こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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前半だけ、後半は間に合えば今日中にアップします。
追記
書き終えました。
追記
書き終えました。
*****
ちび村という名前の虎耳のちびが現れ。
三成の一応静かだったような日々は、あっさり終わってしまった。竹千代の悪戯にはもう慣れてしまっていたし、悪いことをしたら尻を叩けばしばらくの間大人しくしていることは半兵衛が教えてくれた。それに大阪城のちびたちは三成と半兵衛には基本的には絶対服従なのだ。
なので特に仕事の邪魔をされることもなく。
家康が来ない寂しさを抱えながらも、一応楽しく暮らしていたのだが。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「貴様は叫ばないと話せないのか!」
『騒音斬滅』
「きゅ~きゅ~~~っ!」
「竹千代、ちび村の真似をするな!」
真田家に住んでいるらしいちび、ちび村はとにかく騒がしかった。
甲斐には騒がしい人間しかいない(忍びは除く)と認識している三成だったが、まさかちびまでうるさいとは。口を開けば勇壮な叫び声ばかりのちび村だが、彼にとってはそれが意思伝達手段。
その叫び声を佐吉が通訳してくれるのだが、性格は基本的に悪くない。
むしろすごく性格がいいと言ってもいい。
大阪城に飛び込んできた件についても(叫び声だが)詫びてくれたし、住んでいる甲斐に帰りたいので、できれば連絡を取って欲しいと(叫び声だが)願ってきた。佐吉と竹千代もちび村の細くて長い尻尾を気に入ったらしいし、なにより甲斐の武田は豊臣と親密なのだ。
その願いを叶えないわけがない。
そういうことで三成はここ数日あまり仕事を割り振られず、主にちび村の世話に終始することになったわけだ。その間特に問題もなく、今朝は竹千代がいきなりいなくなったりもしたがそれもすぐ戻ってきた。
もう竹千代がいなくなること程度で誰も騒がない、それが大阪城のお約束。
それにしても、こじゅといいちび村といい瀬戸内のちびたちといい。どうして余所のちびは悪戯もせず、食べ物を食い荒らすこともない子ばかりなのだろう。
うちのちびは悪戯と暴飲暴食の限りを尽くすというのに(主に竹千代が)。
「うぉぉぉ!」
「きゅっきゅ♪」
『遊技歓喜』
楽しそうにぐるぐると部屋の中を回るちびが三人。
おいかけっこをしているらしいが、ちび村と竹千代はともかく佐吉は字を書きながら走り回って楽しいだろうか。襖を全開にしているので風は入ってくるし、ちび村が熱を発していないので部屋はとても過ごしやすい。しかし三人が遊ぶ場所を確保するために部屋の隅に追いやられた三成は、膝を抱えて座りながらこの世の無常さを感じていた。
自分の部屋なのに、何故隅に追いやられる。
ちびたちがきゃいきゃいしながら遊んでいる姿は可愛らしいのだが、なんというか見ていると物寂しい。別に仲間に入って自分も遊びたいわけではないが、隅で見ているだけというのも違う気がするのだ。
ここ数日そんな思いを味わってきたが、今日でそれも最後になる。
「ちび村、今日の夕刻あたりに真田が迎えに来るそうだ」
「うぉぉぉ!?」
「さっさと帰る支度をしろ……と言いたいところだが、貴様は身一つで来たのだったな」
「きゅきゅっ!」
『虎耳帰還斬滅』
「貴様ら…………」
ちび村と仲良くなったのはいいのだが、ちゃんと家に帰してやれよ。
とはいえ、こじゅが奥州に帰った時も佐吉はしばらく寂しさで泣き暮らしていたのだ。今はちび政宗という新しい友達もできて、文通をしたりしているが。それでもせっかうできた友達がいなくなるのは寂しいらしい。
三成が帰るという単語を口にした瞬間、目を潤ませ始めたのだからもうこのちび狐はどうしようもない。
「佐吉…………泣くな」
「きゅ~?」
「うぉぉぉ?」
首をぶんぶんと振って泣いてないと必死に訴えている佐吉の目の端から涙がぽろり。
途端に足を止めて佐吉を慰め出す他のちびたちだったが、その程度で佐吉の涙が止まるなら今まで苦労はしていない。一度大泣きを始めるとなかなか泣き止まないので、今の内に慰めておくべきだろう。
そう思い、手を伸ばして佐吉を抱き上げようとすると。
横から伸びてきた手が先に佐吉を捉え、あっさりと横から奪っていった。
「また泣いているのか……泣きすぎではないのか?」
『涙容量無限大』
「三成が心配する、あまり泣くな」
「…………家康……何故貴様がここにいる!?」
「朝いきなり竹千代が三河に来てな、いきなりここに連れてこられた。先に秀吉と半兵衛に挨拶をしてきたのだが、ちび村というのはお前か」
「うぉぉぉぉ!」
そうかそうかと言いながら片腕ですくい上げた佐吉を立てた片膝に乗せ、当然のようにその男は三成の横に座った。
三成にとって豊臣軍と同じくらい大切で。
それと同時に悩みの種の一つでもある存在。
短く刈った黒い髪、そして人なつっこそうな同じ色合いの瞳。優しさに満ちたその目で三成を愛おしげに見つめ、徳川家康は子供のように無邪気な笑顔を浮かべて見せた。
「儂は三成に会えて嬉しい」
「そうか……だが竹千代が迷惑をかけた」
「耳が増えて佐吉が取られそうで大変なので助けて欲しいと言っていたのでな。あまりにも必死だったのでとりあえず来てみたのだが…………あまり困っていないようだな……」
「今日の夕刻には真田が迎えに来る、貴様が来る必要はないのだがな」
「…………真田が…………だと?」
家康が来るのは嬉しいが、どうでもいい用事で呼んでしまうのは心苦しい。
どうしていいかわからず、ぶっきらぼうな態度でしか接することができない自分を内心責めていた三成だったが。真田の名前が出た瞬間、声を強張らせたことに気がついて。
自分の浅慮を更に思いっきり責めたのだった。
「で、そういうことになっちゃったんだ」
「はい、これも私の浅はかな発言が原因で…………申し訳ございません」
畳に頭を擦りつけられるのなら擦りつけたい。そう言いたげにしながら深々と頭を下げる三成に半兵衛が返した言葉は、
「僕は見ていて面白いからそのままでいいんだけど」
だった。
場所は大阪城の謁見の間。
もうすぐ真田幸村が到着するという先触れが来たので、ちびたちに関係している人間がそこに集った訳なのだが。
まず三成の膝の上に竹千代と佐吉。
そしてその三成を膝に乗せているのが家康。
自分たちの仲の良さを見せつけなければいけない。真田の名前を聞いた瞬間にそう言いだした家康の提案でそんなことになったわけなのだが。
『視界良好』
「きゅきゅ♪」
普段より目線が高くなるからか、ちびたちには大変好評であった。
嬉しそうに膝の上で体を寄せ合っている二人を見ていると、膝から降りたいとは言い出せず。ついでに先程まで泣きそうになっていた佐吉もご機嫌になったのだから、この家康の提案は間違っていなかったような気がするのだが。
さすがにこの年で男の膝の上に座るのはどうなのだろう。
気になったので、楽しそうにしている半兵衛に聞いてみるが。
「半兵衛様……その……」
「なに?」
「これは……間違っている気がするのですが……」
「僕は結構秀吉の膝に座るけど」
「そ、そうなのですか!」
「だって僕見下されるの嫌いだし……秀吉の膝に座ると、見下ろせて便利なんだよね~」
絶対にそれは違う。
そんな考えが一瞬だけ頭をよぎったが、忠誠心は豊臣一と呼ばれている三成は必死にそれを頭の中で打ち消した。
代わりに、
「さすが半兵衛様、周囲に威圧感を与えるためにそのようなことをなされるとは」
と、脳内で都合がいいように話を作り替えてみた。
秀吉は今ちび村を風呂に入れてくれている。
城主自らがそんなことをしてはいけないと家臣一同で止めたのだが、秀吉はそんな言葉を受け入れはしなかった。すっかりちび村が気に入ったらしく、ここ数日間は暇を無理矢理作っては三成の部屋を訪問しちび村と遊んでいたのだ。
佐吉や竹千代のことも可愛がりたいらしいのだが、彼らは半兵衛の方に懐いているし大きすぎる秀吉に自ら近づくことがほとんどない。可愛がりたいのに側に来てくれない、そんな理由で色々歯がゆい思いをしていたらしいのだが、そこに都合良くちび村が現れた。
日頃甲斐の強者達と一緒に暮らしているので、秀吉を見ても怯えることがなく。
おまけに武を尊ぶ秀吉と似た感性を持っている。
そのような理由で秀吉はちび村を甲斐に帰すのをちょっとだけ嫌がっており、幸村が来る直前に風呂に入れ始めるという無駄な抵抗を始めているのであった。
半兵衛は、秀吉のそんなところが可愛いんだよねと笑っているが。
色々と理由を付けて返さなかったら、外交問題になるのでは。家康の膝の上でそんな不安を抱いていると、半兵衛が軽く表情を引き締めてから話しかけてきた。
「そういえば、ちび村君の能力なんだけどね…………周囲を暑くするっていうのはちがうんじゃないかな」
「ですがちび村がいたから廊下が暑く……」
『熱波到来』
「襖を開けたから廊下の暑さが入ってきたんでしょ? つまり廊下だけが暑かった……それがどういうことだかわかる?」
「儂にはさっぱりわからん!」
「家康君はそうだよね……まあ、君にはそういう方面の期待はしてないし」
さらっとひどいことを言っているが、家康もそれはわかっていたらしい。
にかっと笑ってみせると後ろから手を回して三成の腰を抱き、自信満々でこう言ってみせたのであった。
「こうして三成の腰を触っている方が楽しいぞ!」
「いえやすぅぅぅ! 貴様ぁぁぁぁぁぁ」
「そうやって怒鳴りつける割に、家康君の膝から降りないよね」
「………………………」
痛いところを突かれて黙りこくった三成に、半兵衛は更に言葉を続ける。
だがそれは家康との仲をからかう言葉ではなく。軍師としてのちび村の能力を考察するためのものであった。
ほっそりとした指が顎に当てられ、言葉を選ぶかのようにゆっくりと唇は動く。きっと半兵衛の仲ではもう回答は出ているのだろうが、それを三成達にどうわかりやすく説明するかを考えているのだ。
「空間だけ切り取って温度調節をするのもきっと違う。それにちび村君は甲斐からここまで飛ばされてきたって言ってたよね?」
「はい」
『虎耳飛翔』
「きゅ~」
「どれだけ武田信玄が力強くても、これだけ距離があったら普通は不可能。だからきっと……増幅する能力の類だと思うんだよね」
「何を増幅するのだ?」
『事象全部増幅』
「はい、佐吉君正解!」
『大歓喜』
半兵衛に指さされ、佐吉は持っている紙を投げ出す勢いで喜んでいる。
自分たちのように余計な常識にとらわれていない佐吉の方が、物事を柔らかく考えることができるのだろう。手足をぱたぱたと動かして喜ぶ佐吉の横で竹千代が拍手をしている。
佐吉の喜びは自分の喜び、でも佐吉が悲しむことは絶対に許さない。
自分が悪戯放題で散々佐吉を困らせているというのに、竹千代はそんな信念を持っているらしかった。三成によいことがあると自分の事のように一緒になって喜んでくれる家康とそんな所は似ていると思いながら、三成は半兵衛をじっと見据えた。
話の続きを聞くために。
「つまり、ちび村君の能力は抵抗をなくして無限に増幅させる……っていうものなんじゃないのかなって」
「抵抗を無くすのですか?」
「物を投げたら途中で落ちるよね? あれは風の抵抗があるからでしょ? つまりそういうのをなくせば矢だってもっと長い距離を飛ぶ。ちび村君の能力はそういうものなんじゃないかなって」
「ということは……甲斐は凄まじい切り札を手に入れたのでは」
「…………三成君は佐吉君とか竹千代君を戦に利用するつもりはある?」
「ありません」
そういうことだよ、と涼やかに半兵衛は笑う。
小さくて可愛らしくて、不可思議な生き物であるちび。
普通の両親を持ち合わせている人間ならば、彼らを戦に使えるわけがない。甲斐の人間達は三成が知る限り、とても善良でおせっかいで元気いっぱい。そんな彼らは、当然ちびたちを戦にかり出すことなどしないだろう。
豊臣家が同じ選択をしたように。
「でもおかしな噂はあるんだよね…………」
「半兵衛、それは爆発騒ぎのことか?」
「家康君は耳が早いね……それだよ」
「爆発騒ぎ?」
ちびたちと住み始めてから、三成は城の外に出る回数が減った。
それはしょうがないと思っているのだが、各地の噂を聞く機会が減ったのが唯一の問題点だった。半兵衛は城にこもっていてもどこからともなくい様々な噂を仕入れてくるのだが、あいにく三成はまだその域に達していない。
なので家康に聞いてみると、彼は懇切丁寧に説明をしてくれたのだった。
「各地の城や寺でな…………爆発騒ぎが起こっているのだそうだ。古い寺や城が燃やされてしまってな、必ず何かが持ち去られているらしい。それがあまりにも続いているらしく、元親から儂にも注意するように文が届いた」
「家康君の言っていることでほとんど正解なんだけど……一つだけ補足するね。持ち去られている物の中に、必ず鏡が入っているんだ。茶碗とか仏像とか、年代物の宝刀とかも普通に盗まれてるけどおかしいよね……鏡だけは必ず盗むなんて」
「大阪城には……」
「うちにはそんな年代物の鏡なんてないよ、安心して」
謎の爆発、盗まれる鏡。
奇妙な事件だと思うが、大阪城に盗まれる物がないのなら気にすることはない。そのTきはそう考えた三成だったが、近い将来この事件に巻き込まれることになる。
この後の真田幸村の来訪でこの時は忘れてしまうのだが。
家康の膝の上でそんなことを聞いた、その時までそれを思い出すことはなかった。
________________________________________
竹千代は困っているのか困っていないのかよくわからない狸w
だが私は大好きです…………書きにくいけどね。
ということでちび村の能力は半兵衛様はあんな風に解釈しましたが、実際は抵抗をなくしてのベクトルの維持になりますな。つまり温度が上がる環境ならあがりっぱなし、ボールを投げたら空気抵抗とかがなくなるから通常の数倍とぶことになる、と。
お館様が飛ばせば、そりゃあ数百キロ単位で飛ぶよなw
三成の一応静かだったような日々は、あっさり終わってしまった。竹千代の悪戯にはもう慣れてしまっていたし、悪いことをしたら尻を叩けばしばらくの間大人しくしていることは半兵衛が教えてくれた。それに大阪城のちびたちは三成と半兵衛には基本的には絶対服従なのだ。
なので特に仕事の邪魔をされることもなく。
家康が来ない寂しさを抱えながらも、一応楽しく暮らしていたのだが。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
「貴様は叫ばないと話せないのか!」
『騒音斬滅』
「きゅ~きゅ~~~っ!」
「竹千代、ちび村の真似をするな!」
真田家に住んでいるらしいちび、ちび村はとにかく騒がしかった。
甲斐には騒がしい人間しかいない(忍びは除く)と認識している三成だったが、まさかちびまでうるさいとは。口を開けば勇壮な叫び声ばかりのちび村だが、彼にとってはそれが意思伝達手段。
その叫び声を佐吉が通訳してくれるのだが、性格は基本的に悪くない。
むしろすごく性格がいいと言ってもいい。
大阪城に飛び込んできた件についても(叫び声だが)詫びてくれたし、住んでいる甲斐に帰りたいので、できれば連絡を取って欲しいと(叫び声だが)願ってきた。佐吉と竹千代もちび村の細くて長い尻尾を気に入ったらしいし、なにより甲斐の武田は豊臣と親密なのだ。
その願いを叶えないわけがない。
そういうことで三成はここ数日あまり仕事を割り振られず、主にちび村の世話に終始することになったわけだ。その間特に問題もなく、今朝は竹千代がいきなりいなくなったりもしたがそれもすぐ戻ってきた。
もう竹千代がいなくなること程度で誰も騒がない、それが大阪城のお約束。
それにしても、こじゅといいちび村といい瀬戸内のちびたちといい。どうして余所のちびは悪戯もせず、食べ物を食い荒らすこともない子ばかりなのだろう。
うちのちびは悪戯と暴飲暴食の限りを尽くすというのに(主に竹千代が)。
「うぉぉぉ!」
「きゅっきゅ♪」
『遊技歓喜』
楽しそうにぐるぐると部屋の中を回るちびが三人。
おいかけっこをしているらしいが、ちび村と竹千代はともかく佐吉は字を書きながら走り回って楽しいだろうか。襖を全開にしているので風は入ってくるし、ちび村が熱を発していないので部屋はとても過ごしやすい。しかし三人が遊ぶ場所を確保するために部屋の隅に追いやられた三成は、膝を抱えて座りながらこの世の無常さを感じていた。
自分の部屋なのに、何故隅に追いやられる。
ちびたちがきゃいきゃいしながら遊んでいる姿は可愛らしいのだが、なんというか見ていると物寂しい。別に仲間に入って自分も遊びたいわけではないが、隅で見ているだけというのも違う気がするのだ。
ここ数日そんな思いを味わってきたが、今日でそれも最後になる。
「ちび村、今日の夕刻あたりに真田が迎えに来るそうだ」
「うぉぉぉ!?」
「さっさと帰る支度をしろ……と言いたいところだが、貴様は身一つで来たのだったな」
「きゅきゅっ!」
『虎耳帰還斬滅』
「貴様ら…………」
ちび村と仲良くなったのはいいのだが、ちゃんと家に帰してやれよ。
とはいえ、こじゅが奥州に帰った時も佐吉はしばらく寂しさで泣き暮らしていたのだ。今はちび政宗という新しい友達もできて、文通をしたりしているが。それでもせっかうできた友達がいなくなるのは寂しいらしい。
三成が帰るという単語を口にした瞬間、目を潤ませ始めたのだからもうこのちび狐はどうしようもない。
「佐吉…………泣くな」
「きゅ~?」
「うぉぉぉ?」
首をぶんぶんと振って泣いてないと必死に訴えている佐吉の目の端から涙がぽろり。
途端に足を止めて佐吉を慰め出す他のちびたちだったが、その程度で佐吉の涙が止まるなら今まで苦労はしていない。一度大泣きを始めるとなかなか泣き止まないので、今の内に慰めておくべきだろう。
そう思い、手を伸ばして佐吉を抱き上げようとすると。
横から伸びてきた手が先に佐吉を捉え、あっさりと横から奪っていった。
「また泣いているのか……泣きすぎではないのか?」
『涙容量無限大』
「三成が心配する、あまり泣くな」
「…………家康……何故貴様がここにいる!?」
「朝いきなり竹千代が三河に来てな、いきなりここに連れてこられた。先に秀吉と半兵衛に挨拶をしてきたのだが、ちび村というのはお前か」
「うぉぉぉぉ!」
そうかそうかと言いながら片腕ですくい上げた佐吉を立てた片膝に乗せ、当然のようにその男は三成の横に座った。
三成にとって豊臣軍と同じくらい大切で。
それと同時に悩みの種の一つでもある存在。
短く刈った黒い髪、そして人なつっこそうな同じ色合いの瞳。優しさに満ちたその目で三成を愛おしげに見つめ、徳川家康は子供のように無邪気な笑顔を浮かべて見せた。
「儂は三成に会えて嬉しい」
「そうか……だが竹千代が迷惑をかけた」
「耳が増えて佐吉が取られそうで大変なので助けて欲しいと言っていたのでな。あまりにも必死だったのでとりあえず来てみたのだが…………あまり困っていないようだな……」
「今日の夕刻には真田が迎えに来る、貴様が来る必要はないのだがな」
「…………真田が…………だと?」
家康が来るのは嬉しいが、どうでもいい用事で呼んでしまうのは心苦しい。
どうしていいかわからず、ぶっきらぼうな態度でしか接することができない自分を内心責めていた三成だったが。真田の名前が出た瞬間、声を強張らせたことに気がついて。
自分の浅慮を更に思いっきり責めたのだった。
「で、そういうことになっちゃったんだ」
「はい、これも私の浅はかな発言が原因で…………申し訳ございません」
畳に頭を擦りつけられるのなら擦りつけたい。そう言いたげにしながら深々と頭を下げる三成に半兵衛が返した言葉は、
「僕は見ていて面白いからそのままでいいんだけど」
だった。
場所は大阪城の謁見の間。
もうすぐ真田幸村が到着するという先触れが来たので、ちびたちに関係している人間がそこに集った訳なのだが。
まず三成の膝の上に竹千代と佐吉。
そしてその三成を膝に乗せているのが家康。
自分たちの仲の良さを見せつけなければいけない。真田の名前を聞いた瞬間にそう言いだした家康の提案でそんなことになったわけなのだが。
『視界良好』
「きゅきゅ♪」
普段より目線が高くなるからか、ちびたちには大変好評であった。
嬉しそうに膝の上で体を寄せ合っている二人を見ていると、膝から降りたいとは言い出せず。ついでに先程まで泣きそうになっていた佐吉もご機嫌になったのだから、この家康の提案は間違っていなかったような気がするのだが。
さすがにこの年で男の膝の上に座るのはどうなのだろう。
気になったので、楽しそうにしている半兵衛に聞いてみるが。
「半兵衛様……その……」
「なに?」
「これは……間違っている気がするのですが……」
「僕は結構秀吉の膝に座るけど」
「そ、そうなのですか!」
「だって僕見下されるの嫌いだし……秀吉の膝に座ると、見下ろせて便利なんだよね~」
絶対にそれは違う。
そんな考えが一瞬だけ頭をよぎったが、忠誠心は豊臣一と呼ばれている三成は必死にそれを頭の中で打ち消した。
代わりに、
「さすが半兵衛様、周囲に威圧感を与えるためにそのようなことをなされるとは」
と、脳内で都合がいいように話を作り替えてみた。
秀吉は今ちび村を風呂に入れてくれている。
城主自らがそんなことをしてはいけないと家臣一同で止めたのだが、秀吉はそんな言葉を受け入れはしなかった。すっかりちび村が気に入ったらしく、ここ数日間は暇を無理矢理作っては三成の部屋を訪問しちび村と遊んでいたのだ。
佐吉や竹千代のことも可愛がりたいらしいのだが、彼らは半兵衛の方に懐いているし大きすぎる秀吉に自ら近づくことがほとんどない。可愛がりたいのに側に来てくれない、そんな理由で色々歯がゆい思いをしていたらしいのだが、そこに都合良くちび村が現れた。
日頃甲斐の強者達と一緒に暮らしているので、秀吉を見ても怯えることがなく。
おまけに武を尊ぶ秀吉と似た感性を持っている。
そのような理由で秀吉はちび村を甲斐に帰すのをちょっとだけ嫌がっており、幸村が来る直前に風呂に入れ始めるという無駄な抵抗を始めているのであった。
半兵衛は、秀吉のそんなところが可愛いんだよねと笑っているが。
色々と理由を付けて返さなかったら、外交問題になるのでは。家康の膝の上でそんな不安を抱いていると、半兵衛が軽く表情を引き締めてから話しかけてきた。
「そういえば、ちび村君の能力なんだけどね…………周囲を暑くするっていうのはちがうんじゃないかな」
「ですがちび村がいたから廊下が暑く……」
『熱波到来』
「襖を開けたから廊下の暑さが入ってきたんでしょ? つまり廊下だけが暑かった……それがどういうことだかわかる?」
「儂にはさっぱりわからん!」
「家康君はそうだよね……まあ、君にはそういう方面の期待はしてないし」
さらっとひどいことを言っているが、家康もそれはわかっていたらしい。
にかっと笑ってみせると後ろから手を回して三成の腰を抱き、自信満々でこう言ってみせたのであった。
「こうして三成の腰を触っている方が楽しいぞ!」
「いえやすぅぅぅ! 貴様ぁぁぁぁぁぁ」
「そうやって怒鳴りつける割に、家康君の膝から降りないよね」
「………………………」
痛いところを突かれて黙りこくった三成に、半兵衛は更に言葉を続ける。
だがそれは家康との仲をからかう言葉ではなく。軍師としてのちび村の能力を考察するためのものであった。
ほっそりとした指が顎に当てられ、言葉を選ぶかのようにゆっくりと唇は動く。きっと半兵衛の仲ではもう回答は出ているのだろうが、それを三成達にどうわかりやすく説明するかを考えているのだ。
「空間だけ切り取って温度調節をするのもきっと違う。それにちび村君は甲斐からここまで飛ばされてきたって言ってたよね?」
「はい」
『虎耳飛翔』
「きゅ~」
「どれだけ武田信玄が力強くても、これだけ距離があったら普通は不可能。だからきっと……増幅する能力の類だと思うんだよね」
「何を増幅するのだ?」
『事象全部増幅』
「はい、佐吉君正解!」
『大歓喜』
半兵衛に指さされ、佐吉は持っている紙を投げ出す勢いで喜んでいる。
自分たちのように余計な常識にとらわれていない佐吉の方が、物事を柔らかく考えることができるのだろう。手足をぱたぱたと動かして喜ぶ佐吉の横で竹千代が拍手をしている。
佐吉の喜びは自分の喜び、でも佐吉が悲しむことは絶対に許さない。
自分が悪戯放題で散々佐吉を困らせているというのに、竹千代はそんな信念を持っているらしかった。三成によいことがあると自分の事のように一緒になって喜んでくれる家康とそんな所は似ていると思いながら、三成は半兵衛をじっと見据えた。
話の続きを聞くために。
「つまり、ちび村君の能力は抵抗をなくして無限に増幅させる……っていうものなんじゃないのかなって」
「抵抗を無くすのですか?」
「物を投げたら途中で落ちるよね? あれは風の抵抗があるからでしょ? つまりそういうのをなくせば矢だってもっと長い距離を飛ぶ。ちび村君の能力はそういうものなんじゃないかなって」
「ということは……甲斐は凄まじい切り札を手に入れたのでは」
「…………三成君は佐吉君とか竹千代君を戦に利用するつもりはある?」
「ありません」
そういうことだよ、と涼やかに半兵衛は笑う。
小さくて可愛らしくて、不可思議な生き物であるちび。
普通の両親を持ち合わせている人間ならば、彼らを戦に使えるわけがない。甲斐の人間達は三成が知る限り、とても善良でおせっかいで元気いっぱい。そんな彼らは、当然ちびたちを戦にかり出すことなどしないだろう。
豊臣家が同じ選択をしたように。
「でもおかしな噂はあるんだよね…………」
「半兵衛、それは爆発騒ぎのことか?」
「家康君は耳が早いね……それだよ」
「爆発騒ぎ?」
ちびたちと住み始めてから、三成は城の外に出る回数が減った。
それはしょうがないと思っているのだが、各地の噂を聞く機会が減ったのが唯一の問題点だった。半兵衛は城にこもっていてもどこからともなくい様々な噂を仕入れてくるのだが、あいにく三成はまだその域に達していない。
なので家康に聞いてみると、彼は懇切丁寧に説明をしてくれたのだった。
「各地の城や寺でな…………爆発騒ぎが起こっているのだそうだ。古い寺や城が燃やされてしまってな、必ず何かが持ち去られているらしい。それがあまりにも続いているらしく、元親から儂にも注意するように文が届いた」
「家康君の言っていることでほとんど正解なんだけど……一つだけ補足するね。持ち去られている物の中に、必ず鏡が入っているんだ。茶碗とか仏像とか、年代物の宝刀とかも普通に盗まれてるけどおかしいよね……鏡だけは必ず盗むなんて」
「大阪城には……」
「うちにはそんな年代物の鏡なんてないよ、安心して」
謎の爆発、盗まれる鏡。
奇妙な事件だと思うが、大阪城に盗まれる物がないのなら気にすることはない。そのTきはそう考えた三成だったが、近い将来この事件に巻き込まれることになる。
この後の真田幸村の来訪でこの時は忘れてしまうのだが。
家康の膝の上でそんなことを聞いた、その時までそれを思い出すことはなかった。
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竹千代は困っているのか困っていないのかよくわからない狸w
だが私は大好きです…………書きにくいけどね。
ということでちび村の能力は半兵衛様はあんな風に解釈しましたが、実際は抵抗をなくしてのベクトルの維持になりますな。つまり温度が上がる環境ならあがりっぱなし、ボールを投げたら空気抵抗とかがなくなるから通常の数倍とぶことになる、と。
お館様が飛ばせば、そりゃあ数百キロ単位で飛ぶよなw
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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