がんかたうるふ 月孤譚 1章その4 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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あと1回で1章終了です。



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 酒というのは人を変える。
 政宗が日頃あまり酒に飲まれないというか、自分の酒の適量を心がけ、良いタイミングで飲むのをやめる人間だったので忘れていたが、あまり飲み過ぎると人は壊れるのだ。

 それはもう凄まじい勢いで。

 最初は乱入してきた三成をからかうために酒杯を勧めたようだが、彼の酒の強さに対抗心が一気に燃え上がったらしい。三成の数刻に渡る秀吉様自慢と政宗のろれつの回らぬ小十郎自慢がぶつかり合った後。
 何故か二人は刀を持って屋敷の庭にいた。
「家康の前に貴様を血祭りにしてやるっ!」
「血祭りに上げる、だろ? coolじゃねえな……落ち着けよ、どうせ勝つのはオレだ」
「黙れ! 秀吉様と半兵衛様を愚弄することは許さん!」
「アイツが何を食ったらあんなにbigになったんだって聞いただけだ」
「秀吉様のお体は、海のごとく深い慈愛でできているのだ。昔はよく私も……」
 また秀吉様語りが始まりそうなのを察したのか、斬りかかったのは政宗が先だった。六爪ではなく普通の兵卒から借りた刀、そして夜着から着替えてもいない。夏とはいえ、奥州の夜風は体を簡単に冷やしてしまう。
 その渡る風よりも早く、素足のままで下草を踏みつぶしながら政宗は鋭い一撃を三成の胴へと叩き込もうとした。
「shit!」
 数歩後ろへ下がり、いとも簡単にそれをよける三成に、政宗の口から笑い混じりの舌打ちが漏れる。
 政宗が完全に本気でないのは六爪を持っていないことと、彼の顔が常に笑っていることからわかりはするのだが。彼が何を求めて三成を挑発しているのか、また三成も政宗との戦いで何を得ようとしているのかが小十郎には全くわからなかった。
 月の光は、二人の間を白き光で繋ぐ。
「秀吉様を悪く言うなぁぁぁぁ!」
「その秀吉様はアンタを置いて逝ったんだよ、さっさと気がつけ!」
「家康だ、あの方を殺したのは……私を……一人にしたのは……」
「ああそうだな……家康のヤツだ」
「許さない……家康を………」
 剣をふるい、凪ぎ、そして刹那の瞬間の刃のぶつかり合いの後身を離す。
 憤怒に燃える三成とは違い、政宗の顔は汗こそかき始めているが涼しい表情を崩すことはない。だが三成を弄んでいるというわけでもなく、むしろ一瞬の剣のぶつかり合いでは三成の方が押しているようにすら思われた。
 ならば何故政宗は笑っているのか。
 わずかの間考え込んだが、答えはすぐにわかってしまった。縁側に腰掛け、政宗と三成が残した酒を片付けるだけの余裕が小十郎にはある。三成を挑発し続ける理由は後で聞くとして、今はまだ若い乱世の英雄たちの剣の乱舞を肴に酒を楽しもう。
 そう思い杯を傾けていると、派手な音と共に何かが小十郎の元に転がってきた。
「ま、まさむねさま……?」
 先代の頃に造成した庭の中で、ようやく苔が生え始め風格を漂わせていた石灯籠の上部。それがすっぱりと断ち切られ、嫌な音を響かせながらこちらへと転がってきたのだ。
 よくよく目をこらして庭を見てみれば、綺麗にいけられていた花々は花弁を晒しながら地に横たわり、純白が連なっていた庭の砂利も二人の足運びによってすっかり荒らされてしまっている。
 当の本人たちはといえば、
「貴様には秀吉様のすばらしさがわからないのだ!」
「ああ、わからないな! アンタに小十郎の良さがわからないのと一緒だ」
「将来禿げそうな頭に興味はない!」
「10年前から額の広さは変わってない、オレが断言する!」
「ここの奴らはうるさすぎる……っ! 飯を喰えだのちゃんと眠れだの、貴様らは刑部と同じ事ばかり…………」
 人の毛髪の心配をしないでください、と怒鳴りつけようとした小十郎が事態の変化に気がついたのはその時だった。ぴたりと示し合わせたかのように二人の動きが同時に止まり、そして。
 三成の体が崩れ落ちた。
「石田殿!?」
「小十郎、動くな」
 先ほどまでの口げんかぶりはどこへやら、月の光を存分に浴びた政宗は静かだが威厳のある声で小十郎を制止した。わずかな風に髪を揺らし、抜き身の刃を存分に光に晒してから地面へと捨て。
「ようやく気がついたか……今のアンタはもう一人だ。誰も味方はいない、豊臣のたった一人の生き残りってヤツになった気分はどうだ?」

 勝ち残った君主として、敗残の将に言葉をかけた。

 崩れ落ち、わなわなと震えながらぎゅっと庭の砂利を握りしめることしかできない三成の顔には一切の表情がなくなっていた。敬愛している主君の名を何度も呟きながら、しゃくりあげることも顔をゆがめることもなく涙を流す。
「………………さま……………ぎょう……ぶ……」
 大声で泣けば少しは楽になれるだろうに、胸の重さを軽くできるだろうに。
 失った者の重さに耐えきれず、涙を流し続けるだけの三成に、政宗の言葉はただ厳しいだけではなかった。
 勝ったからこそ敗者を自由にできる。
 だがそこに同情やそれ以外の暖かい感情を詰め込んでも、誰も文句を言うことはできないだろう。この三成の姿を見てしまえば、誰も彼をこれ以上追い込むことをできるわけがない。
「ちゃんと喰うものは喰ってくれ……飯盛りのバアさんたちの気持ちをムダにするな……アンタのことを心配してんだよ。死んじまった奴らを悔やむのはいい、復讐だって自由にやりゃいい……だがな、奥州の人間の気持ちをムダにしないでくれ」
 アンタだって、誰かの気持ちに支えられて生きてこれたんだろ?
 諭すような政宗の言葉は、三成の心に届いたのだろうか。動かず、ぱたぱたと地面に涙を吸わせている姿からはわからない。
 だが政宗は自分の役目はもう終わりだと決めたのだろう。
「小十郎……こいつの処遇は任せる」
「承知いたしました」
「オレは寝る……明日はそうだな………朝の仕切りはお前に任せた」
「ごゆっくり、お眠りください」
 ひらひらと手を振り、己の部屋に戻っていった政宗を小十郎は頭を下げて見送る。

後に残ったのは美しかった庭の残骸と、寄る辺を失った寂しい山猫が一匹。

 小十郎には見守るしかできない。
 だが朝日の最初の一筋がこの屋敷を照らすまでの間に、彼はきっと答えを見つけてくれる。憎しみや怒りにとらわれているのではなく、大切な人を失った悲しみに身をゆだねている彼なら。
 新しい生き方を見つけられると思った。



















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あと1回で終了。
何を書くにしても、プロローグって面倒だなあ……小十郎禿げネタはみっしさんへ。もらっても困ると思いますが。


BGM「HANABI」 byいきものがかり
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拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
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ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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