がんかたうるふ 月孤譚 3章その5 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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3章これで終わり、次から……4章「権現、生涯の敵と遭遇する」です。



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 旅立ちにふさわしい空、そう評したのは幸村本人だった。
「そ、それでは拙者、甲斐に戻らせていただくでござる」
「さっさと戻れ」
「はい、石田殿もお元気で!」
 別れの言葉だけはあっさりとしたものだった。
 抱きついて離れない幸村を家康が無理矢理引きはがし、その家康を三成が殴り倒し。だが終始幸村は笑顔であったし、家康も何故か笑っていた。
 全く何が楽しいのやら。
目の前で家康が笑っているだけで苛々する。全てを踏みにじったくせに、何故この男は全てを失った自分の前でそんな顔を見せるのか。この男から全てを奪いとれば、この小賢しい笑顔を剥ぎ取ることができるのか。
 私の横で昔のように笑うな。
その言葉を飲み込むと、三成は最後の別れを惜しんでいる家康と幸村から離れ屋敷に戻ろうとした。もう別れの挨拶は終わった、用があるならばまた会いに来るだろう。自分は一応虜囚の身、昼間の人目のつくところで敗軍の将同士が仲良く話をしていたなどという噂を立てられれば、武田の存続が危うくなる。
 門からは外へ今は出ない。
 出る時は家康を倒し、今後の己の人生を決めた時だけ。三成が決めた、この屋敷にいる間の数少ない決まり事の一つである。
 先日政宗のお古を仕立て直してもらったばかりの着物の裾を揺らし、音もなく戻ろうとすると派手な足音が一気に近づいてきた。
「石田殿……ありがとうございました」
「私は何もしていない。精々愛想を尽かされぬようにするのだな」
「はい! どうなるかはわかりませぬが……拙者なりに伝えてみようと思っております」
 ぎゅうっと、再度幸村に後ろから抱きしめられる。
 彼の事情は今朝起きてから少しだけ聞いた。
 しどろもどろになりながら、だがその目に決意の炎を宿し。三成にどうすればいいかを尋ねてきた幸村に、ただ一言だけ答えてやった。

 誰に恥じる必要がある、それが貴様の守るべきものなのだろう、と。

 秀吉に忠義を捧げたことも、彼が亡くなった後に仇を討つために戦ったことも後悔していない。自らの魂がそれを選び、そうあろうとしたのだ。それから逃げるのではなく、己の心に忠実に生きるべき。
 そして幸村はそうあろうとしている。
 よく考えれば西軍の将たちは、自分の望みのためならどこまでも突き進める馬鹿だらけだったなと思い出しながら、三成は一度だけ。
 自分をかき抱く幸村の背に自らの腕を回してやった。
「み、三成!?」
 横で家康が叫んでいるが完全に無視してやる。
 耳元に聞こえるのは、注意して聞かねば消えてしまいそうな幸村の声。
「最後に助かりました……」
「?」
「どう伝えるか、佐助に頼もうかとも思っていたのですが……どうか、心乱さずにお聞きください」

 そう言ってから幸村が囁いた言葉は、三成にとって凶報だったのか吉報だったのか。

 驚きの声も上がらぬほどの衝撃に、幸村の肩に顔を埋めることで耐えると、幸村の声はまだ続いていた。家康が隣で騒いでいるからこそ、彼には聞こえていないのだ。
「佐助に連絡を頼んであります。数日中には詳しい状況をお伝えできるかと。できる限り一人になれるようにしていてくだされ」
「そう……か」
「徳川殿か政宗殿が常にお側におりましたし、常に誰が過聞き耳を立てておりましたので無理かとも思ったのですが……お伝えできて良かった」
 このことを彼は伝えに来たのか。
 謀略に疎い幸村が直接来訪すれば、まさか彼が三成にこんな事実を伝えに来たとは思わないだろう。彼が直接伝えられなくとも、幸村の存在をおとりにして他の人物が伝える他はずが整っていたはず。
 彼を駒として動かしたのは武田の虎か、それとも上杉の軍神か。
どちらにしても幸村は自分の役割を理解した上でここにおり、そしてちゃんと使命を果たしたのだ。
「気をつけて甲斐に戻れ……真田」
「はい、石田殿も」
 名残惜しげにもう一度三成を抱きしめ、それからようやく幸村は体を離した。
 伊達家の馬番が世話をしてくれていたらしい愛馬の鞍と鐙を手で確認し、そして軽やかにまたがると。
「それでは!」
 とわずかもこちらを向くことなく、軽やかに走り去っていった。
 すっかり冷え始めた風を共に連れ、青き空の下。赤き若武者の姿はぐんぐんと遠ざかっていく。
「嵐のような男だったな……」
「……………………………」
「おい三成、最後まで見送ってやらないのか?」
「必要ない、貴様はそうすればいいだろう」
 きびすを返し、幸村の姿が見えなくなるのを見守らずにそのまま屋敷へと戻る。
 きっと彼は見送りを必要としていないだろうし、それに自分がこのまま見守り続けると困る人間がいるだろう。
 まずはできる限り一人になる方法を考えなければ。
 突然降って湧いた新たな問題について考えながら、三成はふと空を見上げる。山間にある伊達の屋敷は高い場所にある分だけ空に近い。
 いつかこの空の下を心おきなく自由に歩ける日が来るのだろうか。当然の如く自分についてくる宿敵を睨み付けながら、三成が考えているのは先程幸村が伝えてきた事だけであった。











 木々が深い森まで馬を進め、ゆっくりと息を整える。
 馬が走っているのであって自分は走っていないというのに、何故こんなに息が乱れているのだろうか。どきどきと鳴り続ける鼓動はうるさくてしょうがないし、気がついたら口を手で覆ってしまいそうになる。
 手綱を放したら落馬する、佐助にはいつもそう怒られていたが……
「大将、手綱離したら危ないよ」
「さ、さささささすけっ!!!!!」
「そんなに驚くことないじゃない、ずっと見てたんだからさ」
「それはそうだが……」
「ま、それはともかくお疲れ」
 周囲を見回して探すまでもなかった。
 自分が一番見つけやすい、真ん前の木の枝に佐助は腰を下ろしている。彼はいつもそうだった、自分が呼ぶと必ず自分が探しやすい場所へと現れ、そして笑ってくれるのだ。
 自分を安心させるために。
「首尾は……どうだったと思う?」
「権現様も気づいてなかったみたいだからね、大丈夫じゃないの? 竜の右目の旦那は怪しんでるみたいだけど……旦那が帰っちゃったら問い詰めることもできないし。まさかこんなに早く感づかれるとは思ってなかったんだけど」
「では後は上杉殿とかすが殿にお任せしよう」
「そうだね、俺らはさっさと甲斐に戻って、お館様に土産でも持って行こうよ」
 ゆっくりと佐助のいる木まで、馬を進める。
 呼吸が更に荒くなるし、唇に力が入りすぎ、上手くしゃべれそうにない。だが三成は言ってくれたのだ。

 誰に恥じる必要がある、と。

 そう、自分がこれから行うことは恥ずかしいことなどではない。大切な相手に、大切だと伝える。
 それだけのことなのだ。
「それより大将……凶王の旦那に甘えすぎ! 好きなのは知ってるけど、向こうにだって都合があるんだし、それにすごい睨まれてたよ」
「石田殿は抱き心地が良くてな、つい……だ、だが佐助の次にだぞ! 某にとっては佐助が一番だ!」
「俺様は抱き枕じゃないんだけどね」
ま、いいかと呟く佐助の下で馬を下りる。
幼い頃からずっと見てきた、自分にとって守るべき人。何度も伝えようとして伝えられなかった思いを、三成は肯定してくれた。

 だから今、精一杯の勇気を振り絞って。




「佐助、伝えたいことがあるのだ。
 某はお前を……お前のことを…………」








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幸村さんの今後は推して知るべし……ではないですが、まあ書いていて楽しかったです。
某所でこの後の佐助はどうなったのかというのがありましたが……4章でちらっと語られます。
本当に誰得展開だなあ……
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(現在2本 家三 チカナリです)


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ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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