こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ツイッターにて松親良いですよね!!と盛り上がった結果のもの。
兄貴右CPは数あれど松親はどうあがいてもハッピーエンドの妄想が出来ません。特に戦国。だがそれが良い…。
毛長以上に双方五体満足で結ばれる結末が想像出来ないのも珍しい。外道具合だと松永さんは軽く最大値を凌駕してしまうので、どうやっても第三者から見ても幸せな結末が想像出来ない。心身共にぶっ壊れた兄貴を可愛がる松永さんとなんとか奪還しようする毛利さんの話が読みたいので誰か書いて下さい。
○すみません、毛長が好きなのでどうしても無理矢理絡めました、どこかにヤンデレ毛利さんは転がってませんか。
○後半のやりとりは某狗の1シーンをパロってます。あのルート好き…。
書いた人:みっしー
*****
―夢を見る、事がある。
いや、夢と言うよりも、自分が体験した記憶を繰り返し見せられているといった方が正しいのかもしれない。
幼い頃に訪れた、母の地元で開かれたお祭り。
多分その時のことだと思う。
祭り囃子、出店、灯る灯りの数々。
そうして、初めて見るその光景に目を奪われているうちに一緒にいた従兄弟の手を離してしまった。
気付けば人混みの中に一人佇んでいた。
まわりは知らないひとばかりで、立ち尽くす自分に声をかけてくれる人間もいない。
どうしよう、そう思っていると、どこからか声をかけられた。
『なにをしているんだい?』
たすけて、相手が誰かも知らずにそう言った、ことまでは覚えている。
そこから記憶は一気に飛ぶ。
自分は誰かと何かを話している。だけれどもその言葉は酷く朧気で思い出すことは出来ない。
『…で、…の?』
そして相手の姿を思い出すことも出来ない。なのに自分はその相手を恐れることなく、普通に話しかけている。
『じゃあ…き……ら、…てくれる?』
そうして、目の前の相手が自分に対して手を伸ばす。伸ばされた手はやがて顔に触れ、そして―
いつもそこで目が覚める。
「……いっつもいっつも…誰なんだかなぁ…」
住み慣れた自室で目が覚めた元親はぼんやりとした様子で口を開く。
ふと枕元においてあった目覚まし時計を見やると時刻は5時。
早い、早すぎる。こんな時間に起きている高校生など、従兄弟の元就ぐらいだろう。
しかしながら二度寝をする気分にもなれず、あくびしながら布団から体を起こし、ふと思い立って自身の左目に触れる。
左目は、何も映さない。そして指で摘んでみた自身の髪もまた銀色のままだった。
それが事実。
そして残された証。
長曾我部元親は6才の時に、母の地元で行われた祭りの最中、行方不明になったことがある。
一夜明けて山の麓で佇んでいる所を保護されるも、元親自身はなにがあったのか一切覚えていなかった。ただ、精神的なショックからか、黒かった髪は色が抜けて銀色になり、左目があったはずの場所には何もなくなっていた。
その他の外傷は無く、また不思議と当人は左目の痛みを一切訴えなかった。
そして、年寄りのうちの誰かが言った。
―神隠しだ。と。
昔からこの地域では、子供がいなくなっては戻ってくる、という事態がたびたびあったらしい。だから、今回の、元親も恐らくそうだと大人達は話していた。
―もうあそこに近寄ったらいかんよ。あんたはえらく気に入られたみたいだから、今度こそ帰って来られなくなってしまう。
そう言って、病院に入院していた自分を見舞った祖母は頭を撫でた。
安堵するように、案じるように、不安そうに自分を見た祖母の顔は、今でも覚えている。
そうして元親は、地元に帰ると無くした左目の代わりに義眼を入れ、更にその上から眼帯をした。左目が無いことを知ってるのは学校の関係者と、親しい友人と、家族ぐらいだろうか。あれから祖母が亡くなり、母の実家に行くことはあれど、あの神社にだけは、決して近寄ることはなかった。
あの夏からもう、10年が経つ。
「…しゃーない。起きるか。」
元親はあくびしながら起床する。
今日も、いつもと同じ、平穏な一日でありますように。
いつの間にか願うようになったそれを心のどこかで願いながら元親は準備を始めた。
「貴様までもが早起きするとは…今日は槍でも降るのではないか…?」
「うっせー、目が覚めちまったんだから仕方がねぇだろ?」
朝食と弁当の準備をしていると、心底驚いたという顔の同居人に声をかけられる。
毛利元就。同じ年の従兄弟だ。
線の細い印象とは裏腹に性格は悪い。本人曰く性格は悪いが根性は悪くないぞ、とのことだが元親にとっては大差ない。元々は元親の母と元就の母が姉妹であり、幼い頃はよく行き来をしていたものだ。
高校入学を機に上京した彼は、そのまま長曾我部家の居候となり、今に至る。その長曾我部家は、母親は看護師、父親は会社員と平凡ではあるが中々に多忙であり、家のことはもっぱら長男である元親が仕切っていた。今日も母親は夜勤でいないし、父親は先日まで単身赴任していた京都に出張中だ。同居人である元就は家事はしない人間であるし、必然的に元親がやらざるをえない。
「大体なんだよ…いっつも寝坊したとか言っても弁当忘れたことねぇし、あと遅刻したこともねぇぞ。」
「…ぎりぎり過ぎて見ていて不安にもなるわ。」
確かに日頃の元親は夜更かしをしていたがために起床が遅れ、短時間で朝食と弁当を作るスキルだけが上がっている。元就は早寝早起き故に朝も早いが、自分では作れないので手は出さない。ただ口は出す。辛辣だが的確な批評は聞いていて勉強になったし、自身の腕が上がるきっかけでもあったので彼には感謝している部分もある。
最も当人に言ったならば「当然よ。」とふんぞり返って宣言されそうなので言う事はないが。
「夢見が悪くてよぉ…あんまり寝られなかったんだよ。」
そう言いながら弁当の仕上げを終えた元親が何の気なしに呟くと、元就は僅かばかり動きを止めて僅かに目を見開く。
「…また、あれか?」
そうしてしゅんと、瞬く間に落ち込んだような様子の元就を見て、ようやく元親は自分が彼の地雷を踏んだことに気がつく。
「いやいやいや、あれじゃねぇから!!全然別の!!安心しろよ!!」
「…なら良いのだが。」
慌てて否定はしたが、人の感情に聡い元就の事だ。自身の気遣いなどすぐ見通してしまうだろう。それでも、これ以上彼に心配をかけるわけには、負担をかけるわけにはいかなかった。
―元就こそが、祭りの日に元親とはぐれた従兄弟だった。
互いの母親、姉妹揃っての里帰りで会った従兄弟同士、手をつないで祭りを見に行った。
だが、色とりどりの祭りの光景に目を奪われた元親は、自分から元就の手を離してしまった。元就は元就で人混みを抜けるのに必死で、手が離れたことに気がつかなかった。
そうして、元親だけが神隠しに遭遇した。―
あれは手を離した自分が悪いのだ、と何度も言った。
だけれども元就は、自分がもっと後ろをよく見ていれば良かった、とそう何度も繰り返し言っていた。
元親が保護されるまでの間、元就がどんな思いで過ごしていたかは元親には想像することしか出来ない。だけど白くなった髪と、左目が無くなった顔を見て、何も思わなかったはずはない。
今となっては、元親の存在そのものが元就にとっては大きすぎる罪の証であるかのように思うのではないだろうか。
―すまぬ。
入院している自分に泣きながら謝る元就に対して元親は言った。
―おれ、だいじょうぶだよ。だから、なかないで。
そう伝えると、元就は、また泣いた。そうしてひとしきり泣いた後、元親の右手と自身の右手の小指をそれぞれ絡ませ、そして言った。
―お前は、我が守る。何があっても絶対に。
―はは…ありがとう。もとなり。
そうして二人は約束をした。
それは子供の頃の他愛もないものだと元親はずっと思っていた。
自分は神隠しにあったそうだが、五体満足ではないものの無事に戻ってきた。そうして中学を卒業するころにはその体格は並みの同級生以上のものだったし、喧嘩にしたって負け知らずだった。今更自分に対して守るもないだろう。ずっとそう思っていた。
高校入学を機に、元就がやってくるまでは。
『約束を、果たしにきた。』
そう言われて思わず目を剥いた。
元親にとっては子供がした他愛もない約束であったそれは、しかし元就に対してはそうではなかった。元就は、本当に元親を守るつもりなのだ。
しかし彼にとって守るという意味は重要すぎるぐらいに意味があった。
こうして二人で家にいる分にはいいが、外に出ては、元就は元親が誰かと関わる事をひどく嫌がった。中学時代の同級生と会って話すことも、高校でクラスメートと話すことも、元就にとっては全て、敵だったのだ。一度など、休日に出かける約束をしたと伝えただけで携帯を壊された。それから、元親は彼の前では必要以上に人と関わらなくなった。このままでは携帯だけではなく、その人自身にも害が向くと、そう思ったから。
元より両親は従兄弟の元就を全般的に信用している。彼の話次第では白が黒と判断されかねない。だから何も言わなかった。
別に、良いのだ。自分はどうなっても。
だけれども、元就は、それで良いのだろうかと元親は常々思っていた。
あの約束は、元就の選択自体を阻める要因になっているのではないだろうか。
それは、彼から様々な可能性を奪ってはいないだろうか。
それが元親の危惧するところだった。
二人が通う高校は自宅から歩いて30分程度のところにある。
長い坂を登り切った所にあるそれはあった。春ならいざ知らず、梅雨が明け、夏休みも誓いこの時期には中々辛いものがある。とはいえ今日は熱いながらも気持ちの良い風が吹き抜けておりいつもよりかはいささか楽であった。
「やっぱ早いと人も少ねぇなぁ…」
そう呟きながら玄関にたどり着いた元親は上靴に履き替える。
「まぁな。」
そう返しながら元就も靴を履き替えて隣にやってくる。
元就のクラスはA組、元親のクラスはF組だ。なので選択授業などでは一切一緒になることはない。元親が他者と関わる事を疎う元就としては不服だろうが、こればっかりは仕方がない。その代わりと言うか、休み時間の度に凄まじい頻度でメールが来る。しかもどれも字数が多いのでいつ打ってるんだ、と元親は不思議でならない。
元就は今日、日直の朝当番があるとのことでいつもより早めに登校し、元親もそれに同行して早めにやってきたのだ。
「…では我は職員室に行くが、くれぐれもどこかへ行くではないぞ。」
「わーった、わーった。さっさと行ってこい。」
ご丁寧に元親を教室まで送り届けた元就は、元来た道を戻る形で職員室に向かった。元就を見送ると元親は自身の教室に足を踏み入れる。8時も近いというのにどういう訳か今日は誰もまだ登校していないらしい。
窓際の最後列という良席である自分の席に荷物を置く。
「…ん?なんだ…」
よくよく見ると机の中に一枚の紙が入っている。昨日の配布物でも忘れて帰ったのだろうか。
そう思い、紙を引っ張り出して手に取る。
『む か え に い く よ』
白い紙に、筆で書いたと思しき文字が躍っていた。
「…なんだ…これ…。」
どくどくと脈打つ心臓を必死に抑えようと、深呼吸するが中々うまくいかない。
―イタズラ、なのだろうか。
しかしこの学校で元親が神隠しに遭ったことを知る人間など、それこそ元就ぐらいしかいない。
―誰が、なんのために。
呆然とする元親だったが、やがて教室に近づく声があることに気がつき、慌てて机にしまい込む。
「…あ、元親じゃん。おはよう。今日は早いんだねー。」
「…はよ。お前も早いじゃねぇか。」
入ってきたのはクラスメートの前田慶次だった。
運動部に所属している彼は朝は朝練のため早めに登校しているが部活をしてからのため、それほど早く教室に来るわけではない。
「んー?俺、今日は日直なんだよ。当番だからさ、早めに上がらせてもらったんだ。」
そう言いながら慶次は廊下側の自分の机に鞄を置く。
「まぁもう8時過ぎたからさ、他の奴らも来るんじゃない?んじゃ俺行くから!!」
「…ああ。」
そう言いながら慶次は教室を出て行ってしまう。
そうこうしているうちに教室にはクラスメートが顔を見せるようになってきた。
挨拶しつつも自分の席に座った元親は、恐る恐る机の中の紙を見る。
白い紙には、何も、書いていなかった。
授業を受けていても、元親の脳裏をよぎるのはあの朝の不思議な光景だった。
―何だったんだ、あれは。
見た瞬間は間違いなく記されていた文字が、再度見たときには消えていた。
イタズラ、なのだろうか。
午前中は好きな美術もあったというのに気が散ってしまいあまり集中出来なかった。昼休みは、一緒に昼食を摂っていた元就に怪訝な顔をされたが、なんとかシラを切った。今の彼に事実を伝えると家から一歩も元親を出さなくなる可能性の方が高い。それだけは避けたかった。
そうして突然、元就が元親をまっすぐに見据えて言った。
「…お前は、どこにも行くな。」
「…行かねぇよ。」
命令されているというのに、どこか縋る目で自分を見つめてくる元就を振り払うことは出来なかった。それこそが、彼の思うつぼだとわかっていても、今更離れる事は出来なかった。彼をこうしてしまったのは、紛れもなく、元親自身のせいなのだから。
縛られているのは、一体どっちなのだろう。
どちらかが死ぬまで、この関係は終わらないのだろうか。
ぼんやりと、そんな事を考えた。
6限目は英語の小テストということで、元親は課題のプリントに黙々と取り組んでいた。分からないなりに一通り解き終わったところでふと窓の外に視線をやると、不思議なものと目があった。
それは、毛玉のようないきものだった。
銀色の毛玉と金色の毛玉がふわふわと窓の向こう側を漂っていた。
―なんだ、これ…。
気持ち悪いものではなく一見すると愛らしいものだが、明らかにおかしい。
そう思っていると向こうも気がついたのか毛玉はふわふわと、なぜだか嬉しそうに動き始める。
『みつけた みつけた』 『おむかえ おむかえ』
『こんどは いっしょ』 『ずっと いっしょ』
人間の声ではない妙に高い声がケタケタ楽しそうに笑う。
他の人間には聞こえていないのか、元親だけが反応した。
そうして毛玉がもっと近づいてくると感じとり、思わず元親は声を上げそうになる。
だがちょうど鳴ったチャイムの音でその小さな叫びはかき消えた。
最後尾の元親は前のクラスメートにプリントを渡すと、思い切ってもう一度窓を見る。
そこには、なにもいなかった。
だが、よくよく見ると、元親側の窓枠にキラキラしたものが付いていた。
それは金色と銀色の輝きを放っていた。
誰に相談すれば良いのだろう。この不可思議な現象を。
両親には言えない。元就はもってのほかだ。
他の友人には相談した時点で元就の憎悪が向けられるとも限らない。
―どうしたら良いのだろう。
そう考えながら元親は誰もいない教室で元就を待っていた。
委員会活動があるといい思いっきり不服そうな顔をした彼は、自身の委員会が終わるまで待っているよう元親に告げ、去っていった。くれぐれも、一人で帰らないように言い残して。
考えていても仕方がないことではあるが、少しでも気分を落ち着けようと元親は自身の鞄内の片付けをすることにした。
一通り揃えた頃には多少落ち着くに違いない。
そう思いながら元親は鞄の中のものを一通り出していく。そして再度収めていく中で気がついた。
「数珠の紐…切れてる…。」
普段は皮の巾着袋に入れているそれは、今は亡き母方の祖母からもらったものである。大体はお守りとして鞄の中に入れていたのだが、ここで確認しなければ紐が切れたことには気がつかなかったかも知れない。
一体いつから切れていたのだろうか。そう思った時、周囲一体が静まりかえった。
―リーン。
そうして、鈴の音が響き始める。
放課後の学校。
日頃なら聞こえる生徒達の談笑する声も、放課後の部活動に勤しむ声も、今は何も、聞こえない。
まるで自分だけが世界から切り離されてしまったかのような、そんな間隔。
動かなくては、声を挙げなくては、そう思うのに、壊れたように体は動かない。そうして、鈴の音が鳴り響く。開け放たれたままだった教室の扉から小柄な人影が入ってくる。
それは、幼い頃の自分だった。
あの日と同じ、白い浴衣に身を包んだ、銀髪の子供。
思わず元親は息をのむ。
幼い元親はどこかうつろな目をしたまま手招きする。
そして声がした。
『こっち』
逃げなくてはいけない、頭ではそう思うのに体はうまく動かない。
そうしていつのまにか目の前までやってきた子供は元親の手を引くとそのまま歩き始めた。
『まってるの』
そう呟きながらもこどもは前を向き、歩いて行く。
抗う事も出来ない元親は、ただその後を着いていくことしかできなかった。
委員会と日直業務を終え、元親の教室にやってきた元就が見たのは、座る主がいなくなった机と、開け放たれたままの鞄だけだった。
―どこに行ったと言うのだ。
苛つきながらも携帯にかけるが、繋がらない。
そうしてふと、鞄の中から皮の巾着が飛び出ていることに気がつく。
「これは確か…」
ふとあることに気がついた元就は、まさかという気持ちで巾着を開く。
中に入っていた数珠は、紐が切れてばらばらになっていた。
「……まさか……」
元就の脳裏に、かつて祖母と交わした会話が蘇る。
あれは確か元親が保護されてすぐ、病院に入院していた頃のことだ。
病室にいたのは自分と祖母と眠る元親だけ。そして祖母はゆっくりと話し始めた。
―ここいらではねぇ。昔から、神様に何かを奪われて戻ってきた子は、大きくなったらまたいなくなってしまう、って言われているんだよ。それだけ神様に気に入られてしまったってことでねぇ…
「元親は、また、いなくなってしまうのか?」
―そうならないよう、元就は守ってくれるかい?
「…やる。」
―ありがとう。お前は優しいね。
そう言って二人に、と祖母がくれた数珠の糸が切れているなど不吉この上ない出来事だった。
「あの馬鹿が…!!」
慌てて自分の鞄と元親の鞄を抱えて元就は教室を飛び出した。
当てはない。だけれども探さなければならない。
あの日、誓ったのだ。二度と、元親をどこにも行かせない、と。
誰かに言われたからではない。
それは、元就自身の誓いであるが故に、果たさなければならないものだった。
『ついた ここ』
ちいさな自分に導かれるままにたどり着いたのは古い神社だった。
稲荷象を祀っている事から稲荷神社である事は推測出来た。
「こんな場所が、あったのか…」
学校の近くにこんな場所があったとは知らなかった。
長い階段を上った先にこんな神社があったとは。
そうして、ふと気がつくと目の前にいたはずのもう一人の自分はいなくなっていた。
代わりに姿を現したのは、銀色と金色の毛玉だった。
『もとちか もとちか』
『ひさしぶり ひさしぶり』
嬉しそうに跳ねる毛玉は間違いなく、昼間にみたものと同じだろう。
『おてがみ かいた』 『でもすぐ きえた』
『びっくりした?』 『おこってる?』
交互に話す高い声が話す内容を整理すると、朝のあの手紙はこの毛玉達が書いたものなのだろうか。一体何のために、と思ったところで、声を掛けられた。
「久しぶりだねぇ。」
見たことのない壮年の男だった。
だが、男は元親を知っているようだ。
「お前達も、ご苦労だった。…ただ、彼を驚かせたらしいことだけは頂けないねぇ。」
『もとちか びっくり』
『びっくり ごめん』
二色の毛玉は今度は酷く申し訳無さそうにふよふよと動き始めた。
それに対して男は笑う。
「…以後、気を付けたまえ。彼は私の花嫁になる存在なのだから。」
そうして、男が当然のように言い放った言葉に元親は思わず目を剥く。
「…は…?」
何を言ってるのだ、この男は。正気か。
自分のこのガタイを見て嫁と呼ぶなどどれだけ変態なんだ。困惑し、眉根を寄せる元親に男は笑う。
「…忘れているのは仕方ない。…では、再会もしたことだし、返すとしようか。」
そう言って男は元親の顔に手を伸ばす。そうしてあっという間に眼帯を外すと長い指を義眼に当てる。
「…あ?」
一瞬のうちに義眼がなくなったかと思うと、今度はまた新たなものが嵌められる。
「見てみると良い。君の記憶だ。」
男がそう言ったかと思うと元親の意識は急速に落ちていった
「なんで、そんなにさびしそうなの?」
金と銀の毛玉と遊びながら、自分を抱きかかえる男に問う、幼い子供。
「…私はそんなに寂しそうに見えるかい?…これでもそれなりに楽しんでいるのだがねぇ。」
男が苦笑する様が容易に見て取れた。だけど子供はうーん、と子供なりに考えてそして言った。
「うーん…じゃあいっしょにいたら、さびしくなさそうにみえるかな?」
子供がそういうと毛玉が嬉しそうに飛び跳ねる。
『もとちか いっしょ』『いっしょ たのしい』
『たけちよ たのしい』『さきち たのしい』
子供らしい無邪気な問いかけと飛び跳ねる毛玉に対し、男は首を横に振る。
「それは、無理だよ。…残念ながらね。」
『ざんねん』『むねん』
言いながら毛玉達は心底残念そうにぺしゃんこになって地に伏せる。
だが、次の瞬間子供が思わぬ問いを投げかけた。
「じゃあ…つぎならだいじょうぶ?ざんねんじゃなくなる?」
深く理解していない子供ならではの問い。
それでも、その問いかけは、男の心を震わせるには十分なものだった
「…そうだな。次なら大丈夫かもしれない。」
「ほんと?」
『たけちよ がんばる』『さきち がんばる』
むくむくと復活した毛玉がまた嬉しそうに子供の足下でぴょんぴょん跳ねる。
「ただそのためには、私も近づくが…君にも近づいてもらわなければならない。」
何に、かは男は言わなかった。
それでも子供は頷き、そして、笑って言った。
「いいよ。そのほうがみんなたのしいよ。」
子供は確かに愚かだった。自分の問いの意味も問われた意味も分からないほど。
だけれども、その愚かさは、何をしても満たされない男の孤独を救ったのだ。
「…ならば、約束だ。」
そう言いながら男は膝の上から元親を降ろす。
「約束の証として…左目を預かろう。そして、代わりに卿に白を与えよう。」
「…うん?」
訳が分からないままに子供は頷く。
「…人の世でどれほどの時間がかかるかはわからぬが…精々待っても10年だろう。…それまで待つがいい。」
私と、彼らを。
それに対して子供は無邪気に笑って言った。
「うん、わかった。まってるね。」
―この時に、子供の運命は定まった。
本人は重要性など、全く分かってはないなかったが。
ただの人間を、神の花嫁にすることを認めさせるために、その10年間は費やされたのだった。
約束の代償は、左目。
約束の証として与えられたのは、白。
銀色の髪は黒を奪われたのからではない。白が与えられた色だったからだ。
そして、それから10年の歳月が過ぎ、そして今日になった。
男は、かつて松永と名乗った神は、本当に元親を嫁にするために再び会いにやってきたのだ。
意識を覚醒させた元親は目を開き、自分を見つめていた松永に言った。
「あんた…馬鹿だろう。」
「かもしれないね。だが…以前よりは楽しいのだから、間違ってはいまい。」
そう言って神であるはずの男は、なんとも楽しそうに笑う。
本人は楽しいのかもしれないが心底あくどい笑みに見えるのが不思議だ。
「迎えに来たのだよ…元親。」
そう言って男は元親の頭に手を乗せ撫でる。
「…俺、ガキじゃねぇんだけど。」
「人間など私から見たら皆子供と大差ないものだ。…その中でも君は格別に愚かだがねぇ。」
そう言って実に楽しそうに笑う。
―こいつ絶対性格悪ぃ。なんでこんなのと約束したんだ俺。
幼い頃の自分を責めてもどうしようもない。見る目が亡かったのだろう。いやひょっとすると今でもないのかもしれない。
「だが、誰よりも愚かだからこそ、何よりも面白い。…その予想外の成長ぶりといい卿を見ていると実に飽きないものだ…」
「おいおっさん、今すんげー失礼な事言っただろ!?」
相手が神様だとかもう関係ない。なんかしらねぇけど腹が立つ。いっそ一発ぶん殴ってやろうか、そう考えたとき高い声が響いた。
『もとちか けんか だめ』
『まつなが からかう だめ』
そんな元親の心境を見越したかのように毛玉達が足下でぴょこぴょこ動き出す。
そのけなげな姿を見ると、怒りも何もかもしゅんと萎んでしまった。
「…なんか疲れた。」
しかも、よくよく周囲を見ると見えなかったはずの左目は再び映像を映すようになっていた。恐らくは預かられていた左目を、松永が返してくれたからなのだろう。
妙なオプション付きで。
さっきから松永と毛玉以外に、自分達を見ている存在がいる。
しかもあまりよくない感じの。もっというと霊とかそういう感じの者達。
「ああ、ついでだから隙間の住人を完全に見分けられるようにしておいたよ。便利だろう?おまけにオプションで色まで変えておいたから君には似合うと思うのだが。」
「…余計なことすんなおっさんー!!」
どや顔で言い放った松永に対して、元親が突っ込んだのは言うまでもない。
その後、一体どうやったのか、追いついた元就が元親と並び立ち、あまつさえ腰を抱き寄せた松永に対して発狂し、どこからか持ち出したカッターナイフを持ち出したので全力で止めたり、混乱した元親が「おおお…俺一人っ子だから嫁に行くなら味噌汁が冷めない距離がいい!!」と言いだしたりした挙げ句、翌日には松永と幼児二人が長曾我部家の近くに引っ越してくることになるのだが、それはまた、別な話である。
「…貴様のような見るからに外道のような男に元親は断じて渡さぬ…!!」
「初めて会った存在に刃物を向ける人間も、無粋極まりないと思うがねぇ…」
『もとちか もてもて?』
『もてもて さされる?』
「…頼むから、少し黙ってくれ…」
神様と人間は本当に結ばれるのか。
はたまた従兄弟殿の地道な妨害工作が実を結ぶのか、それは神様さえもわからない。
神様だって恋をする。
だから、結末は当人達にしかわからないものなのだ。多分。
○続きは書くなら、松親、毛長、大穴で兄貴ヶ原かもしれません。
私が書くと松永さんが胡散臭いことこのうえないなぁ…
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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