がんかたうるふ 「輪舞~真~」 五章 穀雨の刻~官兵衛~ その4 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き終わりました、短いです。







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 その事実にはすぐ気がついたし、自分が歓迎されていないこともすぐにわかった。すぐに激高する三成だけではなく、滅多に怒らない家康までもが睨みつけてくるのだから自分は相当いい場面に邪魔に入ったのだろう。
 しかしそうだったとしても早急に伝えなければならないことができたから、官兵衛は馬をとばしてここまでやってきたのだ。
 城にいる大谷への監視は頼んできたが、できるだけ早く城に戻らなければ。そしてゆっくり休ませてやりたかった三成をも連れて戻らなければ、この騒動は収まらない。
 さっさと説明して、旅支度を始めさせなければ。
 そう考えながら官兵衛は、頭の中で起こった出来事をまとめながら寄り添う二人に説明を始めた。いや、寄り添うというよりは家康が三成の体を抱いて離さないというのが正しい表現か。
 家康に抱かれている三成は官兵衛にはふくれた子供のような顔を見せるが、家康には素直な顔で笑いかけていた。
 そんな所が愛おしく、そして少しだけ憎たらしい。
 時々もじもじしているのはまだ身体に疼きが残っているからか、それとも後処理がちゃんとできていないからなのか。三成の様子から察して最後まではしていないようだが、それでも気になるものなのだろう。
 二人は時折気まずそうに目を合わせ、次の瞬間には官兵衛の話を聞くためにこちらを向く。それを何度か繰り返す彼らに一度大きく頷いてやり、官兵衛は衝撃的な事実を告げることにした。
「伊予河野の巫の船が、襲われた」
「姫巫女の船がか!?」
「護衛についていた船団をほぼ無視して、巫の乗っていた船を集中的に狙ってきたそうだ。乗っていた船は大破、残りの船も長い航海に耐えられる状態じゃなくてな……豊臣軍に助けを求めてきた」
「なぜ我らに助けを求める? 伊予河野の姫巫女は、中立的立場をとると明言した後に、家康の元を訪問していたはずだが」
「そうだ、姫巫女は儂が困っていることをお告げで聞いたと。だから儂に力を貸したいと言って、急に城にやってきたのだ」
 状況を確認するかのように自分の知る事実を口にする家康は、まだ事実を受け止め切れてないらしい。三成の肩に触れている手を軽く震わせ、頬に力を込めて俯いている。
 親身になって力を貸してくれた人間が襲われた、その事実が彼の心に重くのしかかっているのだろう。
 逆に伊予河野の姫巫女と面識がない三成の方が、冷静に事態を受け止めていた。
「それで姫巫女は今どうしているのだ?」
「大阪城でお付きの者たちとともに、体を休めてもらっている。船は短期間で修繕できる壊れ方じゃなかったんでな、毛利に協力してもらって陸路で帰ってもらうことにした……当然、護衛はつけている」
「わかった、秀頼様に他領の客人の応対をさせるわけにもいかない……私が戻った方がいいだろうな」
「そうしてくれるとありがたい。ま、お前さんがいなくとも、秀頼坊主はなかなかに頑張ってくれてるがな。抱っこしてくれる美人の姫さんが増えて、毎日鼻の下のばして喜んでるとこだ」
「秀頼様……」
 家康の腕にくるまれながら、三成は頭を抱えかねない勢いで顔を歪めてため息をついている。まだ歩けるようになったばかりで意味のある言葉も口にできないというのに、秀頼の美女好きは周囲が呆れるほどのものであった。
 将来それで身を滅ぼさなければよいのだが。
 三成だけでなく大谷ですらそうこぼすのだから、皆があの赤子の将来を心配しているということなのだろうが。気をもむ人間の気持ちを理解しているのかいないのか、秀頼は毎日美女に囲まれる生活を謳歌しまくっていた。
 鶴姫も赤子の世話が楽しいらしく、お市に習って毎日楽しそうにしている。なので他領の君主を招いておきながら三成がいないのは非礼だと言われることもなく、伊予河野の人間は豊臣家に感謝を隠すことなく日々を過ごしていた。
 そんな感じなので、どちらかというと問題は彼女を保護したことではない。
「ま、そっちは三成にどうにかしてもらうが……問題は別なところにあってな。家康、お前さんの立場が悪くなる可能性がでてきた」
「どういうことだ? 姫巫女は無事だったのだろう?」
「……巫たちを襲った船団は、織田軍の旗を掲げていた。当然織田家の唯一の生き残りであるお市殿が最初は疑われたが……その疑いは巫殿が自ら晴らしてくれたよ。この人は何もしていない、自分の言葉を信じろってな。まあ襲われてる船団を助けたのは豊臣軍と同盟を結んだ長曾我部の船だったんでな、わざわざ襲っておいて助けるなんて茶番をする意味がない」
「元親が助けてくれたのか……ありがたいな」
「伊予河野に恩義を着せてこちらの味方に付けようとしているのではないか、そう言い出す奴もでてくると思うがな。こちらは政治的な話は全く口に出していない、巫も毎日坊主と遊んでるだけだしな」
「なるほど、ただ滞在しているだけならば豊臣には利がないということか」
「こちらは巫とお付きの飯代やら船の修繕で費用がかさむくらいで、全く得がない。ただ純粋に襲われている可憐なお姫様を助けたって事実だけを広げれば、三成と秀頼の株が上がるだけだ……だが家康、そっちはどうする?」
 徳川が織田と親密的な関係にあったことは周知の事実。
 主君になりえるお市が豊臣軍の庇護下にあり、本人が鶴姫と親密かつ織田家残党と関係していないのならば次に疑われるのは。
 
 織田家と関わりがある将である家康自身。
 
 家康を救いに自ら三河を訪問した鶴姫を家康が襲う必要はない、それは誰でも理解できる事実。しかしここで家康が対応を間違えれば彼の立場を危うくする可能性持っていることを、官兵衛ははっきりと理解していた。家康が悪いわけではない、しかし今回の状況が示している証拠は家康を追い込むものばかりだったのだ。
 だから官兵衛は家康にすぐに三河に戻り対応を練るように進言し、ついでに今後の話を軽くするつもりだった。
 そうでなければ家康の身が危なくなる。
 三成にとって敵は同じ豊臣軍の内にあったが、家康の敵は周辺の国の将たち。いない間に流言を流されれば不利な立場に追い込まれてしまうことを、家康本人もわかっている。 三成を抱く腕を緩めようとはしないが、その表情は一気に険しくなり始めていた。
「これに乗じて儂を追い落とそうとする人間がでるということだな……早めに戻らなければいけないな、確かに」
 そこまでは家康でも推察できる、そして対応できる。
 しかし官兵衛がもっと気にしていたのは、家康を熱狂的に信奉する織田従属時代からの家臣たちであった。彼らは家康のためだと自分が信じることを、どんな手を使おうとも実行しようとする。狂信に近い忠誠心は恐ろしいほどの力を生むが、周囲に悪い影響を与えることもあるのだ。
 さすがに織田軍の旗を使って他国の船を襲うことはないだろうが、今回の件で彼らが裏で動いている可能性を官兵衛は疑い続けていた。もし鶴姫の船を助けていたのが長曾我部でなく、鶴姫が討たれるか豊臣方の陰謀だと曲解して敵対の意志を向けてきていたとしたら。
 襲撃の疑いをかけられていたのは豊臣方。
 豊臣を『悪』だと世間に知らしめるために、自ら事件を起こした。
 あまりに出来過ぎているが故に官兵衛はそう考えざるを得なかったが、いくつか腑に落ちない点もあった。何故織田家残党の旗を用いたのか、そして長曾我部が通りがからなかったら確実に鶴姫は殺されていた事も気になる。
 
 どこの誰だか知らねえが、小娘一人を大の大人が囲んで殺そうとしてやがった。
 
 長曾我部元親の四国に戻る前の言葉、官兵衛はそれを特に重要視していた。もしかしたら織田家残党、もしくはそれを騙った人間の目的は鶴姫を殺害することだけで。
 それに協力した人間が、別な意味を付け加えたのでは。
 今後は家康の周辺にも間者を放ちたい所だが、そんなことをすれば家康のこちらに対する疑いを招きかねない。かといって家康に今回の件について正直に伝えれば彼と家臣たちの絆を打ち砕くことになるだろうし、疑いすぎるのもいいことではない。
 疑えば疑う分だけ、疑われた人間は傷ついていく。
 官兵衛は前の時間でそれを知り、二度と同じ轍は踏まないようにしようと心に決めている。三成が誰にも呪われないように、そして血で血を洗う戦を起こさせないように。
 誰もが笑顔で語り継ぐことができる戦を作り上げるために。
「互いに離れがたいだろうがな、それに関しては決まり事を作ればいい。この屋敷を訪れた時には門に自分の印を掲げておくとかな……それを見れば相手が来ていることがわかるはずだ。伝えてくれる人間を用意しておけば、相手がいるかどうかわかるだろう?」
「暇を見つけてはここに来て、待てばいいということか。もし三成が暇ならば、儂に会いに来てくれるのだな」
「私もそれでいい。家康と別れるのは正直不本意だが……ずっと会えなくなるよりはいい」
「三成……」
「家康……」
  切なげな眼差しを向け合う二人の間を裂くように、わざと大きく声を出す。
 二人の世界に入られるのはさすがに見ているのが辛いし、できるだけ早くここを出立したい。三成の不在の間に大きな事件が起こったことは、大坂城内に不穏な空気を生み始めている。ここは城主にお戻りいただいて、鎮めてもらわなければならないのだ。
 少なくとも今の三成は、それだけの影響力を持ち始めている。
 三成もそれはわかってくれているようだが、何かが気になるのか時折外を見ようと家康の腕から半ば抜け出しながら後ろを向いていた。
「何か気になるのか?」
「しのが猪を仕留めたので家康が捌いたのだ……刑部の身体に効けばいいと思い、肝を外に干したのだが」
「今取り込んだら生乾きになっちまうってことか。小生たちが先に出立して、干しあがったら即座に届けてもらえばいいだろうが」
「そうか……そうだな」
 自分を納得させるように、家康のぬくもりを振り切るかのように三成は小さく呟く。
 そんな家康を引き寄せるかのように抱きしめながら、家康の顔もわずかに暗くなりはじめていた。
 思いを確かめ合い、わだかまりと憎しみを越え。
  ようやくこれから共に過ごす時間を作ることができるという時に、また二人を引き離すことになってしまったのは正直心苦しい。三成の笑顔はしばらく曇るだろうし、家康以外にそれを晴らす術を持つ者はいない。
 だがそれでも官兵衛は言う。
 これ以上ないというほどの笑顔と、自信に満ちた声で。
「小生の策もようやく形になってきた……あとは家康、お前次第だ」
「儂次第……?」
「三成は西国の将たちと友誼を結んだ。きっとあいつらは三成を助けてくれるだろうよ……だが家康、これからお前さんが進む道は敵だらけだぞ。新しい城は見つかったのか?」
「武蔵の辺りに古い城があった、あれを改築して儂の居城にしようと思っている。小さな城だが海を望み周囲を山に囲まれているのでな、人が流れてくるようになれば良い街を作ることができるはずだ」
「そうか……ならばお前さんは動き続けろ、決して止まるな。そして周囲の馬鹿どもにお前さんの姿を見せてやれ、決して困難にくじけずに進み続ける姿をな。上杉を通して指示は伝え続ける、それと……三成のことは小生に任せておけ」
「ああ、頼んだ」
 国全体を巻き込んだ大きな戦の支度は調った。
 
 
 この先は若い二人を中心とし、この国全てが最後の戦へと突き進んでいくことになるだろう。
 
 
 どちらが勝とうとも戦がない国が生まれ、そして家康と三成は平穏を手に入れる事ができるのだ。
 三成を生かすために、そして彼が命の危険を感じずに暮らすことができる世をつくるために。そのために官兵衛は今生きており、常に策略を練り続けている。
「おい三成」
「わかっている、出立するのだな。夜を徹して走れば、明日の夜には大坂城に戻ることができる」
「そこまで急げとは言わんがな、少し気になることもあるんでな……さっさと戻るぞ」
「わかった。家康……貴様も、戻るのだな?」
「ああ、すぐに忠勝を呼ぶとしよう。名残惜しいが、こればかりはしょうがないな」
「私もだ」
 頬を擦り寄せかねない勢いで別れを惜しんで顔を近づけている二人。
 それを見ながら官兵衛は、ここしばらくの間で急速にわき上がり始めているある疑問について考え始めていた。
 
 あらゆる事件の糸を引いているのは誰なのか。
 
  前の時間であらゆる謀略を仕掛けていたのは、大谷吉継だった。
 だから真っ先に彼を押さえ込んだが、彼が動いていないというのに前の時間では起こらなかったことが起こり始めている。
 大谷の後ろに更に誰かがいるのか、それとも全く別な相手が動いているのか。
 どちらにしても早く正体を突き止めなければ、軍師黒田官兵衛の最後の戦が根底から破壊されてしまう事態になりかねない。
 今回の鶴姫の件は隠れていた首謀者が表に出る合図。
 だからこそ官兵衛はまず三成の確保を最優先としたわけだが、相手が何かを仕掛けてくるとすれば次は家康の方にだろう。
 悪人であればあるほど『絆』なんていう形のないものを壊したくなるはず。
 上手く家康が切り抜けてくることを願いながら、官兵衛はまだ身体を離していない二人に目線をやる。相手が官兵衛だからなのか親密さを隠すことがない家康と三成は、最後に軽く唇を触れあわせ。
 官兵衛の冗談めかした派手なため息に、苦笑いしながら身体を離したのだった。
 
 
 
 
 
 
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同人誌版ではこの続きに書き下ろしがありますが、特に読まなくても大丈夫です。
書いている人の自己満足ですのでw

ということで前半戦はこれで終了!

次から謎が謎を呼ばない後半戦に突入します、毛利さん劇場開幕ですよ~
ここまでの文量で上巻分なので、平行して書き下ろし作業に入りますです。かなり多くなる予感……
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
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