こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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続きアップです。
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片付けられるだけの政務を終え、ようやく休息の時間が与えられたのはもう夜の闇が周囲を濃く覆う時刻だった。さすがにこの時刻に主の部屋を訪ねるのは悪いだろうと思い話を明日にしようと思ったのだが、珍しいことに主の部屋からは、ほのかな明かりが漏れ続けていた。
「失礼いたします、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
「小十郎か、いいぜ」
「では」
ふすまを開き、主の姿と場所を確認し、小十郎は眉をひそめた。
布団の横になりながら、枕の側に置いた徳利から蝋燭の光を蜜のように光り輝く液体を大ぶりの猪口に注ぎ込んでいる。確か関ヶ原から戻る際に、色々あちこちからこっそり拝借してきたようだったが。
「政宗様……それは徳川様の……」
「いい酒だったんでな、持って帰ってきた」
「何をやっているんですか。徳川殿はそういうことを気になさる方ではないと思いますが、戦の最中にそんなことをする余裕があったなど言われてしまったら、伊達家の立つ瀬がございません」
「だから内緒で持ってきたんだ、ちょっとくらいは多めにみろって」
だらだらと布団の上に寝転がりながら、まだ夜着に着替えずぴしりと背筋を伸ばしている小十郎を面白そうに眺めながら、政宗はまた一口酒を口に含む。酒の匂いを感じた瞬間に慌ててふすまは閉めたが、屋敷の人間にこんな姿を見られるわけにはいかない。政宗のおおらかな気性は屋敷の人間に愛されているが、だからといってだらしない姿を見せていいわけでもなかった。
せめて座ってくださいと声をかけると渋い顔をしながら体を起こしてくれたのは幸いだったが、その後小十郎の悩みを聞いた後の彼の反応はひどかった。わずかも逡巡することなく、顔色一つ変えずに。
「じゃあ死んでもらえばいいだろ?」
と、きっぱり断言したのだ。
政宗は語り継がれるほど徳が高く情が深い人間ではない。だが、こういう境遇の人間にじゃあ死ねばいいと言い放つような冷たい男でもなかったというのに、何が彼の機嫌を損ねたのやら。
一気に仕事を詰め込んだのが悪かったか、それとも今日の夕食の献立が気に入らなかったのか。額に落ちてくる前髪を直しながら必死に考えていると、先ほどの冷たさが嘘のようなからかうような声がかけられた。
「今日はずいぶん忙しかったようだな、あの山猫のせいか?」
「山猫?」
「下働きのバアさんどもがな、石田のヤツは大きな山猫みたいなもんだとよ」
「言い得て妙、ですな」
すばしっこくて滅多なことでは人にはなつかない、だが綺麗で側に寄りたくなるような毛並みの持ち主。そう考えれば食事を摂ってくれないことも、近づいてこないことも納得できる。
「少し……合点がいきました」
「なにがだ?」
「山猫を人の都合で動かそうとするのが間違っていたのです」
人の理屈で無理矢理彼に食事を摂らせようとしていたのが間違っていた。
主を失いぼろぼろになった獣に必要なのは優しさでも気遣いでもない。ねじ伏せ、じべたに這わせ、その上でこちらの要求を伝えるべきだったのだ。
一人で考えてはろくな考えが浮かばずとも、政宗のわずかな言葉が小十郎を導いてくれる。主のそんな所に内心感謝し頭を下げていると、政宗の表情が一気に曇った。
「それでまたアイツの所に通い詰めになるのか?」
「政宗様?」
「こっちに戻ってきてからずっとアイツの所に行きやがって……仕事をするのはオレだけか?」
「申し訳ございません、ですが……」
「どうせあのでかい山猫が気に入ったんだろ?」
子供の頃のようなふてくされた声。
こちらを見ないようにしているが、自分の反応が気になってつい目線だけをこちらに流してくるのは昔からのこと。
あまりの変わらなさに、ついこらえきれない笑い声とため息が同時に漏れる。
「小十郎は、政宗様だけのものでございます。それは今後決して変わることはありますまい」
「……………………わかってる、そんなこと」
「石田殿を見ていると……昔の政宗様を思い出しまして。今の私ならもしかして……あの時梵天丸様にしてさしあげられなかったことを、石田殿にはしてあげられるのでは。そう思っていたのです、こちらに来るまでは」
「で、今はどうなんだ?」
「あの方は政宗様ではございません、敬愛する君主を悲しませてまで石田殿に尽くす道理はないかと。ですが………私のやり方を思いつきましたので、それでやらしていただきます」
子供のような焼きもちなのだ、結局は。
小十郎に言われた言葉に身もだえしたいほど恥ずかしがっているのか、政宗は布団の上でもぞもぞと移動を繰り返している。時折ちらりとこちらを見てくる度に微笑みかけてやるが、そのたびに顔を赤らめているのは酒のせいだけではないだろう。
そろそろ今日は部下としての時間は終わりにしようか。
「政宗様、そちらに行ってもよろしいでしょうか?」
「いいぜ、さっさと来い。もう余計なことは言うなよ?」
「できるだけ努力いたします」
政宗の肩に手をやり、頬に唇を寄せながら政宗の体を布団へとゆっくり倒していく。彼の肩が柔らかい綿の中に埋まり、肩胛骨のあたりに温かい手の感触を感じた瞬間、
「伊達はいるか!」
いきなりふすまが開いて、月の光を存分に受けた淡い色の髪の山猫が、室内に入り込んできた。
「石田殿!?」
「………wha…t?」
「な、何をしにここへ……」
「豊臣を見習え! この程度の警護、私が突破できぬとでも思ったか」
「いえ、そうではなく………」
何故このタイミングで、というかこの光景を見て何も思わないのか。
慌てて政宗と体を離そうかとも思ったが、当の政宗があまりに事態に硬直してしまっている。とりあえずは誤解(ではないのだが、誤解にしておいた方が良さそうだ)を解くために口を開こうとすると、先を取って相手が口を開き始めた。
わざわざ居住まいを正し正座してから話し始めたのは、豊臣軍の躾が良かったのからなのだろう。
「家康はいつここに来るのだ!」
「文が届くのは早くても明後日になるかと……というよりも石田殿……これは……」
「貴様らに衆道の趣味があろうと気にはしない……それよりも家康だ」
「少しは気にしろよ……おい」
ようやく衝撃から立ち直ったのか、小十郎の肩につかまったまま政宗が体を起こした。まだ小十郎と三成の仲を疑っているのか、体を離すつもりはないらしい。ぎゅっと体を寄せながら、あきれたような眼差しで三成の言葉を待っている。
男同士の修羅場みたいな様相に頭を抱えたくなるが、幸い三成はこの光景を全く気にしていないらしい。だからといって互いの今の立場や待遇に関して誤解を(一方的に政宗が)持ったままというのもよくないだろう。
政宗のおかげで、今後の石田三成の扱い方も何となくだがわかってきた。ここは、少し話をするべきなのだろう。
「ちょうどいい機会です……政宗様……石田殿……ここは互いに腹を割って話でもしましょうか」
途端に互いの主張をギャアギャアと口にし出す二人をなだめながら、小十郎は子供が一人増えたような奇妙な充実感とそして疲労感にさいなまれていた。
さて、この混乱をどのように収めるべきか。
伊達家の懐刀の手腕が問われる夜になりそうだった。
_______________________________________
残り2回で1章終了、2章は「山猫、怨敵と再会する」の予定。
「失礼いたします、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
「小十郎か、いいぜ」
「では」
ふすまを開き、主の姿と場所を確認し、小十郎は眉をひそめた。
布団の横になりながら、枕の側に置いた徳利から蝋燭の光を蜜のように光り輝く液体を大ぶりの猪口に注ぎ込んでいる。確か関ヶ原から戻る際に、色々あちこちからこっそり拝借してきたようだったが。
「政宗様……それは徳川様の……」
「いい酒だったんでな、持って帰ってきた」
「何をやっているんですか。徳川殿はそういうことを気になさる方ではないと思いますが、戦の最中にそんなことをする余裕があったなど言われてしまったら、伊達家の立つ瀬がございません」
「だから内緒で持ってきたんだ、ちょっとくらいは多めにみろって」
だらだらと布団の上に寝転がりながら、まだ夜着に着替えずぴしりと背筋を伸ばしている小十郎を面白そうに眺めながら、政宗はまた一口酒を口に含む。酒の匂いを感じた瞬間に慌ててふすまは閉めたが、屋敷の人間にこんな姿を見られるわけにはいかない。政宗のおおらかな気性は屋敷の人間に愛されているが、だからといってだらしない姿を見せていいわけでもなかった。
せめて座ってくださいと声をかけると渋い顔をしながら体を起こしてくれたのは幸いだったが、その後小十郎の悩みを聞いた後の彼の反応はひどかった。わずかも逡巡することなく、顔色一つ変えずに。
「じゃあ死んでもらえばいいだろ?」
と、きっぱり断言したのだ。
政宗は語り継がれるほど徳が高く情が深い人間ではない。だが、こういう境遇の人間にじゃあ死ねばいいと言い放つような冷たい男でもなかったというのに、何が彼の機嫌を損ねたのやら。
一気に仕事を詰め込んだのが悪かったか、それとも今日の夕食の献立が気に入らなかったのか。額に落ちてくる前髪を直しながら必死に考えていると、先ほどの冷たさが嘘のようなからかうような声がかけられた。
「今日はずいぶん忙しかったようだな、あの山猫のせいか?」
「山猫?」
「下働きのバアさんどもがな、石田のヤツは大きな山猫みたいなもんだとよ」
「言い得て妙、ですな」
すばしっこくて滅多なことでは人にはなつかない、だが綺麗で側に寄りたくなるような毛並みの持ち主。そう考えれば食事を摂ってくれないことも、近づいてこないことも納得できる。
「少し……合点がいきました」
「なにがだ?」
「山猫を人の都合で動かそうとするのが間違っていたのです」
人の理屈で無理矢理彼に食事を摂らせようとしていたのが間違っていた。
主を失いぼろぼろになった獣に必要なのは優しさでも気遣いでもない。ねじ伏せ、じべたに這わせ、その上でこちらの要求を伝えるべきだったのだ。
一人で考えてはろくな考えが浮かばずとも、政宗のわずかな言葉が小十郎を導いてくれる。主のそんな所に内心感謝し頭を下げていると、政宗の表情が一気に曇った。
「それでまたアイツの所に通い詰めになるのか?」
「政宗様?」
「こっちに戻ってきてからずっとアイツの所に行きやがって……仕事をするのはオレだけか?」
「申し訳ございません、ですが……」
「どうせあのでかい山猫が気に入ったんだろ?」
子供の頃のようなふてくされた声。
こちらを見ないようにしているが、自分の反応が気になってつい目線だけをこちらに流してくるのは昔からのこと。
あまりの変わらなさに、ついこらえきれない笑い声とため息が同時に漏れる。
「小十郎は、政宗様だけのものでございます。それは今後決して変わることはありますまい」
「……………………わかってる、そんなこと」
「石田殿を見ていると……昔の政宗様を思い出しまして。今の私ならもしかして……あの時梵天丸様にしてさしあげられなかったことを、石田殿にはしてあげられるのでは。そう思っていたのです、こちらに来るまでは」
「で、今はどうなんだ?」
「あの方は政宗様ではございません、敬愛する君主を悲しませてまで石田殿に尽くす道理はないかと。ですが………私のやり方を思いつきましたので、それでやらしていただきます」
子供のような焼きもちなのだ、結局は。
小十郎に言われた言葉に身もだえしたいほど恥ずかしがっているのか、政宗は布団の上でもぞもぞと移動を繰り返している。時折ちらりとこちらを見てくる度に微笑みかけてやるが、そのたびに顔を赤らめているのは酒のせいだけではないだろう。
そろそろ今日は部下としての時間は終わりにしようか。
「政宗様、そちらに行ってもよろしいでしょうか?」
「いいぜ、さっさと来い。もう余計なことは言うなよ?」
「できるだけ努力いたします」
政宗の肩に手をやり、頬に唇を寄せながら政宗の体を布団へとゆっくり倒していく。彼の肩が柔らかい綿の中に埋まり、肩胛骨のあたりに温かい手の感触を感じた瞬間、
「伊達はいるか!」
いきなりふすまが開いて、月の光を存分に受けた淡い色の髪の山猫が、室内に入り込んできた。
「石田殿!?」
「………wha…t?」
「な、何をしにここへ……」
「豊臣を見習え! この程度の警護、私が突破できぬとでも思ったか」
「いえ、そうではなく………」
何故このタイミングで、というかこの光景を見て何も思わないのか。
慌てて政宗と体を離そうかとも思ったが、当の政宗があまりに事態に硬直してしまっている。とりあえずは誤解(ではないのだが、誤解にしておいた方が良さそうだ)を解くために口を開こうとすると、先を取って相手が口を開き始めた。
わざわざ居住まいを正し正座してから話し始めたのは、豊臣軍の躾が良かったのからなのだろう。
「家康はいつここに来るのだ!」
「文が届くのは早くても明後日になるかと……というよりも石田殿……これは……」
「貴様らに衆道の趣味があろうと気にはしない……それよりも家康だ」
「少しは気にしろよ……おい」
ようやく衝撃から立ち直ったのか、小十郎の肩につかまったまま政宗が体を起こした。まだ小十郎と三成の仲を疑っているのか、体を離すつもりはないらしい。ぎゅっと体を寄せながら、あきれたような眼差しで三成の言葉を待っている。
男同士の修羅場みたいな様相に頭を抱えたくなるが、幸い三成はこの光景を全く気にしていないらしい。だからといって互いの今の立場や待遇に関して誤解を(一方的に政宗が)持ったままというのもよくないだろう。
政宗のおかげで、今後の石田三成の扱い方も何となくだがわかってきた。ここは、少し話をするべきなのだろう。
「ちょうどいい機会です……政宗様……石田殿……ここは互いに腹を割って話でもしましょうか」
途端に互いの主張をギャアギャアと口にし出す二人をなだめながら、小十郎は子供が一人増えたような奇妙な充実感とそして疲労感にさいなまれていた。
さて、この混乱をどのように収めるべきか。
伊達家の懐刀の手腕が問われる夜になりそうだった。
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残り2回で1章終了、2章は「山猫、怨敵と再会する」の予定。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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