縦に振ってくれた。
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「ストライクウィッチーズ2~笑顔の魔法~」 by石田耀子
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これで前半戦終了ということで!
ここから家康さんと石田さんの関係はようやく降り出し近くまで戻ることに……まあまだまだ色々な問題は堆積しておりますが。ラストまでおつきあいしてくれる人がいてくれると……こ、怖いけど幸いです。
臆病者な上に人見知りなもので……
毎回長いのを書く時には自分に課題を一つ作るのですが、今回は家康さんにとある場面まで一度も「……」を使わせませんでした。4章その3ですな、今確認したら。もうそこに到達するまでなんど間違えて三点リーダーを使いそうになったことか。
迷わない、躊躇しない、だった家康に無理矢理惑いとかためらいをねじ込んでやりたかった。そんな理由で登場してもらうことになった松永さんですが、結構いい味出してくれたので後一度くらい登場してもいいかな~と思っています。次の間章の後、少し出番が遠のきますがどこかで悪巧みしてるんだろうなあ……
前半部分の没シーンとして……
・松永VS石田さん
没理由~早々に足を怪我させたので、シーンごと消滅。この足の怪我もいずれ……まあそういうことで。
・干し柿を石田さんに持ってきて思いっきり拒否される家康
没理由~干し柿が可哀想だった(笑)
・石田さんと忠勝の絡み
没理由~ねじ込める場所がなかった。次の間章でちらりとやってます。
・石田さんと小十郎の絡み
没理由~同じくねじ込むと話がそっちにいってしまいそうだったので。5章でぼちぼちと。
あと、面白いイベントが行われるらしいので、前半戦+間章をもう一つくらい書き下ろしてイベント参加するのも面白いかなあと思っております、現在検討中。
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風の中の青い鳥
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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