こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ということで、更新は17日までお休みになります。
みなさま色々大変だと思いますが、お体にはくれぐれもお気を付けて。
みなさま色々大変だと思いますが、お体にはくれぐれもお気を付けて。
*****
8/8
約一週間ぶりに戻ってきた我が家で最初に行ったことは、クーラーを付けることだった。
夜は涼しかった北海道とは違い、こちらは夜でも窓を開けると熱気が吹き込んでくる。からっと涼しかった北海道での生活を思いながら旅行の荷物を片付けたり、お土産を整理したりしていた二人だったが。
その日の夕方、早速一番の難問が襲いかかってきたのだった。
「秀吉様!」
「ひ、ひでよし!?」
涼しげな薄手の着物姿で現れた秀吉に、当たり前のように飛びついたのは三成だったが。家康は三成のように全てを忘れて秀吉に駆け寄ることはできなかった。
北海道で半兵衛は二言目には秀吉の文句を口にし続けていた。
まだ怒りがさめていないであろう今、秀吉と鉢合わせしたらこの家はどんなことになってしまうのか。三成には見せられないような修羅場が起こることは間違いないので、その時は三成を連れて二階に引きこもろうとは思っている。
「秀吉様、お土産がいっぱいあるのです! 今年はいつきちゃんとビールを作りました、これで今年の自由研究も大丈夫です!」
「三成、念のために聞いておくが、味見はしていないだろうな?」
「もちろんです」
秀吉に抱き上げられている三成は、目を泳がせながら必死にそう言いつくろっている。
わかっていたわざと聞いたのか、苦笑いしながら引きつっている三成の顔をじいっと見つめると、
「三成、嘘をつくなと教えたはずだが」
と言いながら、必要以上に強く三成の頭をぐりぐりと撫で始めた。
「も、申し訳ありません! あまりにも美味しそうだったので泡を少し……」
「儂は普通に飲んだぞ。風呂上がりの最初の一口が最高だな、ビールは!」
「家康……」
「………………」
何故か秀吉と三成、両者の目線が同時に突き刺さってきたが気にしないことにする。
この後秀吉の手加減した拳骨が降ってくるかもしれないが、最後には笑い声で全てがまとめられるのだ。ぎゅうっと秀吉の首にしがみついている三成の顔は心底嬉しそうだし、抱き止めている秀吉も三成を幸福の象徴でもあるかのように大切に扱っている。
本当の親子でなくとも、彼らは魂で繋がっている。
そんな家族の一員に加えてもらっていることに感謝しながら、秀吉に渡す予定の土産をすぐ側にある巨大な紙袋から出そうとしていると。
「…………ただいま」
「お帰りなさい、半兵衛様!」
ちょうど秀吉の後ろのドアからから覗いているかのような体勢で、半兵衛がなんとも言えぬ表情でこちらを覗いていた。秀吉の背をじっと見てはいるが、自分から声をかけることはなく。この家の持ち主だというのに、何かに気圧されて入れないのか。
もじもじしながら口を尖らせている。
「半兵衛様! 秀吉様にお土産を渡してもいいですか?」
「う、うん…………」
「半兵衛様が買ったお土産も一緒に渡しましょう!」
秀吉の腕の中から抜け出して飛び降りると、半兵衛の方へと駆け寄り。
無理矢理彼の手を取ると、秀吉の方へと引っ張ってきたのだった。喧嘩をしたままの二人の間を取り持つ気など、三成にはないのだろう。
ただ家族はいつも一緒であるべき、その思い故に体が動いただけ。
「……………えっと…………あのね………」
「大変だったようだな」
「うん……」
途切れ途切れの言葉。
いつまでたっても合うことのない目線。
「土産を買ってきてくれたのか、いつもすまぬな」
「一緒に行ってたら……買ってこなくても良かったんだよ?」
「恩師の葬儀に行かぬような男を、お前は許すのか?」
「そんなことしたら殴って家から追い出すよ」
「ならば…………許せ」
二人の間に立っていた三成を手で軽く押した秀吉が次にしたことは、愛しい伴侶を引き寄せて己の胸に納めることだった。さすがにこの唐突さにはいつもは冷静沈着な半兵衛も驚いたのか、目を大きく見開いたまま体を硬直させている。
半兵衛の男にしては華奢な体を、秀吉の腕は壊さぬように優しく包み込む。
「すまなかったな」
「しょうがないのはわかってたし……でも……家康君と三成君が一緒に行きたがってたのにさ……」
「そうだな」
「…………………………………ごめんなさい」
長い沈黙の後、秀吉の胸元に顔を押しつけた半兵衛の口から漏れたのは謝罪の言葉だった。
子供じみた我が儘であることは、自分でもわかっていたのだろう。恥ずかしげに顔を下に向け、腕は秀吉の体に絡みつかせ。
愛おしげに力を込め、更に体を密着させる。
「家康、三成」
「はいっ!」
「なんだ?」
「これから我と半兵衛は少し話をせねばならぬ。少し上へ行っているといい」
「よし三成、儂と二階で遊んでいるか」
「そうだな」
秀吉の声と威厳と子供っぽさが同居した笑みに、子供二人が感じたものはただ一つだった。
これから大人達はいちゃつきタイムなのだ。
なんとなく事情を察した家康と、もうこんな事は慣れっこになってしまっている三成は顔を見合わせ。どちらともなく手を繋ぐと、お土産の詰まった袋すら持たずに二階へと移動することを選んだ。
夫婦(?)仲良くは家庭円満の秘訣なのだ。
子供の我が儘で大人達の仲良しの時間を邪魔してしまったら、今度はもっとひどい大喧嘩になる可能性だってある。それを回避するために、お土産の山を捨てて一時撤退を選んだ二人なのであった。
8/9
その日旅行のお土産を持って三成が最初に訪問したのは幸村の家だった。
とある用事で中のよう同級生達がその家に集まるという連絡を受け、袋いっぱいのお土産を抱えて質実剛健という言葉がよく似合う幸村の家へと到着したのだが。
「だから何度言えばわかる! 分数の割り算はそのままかけてはならぬのだ!」
「真田さん…………それとこの漢字も間違ってます」
「読書感想文も三行で終わりか。どこから直せばいいのだ……」
「自由研究は決まったんですか? こんなにゆっくりやっていたら、間に合わないですよ?」
乱雑に色々な物が置かれている幸村の部屋を更に散らかしているのは問題集の山。
三成は最初の3日で集中して終わらせてしまったのだが、基本的に勉強が苦手な幸村は今の今まで全てを放置していたらしい。おまけにコップに入った麦茶をストローで飲んでいる鶴姫の言葉から考えると、自由研究も工作も全く手を付けていないのだろう。
お土産を配り北海道の話をする前に、これは幸村を手伝うべきか。
すぐにお盆に突入し、それが終われば三成達の学年は夏期の林間学校が待っている。他のクラスと交流を持たなければならないこのイベントが嫌ではあったのだが。その前に宿題を片付けなければ、大変なことになってしまうはず。
そう考えて毛利と鶴姫も集まっているはず。
「邪魔するぞ」
「石田殿! 北海道は楽しかったのですか?」
「土産はどうした……今年もぼんぬを買ってきたのであろうな?」
「おかえりなさい! 石田さんも手伝いに来てくれたんですね」
「手伝うが、まずは土産だ。ボンヌと三方六を買ってきた」
「石田……それだけではあるまい?」
「当然だ。姫の好きなきなチョコ黒大豆も買ってきている」
重い紙袋をテーブルの上にのせると、思い思いの動きで喜んでくれたのはいいが。
宿題を片付けずに遊んでばかりいた幸村は、今度のことを考えて落ち込んでいるのだろう。菓子の山を見ても少しも顔をほころばせない幸村に、早速袋の中に手を入れて望みの物を探し始めている鶴姫がごく当たり前のことを言う。
「宿題はちゃんと先に片付けておくものですよ。そうしないから後から困ったことになるんです」
本人に悪気は全くないのだが、彼女は思った事をそのまま言いすぎる傾向がある。
それで何度も痛い目を見ているというのに、懲りないというか素直すぎるのが悪いというか。しかしそれもこの中まで集まれば、彼女の良い特徴として受け入れられるのだ。
だから彼女は同性の友達よりも三成達を選ぶ。
「某が遊びすぎたのが悪かったのですな……」
「石田さんは北海道に旅行に行ったり剣のお稽古をしていても、ちゃんと宿題を終わらせてますよ! 真田さんもがんばれば終わります!」
「鶴姫殿……」
「ばば~んと頑張りましょう! みんなでお手伝いしますから!」
「我は石田がぼんぬを持ってくるまでしか手伝わぬと言ったはずだが……」
「毛利さんは口ではそんなことを言いますけど、優しい人ですから♪」
だからお手伝いしてくれますよね!
有無を言わせぬ可愛らしい笑みに、お目当てのボンヌを手にした毛利の動きが止まる。
彼女のこの強引さが、なんやかんや言いながらも弱腰の男達を引っ張っているのだ。男三人に女の子一人の奇妙な友人関係だが。
男達は一度も文句を言ったことがない。
「…………姫が言ったから手伝うのではない」
「そうですね」
「皆でやれば早く終わるだろう。今日は半兵衛様の帰りも遅いらしい……家康に今日は遅くなると電話すれば大丈夫だ」
「じゃあみんなで宿題できますね!」
嬉しそうに胸の前で手を合わせる鶴姫を見て、男達は思った。
彼女にはかなわない。
結局幸村の宿題の7割程は日がとっぷりと暮れるまでの時間を費やして、片付けることができた。そのご三成達は宿題を手伝ってくれたお礼という名目で、武田家でバーベキューと花火を楽しみ。
夏の一夜を思う存分楽しんだのであった。
8/10
「明後日か……」
「明後日なのか……」
その日、リビングで子供達はため息をつきながらその言葉ばかりを繰り返していた。
普段はごろごろとソファーに寝そべっているか、ゲームで遊んでいるというのに今日は二人並んで顔を下に向け。暗いオーラを纏っているのだから、半兵衛も見ているだけで気が滅入ってくる。
せっかく仕事が早く終わったというのに、周囲がこれでは楽しい気分になれない。
「別にとって喰われるわけでもないんだから……それにお小遣いもらえるかもよ?」
「ねねちゃんはくれます! おじさんたちもおばさんたちもくれますが…………やっぱり行きたくないです」
「儂も向こうの親戚達には会いたくないな……父の墓もこちらにある。無理に行かなくてもいいのではないか?」
「駄目。ちゃんと盆と正月には家に帰らせるって約束で君を預かったんだから」
その言葉を聞いた瞬間家康の表情が一気に固まる。
三成は祖母のいる豊臣の家に行きたくないし、家康は西の方にある実家に帰りたくない。二人の事情も気持ちもわかるのだが、半兵衛は立場上行けと言うしかないの。
豊臣の家の実権を未だに握っている秀吉の母は、夫の愛人の血統である三成を嫌っている。他の親戚達は三成を受け入れて可愛がってくれているのだが、彼女だけは未だに視界に三成を入れることすら拒む有様。いい年してそれはないだろうとか、家の将来のことを考えないのかとか。色々と親族には言われているらしいのだが、それが彼女の矜持なのだろう。
自分の血筋ではなく、他の女の血筋が後を継ぐ。
自ら望んで嫁入りしたからこそ、それが許せないのだ。
それを三成に話しても、彼にはまだわからないだろう。いつか頑固極まりないあの女が三成を跡取りとして受け入れる日も来るのだろうが、それはまだ遠い先の話。
半兵衛だって彼女に秀吉の『嫁』として認められるのにかなりの時間を費やしたのだ。
受け入れてもらえるまで三成は散々な目に遭うだろうが。それでも三成の努力の先にはきっと道がある。
家康よりはよほどまし。
「三成はねねちゃんがいるし、あの婆さんを我慢すればいいのだろう? 儂は本家は嫌いだ、勉強ばかりさせられる……」
「お盆はお墓参りをしてお坊さんが来るのではないのか? それと茶会もする」
「三成は茶会の手伝いは好きだと言っていたではないか」
「秀吉様の手前はすごく美しいのだぞ! かっこいいのだ!」
「それは僕も認める。それにしても家康君は実家に帰ってお勉強か……大変だね」
「わざわざこの時期だけ家庭教師を用意しているのだ……経済学の講義など聴きたくもない」
「学校の勉強ではないのか?」
「君の家は相変わらず、ずれまくってるよね……」
中学生の子供に経済学を勉強させることもないだろうに。
あの家は子育ての方向性を思いっきり間違ってるなと思いながら、半兵衛はとりあえず子供達を落ちつかせるための提案をしてみる。
「お盆が終わったら……一緒にご飯でも食べに行こうか。ザビー亭の商品券いっぱいもらったから」
「ファミレスというものなのだろう、そこは……そんなもので儂を釣れると……」
「半兵衛様、びっくりサンデーハンバーグと愛のレインボーパフェが食べたいです!」
「多分お盆過ぎたら秋の新メニューが入り始める頃だから、別な物食べたら?」
「駄目ですびっくりサンデーハンバーグは美味しいのです!」
途端に顔を上げ、三成だけは大喜びし始める。
あまり外食にはつれていきたくないのだが、商品券をもらってしまったら話は別だ。使わないともったいないし、なにより付き合いのある会社の状態を知るには実際に食べに行くのが一番。
接客が乱れていたり、客が少なくなってきていれば経営悪化の前兆。
一応気にしておく必要があるし、子供達が喜ぶのならそれが一番。辛いことを我慢して帰ってくるのだから、少しは楽しいことも用意してあげなければ。
「…………帰らなくても許されるということはないのだな……それは困ったな」
半兵衛の意図に気がついたらしい家康はぶつくさと文句を言っているわけだが。
どれだけ文句を言っても血のつながりという縁を切ることはできない。それを切ってしまえば頼れる物を一つ失ってしまうのだ。
それを家康が理解するのはいつの日になるのやら。
絶対にこの子、家に帰らなくて済む方法を考えてる。
それを察知した半兵衛は、後で秀吉に相談しようと心に決め。
家康にそれを悟らせないように、彼に向かってにっこりと笑って見せたのだった。
8/11
昨夜半兵衞が秀吉に電話をして何かを話していたのは知っていたが。
「離してくれ! 儂はまだ帰りたくない!」
「我が儘を言うな。父だけではなく、先祖の墓にも手を合わせてくるのだな」
「三成はまだ帰らなくていいというのに、何故儂だけが帰らなければならないのだ~!」
まさか、帰る日を早めて家康を迎えの車に無理矢理押し込むとは。
なんとなく三成も家康は理由を付けて実家に帰らないのではないかと思ってはいたが、それを阻止するためにこんな手を使うとは思わなかった。確かに帰る日を早めれば家康も油断するだろうし、なにより準備をする時間がなくなる。
自分も豊臣の家に行きたくないと言ったら、同じ事をされるのだろうか。
家康の面倒を幼い頃から見てきたいという秀吉を超える長身の男は、秀吉に抱えられていた家康を受け取るとそのまま高級そうな黒の外車へと押し込む。乗り換えの際に見失うよりは、車で実家まで搬送した方がいいと秀吉は判断したのだろう。
半兵衞が持っている旅行鞄にはきっと家康の着替えが詰め込まれていて。
車の中でもじたばたしている家康に向けて、その鞄を笑顔で渡したのも昨日の電話での打ち合わせの結果のはず。
「はい家康君、気をつけていってくるんだよ。向こうも暑いから気をつけてね」
「まだ帰りたくない! 忠勝が来てくれたのは嬉しいが……帰るのは明日のはずだろう?」
「だって君、逃げる計画立ててたでしょ? 向こうの家との決まり事なんだから、長宗我部君の家とかに逃げられても困るんだって」
「な、なぜわかったのだ!?」
「昨日長宗我部君の家に電話して確認したから。君が来てもかくまわないでくれって話してあるから、逃げても無駄だよ」
車の窓から顔を出している家康は、端から見てもわかるぐらいにがっくりと肩を落とした。
そんな家康に何を言えばいいのかわからず、半兵衞の後ろに隠れていると背中に当てられた手が、三成を前に押し出した。
「秀吉様……?」
「しばしの別れだ。見送ってやることだな」
「…………は、はい!」
秀吉の心遣いに感謝しながら、とりあえず家康、と声をかけてみる。
中学生になったというのに子供の様に顔を膨らませ。必死に嫌がっている家康に向かって、おずおずと口を開く。
「家康…………私も明日家に帰る」
「三成はいつ帰ってくるのだ?」
「16日らしい」
「そうか……儂はいつ戻ってこれるのだろうな」
「早く帰ってくるのだ! 私も早く戻る!」
開いた窓から伸びた手が、三成の前髪にそっと触れる。
きっと家康は本気で家に帰りたくないのだろう。三成にとって家はここだし、豊臣の家は挨拶を死に行かなければいけない場所に過ぎない。だが家康は本家が帰らなければならない場所なのだ。
家康が帰ってきたらいっぱい優しくしてやろう。
前髪に触れていた手が離れ、窓が閉まり。ゆっくりと車が遠ざかっていくのを、三成は半兵衞に肩を抱かれ。秀吉に見守られながら、大切な家族が去って行く姿を言葉もなく見守ったのだった。
________________________________________
ということで3週目終了!
ついったでは続き書けるかなあ……と思いましたが、スケジュールの関係上難しそうな予感が。
約一週間ぶりに戻ってきた我が家で最初に行ったことは、クーラーを付けることだった。
夜は涼しかった北海道とは違い、こちらは夜でも窓を開けると熱気が吹き込んでくる。からっと涼しかった北海道での生活を思いながら旅行の荷物を片付けたり、お土産を整理したりしていた二人だったが。
その日の夕方、早速一番の難問が襲いかかってきたのだった。
「秀吉様!」
「ひ、ひでよし!?」
涼しげな薄手の着物姿で現れた秀吉に、当たり前のように飛びついたのは三成だったが。家康は三成のように全てを忘れて秀吉に駆け寄ることはできなかった。
北海道で半兵衛は二言目には秀吉の文句を口にし続けていた。
まだ怒りがさめていないであろう今、秀吉と鉢合わせしたらこの家はどんなことになってしまうのか。三成には見せられないような修羅場が起こることは間違いないので、その時は三成を連れて二階に引きこもろうとは思っている。
「秀吉様、お土産がいっぱいあるのです! 今年はいつきちゃんとビールを作りました、これで今年の自由研究も大丈夫です!」
「三成、念のために聞いておくが、味見はしていないだろうな?」
「もちろんです」
秀吉に抱き上げられている三成は、目を泳がせながら必死にそう言いつくろっている。
わかっていたわざと聞いたのか、苦笑いしながら引きつっている三成の顔をじいっと見つめると、
「三成、嘘をつくなと教えたはずだが」
と言いながら、必要以上に強く三成の頭をぐりぐりと撫で始めた。
「も、申し訳ありません! あまりにも美味しそうだったので泡を少し……」
「儂は普通に飲んだぞ。風呂上がりの最初の一口が最高だな、ビールは!」
「家康……」
「………………」
何故か秀吉と三成、両者の目線が同時に突き刺さってきたが気にしないことにする。
この後秀吉の手加減した拳骨が降ってくるかもしれないが、最後には笑い声で全てがまとめられるのだ。ぎゅうっと秀吉の首にしがみついている三成の顔は心底嬉しそうだし、抱き止めている秀吉も三成を幸福の象徴でもあるかのように大切に扱っている。
本当の親子でなくとも、彼らは魂で繋がっている。
そんな家族の一員に加えてもらっていることに感謝しながら、秀吉に渡す予定の土産をすぐ側にある巨大な紙袋から出そうとしていると。
「…………ただいま」
「お帰りなさい、半兵衛様!」
ちょうど秀吉の後ろのドアからから覗いているかのような体勢で、半兵衛がなんとも言えぬ表情でこちらを覗いていた。秀吉の背をじっと見てはいるが、自分から声をかけることはなく。この家の持ち主だというのに、何かに気圧されて入れないのか。
もじもじしながら口を尖らせている。
「半兵衛様! 秀吉様にお土産を渡してもいいですか?」
「う、うん…………」
「半兵衛様が買ったお土産も一緒に渡しましょう!」
秀吉の腕の中から抜け出して飛び降りると、半兵衛の方へと駆け寄り。
無理矢理彼の手を取ると、秀吉の方へと引っ張ってきたのだった。喧嘩をしたままの二人の間を取り持つ気など、三成にはないのだろう。
ただ家族はいつも一緒であるべき、その思い故に体が動いただけ。
「……………えっと…………あのね………」
「大変だったようだな」
「うん……」
途切れ途切れの言葉。
いつまでたっても合うことのない目線。
「土産を買ってきてくれたのか、いつもすまぬな」
「一緒に行ってたら……買ってこなくても良かったんだよ?」
「恩師の葬儀に行かぬような男を、お前は許すのか?」
「そんなことしたら殴って家から追い出すよ」
「ならば…………許せ」
二人の間に立っていた三成を手で軽く押した秀吉が次にしたことは、愛しい伴侶を引き寄せて己の胸に納めることだった。さすがにこの唐突さにはいつもは冷静沈着な半兵衛も驚いたのか、目を大きく見開いたまま体を硬直させている。
半兵衛の男にしては華奢な体を、秀吉の腕は壊さぬように優しく包み込む。
「すまなかったな」
「しょうがないのはわかってたし……でも……家康君と三成君が一緒に行きたがってたのにさ……」
「そうだな」
「…………………………………ごめんなさい」
長い沈黙の後、秀吉の胸元に顔を押しつけた半兵衛の口から漏れたのは謝罪の言葉だった。
子供じみた我が儘であることは、自分でもわかっていたのだろう。恥ずかしげに顔を下に向け、腕は秀吉の体に絡みつかせ。
愛おしげに力を込め、更に体を密着させる。
「家康、三成」
「はいっ!」
「なんだ?」
「これから我と半兵衛は少し話をせねばならぬ。少し上へ行っているといい」
「よし三成、儂と二階で遊んでいるか」
「そうだな」
秀吉の声と威厳と子供っぽさが同居した笑みに、子供二人が感じたものはただ一つだった。
これから大人達はいちゃつきタイムなのだ。
なんとなく事情を察した家康と、もうこんな事は慣れっこになってしまっている三成は顔を見合わせ。どちらともなく手を繋ぐと、お土産の詰まった袋すら持たずに二階へと移動することを選んだ。
夫婦(?)仲良くは家庭円満の秘訣なのだ。
子供の我が儘で大人達の仲良しの時間を邪魔してしまったら、今度はもっとひどい大喧嘩になる可能性だってある。それを回避するために、お土産の山を捨てて一時撤退を選んだ二人なのであった。
8/9
その日旅行のお土産を持って三成が最初に訪問したのは幸村の家だった。
とある用事で中のよう同級生達がその家に集まるという連絡を受け、袋いっぱいのお土産を抱えて質実剛健という言葉がよく似合う幸村の家へと到着したのだが。
「だから何度言えばわかる! 分数の割り算はそのままかけてはならぬのだ!」
「真田さん…………それとこの漢字も間違ってます」
「読書感想文も三行で終わりか。どこから直せばいいのだ……」
「自由研究は決まったんですか? こんなにゆっくりやっていたら、間に合わないですよ?」
乱雑に色々な物が置かれている幸村の部屋を更に散らかしているのは問題集の山。
三成は最初の3日で集中して終わらせてしまったのだが、基本的に勉強が苦手な幸村は今の今まで全てを放置していたらしい。おまけにコップに入った麦茶をストローで飲んでいる鶴姫の言葉から考えると、自由研究も工作も全く手を付けていないのだろう。
お土産を配り北海道の話をする前に、これは幸村を手伝うべきか。
すぐにお盆に突入し、それが終われば三成達の学年は夏期の林間学校が待っている。他のクラスと交流を持たなければならないこのイベントが嫌ではあったのだが。その前に宿題を片付けなければ、大変なことになってしまうはず。
そう考えて毛利と鶴姫も集まっているはず。
「邪魔するぞ」
「石田殿! 北海道は楽しかったのですか?」
「土産はどうした……今年もぼんぬを買ってきたのであろうな?」
「おかえりなさい! 石田さんも手伝いに来てくれたんですね」
「手伝うが、まずは土産だ。ボンヌと三方六を買ってきた」
「石田……それだけではあるまい?」
「当然だ。姫の好きなきなチョコ黒大豆も買ってきている」
重い紙袋をテーブルの上にのせると、思い思いの動きで喜んでくれたのはいいが。
宿題を片付けずに遊んでばかりいた幸村は、今度のことを考えて落ち込んでいるのだろう。菓子の山を見ても少しも顔をほころばせない幸村に、早速袋の中に手を入れて望みの物を探し始めている鶴姫がごく当たり前のことを言う。
「宿題はちゃんと先に片付けておくものですよ。そうしないから後から困ったことになるんです」
本人に悪気は全くないのだが、彼女は思った事をそのまま言いすぎる傾向がある。
それで何度も痛い目を見ているというのに、懲りないというか素直すぎるのが悪いというか。しかしそれもこの中まで集まれば、彼女の良い特徴として受け入れられるのだ。
だから彼女は同性の友達よりも三成達を選ぶ。
「某が遊びすぎたのが悪かったのですな……」
「石田さんは北海道に旅行に行ったり剣のお稽古をしていても、ちゃんと宿題を終わらせてますよ! 真田さんもがんばれば終わります!」
「鶴姫殿……」
「ばば~んと頑張りましょう! みんなでお手伝いしますから!」
「我は石田がぼんぬを持ってくるまでしか手伝わぬと言ったはずだが……」
「毛利さんは口ではそんなことを言いますけど、優しい人ですから♪」
だからお手伝いしてくれますよね!
有無を言わせぬ可愛らしい笑みに、お目当てのボンヌを手にした毛利の動きが止まる。
彼女のこの強引さが、なんやかんや言いながらも弱腰の男達を引っ張っているのだ。男三人に女の子一人の奇妙な友人関係だが。
男達は一度も文句を言ったことがない。
「…………姫が言ったから手伝うのではない」
「そうですね」
「皆でやれば早く終わるだろう。今日は半兵衛様の帰りも遅いらしい……家康に今日は遅くなると電話すれば大丈夫だ」
「じゃあみんなで宿題できますね!」
嬉しそうに胸の前で手を合わせる鶴姫を見て、男達は思った。
彼女にはかなわない。
結局幸村の宿題の7割程は日がとっぷりと暮れるまでの時間を費やして、片付けることができた。そのご三成達は宿題を手伝ってくれたお礼という名目で、武田家でバーベキューと花火を楽しみ。
夏の一夜を思う存分楽しんだのであった。
8/10
「明後日か……」
「明後日なのか……」
その日、リビングで子供達はため息をつきながらその言葉ばかりを繰り返していた。
普段はごろごろとソファーに寝そべっているか、ゲームで遊んでいるというのに今日は二人並んで顔を下に向け。暗いオーラを纏っているのだから、半兵衛も見ているだけで気が滅入ってくる。
せっかく仕事が早く終わったというのに、周囲がこれでは楽しい気分になれない。
「別にとって喰われるわけでもないんだから……それにお小遣いもらえるかもよ?」
「ねねちゃんはくれます! おじさんたちもおばさんたちもくれますが…………やっぱり行きたくないです」
「儂も向こうの親戚達には会いたくないな……父の墓もこちらにある。無理に行かなくてもいいのではないか?」
「駄目。ちゃんと盆と正月には家に帰らせるって約束で君を預かったんだから」
その言葉を聞いた瞬間家康の表情が一気に固まる。
三成は祖母のいる豊臣の家に行きたくないし、家康は西の方にある実家に帰りたくない。二人の事情も気持ちもわかるのだが、半兵衛は立場上行けと言うしかないの。
豊臣の家の実権を未だに握っている秀吉の母は、夫の愛人の血統である三成を嫌っている。他の親戚達は三成を受け入れて可愛がってくれているのだが、彼女だけは未だに視界に三成を入れることすら拒む有様。いい年してそれはないだろうとか、家の将来のことを考えないのかとか。色々と親族には言われているらしいのだが、それが彼女の矜持なのだろう。
自分の血筋ではなく、他の女の血筋が後を継ぐ。
自ら望んで嫁入りしたからこそ、それが許せないのだ。
それを三成に話しても、彼にはまだわからないだろう。いつか頑固極まりないあの女が三成を跡取りとして受け入れる日も来るのだろうが、それはまだ遠い先の話。
半兵衛だって彼女に秀吉の『嫁』として認められるのにかなりの時間を費やしたのだ。
受け入れてもらえるまで三成は散々な目に遭うだろうが。それでも三成の努力の先にはきっと道がある。
家康よりはよほどまし。
「三成はねねちゃんがいるし、あの婆さんを我慢すればいいのだろう? 儂は本家は嫌いだ、勉強ばかりさせられる……」
「お盆はお墓参りをしてお坊さんが来るのではないのか? それと茶会もする」
「三成は茶会の手伝いは好きだと言っていたではないか」
「秀吉様の手前はすごく美しいのだぞ! かっこいいのだ!」
「それは僕も認める。それにしても家康君は実家に帰ってお勉強か……大変だね」
「わざわざこの時期だけ家庭教師を用意しているのだ……経済学の講義など聴きたくもない」
「学校の勉強ではないのか?」
「君の家は相変わらず、ずれまくってるよね……」
中学生の子供に経済学を勉強させることもないだろうに。
あの家は子育ての方向性を思いっきり間違ってるなと思いながら、半兵衛はとりあえず子供達を落ちつかせるための提案をしてみる。
「お盆が終わったら……一緒にご飯でも食べに行こうか。ザビー亭の商品券いっぱいもらったから」
「ファミレスというものなのだろう、そこは……そんなもので儂を釣れると……」
「半兵衛様、びっくりサンデーハンバーグと愛のレインボーパフェが食べたいです!」
「多分お盆過ぎたら秋の新メニューが入り始める頃だから、別な物食べたら?」
「駄目ですびっくりサンデーハンバーグは美味しいのです!」
途端に顔を上げ、三成だけは大喜びし始める。
あまり外食にはつれていきたくないのだが、商品券をもらってしまったら話は別だ。使わないともったいないし、なにより付き合いのある会社の状態を知るには実際に食べに行くのが一番。
接客が乱れていたり、客が少なくなってきていれば経営悪化の前兆。
一応気にしておく必要があるし、子供達が喜ぶのならそれが一番。辛いことを我慢して帰ってくるのだから、少しは楽しいことも用意してあげなければ。
「…………帰らなくても許されるということはないのだな……それは困ったな」
半兵衛の意図に気がついたらしい家康はぶつくさと文句を言っているわけだが。
どれだけ文句を言っても血のつながりという縁を切ることはできない。それを切ってしまえば頼れる物を一つ失ってしまうのだ。
それを家康が理解するのはいつの日になるのやら。
絶対にこの子、家に帰らなくて済む方法を考えてる。
それを察知した半兵衛は、後で秀吉に相談しようと心に決め。
家康にそれを悟らせないように、彼に向かってにっこりと笑って見せたのだった。
8/11
昨夜半兵衞が秀吉に電話をして何かを話していたのは知っていたが。
「離してくれ! 儂はまだ帰りたくない!」
「我が儘を言うな。父だけではなく、先祖の墓にも手を合わせてくるのだな」
「三成はまだ帰らなくていいというのに、何故儂だけが帰らなければならないのだ~!」
まさか、帰る日を早めて家康を迎えの車に無理矢理押し込むとは。
なんとなく三成も家康は理由を付けて実家に帰らないのではないかと思ってはいたが、それを阻止するためにこんな手を使うとは思わなかった。確かに帰る日を早めれば家康も油断するだろうし、なにより準備をする時間がなくなる。
自分も豊臣の家に行きたくないと言ったら、同じ事をされるのだろうか。
家康の面倒を幼い頃から見てきたいという秀吉を超える長身の男は、秀吉に抱えられていた家康を受け取るとそのまま高級そうな黒の外車へと押し込む。乗り換えの際に見失うよりは、車で実家まで搬送した方がいいと秀吉は判断したのだろう。
半兵衞が持っている旅行鞄にはきっと家康の着替えが詰め込まれていて。
車の中でもじたばたしている家康に向けて、その鞄を笑顔で渡したのも昨日の電話での打ち合わせの結果のはず。
「はい家康君、気をつけていってくるんだよ。向こうも暑いから気をつけてね」
「まだ帰りたくない! 忠勝が来てくれたのは嬉しいが……帰るのは明日のはずだろう?」
「だって君、逃げる計画立ててたでしょ? 向こうの家との決まり事なんだから、長宗我部君の家とかに逃げられても困るんだって」
「な、なぜわかったのだ!?」
「昨日長宗我部君の家に電話して確認したから。君が来てもかくまわないでくれって話してあるから、逃げても無駄だよ」
車の窓から顔を出している家康は、端から見てもわかるぐらいにがっくりと肩を落とした。
そんな家康に何を言えばいいのかわからず、半兵衞の後ろに隠れていると背中に当てられた手が、三成を前に押し出した。
「秀吉様……?」
「しばしの別れだ。見送ってやることだな」
「…………は、はい!」
秀吉の心遣いに感謝しながら、とりあえず家康、と声をかけてみる。
中学生になったというのに子供の様に顔を膨らませ。必死に嫌がっている家康に向かって、おずおずと口を開く。
「家康…………私も明日家に帰る」
「三成はいつ帰ってくるのだ?」
「16日らしい」
「そうか……儂はいつ戻ってこれるのだろうな」
「早く帰ってくるのだ! 私も早く戻る!」
開いた窓から伸びた手が、三成の前髪にそっと触れる。
きっと家康は本気で家に帰りたくないのだろう。三成にとって家はここだし、豊臣の家は挨拶を死に行かなければいけない場所に過ぎない。だが家康は本家が帰らなければならない場所なのだ。
家康が帰ってきたらいっぱい優しくしてやろう。
前髪に触れていた手が離れ、窓が閉まり。ゆっくりと車が遠ざかっていくのを、三成は半兵衞に肩を抱かれ。秀吉に見守られながら、大切な家族が去って行く姿を言葉もなく見守ったのだった。
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ということで3週目終了!
ついったでは続き書けるかなあ……と思いましたが、スケジュールの関係上難しそうな予感が。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
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・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
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