がんかたうるふ 作家さんと大学生 せかんど~妹、襲来編 その1~(現パロ・毛長) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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○久々に書きました。これまでの話は総集編として一冊にまとめたので今度からは「せかんど」のシリーズにしておきます。
○サイトにてこのシリーズの総集編の自家通販を行っています。(通販担当はうずみさんです)

○今更ですがこのシリーズは一応毛長です。
公式ではあり得ないような人物設定、捏造などが多々ありますので苦手な方はご注意をお願いします。書いてる人だけが楽しいシリーズです。


書いた人:みっし





 *****
 
 
 
 いつも通りの、平穏な日だったはずなのだ。
 毛利が仕事して、元親は家事という名の仕事をやって、ご飯を作って二人で食べてそうしてぐだぐだと過ごす。最早仕事なのかなんだか自分でも分からなくなってきた日常。
 夏休みの間だけ、期間限定の同居生活。
 何も変わらないはずだったのだ。
 
 だがそれは一人の訪問者によって思いっきりかき乱された。
 
『お兄ちゃんに会いに来ました!』
 そう満面の笑みで言ったのは他でもない元親の実妹、鶴姫だった。
 地元に住む彼女が単身上京し、元親のアパートに行ったものの不在で、困り果てた鶴姫は同じく上京している元親の友人であり自身の知人である三成にメールで尋ねた。
『お兄ちゃんはどこにいますか』
『長曾我部ならば、毛利の所だろう』
 ご丁寧に住所と手描きの地図まで写真を添付されたそれを頼りに鶴姫はここまで一人でやってきた。目的はただ一つ。
 兄と一緒に家に帰ること。バイトを理由に実家に帰ってこない兄を引っ張って連れて帰るために彼女はここへ来たのだった。
 恐るべき小学生女児だな、と密かに毛利は思っていた。
 元親は妹の行動力が恐ろしい反面、実の母の勢いを思い出し、遺伝って怖いと思っていた。
 
 鶴姫はそんな二人に構わず、にこにこしながらソファに座りよく冷えた麦茶を飲んでいる。お茶請けに出されたのは毛利が最近気に入っているミニサイズの羊羹だ。水羊羹は水羊羹で美味いがあれは味が薄いのでやはり羊羹もたまには食いたいとのことでどこからともなく買ってきた。スーパーに一緒に行って突然姿を消したかと思うと大体菓子を手に持って戻ってくる。お前のその甘味にかける情熱は何なんだと元親は常々思う。最早思うだけで言うことはない。
  そんな鶴姫を正面に見ながら毛利の隣に座っていた元親は、彼女から『おみやげです』と渡された巨大な袋を開けて驚愕の表情を見せたかと思うと恐る恐る妹に問いかける。
「鶴…色々聞きたいことはあるがまず一つ。…なんでこの袋の中身は全部白い粉なんだ!?つかなにこれ!?」
 袋の中身は、小袋に入った白い粉がこれでもかと入っていた。まごう事なき粉である。あまりに数がありすぎて危ない薬の密輸と間違えそうな勢いである。だが抹茶羊羹を頬張っていた鶴姫は元親の問いかけに対し、えへんと胸を張って答えた。
「それはですね…ホットケーキの粉です!」
「はぁ?これ全部ホットケーキミックス!?」
「そうです!」
 何故、お土産がホットケーキの粉なのだろうか。そして量が尋常ではない、あと粉って重いのにお前一人でこれ持てたの?兄ちゃん心配、と後半は余り関係ないことを元親は気にしていた。
 彼は自分で思っている以上にこの年の離れた妹を可愛がっている。
 だが妹はそんな兄を知ってか知らずが言う。
「あのですね、お兄ちゃんのホットケーキがたべてくなったのです」
「うん」
 それはわかる。ホットケーキの他にもホットケーキミックスを使った簡単なおやつは鶴姫の好物だったのだから。兄がいなくなった後にそれを恋しく思っても何ら不思議はない。
「だからつくってもらおうと思って持ってきました!」
「多すぎるだろおおおおお!」
 えへへ、と笑う妹を前に元親は力なく項垂れる・
 ホットケーキを作るだけならそれならば精々大袋一つ持ってくれば良いはずだ。何だろうこのあり得ないほどの粉の量は。いやそもそも何故現地調達を思いつかなかったんだ、妹。だがその疑問はすぐに氷解した。
「えーとですね。お母さんが、業務用スーパーに行ってたくさん粉を買ってきたんです。だからそれをもってきました!」
「…あの人買いすぎだって何で気がつかねぇかな!?ストックにしたって多すぎるだろ!?」
 元親の母は数ヶ月前まで、地元の百貨店にとある役職として勤めていた女傑である。雰囲気だけはおっとりとしていて儚げに見えるがやることはえげつないことこの上ない。むしろ思い込んだら一直線の気質はそのまんま娘である鶴姫に受け継がれている。仕事ではまさに姉御であっただろう。
 だがそんな母も家庭内においては息子である元親におんぶにだっこのような人だった。日頃やり慣れないからたまに家事をやろうとしても逆に被害を広げるばかりなので、頼むから大人しくしていてくれと頼み込んだことすらある。その母も元親の大学進学と入れ違いに希望退職をして専業主婦となったが、未だに慣れては居ないのだろう。使いもしない食品を大量に買いだめするのが良い証拠だ。まぁそんな母でも料理の腕が良いのは不幸中の幸いだろうか。ただし、鶴姫に言わせるとおかあさんとお兄ちゃんのお菓子は何か違います、とのことであまり納得出来ないらしいが。
 
「空港で転んで鞄の中身が出ちゃったときに鞄の中を確認されてお兄ちゃんの大好物でお土産ですなんです、っていったら凄く変な顔をされました。ホットケーキミックスってそんなに変なお土産ですか?色々きかれました」
 そこまで無言を貫いていた毛利が、麦茶を飲み終えるともの凄く渋い顔をして言った。
「…それは、まぁ…白い粉ならばな…ここが日本でも疑うのが道理だろう」
 まだ幼い子供が持っている旅行鞄。
 転んだ拍子に開いてしまったそれの中から、大量の白い粉が出てくたのならばそれは確かに事件性を疑ってしかるべきだろう。
 何せ白い粉なのだ。
「…絶対いらん誤解された…」
 妹の言動を受けて頭を抱えながらも、俺はそんなに好きじゃないんだけどホットケーキ、と元親はぼやく。
 元々、元親は嗜好として甘い物があまり好きではない。甘さが控えめなものなら別にしても基本的に量をあまり食べないのだ。
 ただ作ることは好きだった。元々手先が器用で凝り性だったのも良かったのだろうか。母に代わり家事をして家を支え、その間に妹からのリクエストに応え、後輩からのリクエストに応えること数年。元親の家事スキル、特に調理スキルは同年代の男子と比較してもあり得ないほどに高いものになっていた。まぁ、それがこうして毛利宅でのバイトに繋がっているのだから人生とは分からないものである。
 
 
 
 叫んだり頭を抱えたりする元親を、鶴姫はきょとんとした顔で見つめていた。彼女からすれば全くの善意と好意でやっていることなので、兄が目を白黒させている理由が分からないのだろう。
「お兄ちゃん、どうかしました?」
「…こやつは今、人生の儚さと切なさとその他諸々を噛みしめている最中のようだから、放っておいてやれ。長曾我部妹」
 一応助け船のつもりで毛利が言った一言だったがそこで改めて鶴姫は言った。
「…そういえば、あなたが毛利さんですか?」
 そういえば成り行きのまま家に上げてしまったが自己紹介をしていなかったことに毛利は思い至る。
 小首を傾げる鶴姫の様子は、姿形は異なるのに何故か兄である元親とよく似ていた。一緒にいた歳月がそうさせるのだろうか。
 血縁とは不思議なものだな、そう思いながら頷く。
「そうだ。お前の兄の雇い主でもある」
 子供相手でも毛利はほとんど態度を変えない。あまりの冷たい印象に泣き出されたこともある。最も毛利自身からするとむしろこのぐらいで脅えられるから子供は嫌いなのだ。
 だが鶴姫は毛利の予想を越えた行動に出る。
「そうなんですか!自己紹介がおくれましたが長曾我部鶴姫といいます。お兄ちゃんがいつもおせわになってます!」
 そう言ってにっこり笑うとぺこりと頭を下げた。 
 なんだこの生き物は。
 
 鶴姫の反応は、毛利にとっては実に新鮮なものだった。
 毛利元就は子供に好かれない。無愛想だし言動はろくでもないし、非常に好かれ難い存在であるという自覚はある。だから今更どうとも思わない。なのに何故だろう。この少女は何故、自分を見て平然として、そして笑っているのだろうか。
 元親の血縁だからかどうなのかはわからないが、この少女が、自分が思い浮かべる子供とは全く異なる存在であることに毛利はようやく思い至ったのだった。
 
 毛利が再度鶴姫に問いかけようとしたその時、滅多に鳴らない毛利家のチャイムが鳴った。
 本日二度目である。
「あ、またか?…荷物じゃねぇし…本当に今日は来客が多い日だな」
 平常心を取り戻したらしい元親が玄関に向かったかと思うやいなや「うぎゃあああああ!」という絶叫が、毛利と鶴姫が待つリビングにまでこだました。
「お兄ちゃん?」
「あやつはまた何をやったのだ…」
 どうせまた変なのが来たに違いないと思いながら玄関に向かう毛利の後ろに鶴姫も着いて歩く。
 自分もどちらかというと変人に分類されるのに、そこで己を棚に上げるのが毛利という男の特徴でもあった。
 
「落ち着け石田!何その買い物袋の山!どっから来たお前!」
「私は落ち着いているぞ長曾我部…だから早く私にホットケーキを作れえええええええ!」
 両手に買い物袋を携えたまま尋常ならざるオーラを発する石田三成を必死に抑える元親。
 場所が場所であれば格好良かったのかも知れない。 だがここは毛利家の玄関だ。普通に百八十センチを越える男達が相対するには普通に狭い。
 そして石田の両手には買い物袋、ちなみに元親はぴよちゃんマークのエプロンを身につけており緊張感も欠片もない状況である。
「あ、石田のお兄ちゃんです」
 毛利の後ろから覗き込んだ鶴姫がそう言いながら三成を指さす。するとその声に気がついたのか石田が視線を鶴姫にずらす。
「む!?長曾我部妹ではないか!無事着いたようだな!」
「はいおかげさまで。石田のおにいちゃんはどうしたんですか?」
 そこでようやく石田は自分の本題がなんだか思い出したらしい。ふといつもの様子に戻ると買い物袋を掲げて目の前の元親の言った。
「私は、ホットケーキが食べたいんだ!」
 どこからともなく取り出したのは「ホットケーキミックスのお菓子」と可愛らしい字で書かれた雑誌だった。
 もしかしなくても、書店で見ている内に辛抱溜まらなくなり、材料を買って毛利家に駆け込んだのだろう。ここならば確実に作れる人間がいることを知っているから。まぁ普通はそれのために尋常ならざるオーラを出したりはしないがそこは甘味のためなら全てをとはいわずとも八割ぐらいは賭ける石田である。恐らく、元親を見て=ホットケーキぐらいには思ったのだろう。石田だし。
 
 ああ、ここにも変人が居た。
 
 自分の事を棚に上げながら毛利はそんなことを考えていた。
 
 
 
「この本を見てくれ」
 リビングにて、鶴姫の隣に座りながら石田は手に持っていた一冊の本を取り出した。『ホットケーキミックスのお菓子』と書かれたそれは見るからに、石田が持つには不釣り合いなものだった。
「…たまたま書店でこの本を見つけ、手に取ったのだが…これは本当にすばらしい本だな!見ろ、こののトッピングの数々…!もう見ているだけでいろいろたまらなくなってきてしまい、思わずスーパーで材料を買ったものの私は作れないということを改めて思い出し、毛利のところにならば長曽我部がいるだろうと思い立ってここに来たまでだ」
 石田の隣に座る鶴姫は彼が持つお菓子の本に釘付けだ。そして元親も興味深げに見守る。
「へー…こんな食い方もあるんだな」
 ざっと見ただけでもホットケーキミックスを使ったお菓子のほかに、ホットケーキのトッピングについても書かれている。おそらく石田の目を引いたのはこれだろう。そして元親の言葉を肯定するかのように石田は頷いた。
「うむ…メープルシロップとバターこそがシンプルで最もうまいと思っていたが、こんなに色々な種類があるのであれば試してみたくなってな…」
 そう言いながら石田が先ほどまで持っていた買い物袋をたぐり寄せる。
「基本のバターに蜂蜜、メープルシロップ、チョコレートシロップ、チョコスプレー動物性の生クリーム、クリームチーズ、ココア、プリン、いちご、キウイ、バナナ、あんこ、栗の甘露煮、ブルーベリーソース、ストロベリーソース、抹茶ソース、バニラアイス、チョコレートアイス…ざっとこんな所だ」
「買いすぎだろ、普通に考えて買いすぎだろう!」
 大事なことなの二回言う。
 もはや石田の甘味に賭ける情熱について突っ込むのも疲れた元親だったが思わず突っ込んでしまった、一体どれだけ食べる気だ。
 だが石田本人はきょとんとしている。
「そうか?本に載っている分全部は買えなかったのだが…。まぁ足りないことはないだろう」
「おやつなんだからそれぐらいで抑えておけ。こんだけ食っても食い足りねぇなんてやつは一人しか思いつかねぇよ…」
 元親は隣の毛利を盗み見る。
 だが既にいなかった。
「あ?毛利?何してんだ、あんた…」
 いつの間にやら席を立ったらしい毛利はというと珍しく台所で冷蔵庫の中を漁っていた。そして、なにやらつかんだらしく、くるりとリビングの方を向く。
「…メープルシロップにかりかりベーコンというのもしょっぱ甘くて中々に美味なものよ」
 その手には、しっかりと薄切りベーコンのパックが握られていた。
 そして自身の眼前からは妹の楽しげな声が聞こえてくる。
「生クリームとプリン載せるの美味しそうです!」
 
 今日のおやつはホットケーキ祭りで決まり。
 
 こうしてここに調理者の意向が全く反映されないおやつ作りが、ここに始まった。
 
 
 
 何故今日なのだろう、と元親は思う。
 妹が偶然来て、滞在を宣言した。これはいい。
 石田が来て、お菓子作りを要求した。これもまだわかる。
 毛利がさらに要求した。まぁこれはまだいい。いつものことだ。
 元親が理解できないのはただ一つ。
「…なんでこんなにクソ暑いのにホットケーキなんだよおおおおおおお!?」
 毛利宅はどの部屋にもクーラーがあったとしても、調理を行うべき台所は、火元がある関係上どうやっても暑い。蒸し暑い。そして、多少は手伝ってくれる鶴姫以外の二人は、まず何もやらない。結果、元親は一人で暑さとの戦いに挑むようなものなのだ。
「お兄ちゃん頑張ってください!」
 後ろから、白い三角巾とともにひまわり柄のエプロン(数年前に元親が作ってやったやつ)に身を包んだ妹の声援が聞こえなければ、心が挫けていたに違いない。
 今日は暑いから冷やしぜんざいでも作ろうと思っていたのだがそれは今度にしよう。今は可愛い妹と、それなりに可愛い後輩と、あまり可愛いとは言い難い雇い主の要求に従って元親は本日のお菓子作りを進めることにした。
 
「鶴、料理前にすることは?」
「えーと…手洗いと消毒です」
「よし、合格だ」
 ホットケーキの準備に取りかかる前にトッピング用の食材を刻んでおくことにした元親は鶴姫とともに台所に並んで立っていた。
 ちなみに元親の今の服装はハーフパンツにタンクトップ、その上にピヨちゃんマークのエプロンを身につけている。おまけに前髪は鶴姫の手によってヘアゴムでまとめられていた。基本的に妹に甘い彼はこの辺のことは野放しにさせていた。
 当初はTシャツとジーンズを着用していたのだが、台所の暑さに色々やられた末にこうなったのだ。何故この家は台所だけこんなに暑いんだ、そう思いながら。
 着替えた当初、毛利がもの凄く怪訝な顔で見ていたのだが元親当人は知るよしもなかった。
 
「毛利、何故そのように変な顔をしているのだ?」
「…いや…」
 所変わってここは食卓テーブル。
 ご丁寧に割烹着と三角巾を身につけた石田と、いつもとあまり変わりない格好のままの毛利が向かい合った座っていた。石田が割烹着を着用した理由としてはトッピングはしたいがどうにも私は不慣れなので服を汚しかねないから、という理由であるらしい。ちなみに、割烹着はこちらでの保護者役である大谷のものと聞いて毛利は愕然としていた。それは、毛利の知る大谷と割烹着が全くもって結びつかないからということに他ならない。
 それはさておき、毛利の視線は目の前の石田を通り越して、台所にいる長曽我部兄妹のうち元親に釘付けだった。
(ぱっと見は裸エプロンだと…!なんとマニアックな…!)
 身につけている元親は気がついていない。もちろん鶴姫も、石田も全くもって気がついていない。だから、これに気がついているのはおそらくだが、元親にやましい思いを抱いているという自覚がある毛利だけだろう。
 見たいが見てはいけない。だが見たいという相反する感情の狭間で毛利の脳内は混沌としていた。石田言うところの変な顔の理由はそれである。
(視覚の暴力ではないが…目の毒というか…そもそも何故に我がここまで悩まねばならん…!)
 見えそうで見えないというシチュエーションが男心をくすぐるのは知っていたし、自分の著作でも散々書いては来たが、実際体験してみると生殺し以外の何でもないことがよくわかった。
 
 良かったな我、次の作品ではよりリアルな体験を描写できるぞ…。
 毛利元就 職業 作家。
 とりあえず自分が体験してネタになりそうなことはなんでもネタにする。たとえそれが己の生殺し体験であっても。
 どんな状況でもネタ探しに余念がないという一点において、毛利は作家の鑑であると言えるのかもしれない。まぁその他にも締め切りは絶対に守るのも美点ではあろう。人間として数多の欠点を抱えている分、それぐらいで帳尻はとれているのかもしれない。最も、それをすべて理解しているのは昔なじみの大谷と、竹中ぐらいなのだが。
 深呼吸して息を整える毛利を、お菓子の本を眺めていた石田は不思議そうなまま見つめていた。そうして「毛利も我慢できないぐらいホットケーキが食べたいのだろうか」と実に見当違いな想像をしていた。
 毛利とは異なり、少々癖があることを除けば素直な性格の石田だが、甘味が好きすぎて暴走する一面があるのだから、それはまぁ、石田三成という人間を知っていれば仕方がないことであると言える。
 
 
 
 一方、台所では下準備を終え兄妹のホットケーキ作りが始まっていた。ホットプレートで大量に焼いても良かったのだが、鶴姫の希望でフライパンで作成するに至った。曰くフライパンのがふっかふかです!とのことだ。確かに粗熱を取った方がふわふわのものが焼けるのでそれには元親も頷いた。
 
 生地作りには特に変わったことはしない。箱に入っているとおりの作り方をするだけだ。
 卵と牛乳をよく混ぜておく。このとき少量のマヨネーズを入れておくと鶴姫ご所望のふわふわホットケーキが焼けるのである。さらにそこにホットケーキミックスを入れてよく混ぜる。これで生地は完成だ。
 同時にフライパンを温めておく。温まったら一度濡れ布巾に載せて熱を取る。そうして今度は高い位置から生地を落とすのだ。そうして弱火で数分焼き続けるうちに周囲には甘い、ホットケーキ独特の香りが漂い始めた。
「あまいです…」
「…匂いだけで味を感じる能力が私にあれば…!」
「…それは無理であろう。まぁ味でも妄想しておけ」
 どれが誰の発言かはさておき、数分やいた生地をひっくり返して今度はフライパンにふたをすること数分。こうして最初の一枚が完成した。
「鶴、持ってってくれ」
「はい!」
 兄から受け取った皿を「どうぞ!」と笑顔でわたす鶴姫から石田が受け取り、そして毛利と互いに見つめ合ったかと思うと双方互いに一枚の真ん中にきれいな切れ目を入れて真っ二つにしたかと思うとそれぞれの皿に取り分けた。
 石田はバターと蜂蜜、毛利はバターとメープルシロップをかけると二人はそれぞれ手をあわせて「「いただきます」」と言ったかと思うとそれぞれ口に入れた。
「…うまいぞこのふわふわ…!」
「なんぞこの生地…!」
 美味さのあまり微笑みを浮かべる石田と、衝撃のあまり目を見開く毛利が、そこにいた。
 ざくっとした生地の表面と、それとは対照的なふわふわの生地。さらにそこにかけられたシロップや蜂蜜がしみこめば、それは絶大な美味さを持った食品に変わるのだ。石田は石田で久々に食べた元親のホットケーキに感動しつつ、毛利は毛利で炊飯器ケーキばかりではなく、こっちも作ってもらえばよかったと激しい後悔に見舞われていた。
 
「お兄ちゃん。次は私のを焼いてくれますか?」
「安心しろ。鶴のは小せぇやつだから二枚いっぺんに焼いてやるよ」
「わ!ありがとうございます!」
 そう言って瞳をきらきらさせながら自分を見上げる妹を、元親は自分でも不思議なほど優しい気持ちで見ていた。
 年の離れた、妹。たった一人の大事な兄妹。彼女が笑ってくれるのなら、こんなにうれしいことはない。バイトを辞めることはできないが、鶴姫がいる間だけは、できる限り彼女の願いを聞こう。正確には聞き入れるよう努力しよう。元親は改めてそう思った。
 
 
 
 あらかた生地を焼き終え、最後に別なフライパンでかりかりベーコンを焼いた元親が鶴姫とともに食堂へ行くとそこはある意味大変なことになっていた。
「石田…なにやってんのお前」
「長曽我部か…いやなに、あまりに生地がふかふかでうまかったものだから一体どこまで高く積めるのか試してみようと…」
 何かの真剣勝負のごとく、高く高くホットケーキを積み重ねる石田。
 毛利はと言うと自分の分のホットケーキにあんこと栗と生クリームをよそい、和風にして食べていた。何枚目だお前、と問いかけたくなる気持ちを抑え、石田に話しかけた。
「石田、食いもんで遊ぶなよ。…というかお前はこれ本当に全部食えるのか…?」
 ゆうに十枚は積まれたホットケーキを見て元親は思わず問いかける。だが、石田は断言した。
「間違いなく食べられる!問題はない!」
 それは、後にも先にもあんな石田は見たことないと皆が断言できてしまうような、実にきらきらとした笑顔である。
「そ、そうか…」
 思わず元親が言葉に詰まってしまうような、そんな一瞬であった。
 
「鶴は、何のトッピングなんだ?」
「えーと、一枚は生クリームと果物で、もう一枚はアイスとチョコレートシロップです!」
 鶴姫用として小さめに作った生地を鶴姫は一人で器用にデコレーションしていた。元より生地作りはともかく、デコレーションは得意な鶴姫である。とても綺麗にできていた。
「そうだよなー…そんぐらいがいいよなー…綺麗だし…それに引き替えお前らは…」
 じとりと恨み節で元親は石田と毛利を見る。
 そこにはトッピング全載せに挑戦する二人の姿があった。
「あほかあああああ!!味の相性とかあるのに何で全部のせんの!?お前ら学校の勉強はできるはずなのになんでそんな馬鹿やんの!?もうわかんねええええええ!!」
 ようやく載せ終わったらしい二人は元親を見ると平然と言い放つ。
「何をいう。全部あればとりあえず載せたいのが性というものであろう」
「うむ。甘いものであればとりあえずは試すのが基本だな」
 元親は思う。
 こいつら本当に勉強はできるのに、なんで甘味となるとこういう馬鹿なことばっかりするんだろう。なんでだ、と。本当に何でだ。
「…責任もって最後まで食えよ」
 ため息交じりで呟かれたそれに、毛利と石田が頷く。そして難なく食べた末に「「やはりトッピングは少しずつの方が美味いな」」と言ったために、再度突っ込んだ元親の姿があった。
「だから言っただろうが!?なんで人の話きかねえんだよあんたらは!?というか最後の最後でベーコン載せんな!!メープルシロップとだけならまだしもそれ絶対何か違うー!!」
 
 
 
 そんな男たちの騒動にはあまり関わらず、一番食べたかったお兄ちゃんのホットケーキを食べることができてご満悦の鶴姫がいたのだった。
 
 大好きなお兄ちゃんと一緒に過ごす時間は、彼女にとって何よりも楽しい時間なのだ。
 だから、鶴姫にとっては本当の夏休みの始まりとも言えるこれが、一体どうなっていくのか、今この場にいる人間には誰にもわからなかった。
 
 ちなみに最終的に石田を追って突如乱入した家康が残りの食材を平らげたりしつつ、楽しい時間は過ぎていった。
 
 
 
 
 







○鶴ちゃんは、まだいます。おうちに帰るまでが襲来編なのでまだ続きます。
そして権現ェ…出番少なくてごめんなさい。
最近私の中では「権現パワー!」とか言って叫んでます。
うん妄想なのは知っている。
 
PR
[542] [541] [540] [539] [538] [536] [535] [534] [533] [532] [531]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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