がんかたうるふ だからさよなら、魔法使い(毛長・現パロ) 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ピクでの毛長企画参加作品。
毛利誕生日企画ですが祝っているのかはとても微妙。
前後編の後編。
前編を読んでいないと多分訳がわかりません。
前編と後編のタイトルを合わせたものが正式なタイトルになります。

それでもよろしければどうぞ。


書いた人:みっしー



 *****












だからさよなら、魔法使い。




 体調不良を理由に早退した元就はそのまま、と総合病院の一室を訪れていた。
スクーター事故で足を骨折して入院したという能島鶴姫を見舞うため、そして10年前の真実を知るためだ。整形外科のナースステーションで自ら名乗り、病室を尋ねると高校生であることに驚かれはしたものの、鶴姫自身が知人であることを認めたため、難なく見舞いすることが出来た。

2人部屋の一室に入院していた鶴姫は。泣きはらした目で突然訪れた元就に驚きつつも、訪問を喜んでくれた。幸い、同室者はおらず、部屋は鶴姫が1人で使っている状態だった。
だが「元親の事が聞きたい。知っているのだろう。」そう鶴姫に伝えると彼女の表情に驚きと陰りが見えた。しかし最終的にはどこか悲しい微笑みで了承してくれた。
「…そうですか…元親くんのこと、思い出したんですねぇ…」
「…やっと、な」
 10才年上の幼なじみは、幼い頃に自分の面倒を見てくれていたと聞く。
それは同様に同じく、幼なじみであった元親のことも見知っていたという事だろう。
両親にも聞けない今、誰よりも確かな情報を持っているのはこの鶴姫ということになる。

 

そうして鶴姫は昔話を始めた。


「元親くん、私たちはチカちゃんって呼んでました。もとちか、から取ってチカちゃん。
反対に元就くんはナリくんって呼ばれてましたよね。」
「…ああ」
そうだ。
元就が幼稚園に入る一年前に隣家に引っ越してきた元親。
半年ばかり彼の方が早生まれだったが学年は同じで、親も子もそれぞれ仲が良かった。
チカちゃんとナリくんはとっても仲良しですね、当時学生だった鶴姫はよくそう言って笑っていた。
そして自分と元親もその言葉が嬉しくて笑った、はずだった。
「二人ともご家族が忙しかったからよくうちに来てましたよね、覚えてます?」
「…確か、幼稚園や小学校の帰りによく世話になった、気がする。」
毛利家も長曾我部家も両親が家を空けることが多く、2人揃って近所の能島家、即ち鶴姫の自宅に預けられる事が多かった。
ピアノ教室を開いていた鶴姫の母も忙しかったが、鶴姫自身が面倒を見てくれていた。
それは幼稚園のころから小学生になるまで、いやなってからも変わらない習慣だった。
小学生になった元親がピアノを始めたのも、能島家に預けられた事がきっかけだった。


「…あの年の3月13日。たまたまチカちゃんちのお母さんのお仕事が早く終わるからって一緒におでかけすることになったんです。」
そのまますぐに単身赴任している父親の元に向かうという事になり、毎年3人で祝っていた元就の誕生日は2人だけで祝うことになった。
鶴姫に連れられ児童館から帰宅し、鶴姫宅からすぐ外出することになっていた元親に対し元就は不満だった。
「いつも二人で仲良く遊んでましたから…元就くんは置いてかれちゃったような気分になっちゃったんでしょうね…。」
何故二人が喧嘩を始めたのか最初から見ていたわけではない鶴姫にはわからない。
だけれども気付けば仲の良い二人は取っ組み合いの喧嘩をしており慌てて諫めたのだ。
「慌てて止めたんですけど…二人とももう怒っちゃって…お互いに『大っ嫌い』って。そう言ってそっぽ向いちゃったんです。」
そうこうしているうちに元親は母親の迎えが来て帰ってしまった。
気まずそうに元就を見やりながらも鶴姫に抱きつく元就に何も言えないまま。
元就とて本意で大嫌いと言ったのではない。
ただ寂しかったのだ。自分の誕生日に元親と遊べないことが。
元親とて元就の誕生日を祝いたかったに違いない。
だけれども数ヶ月に一度しか会えない父親と久々に会える事と比べる事も出来ず元親自身困っていたはずだ。

チカちゃんが好きならちゃんと謝らなきゃだめですよ、鶴姫にそう言われた事も今なら覚えている。
帰ってきたら必ず謝ろう。ちゃんと謝ろう。そう決めていた。

だけど、その日は来なかった。


 その日の深夜、高速道路でスリップ事故を起こしたトラックに巻き込まれた元親と母親は二度とは帰って来なかったのだ。


重傷を負った母親と元親は病院に運ばれるも、搬送先の病院で亡くなった。
折しも、それは、元就の誕生日である3月14日のことだった。

「…なんで、って私は思いました。…誰ならば事故に遭ってもいいっていう訳じゃもちろんないです。…でもなんでチカちゃんとお母さんだったんだろう、って…そんな運命を決めた神様がいるのなら、私は神様が大嫌いだって…そう思ってました。」
それから2人の通夜、葬儀と慌ただしく過ぎていった。
「お葬式が終わってすぐだったかな…ナリくんが高熱を出して寝こんだんです。40度ぐらいある熱が何日も下がらなくて、ご両親と一緒に病院に行ったりして、でも、突然下がったんです。…そうしたらナリくんは…」
「…元親に関することを、全部忘れていた、ということか。」
「…はい。」
医師の見立てでは心因性の健忘ではないかということだった。
親しかった友の死は、幼い元就の心にダメージを与えるのに十分だったのだ。
「チカちゃんのお父さんは、家も全部引き払って二度と戻らないと言っていました。ここには思い出が多すぎるからって、お墓も全部自分の故郷に建てるって。…世話になりました、ってそう言っていなくなりました。…お医者さんは…これ以上ダメージを与えると日常生活すら送れなくなるかもしれない、ってそう言いました。…ご両親は…ナリくんの為にチカちゃんの存在を隠したんです。」
そういう鶴姫はとても悲しそうだった。事実悲しかったのだろう。可愛がっていた幼なじみを1人亡くしただけではなく、彼がいた事実を意図的に隠さなければならない現実が。
だが、幼い元就の心を守るために、彼らは元親一家がいた痕跡を徹底的に隠したのだ。
あのアルバムの不自然な抜け具合はそのためだったのか、とようやく合点がいった。

そうして、高熱から回復した元就だが以前の心優しい姿はなりを潜めるようになった。
年齢離れした冷静さと落ち着きが突出するようになり、鶴姫に甘えることもなくなっていった。
「…私といると、どうしてもチカちゃんとの事を思い出しちゃうから、きっと無意識に避けたんでしょうね。」
そして母親の仕事の都合という名目で母親と元就はあの家から離れて暮らした。
小学2年生の新学期と共に隣の校区の小学校に転入し、その後も元就の心は無意識の自衛を選び取るかのような選択をとり、成長した。
中学も卒業が近づき、そろそろ大丈夫ではないかという判断を下した医師の言葉もあり、高校入学を機とし8年ぶりに元就は我が家に帰宅したのだった。

そうして鶴姫との交流が途絶え、やがて、あの事故から10年が経過した。



誕生日が嫌い。
運命という言葉が嫌い。


全ては10年前のあの日に繋がっていたのだ。



「私から見ても2人はとっても仲が良かったんです。…2人が幼稚園の時でした。
私の家に遊びに来ていた時、お遊戯会の劇でチカちゃんがお姫様じゃないのがおかしいってナリくんが怒ったんですよ。」
「…それは、また」
「チカちゃんはとっても可愛かったけど男の子でしたから…お姫様になることは出来なかったんですよ。そしたら今度はチカちゃんがナリくんが王子様じゃないのがおかしい、って怒り出して…結局2人で『魔法使いになりたい』ってそう言ったんです。王子様とお姫様は1人ずつしかなれないけど、魔法使いは2人でいてもおかしくない、って。ずっと一緒にいられるね、って…そういって…」
そこまで言って鶴姫は息を詰まらせる。元就が見やるとその目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちていた。
「鶴ねぇ…」
気付けば元就は昔の呼び名で彼女-鶴姫に呼びかけていた。
「…ご、ごめんなさい。もう大丈夫だって思ってたんですけど…。…でも私、ナリくんがチカちゃんの事思い出してくれて嬉しいんです。…私のわがままなんですけどね…。」
泣き笑いの表情を見せる鶴姫は、離れている間もずっと、自分を案じていてくれたのだろう。
いや鶴姫だけではない。
父も母も、妻と子を失った元親の父でさえ、事情を知る周囲の人間は、元就を案じてくれていたのだ。
どれだけの人に、助けられて生きてきたのだろう。
きっと忘れたままなら気付けなかった。

忘れたきっかけが元親なら、思い出すきっかけも元親だった。


10年後の3月13日。即ち、昨日。
元親の幽霊と出会わなければ元就は彼のことを一生思い出さないまま生きていただろう。
そうして鶴姫から真実を聞くこともなく、毎日を無為に過ごしていたに違いない。



ようやく泣き止んだ鶴姫は鶴姫はベッド上に乗せていた大きな手帳を手に取るとそこから一枚の写真を取り出した。
「うちに帰ればもっとあるんですけど…とりあえずはこれ、ナリくんにあげますね。」
「…これは…?」
「…覚えてませんか?…チカちゃんの誕生日に私が撮った記念写真です。」
ケーキを中心に仲良くピースをしている銀髪の少女と見まごう少年が茶髪の少年とそこには写っていた。
緊張したような茶髪の少年とは裏腹に銀髪の少年の方は実に楽しげな笑顔を浮かべている。
『チカちゃん 7才の誕生日にナリくんと』
写真の裏には当時の鶴姫の字でそう書かれていた。


 紛れもなく、当時の元親と元就だった。


「本当にチカちゃんは女の子みたいで…こうしてみても男の子ってわかりませんね。」
でも案外大きくなったら、凄い男の子っぽくなったいたかもしれませんね、と鶴姫は寂しげに呟いた。
そうだ、生きている元親と会うことは叶わない夢なのだ。
大きくなった姿は全て想像するしかできない。
幽霊になって会えたことが奇跡のようなものなのだ。
「思っても仕方のないことですけど、やっぱりちょっと考えちゃいますね。」
そういって笑う鶴姫は今も昔も変わらない笑顔のはずなのに、色んな物を耐えてきたその笑顔が酷く大人びているように元親には見えた。
そうして再び手帳を手に取るとカバー部分から一通の手紙を取り出した。
「それは…?」
「…チカちゃんからの、最後の預かり物です。…ずっと渡せなくて、私が持っていました。。」
そう言って鶴姫は手紙を元就に手渡す。

あの日、鶴姫が元就と喧嘩した元親から、誕生日に渡してくれ、と頼まれたもの。
誕生日の日に渡すつもりだったそれは諸々の事情もあって今まで渡せなかった。
―鶴ねぇは見てもいいよ、でも明日までナリにはないしょだよ。
そう言った幼馴染の少年の姿は、今でも鶴姫の脳裏に鮮明に思い出すことが出来る。

逸る手で元就が封筒から取り出したのは綺麗に作られた手作りのバースデーカード。
色とりどりの細かい細工がなされたそれは今みても遜色ないほど美しく見えた。
そうしてカードを開いていく。


『もとなりへ

たんじょうびおめでとう。やさしいもとなりがだいすきです。

おじーちゃんになるまでずっとずっといっしょにいてください。

らいねんはいっしょにおいわいしようね。

もとちかより』



「……本当に、あいつは……」
文面を見ただけで、元就の目から涙が止まらなくなる。

何を思って元親はこれを作ったのだろう。
自分の運命など全く知らなかった幼子はただ友である自分のためだけに、これを作った。
子供らしいひらがなばかりの字で描かれたそれは、元就の7歳の誕生日祝いのために元親が書いたものだった。
ずっと一緒にいることも、一緒にお祝いすることも、今となっては決して叶わなかった約束。

―ずっと、一緒にいたかったよ、お前と。

今はもういない元親の呟きが脳裏に蘇る。

―我とて、同じだ。

幼馴染で、ずっとそばにいることが当たり前で、居なくなるまで気がつかなかった。

あれは確かに、恋だった。

実ることは無かったけれど、元就にとっても、そして元親にとっても初恋だったのだ。

「…約束を破るなと…我に言ったのは貴様だろう…元親…。」
なのに、と続く言葉は涙のせいでうまく発せられない。
どうしてここに元親はいないのだろう。
どうして一緒に成長することが出来なかったのだろう。
どうして、自分はあの時に限って意地を張ってしまったのだろう。
そうすれば、きっと元親は心置きなく父親に会いに行くことができた。
たとえ死が避けようのないものだったとしても何の未練もなかっただろう。
だけれどもそうだったら、あの元親の幽霊と出会うことは無かった。

―運命を、恨むなよ。俺は幸せだったから。

そう笑って消えていってしまった元親の姿が脳裏に浮かぶ。
堪えきれない涙を流す元就の頭を鶴姫はただ、何も聞かずに頭を撫でてくれていた。
子供の頃、元親と元就によくしていてくれたように。

思い出してまた、涙が零れた。



「…ナリくんは、チカちゃんの事を思い出して、後悔していますか?」
ようやく泣き止んだ元就に鶴姫が問う。
「…後悔は、しない。」
それは事実だった。
幼い頃の自分は元親がいないという事実を受け止められずに彼がいたという事を全てを忘れた。
しかし全てを知った今となってはどんなに辛くても、どんなに悲しいものだとしても、何も知らなかったという事実の方が耐え難い悲しみだった。
「我は、忘れぬ。我が生きる限り、絶対に。…かつて鶴ねぇが言ってくれたように…我も、決して忘れない。」
「あの時言ったこと…覚えててくれたんですね…。」
無かったことになんてしません、そう言って泣いていた鶴姫の姿は今でも鮮明に思い出すことが出来る。

忘れない、絶対に。

それは、もう一度会えた元親と交わした最後の約束なのだから。







「…毛利か?」
「石田?お前が何故ここに?」
鶴姫の見舞いを終えて病院のロビーに降りてきた元就は見知った顔である石田三成に出会った。確か三成は家庭の事情で今日は一日休んでいたはずだったが、何故ここにいるのだろうか。そんな元就の疑問に答えるかのように三成が口を開いた。
「私は、甥の付き添いだ。」
「付き添い?」
「ああ」と答える石田の姿は見慣れた制服姿であるというのにこの場が病院であるというだけでなんとなく浮いて見える。
最もそれは同じく制服姿で病院にいる元就も同じなのだろうが。
「…一緒に暮らしている兄夫婦の子供だ。まだ小学生なのだが…昨日の夜から、風邪を拗らせたのか熱が下がらなく、急遽入院した。姉だけでは大変だろうということで比較的時間に自由の利く私も付き添いをしたのだだ。…昨夜から意識が戻らず、肝が冷えたが、昼を過ぎてから一気に平熱に下がって別状はなくなったようだ。」
念のためもう一晩入院して検査するそうだが、私は帰っても良いとのことで今から帰るところだ、と返答があった。制服だったのは朝の登校時に急遽付き添いが決まったのでそのまま来たからだったらしい。

「それは…大変だったな。」
-甥っ子がいたのか。
学校で見る三成からすると甥っ子の面倒を見ている姿が失礼ながら想像出来なかった。
「…普段から病弱でな…寝込むことも多いが…今回はさすがに肝が冷えた。」
そうは言いながらも甥っ子が心配だったのだろう。はぁ、と石田が溜息をついた時。
元就の背後からエレベーターが一階に着いた音がしたかと思うと、パタパタと足音が聞こえてくる。
そして足音は元就の方向に向いてきた。

「…みつなりにーちゃーん!!」
「元親!?走ってはいけないだろう!!」

-もとちか?

 懐かしくも切ない響きを耳にし、思わず毛利は自身の背後の声が発せられた方向を見やる。
「もうへーきだよ。なんだかさ、前よりすっげー体がらくなんだ。」
そう言って駆けてくるのは、銀の髪、金色の両目を持つ少年。

 あれは、まさか本当に
「もとちか…?」思わず呟きが口から零れる。

 毛利の後ろから駆けてきたパジャマの上ににパーカーを羽織った少年は、毛利など気にも留めず正面の石田に体当たりをしつつ抱きつく。背の低い少年の頭は長身の石田の腰より少しぐらい上でしかない。
えへへ、と笑う姿は健康そのもので、石田が言うように生死が危ぶまれたとはとてもではないが思えない。
「…本当にお前は…お前がそんなのでは兄さんも姉さんも気苦労が絶えないな…。とりあえず、無事で良かったと言っておこう。」
「うん!でもみつなりにーちゃんも心配してずっと付いててくれた、ってかーさんに聞いたんだ。だからありがとう。三成にーちゃん!!」
そういってにこにこと笑う姿は、毛利が良く知る、いや知っていた少年と瓜二つの姿だった。

と笑いながらばたばたよく動く少年は不思議とあの元親ととてもよく似ている。

―姿は変わっても、例えお前を覚えていなくても、俺はきっと会いに行く。

―だから、今度はお前が俺を見つけてくれ。


 そうだった。あの時、元親は確かにそう言った。
(馬鹿が…変わらぬ目など、見つけてくれと言わんばかりではないか)
思わず己の考えに苦笑する。

 そのうち目の前の元親が三成と相対していた毛利の存在に気が付いたのかきょとんとした様子で彼に声をかける。
「なーなー、このにーちゃんもみつなりにーちゃんのともだち?」
「ああ…学校の先輩だ。」
「そっかー」
人見知りのしない性質なのか元親少年はててて、と前に出て来ると毛利に向かって言った。
「おれ、いしだもとちかっていいます。きゅうさいです。みつなりにーちゃんのおいっこです。よろしくおねがいします。」
そう言ってぺこりとお辞儀をする。
その姿は、あの元親とどこかよく似ていて、だからかもしれない。
「…おい、毛利。どうした?」
「…にーちゃん、なんでないてるの?どこかいたいの?」
目の前の自分を案じる三成と元親の姿が、歪む。

「…なんでもない。そなたらが案じることは…何もない。」

-お前はずっと、そこにいたのか。

10年前の事故。
現在9才だという石田の甥っ子。
幼少期から病弱だったという、元親にうり二つの少年。
石田の甥である元親が意識不明だった期間は、元就の前にあの元親が姿を現していた期間と一致する。
何の因果か高熱で死にかけた少年の魂は、前の人生の心残りを解消すべく動いていた。
そして心残りが無くなると同時に、現在の体に戻ったのだろう。
過去の記憶を全て忘れて。
いや忘れたというのは語弊があるのか。
今、元就の目の前にいる少年は最初から元就の事など知らないのだから。

だけれども元就が泣いているのは、悲しいからではない。
嬉しいからだ。
例え己の事を覚えていなくても、「昔」の事を一切覚えていなくても、生きている元親ともう一度出会えた事が、なによりも嬉しい。
だから、涙が止まらない。
人前であるというのに毛利の目からは次から次へと涙が溢れていく。
そのただならぬ様子に石田も、甥っ子である元親もかける言葉を失うが、ととと、と元親が駆け寄り、そして言った。

「…えーと、あの、にーちゃんこれ使って。」
そういって少年の元親はポケットに入れていたハンドタオルを毛利に手渡す。
『いしだもとちか』と名前が書かれたそれは少年のお気に入りなのだろうか。
「…あの、おれ、よくわかんないけど、泣きたいときはね、おとなでもこどもでもおもいっきりはらのそこからないたらいいっていってた。だから、にーちゃんも…ないたらいいとおもう」
『泣きたいときは腹の底から泣けば良いだろ』
今はもういない、もう一人の元親の言葉が頭をよぎる。
-そんなところまで一緒なのか。
生まれ変わりなど、夢物語でしかない。昨日までの自分であれば切って捨てたような事象の一つ。
だけれども、今ならそれを信じられた。信じさせて欲しかった。



「…ありがとう」
ハンカチを受け取っても尚、涙は溢れて止まらない。
目の前の石田は見たことのない元就の姿に呆然としているだろう。元親少年にしても呆れているかも知れない。
それでも元就は思う。

たった一日の間に起きた数多の奇跡に感謝を。

今はいない彼には祈りを。もう1人の彼には祝福を。

今ならば、ようやく自分が許せるような、そんな気がした。









 そして元就は、奇跡の一日をくれた魔法使いに、別れを告げた。


















PR
[480] [479] [478] [477] [476] [475] [472] [471] [470] [469] [467]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

ついったのフォローは下 のアイコンから。




ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カウンター
忍者ブログ / [PR]
/ Template by Z.Zone