こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ダテチカで和風ファンタジー。
注意事項として筆頭が全裸。でもエロスはない。むしろ筆頭がキャラ崩壊。
自分で書くと毛利さんを登場させる限り毛長前提になることがよくわかった。
鶴姫めんこい。自分の欲望に忠実になった結果こうなった。
BL、NL混在になった気がするので苦手な方はご注意を。
書いた人:みっしー
*****
今日もいつもと同じ。
代わり映えのしない朝。
―変わらない一日、そうなるはずだった。
「おにぃさん!!朝ですよ!!起きてください!!」
けたたましい子供の声で起こされる朝。
これも、いつもどおりのこと。
「…朝に、なったのか…?」
「そうですよ!!時間通りに動かないと、ぐでんぐでんの駄目人間になっちゃいますからね!!さぁ起きましょー!!
そう言うと子供は勢い良く、布団を剥ぎ取る。瞬間寒さに襲われた。
「うぎゃ!!…って鶴の字!!お前なぁ!!」
ぶつぶつ言いながらも片手をついて身体を起こすと、にっこりした笑顔と目が合った。
「おはようございます!!おにぃさん!!」
「…おはよーさん…鶴の字」
あくびをしながら辺りを見回す。
自身が使っている布団に、読みかけの書物と文机。
周りが木の枠で囲まれていて、ここが土蔵であることと、元親自身の足に木で作られた枷がついていなければ、ごく普通の光景だったかもしれない。
それが、長曾我部元親にとってのいつもと変わらない一日の始まりだった。
長曾我部元親は、人間ではないと言われている。
並外れた身体能力と異端とされる容姿。それに加えて特異な能力をもっていた。
その能力は長曾我部の家を追いつめていったらしい。正確には特異な能力を求めた人間から狩られたのだ。そうして、特異な能力を持つ長曾我部の生き残りは、元親だけになった、らしい。らしい、というのはあくまで自分の目で見たわけではないからだ。
元親は幼い頃から一族の人間と共に森の中の術を掛けた屋敷の中で暮らしていた。今思うと追っ手から隠れるための苦肉の策だったのだろう。いるのは大人ばかりで子供は元親しかいなかった。遊び相手はもっぱら獣達であったが彼らは元親によく懐き、また元親も彼らを可愛がった。犬や猫、うさぎも加えて巨大なとかげを捕まえ、蛇とも遊んだこともあった。
その頃には、まだ自分が鬼だと呼ばれる存在だという事は知らなかった。
周りの大人はみんな自分と同じように銀の髪を持っていたし、その能力が異常だという事にも気がつかなかった。
あの日が来るまでは、何も知らなかった。
「今日は美味しいお魚がはいったんですって!!折角だから焼き魚にしてもらいました。」
そう言いながら鶴姫は元親用に誂えたお膳を運んでくる。
彼女の表情はにこにこしており、鬼である元親への恐れなど微塵も感じさせないものだった。
鶴姫は、訳あってこの屋敷で預けられている子供だ。年はまだ10才ぐらいだと聞いた。
会ったときから非常に勢いが良く、思い込んだら一直線のような子供だったが、数年経った今でもあまり変わらない。
一度、鶴姫に尋ねたことがある。
―鬼が怖くないのか、と。
すると彼女は少し考えて、言った。
おにぃさん以外のおには怖いけど、おにぃさんは怖くないです。
驚いたのは元親だ。どうして、と問うと笑って言った。
だっておにぃさんはきかんぼうだけど優しいんですもの、と。
それ以来、元親は自分よりも遥かに小さなこの子供には振り回されてばかりだ。
聞けば彼女は先見の能力を持つが故に両親とも引き離されこの屋敷に連れてこられたらしい。それでも、自分を巡る環境を憎まず、常に前向きな彼女は元親にとっては眩しい存在だった。
「いつもありがとな、鶴の字。」
「どういたしまして!!ささ!!暖かいうちに食べちゃいましょう!!」
そう言うと鶴姫は元親の正面に自分用のお膳を用意するとちょこんと正座して手を合わせる。
「いただきまーす。」
「…いただきます。」
こうやって、共に食事をするようになったきっかけも非常に曖昧なものだったと元親は思う。この屋敷に連れてこられてすぐの頃、大体の事は頷いた鶴姫が、唯一嫌がったものは1人で食事をすることだった。
当時彼女が懐いていたのは同じく屋敷に預けられていた雑賀孫市ただ1人。その孫市は元親の世話もあり、そうそう鶴姫の元には赴けない。ならば、と逆に鶴姫を元親が暮らす土蔵の、座敷牢の中に連れてきたのだ。
最初は呆気にとられた。
人間の子供を、主の気紛れで飼われている鬼の元に連れてくるなど正気の沙汰ではない。
だけれども孫市は言った。
「お前は姫を害する気があるのか?無いのであろう?」と。
そして鶴姫は言った。
「あなたは、おにさんなんですか?じゃあおにぃさんですね!!」と。
物怖じしない鶴姫のその態度と孫市の問答無用の判断で共に食事を摂るようになり、数年が経った。
今では子供ながら立派に元親の世話をこなすことが当たり前になってしまっているが。慣れって怖いな、と元親は思った。
「…今日は占いしなくて良いのか?」
「しましたよ?起きてすぐに。だから今日のお勤めは終わりなんです。」
だから一緒にご本よみましょうね、とにこにこした笑顔で言う鶴姫に、なんともいえない気分になる。
彼女がこの屋敷にいるのは、彼女自身が持つ先見の能力が主にとって有益だから、それ以外に無い。もし、不利益となれば、ひょっとしたら、そのときは―あの男は、この子を殺すのだろうか。
自分の一族を、なんのためらい無く殺したように。
もしそうなったら、自分は、彼女を守れるのだろうか―?
鬼と呼ばれる自分にも屈託の無い笑みを向けてくれる彼女を失うことは考えたくない。だけれども、彼女を守る力もない。ただ捕らわれ飼われた無力な鬼でしかない。元親は己の無力さを嘆くしかなかった。
だけれどもそんな葛藤を見せずに、笑って鶴姫に伝える。
「んじゃ…頼むわ。」
鶴姫もそれを受けてにっこりと微笑んだ。
「はい!!」
こうして、いつもと少しだけ違う朝がはじまった。
元親にとっての日常が崩れた日、それはとても暑い夏の日だった。
何故かその日は屋敷の外には出るなと大人から言われ、屋敷の奥に1人で残されていた。やがて屋敷全体が喧騒に包まれ、何かが争う声がどんどん大きくなり、不安になって奥の間に行こうとした時だった。奥へ行かなければ、逃げなければ、とただそれだけを考えていた元親は背後から近づく何かに気がつかなかった。
元親の身体は、背後から斬りつけられた。
『……が……っ……!!』
あまりの痛みに身動きが取れず、膝を床につけて崩れ落ちる。
―痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い…!!
『…お前が、鬼の子か』
切りつけられた背中の、焼けるような痛みに苦しむ元親にかけられる声があった。
『…う……ぐ……あああああっ…!!』
傷のせいで動かない身体を、髪を掴まれ、無理やり起こされる。
目の前にいたのは、とても冷たい目をした男だった。
男は痛みに苦しむ元親になど気づかぬよう、じぃっとその顔を見つめる。
そして頭を掴んだのとは逆の右手でいつの間にか握っていた刀を握ると容赦なくそれを元親の顔に向けて斬り付けた。
それからの事は痛みと怒りと憎悪とでない交ぜになっており、よくは思い出せない。
『…より鬼らしくなったのではないか。なぁ?…鬼の子よ』
そういって元親の顔に傷を付けた男を、一生忘れない。
己の仲間の仇であり両親の仇であり、己にとっての仇でもある、この男、毛利元就を。
そうして元親は知った。
己の一族は人間からは鬼と呼ばれていた事を。
だけれども、本当は違う。
異端の外見と能力を持っていただけの、人間だったということを。
それだというのに、毛利はその事実を知っていながら、己の目的にとって害になるという理由で、隠れ住んでいた一族を配下の者を使って皆殺しにしたのだということを。
なのに、どういう気紛れか、子供の元親だけを連れて帰ったことを。
そうしてその男の意のままに自由を奪われ、捕らわれたのだと言うことを知った。
あれからどのぐらいの歳月が経ったのだろうか。
だけれどもあの日から土蔵の座敷牢に押し込められている元親には分からない。押し込められたその日に足枷を付けられてから、ずっと歩いてはいない。最初は必死に逃げようとしたがその度に毛利から手酷い仕置きを喰らい、全てを諦めた。日々伸びる髪と、成長する己の身体だけが時間の経過を物語る。斬りつけられた左目は見えなくなり、自分で包帯を巻いて隠した。世話をする人間が同じぐらいの年の少女だった孫市から、より年少の鶴姫に変わったぐらいでその他の人間は鬼である元親を恐れて近寄らなかった。
毛利が何をしたいのか、元親は知らない。
基本的に傷の治りは早い性質ではあるけれど、あの日毛利に切りつけられた二つの傷だけは決して消えなかった。どうやら忌々しい術でもかけられていたらしい。
まるでそれが毛利に付けられた所有の証であるかのようで気に入らなかった。
だけれども、それに抗う気力はもう残ってはいなかった。
最近では数ヶ月に一度、帰ってきては元親を手ひどく扱ってはまたしばらくいなくなる。
殺されることは無い。だけれども、何かを求められることも無い。
ゆるやかに、死んでいっているようだと元親は思う。
鶴姫の訪問が無ければ、自分が今生きているのかすらもわからなくなる。
―なんのために、おれはここにいるんだろう。
あの男に一生飼い殺されて、心までも死んで、そうしたら自分はどうなるのだろう。
それは、鶴姫には決して言えない。元親が抱え続けた悩みだった。
座りながら鶴姫を膝に乗せて彼女の好きな絵物語を一緒に見ていた時の事だった。外が騒がしくなってきたことに気がつく。
「…なんだ?」
「随分…うるさいですねぇ?」
通常であればこの土蔵まで滅多にそんな騒がしさは伝わってこない。
屋敷の主が帰ってきたとしても、だ。
そうして、音が少しずつこの土蔵に近づいていることに気がつく。
「おにぃさん…?」
不安からか元親の着物を掴む鶴姫が安心するように背中をとんとんと叩いてやるといくらか落ち着いた様子を見せる。
「大丈夫だ。…どんな族が来たって、開けられやしねぇよ。」
大丈夫、鶴姫に言い聞かせるようでその実、自分自身に言い聞かせるように元親は言う。
だが、元親の期待は脆くも崩れ去った。
突如として土蔵を覆う轟音に思わず元親は鶴姫を庇うように抱き寄せた。
―土蔵を壊しただって…!?
誰がそんな馬鹿な事を。いや、こんなめちゃくちゃなことをする人間がいるのか、いやそもそも人間には土蔵を壊すことなど出来ないのではないか?
混乱の只中にいた元親は、土蔵の崩壊によって起こった土煙がようやく晴れていく中、座敷牢の前に立つ人影に気がつく。
「…アンタが元親か?」
それは黒い髪、隻眼の青年だった。
目を見張らんばかりの美しさとはこのようなことをいうのだろうか。
その神々しさに思わず見ほれる。
全裸だったが。
「ぎいやああああああ!!鶴の字、絶対みるんじゃねーぞ!!絶対な!!」
「??はい??」
慌てて元親は自身に抱きついている鶴姫をより深く抱きよせ密着させると完全に全裸(仮)を視界にいれないようにする。
なんというか、美形なだけに残念だ。いやただの変態だ。
「…賊だか誰だかしらねーけど着物きろよ!!言っておくけどここには金目のもんなんざ一切ねーからな!!」
「そうですよー、ここにはおにぃさんと私しかいませんよ~」
鶴姫を抱きかかえなんとか相手から遠ざかろうとするが枷がついた足ではうまく動けない。
「HA…!!人間は細かい事ばっかり気にしていけねーな…!!」
そんな元親達を見てやれやれ、という様子で言ったのは全裸(仮)である。
その姿をみてぶん殴りたくなったのは元親だけではあるまい。
「細かくねーよ!!…ってあれ…?」
全裸は全裸なのだが、何かおかしい。
というか肝心な部分がよく見えないことに元親は気がつく。
「フッ…今頃気がついたか…!!こいつはなぁ…小十郎に頼んで細工してもらった術…通称Godmozaikuだぜ!!」
親指をたててキメ顔を見せる全裸(仮)のあまりのキメポーズぶりに元親は思わず頭を抱える。
「…なんだろう、すんげー技術の無駄遣いだってことはよくわかった。」
なんかこいつ、疲れる。全裸だし。
こんな賊はいるのだろうか。
自分が土蔵にいた長い間に全裸は流行になっていたのだろうか。いやそれはないだろう。
鶴姫も孫市も…あの毛利でも服は着ていたのだから。
即ちこれは目の前の全裸(仮)の方がおかしいということは判断できた。
「ぜんら、ってどうしたんですかー?おにぃさん?」
「お前はまだ知らなくて良いぞ、っていうか知るな。」
未だに抱きかかえられている鶴姫は事態が飲み込めないまま疑問をそのまま言葉に乗せる。
なんとしてでも彼女にだけは全裸(仮)を見せるわけにはいかない。全裸だし。
そうこうしているうちに全裸(仮)はすたすたと歩き座敷牢の入り口に近づき、じーっと元親を見つめる。
何というか子供が興味のあるものをじーっと見つめている姿と、よく似ている。
そう、自分が今腕に抱く鶴姫もそんな姿をよく見せるなぁと思った時だった。
「銀髪碧眼の長髪に包帯…やっぱりあんたが元親で間違いないんだな?」
全裸(仮)がまるで確認するように言う。
「…だったらどうした。」
捕らわれた鬼の子が至った末路でも嗤いに来たのか、この全裸(仮)は。
だが、全裸(仮)は元親の発言を聞くと、ニヤリ、と口を三日月の形にさせてそれは楽しそうに、笑った。
子供のようで、無邪気なその笑みに一瞬、元親は恐怖を覚える。だが次に耳にした言葉は予想外のものだった。
「俺は、奥州筆頭 伊達政宗。…雑賀との約束に従い長曽我部元親を奪いにきたぜ…!!」
そういうと伊達政宗を名乗る全裸は格子に近づきすぐそばにいた元親を指差す。
「…は?」
状況がうまく飲み込めない。
雑賀、と男は言った。
雑賀の名字を君するもの、それは元親の知る限り、一人しかいない。
「さやか…?」
先代の死により孫市の名を継ぐために屋敷を去った少女。
元親にとってたった一人の友達。その彼女の名がどうして今ここで聞かれるのだろうか?
「…俺の部下がちょーっとしくじっちまってなぁ。その雑賀の頭領にえらい助けられたんだよ。恩は返すものだろ?だから君主たる俺が出向いて聞いたんだよ。そうしたら頭領は言った。友を助けて欲しい、って。だから俺はあんたを助けに来たんだ。」
OK?とよく分からない言葉を言う男の言葉は、正直に言ってあまり耳に入らなかった。
―さやかが?
確かにさやかは、屋敷で唯一自分を恐れずに接してくれたただ一人の存在だった。文字の読み書きも、絵を描くことも、歌を歌うことも、教えてくれたのは彼女だった。それが毛利からの言いつけだったのかもしれないし、そうではなかったのかもわからない。
だけれども元親にとっては今でも大切な、たった一人の友達だった。
「Ah…この枠邪魔だな。壊すか。」
そういうが早いが政宗は頑丈に作られているはずの木枠に手を掛けると青い光とともにあっという間に粉砕してしまう。
「嘘だろ…おい…」
長年に渡り自分を閉じこめていたものがどんどん壊されていく光景を元親は唖然とした気持ちで見守っていた。そうして難なく木枠を粉砕してしまった政宗はそのまま元親の所にまでやってくると足に付けられた枷を見てその端正な顔を歪ませる。
「…こんなもんで縛り付けるなんざ…気に入らねぇな」
そうして足枷にふれ、青い光が見えたかと思うと一瞬のうちに、痛みすらなく足枷を外してしまった。
「…あんた一体」
何者なんだ、と問おうとしたところで胸元から声が聞こえてきた。
「おにぃさん?なにがあったんですか?おにぃさーん!!」
「うわ!?ちょっと待てって!?」
深く抱かれていた鶴姫が息苦しさから顔を上げてしまったのだ。
瞳をぱちぱちと瞬かせる鶴姫はそうして政宗と目があった。
「あ?なんだ…?子供?」
「…おにーさん、着物着ないですか?」
「ああああああああ…!!鶴の字!!絶対忘れろよ!?いいな!!」
「はい?」
一番見せたくなかった鶴姫に見られてしまうとは、と元親は深く落ち込んだ。
だけれども幸か不幸か上半身しか見なかったのが救いだろう。大した違いではないかもしれないが、全裸曰くごっどもざいくとやらを見るよりは十分にましだと元親は思った。
「さてと…じゃあいくぜ。」
「ちょっと待てよ!!…俺なんかが行ったって…何もできねぇよ。」
自分の姿(全裸)を見られた事など気にも止めず肩を貸そうとした政宗を元親は咄嗟に振り払ってしまう。
「…俺なんかが…何かを出来るはずがないんだ」
鬼の子。そう呼ばれ、捕らわれるだけしか出来なかった無力な自分に、何が出来るというのか。自嘲の笑みを浮かべる元親を、再びじーっと見つめる政宗は、こう言った。
「今は何も出来なくてもいいだろ。」
「え…?」
一瞬、元親は言葉を失う。この男は今、なんと言ったのだ?そう思い顔を上げると再び政宗と目があった。彼は続ける。
「これから、見つけていけば良いだけだろ?you see?」
そう言って子供のように笑ったその顔が、とても綺麗で、あまりに楽しそうに笑うものだから、元親もつられて笑ってしまった。
「…変な奴だなお前。」
全裸だし、とは言わず心の中にとどめておくことに決めた。
腕の中の鶴姫が元親を見て楽しそうな表情を見せた。
遙かに年下である彼女はいつも元親を案じてくれていたのだから当然なのかもしれない。
外に行って、何が出来るのかもわからない。
だけど、なにかできるのなら、と元親は思う。
「…俺は、お前と行けばやるべき事を見つけられるのか?」
元親が尋ねると政宗は頷いた。
「ああ。」
そうして誰かにとって必要な存在になれるのなら、それはきっと大事なことなんだ。
わずかにでも、こんな自分にでも、何かが出来る可能性があるのならば、元親はそれに縋りたかった。
だから言った。
己の願いを彼に、伝えた。
「伊達政宗…俺をここから連れ出してくれ!!」
そう言った瞬間、目の前の政宗が笑った。とても楽しそうに。
かと思うと政宗は何かを呟き、そして元親の視界は青い光に包まれた。
『Come on!!早く乗れよ!!そろそろあいつらも目が覚める頃だろうしな!!』
「竜…なのか?」
「おっきいです…。」
体を引きずるように外に出た元親も、その元親に肩を貸す鶴姫も、その姿に呆気に取られる。
政宗が変化した姿、それは美しい竜の姿だった。
「ただの変態じゃねぇとは思ったが…まさか竜だったとはな…」
『まぁ詳しい話は後だ後。あいつらにかけた術が解けちまうからさっさと乗れよ。』
どうやら屋敷の人間は一人残らず術を掛けたらしい。土蔵にいた元親と鶴姫だけが難を逃れたという事だろうか。
「…そんな高度な術使えるのに…なんで屋敷の一部ぶっ壊して土蔵までぶっ壊してんだよ…」
十数年ぶりに出た外はあまりに眩しい。だがそれ以上に土蔵の周囲の惨状が目に余る。
『細かいことは気にするな。OK?』
どうやらこの政宗という竜は、かなりやりたい放題のようだ。真面目に考えていてはこちらが振り回されるだけだ。
元親は鶴姫に手を借り、竜と化した政宗の背に乗せられると、鶴姫はそこから離れようとする。
「…鶴の字?」
「…今日の朝のお告げで出てました。青い竜が来る、って。だから私、分かっちゃったんです。おにぃさんがいなくなるって。」
泣きたいのか、笑いたいのか、なんとも言えない表情で鶴姫は言った。
「…おにぃさんは、ここにいちゃだめです。…だから行って下さい。そして見つけて下さい。」
しあわせに、なってください。
そこまで言って鶴姫は顔を伏せる。
先見の力。
鶴姫がこの屋敷に来るに至った理由の一つでもある異端の能力。
良くも悪くも彼女は全ての事象の先を読むことができた。
それは朧気な姿であったり、鮮明な姿であったりと様々なものではあるが、彼女の先見は違えた事が無い。
だから、知ったのか。元親の行く末を。
元親に、政宗と行くようにと彼女は促した。だけれども、自分がいなくなったら、鶴姫はどうなる?ひょっとしたら元親を逃がした責に咎められるのかもしれない。
貴重な力の持ち主であるだけに死なせはしないだろうが、それでも、今のような自由は無くなるだろう。
自分がそうであったように、閉じ込められて自由も奪われて、ただ息をするだけの日々。
あんな思いを鶴姫だけにはさせたくなかった。
だから自然と口から出たのだ。
「…お前も…来いよ」
元親の声に、鶴姫はきょとんとした様子で顔をあげる。
「お前も一緒じゃなきゃ…俺は幸せなんて見つけられねぇよ!!!」
子供じみた感情だと自分でも思う。遥かに年下の鶴姫が自分を思ってくれるのとは対照的なもの。
だけれども、譲れなかった。
「…おにぃさんはむちゃくちゃです…わたし、我慢しようと思ったのに…」
「…そうだよ…どうせ俺は無茶苦茶だよ!!」
困った顔で笑う鶴姫にそれでも元親は手を差し伸べる。
自分ひとりでは歩くことすらままならない体。
だけどそれでも、鶴姫に支えられるだけではなく、何かを彼女に返したかった。
自分の自己満足であるとも思った。だけれども、彼女を1人だけ置いていくことは嫌だったのだ。
「…行くぞ。」
「…はい…!!」
泣き笑いの鶴姫は元親の腕の中に飛び込んだ。
そうして元親は自分の前に鶴姫を座らせると政宗から声がかかる。
『…じゃあ準備は良いか?…じゃあいくか。Partyの始まりだぜ…!!』
言うが早いが、青い光を放った政宗は空へとその身を委ねたのだった。
「…これからどこに行くんだよ」
竜と化した政宗の背に乗り、鶴姫を抱えたまま元親は訪ねる。
『とりあえず、俺達の領域に行くぜ。あそこは下手な人間には手出し出来ねぇしな。』
しばらくかかるから待ってろよ、そういう政宗は迷う様子も無く空を飛んでいく。
久しぶりに見る空は、とても青く、輝いていた。
それはとても、美しかった。
「俺…本当に外にいるんだな。」
いつもと同じ一日だと思っていた朝からは考えられないほどに元親の世界は激変していた。
世界が変わるなんて今でも信じられない。
ひょっとすると、自分が今見ている光景は、夢なのではないだろうか。そう思う。
『…なぁ、元親。』
「?何だ?」
飛びながら政宗は頭に直接語りかけるように(これも竜の固有能力なのだろうか)言う。
『お前、俺の嫁にならないか?』
「………は?……いや、なれるわけがないだろう!!俺男だぞ!!」
「そうですよー。おにぃさんは男性ですよー?」
いくら髪を切っていない上に、座敷牢暮らしのせいで貧弱な体とはいえ男に間違われることは無いだろう。
いやそうであってくれ、頼むから。
『そっかあ?いやでも元親は綺麗だから…嫁にしたいんだけどな。』
いくら言っても政宗は納得する気がないらしい。この馬鹿竜はやはり馬鹿なのか、さすが全裸。
「一つ聞くが…俺を嫁にしたとして、何する気だアンタ…」
地を這うような声を耳にしても政宗は何も気がつかないらしい。やたらと張り切った声が頭に響き渡った。
『ばっか!!嫁もらってするって言ったら子作りに決まってるだろ!?』
「馬鹿はてめぇだああああああああ!!男捕まえて何が子作りだあああああああ!!」
思わず右手で政宗の背を思い切り叩くが大したダメージは無いようだ。
腹立たしい。大変に腹立たしい。
『ALLOK!!人生気合で何とかなるって小十郎が言ってたぜ!!』
竜の姿のまま右の指をぐっと立てる政宗に頭が痛くなったが、思いっきり叫ぶ。
「おまえのとこ主従揃って大馬鹿だろおおおおおおおお!!」
あまり世間を知らない元親でもそれがおかしいということだけは分かる。
足が動かないのが憎らしい。足さえ動けばけり倒してやるところを。
「おにぃさん、こづくりってなんですか?」
『OK,良い質問だな。まずはうちに代々伝わる秘薬を持って…』
「いっぺん死ねやこのアホ竜がああああああああ!!!」
無垢な子供になに教え込もうとしているのだ。
もうやだ、このアホ竜。
思わずさめざめと顔を覆ってみたがどうしようもない。
今更破壊の限りを尽くしたあの屋敷には戻りたくない。
そもそも主の気紛れで飼われていただけの自分が、先見という貴重な能力を使う鶴姫を奪って逃げたという形になるのではなかろうか。
もし、あの主に捕まったら、ただでは済まないだろう。
ひょっとすると毛利は元親と鶴姫を諦めないかもしれない。
己が執着する限り何度でも奪い返そうと繰り返すのかもしれない。
不安が無いわけではなった。
だけれども、今この瞬間だけは、自分にも何か出来るのではないかという可能性に縋りたい。鬼と呼ばれた自分にも、出来ることがあるのだと元親は知りたかった。
「覚悟しとけよ政宗ぇ……!!」
『よくわかんねぇけどHONEYが機嫌良いならなんでもいいぜ!!』
政宗本人は気づいてないかもしれないけど、あの言葉は間違いなく元親自身を救ったのだ。
無かったら、見つければいいのだ。
それを言葉にして気づかせてくれたのは他でもない政宗だった。
…最後まで面倒みてもらおうじゃねぇか。
元親は知らず知らずのうちに、自分が笑っていることに気がついた。
世界は彼に優しくはない。
きっと外の世界は悪意に満ちているだろう。でもそうでない感情もあるだろう。
だけれども、世界を少しでも優しいものにするために、元親は小さな、それでも彼にとっては始まりの一歩を踏み出したのだった。
○どっちにしろ現時点では鶴姫以外変態しか選択肢にないよね。ごめんね兄貴。
だが引かぬ。
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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