こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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作家の毛利さんと通い家政夫で大学生の長曾我部くんのゆるゆるな日常。
その9ぐらい。
書いてる人は毛長だと思って書いている。
今回はおとなしめ。作家さんは通常運転。
それでもよろしければどうぞ。
書いた人:みっしー
*****
作家さんと大学生~夏休み前のはなし~
「大掃除するぞ!!」
それは、元親の一声から始まった。
長かった大学のテスト期間を終え、久しぶりに毛利家にやってきた元親が発した第一声がそれだった。
「…そなた…朝っぱらからなにを言う…」
「いつもならあんた率先して起きてる時間じゃねーか。なんでそんなに眠そうなんだよ。」
時刻は8時。
一応前もって連絡しておき、許可も貰っていたのだが、目の前の毛利は非常に眠そうに瞼をこすっている。普段の怜悧な印象は形無しである。しかもよく見ると着ているのは例の謎柄パジャマだ。そういえば気に入っているのかよく同じものを身につけている。
たとえ完徹しても毎日毎朝同じ時間に太陽を拝むことを日課にしている男とは思えない様子に元親は訝しがる。
「…仕事は終わったのだが…仮眠の後、資料本を読み出したら止まらなくなり…このザマよ…」
要はあまり寝ていないらしい。
それに加えて一週間以上締め切りのために自宅に篭りきりで元親すらも締め出していたはずだ。最もテスト期間だった元親としては願ったり叶ったりだったのだが。
『明日から来てもよい。むしろ来い。』とメールを貰ったのが昨日の深夜。
テスト明けで封印していたガンプラ作りをしていた元親がすぐに返信して約束を取り付け、そうして一夜明けたのが今日という訳だ。心なしかやつれたような様子の毛利だが、仕事に加えて食事もインスタントがかなりの割合を占めていたのだから、そりゃあやつれるだろう。
「…あんた締め切り明けなんだから無茶すんなよ…腹減ってるならメシ作るぞ?」
初めて会ったときの、締め切り明けで力尽きて玄関先で寝ていた姿を元親は知っている。即ち、毛利に無茶をさせると普段は考えつかないような恐ろしいことをやらかすことを元親は知っていた。
ホラ、と駅近くの24時間営業スーパーで買ってきた食材を掲げると毛利が思い出したかのように呟いた。
「そうであった…まず腹が減ったがとにかく眠かったので眠り…そして夜中に目が覚めたが、動くのも億劫で近くにあった黒砂糖をかじっただけであったわ…腹が減ったぞ。」
「気づくの遅ぇよ!!というかメシくえ!!まずはそれから!!」
眠気と空腹のためか未だに動きが覚束ない毛利の手を引っ張り食卓テーブルに座らせると元親はすぐに朝食の準備を始めたのだった。最も締め切り中の毛利が荒らした台所の片づけから始めたのは言うまでもないのだが。
「…して、何ゆえ大掃除なのだ?」
元親が調理を始め、小一時間経ってからのこと。
ほかほかごはんに豆腐とねぎのお味噌汁、卵焼きと納豆、小松菜とあげの煮浸し、漬物といった朝食をつまみながら、少しずつ回復していた元就は正面に座る元親に問う。
「ん?大した理由はねぇといえばねぇけどよぉ…ここんとこちゃんとした掃除出来てなかったから、ついでに家中大掃除しようかと思って。」
テスト期間中は本当に必要最低限の箇所の掃除と食事作りで良いといわれていたがその言葉通りとても楽をさせてもらった元親だったが、その言葉に甘え続けるのも申し訳ないと思い大掃除を企画した、という訳だ。おまけにここ一週間は毛利のしめきりと重なってほとんど仕事をしていない。
そう言った元親に対し毛利は「ふむ」と呟いた。
てんこ盛りのご飯をもきゅもきゅと頬張る様子はどう控えめに見ても30代には見えない。
老け顔なのか、第二次性徴期後は実年齢より上に見られる事が多くなった元親と並んでも大差ないだろう。むしろ、毛利には悪いがどっちが年上かわからない。
「そなたは本当に、見た目以上に律儀な男よの…」
「…それ褒めてんのか!?全然褒められてる気がしねぇんだけど!!」
あまり人によく思われない外見だということは自覚している元親が思わず吠える。
そんな元親に対して、毛利はフッと鼻で笑った。
「事実であろう。」
とても楽しげに発せられたその言葉に憤りを感じつつも、確かに事実は事実。
「…どうせ俺は柄が悪ぃよ…おまけに派手だよ…」
言いながら何だか切なくなってきた。
元親の髪も目も外国の血を引く母親に似たためのものだ。しかしそれ故に20年の人生の中で悪目立ちしてきたのもまた事実。昔よりは割り切ったものの、未だに割り切れない部分も確かに、ある。
そう思いながら卵焼きとご飯をかきこむ。
しかし、だからと言って外見的なものは改めようと思ってどうかなるものではない。髪を染めるのも嫌だし、コンタクトだって着けたくはない。あとは振る舞いを改めることぐらいだろうが、元親にとっては難易度が高い。というか面倒なのでやりたくない。誰にでも好印象を与える人間になりたいと思うわけではないが、外見で怯えられる事は少しでも減らしたい、と思うことはある。
―まぁ無理なんだろうけど。
自分の派手な外見があまり他人に対して良い印象を与えないことを熟知している元親は深いため息を吐いた。
朝食を終えた「昼には起きる」と言い残すと寝室に入り布団の住人となった。寝室には遮光カーテンが引かれているので明かりを気にせず寝られるのだろう。太陽大好きだから敢えて普通のカーテン使っているのかと思った、と伝えた所、眩しくて熟睡できなくなったのでやめた、と憮然とした表情で返された。
さすがに太陽大好き毛利も眠気が強い時の日光には勝てなかったらしい。
―完徹しても、太陽拝む、とかやってんのに訳わかんねーな、あいつ。
そう思うと少しだけおかしくなった元親は口元を緩ませる。
毛利は変わり者で、頭を悩まされることも多々あるが、嫌いではない。
むしろ知れば知るほど、こいつよく今まで生活出来てたなぁ、と思うぐらいには心配だ。作家としての毛利は知らないが、プライベートにおいては凄まじい駄目人間だということを認識して以来、世話を焼かなくてはいけない気になってしまっている。目が離せない存在という意味では後輩とどっこいかもしれない。
「さて…やるか!!」
気合を入れるために伸びた前髪をヘアゴムで括ると、元親は大掃除を始めることにした。
毛利宅は割と古めのマンションを全面的に改装したものだ。
共同の玄関から階段上りきるとそこを境に左右に二部屋分かれており、そのうち入ってすぐの左側が毛利宅だった。数年前に前面リフォームしたとのことで室内はあまり古さを感じさせない。
玄関に入って左手がトイレ、脱衣場と浴室。そして正面には客間がある。
玄関から右手に行き最初の部屋が毛利の仕事部屋、まっすぐいくとリビングがある。
リビングに続いているのが毛利の寝室で後はキッチンとキッチンにくっつく形で物品庫という名の食料庫がある。
この物品庫が元親にとっては謎の空間だった。
キッチンの左側に広がるコの字型の空間は、一見すると何も変哲の無いただの部屋だ。
元親が気になっているのはただ一点。なんというか、広すぎるのだ。
リフォームした時に作ったと言っていたが、家の面積に対してこのスペースだけが広い。
大掃除についでに物品庫を調べようとした元親は仕事部屋以外の掃除を念入りに終え、物品庫にやってきたのだった。
(リビングとキッチンに関しては下手に音を立てると毛利が目を覚ましてしまうかもしれないので手をつけてはいない。)
「まさか隠し通路とかあったりしてなー」
と笑いながら元親は物品庫を掃除しつつ確認していく。
置いてあるものは食料品であったり、調理道具であったりと様々だが別段そんなにおかしなものはない。賞味期限切れの食品も無いのはさすがというべきか、まぁそこまで放置する前に食い尽くすのだろう。毛利だし。
「…まぁそんな訳ねぇよなぁ…っと…ぎゃあああ!?」
そう言いながら買い置きしていた10kgの米袋を移動させようかと抱えたのだが何故かあった空の米袋を踏んだことで足元が滑ってしまい、元親は米袋を抱えたまま後ろの壁にぶつかってしまった…はずだった。
「…なんで壁がドアになるんだよ…」
キッチンから見て最奥の壁はよくある隠し通路のように一見そうとは見えないドアであったらしい。だからあの壁の辺りだけ棚が無かったのか、というかやっぱりあったのかよ隠し通路、と思いながら元親はよいせと立ち上がる。10kgの米は重かったが元親も米も無傷なことにほっとする。思いっきり背中を打ちつけたもののとくに痛めてはいないらしい。
そうして元親はふと周囲を見渡すと「…なにここ」と呟いた。
―物品庫の向こうは、隣の家に繋がっていました。
「いやいや待てよ!?おかしいだろおおおおおおおお!!」
毛利宅との違いは左右対称に置かれた物品ぐらいで、置いてある家具も、家電製品も、何も変わらない。
なにここ怖い、そう元親が思い始めたとき、背後から声がかけられた。
「…貴様、うるさいぞ」
昼が近かったからか、それとも叫び声がうるさかったからかは分からないが、起きてきた毛利に思わず問いかける。
「毛利ぃぃぃ!?なんだよこの部屋!!つか家は!?なんで隣とつながってんのここおおおおおお!?」
元親が何に慌てふためいているのかようやく合致したらしい毛利は「ああ」と実に軽く頷いた。
「…なんだ、知らなかったのか。」
「知らねぇよ!!つかあんた教えてくれなかったじゃねーか!!」
「ふむ…そう考えると聞かれないから言わなかったな、確か。」
ようやく眠気が取れてきたらしい毛利は実に涼しげな顔で語り始めた。
毛利が言うには次のような理由だった。
数年前に隣家が引越し、空き家になった。ちょうど自宅が手狭になっていた毛利はそれ幸いとばかりに自宅のみならず隣家も購入したらしい。物置として使う分には不自由が無かったらしいのだが、一々外に出ることが面倒に感じた毛利は、建て主に承諾を取り、建物内部で二つの家をつなげてしまったのだという。
最も元から自宅として使っていたほうがメインであり、隣家はあくまで物置、もしくはゲスト用だということらしいが。
物品庫にドアがあったのはなんの事は無い。二つの家の中継地点に物品庫を作ったからという理由に過ぎなかった。
「…という訳だ。理解したか。」
「…大人って…金持ちって…!!」
一々玄関から入るのが面倒だからって中から繋げるとはあまり考えないだろう。
やっぱり毛利に金を渡してはいけない。この男はありえない方向に金を使う。金持ちってやっぱりわからない。
未だに床に座ったまま衝撃を受けている元親に大して毛利は衝撃的な発言、第二段を投下する。
「言っておくが、隣の方の表札も毛利だぞ。貴様それでも気がつかなかったのか?」
「…え?だってお隣も同じ苗字だと思ってたし」
「…たわけだな貴様」
我と同じ苗字なぞあまり無いぞ、という言葉と共に嘲笑が降る。
「うっせえ!!まさか壁ぶち抜いて一つの家にする奴がいるなんて思わねぇだろ!?」
「ここにいるが。」
思いっきりどや顔で宣言する毛利を見ると怒りがみるみる萎んでいく。
「…うん、あんたに言った俺が間違ってたわ…」
そうだ。
毛利はこういう男だった。毛利の常識は、俺の非常識。(部分的に)
なにやら急激な疲労感に襲われた元親は深いため息をついたのだった。
ついでだからということで隣家部分のスペースを元親は毛利に案内してもらうことになった。物品庫を境とした隣部屋に毛利と共に赴く。
そこは確かに整えられてはいたが人が生活した形跡はあまり無かった。
「台所とリビングはほとんど変わらん。向こうの寝室がもう一つのゲストルームで、向こうの仕事部屋と客間が書庫と物置だ。」
「なー、なんで向こうにも客間あるのにこっちにもあるんだよ。」
そう元親が尋ねると毛利は、うんざりした様子で答える。
「その昔、締め切り間際にも関わらず客を泊めなければならない事があってな…うっとおしいのでこちらを作ったのだ。」
「…あんたやっぱりやることのスケールとベクトルがなんか違う…」
元親も語彙が豊富なほうではないので上手くは言えないが、なんか違う、これだけはわかった。
「…あれ?俺、今までこっちの掃除してねぇけどいいのか?」
「構わぬ。最近では人も泊めていない。物置としての使い道がとんど故、こちらに人が来たことはないわ。」
まぁ使う前には掃除してもらうが、と付け加えながら毛利は次の部屋を案内し始めた。
「ここは?」
向こうの家だと毛利の仕事部屋に位置する部屋を訪ねると毛利は微妙な表情をした上で言った。
「書庫と物置だ。…言っておくが、ある部分に関してのみ、貴様は見ないほうが身のためだぞ?」
「え、なんで?」
「…忠告はしたからな。まぁそれでも構わぬなら見るが良い。」
そう言いながら毛利は部屋の扉を開ける。
どうやら向こうの客間に当たる部屋とつなげているらしい部屋は、見渡す限り本棚という空間になっていた。そして物置にあたるスペースにはよく分からない仮面が壁にかかり、水晶球が置かれていた。見たところ普通の石も置かれているが一体何があるのというのだろう。混沌としすぎて何があるのか分からない。
本棚部分は物の片づけが出来ない毛利には珍しく、一応ジャンルで本棚をわけているらしく、多岐に渡る本が並べられている。本の城。そう呼ぶのが相応しい空間だった。
「…すっげえええええ…図書館以外でこんなに本ある部屋初めて見たぜ…。」
「…昔から家にあったものの入れたからな…我のものだけではない。」
見る本全てが珍しくて元親はきょろきょろ辺りを見回していく。
「毛利、本見てもいいかー?」
「好きにしろ。」
お言葉に甘えて適当に、棚に収まっていた妙にカラフルな薄い本を取り出す。
そして読み進めた瞬間、絶句し、一瞬の後に叫んだ。
「毛利ぃぃぃぃ!?何だよ!!この本はあああああ!?」
「…大谷がよこしたのだ。我は知らん。」
―主犯はあんたか大谷さんんんん!?
元親にとって名前は知っていたがあまり見る機会の無かった、綺麗な表紙の薄い本。
俗に言う、同人誌である。
しかも年齢制限本、こんなものを大谷はどこで入手したというのだろう。
その答えは案外簡単に判明した。
「なんでも趣味の即売会に行ったときに買っただかもらっただか言っていたぞ。」
嫌がらせというよりも毛利ならまぁいいかぐらいな気持ちでやったに違いない。
楽しや楽し、と笑う大谷の姿が思わず頭に浮かぶ。
どう考えても敵には回したくない人である。
「それがなんであんたの所に来てるんだよ!?っていうかなんで貰うんだよ!?」
よくよく見れば普通のハードカバーの本に混ざって綺麗な薄い本が混在している。
カオス過ぎる本棚に元親は頭を抱えるが、毛利はけろっとした顔で言う。
「それが本である限り、我は貰うぞ。」
読めるものは本であろうが漫画であろうがとりあえず読む、が毛利の持論らしい。
そして捨てない、もとい捨てられないので本は溜まる一方らしい。
雑食過ぎるにも程があるだろう…と元親はがっくりとうな垂れる。
と視線を下にずらした時に、ふと元親はあるものに気がついた。
「…これ、写真集?」
「…ああ。そうだ。」
毛利からの答えを聞く前に既にそれを手に取っていた。
「資料本の一種に以前買ったものだ。…それが何か気になるのか?」
元親が手に取ったのはヨーロッパの風景を中心とした一冊の写真集だった。
毛利にとっては何の変哲もないそれを元親は酷く懐かしそうに見る。
「…うん。これと同じやつを、昔じーさんとばーさんに買って貰ったんだ。」
実家に帰ればまだあるんだけどな、と言う元親の声と表情はとても優しげだ。
そうしてぽつぽつと話し始める。
「俺の家って父さんは日本人だけど、母さんは外国の血を引いてるんだ。だけどその外国の血が半端なく混ざりまくってるから正確にどこの国の、とは言えねーんだって。話聞いたらすんごい国際結婚が続いた一族だったらしい。でもヨーロッパのほうだったのは確実なんだ。それで昔、ご先祖様がいた場所の写真だよ、ってこれをくれたんだ。」
子供に与えるには不似合いな厚さの写真集。
中に写っていたのは行った事もない外国の写真、だけれども自分のご先祖様がいたという場所の写真、よくわからなかったけれど、とても嬉しかったことを覚えている。
「向こうに行ったら、俺みたいな髪の人もいるんだよ、って言ってくれてすんげー嬉しかった。」
周囲と毛色の異なる己の容姿は日本では悩みの種であり、幼少時の元親が引っ込み思案だった理由の一つでもある。
「まぁそれでも色々混ざってこの髪と目だから、俺と同じ奴はいなくても似たような奴はいるんじゃねーかな、って思ってよ。」
きっと祖父母は、周囲の子供と違う容姿を持つ孫息子を案じてこれをくれたのだろう。
お前は1人じゃないんだよ、という意味も込めて。もしくは自分のルーツを知るきっかけになれば、とでも思いこの本をくれたのではないだろうか。
最も祖父母は既に亡くなっているので今では真意は正せない。
そして、結局日本で生まれ育った元親は未だにご先祖様が暮らしていたというかの地へはいけずじまいだ。
「…そなたは、己の容姿が嫌いか?」
それまで無言で元親の言葉に耳を傾けていた毛利が口を開く。
「…嫌いっていうのとはちょっと違う。…人に怖がられることも、色々変な解釈される事も多いから面倒くさい、っていうのが正直な感想だな。まぁ昔よか慣れたけども。」
それでも周囲の人間に助けられて元親は生きてきた。
外見に臆せず関わってくれた周囲の人の善意がなければまっとうにはなれなかっただろう。
苦笑する元親をまっすぐ見つめたまま毛利は言った。
「そうか。我はそなたの色は、美しいと思うがな。」
「は…?」
冗談かと思ったが、毛利の目は至極真剣だった。
「そなたの色は、そなたが思っている以上に人目を惹く。それだけは覚えていろ。」
そうしてとても柔らかく笑って言った。
「お…おう。」
何か悪いもんでも食べたんじゃないだろうか、と思えるほど毛利らしくない笑みを見て元親は思わず表情が強張る。
―毛利が人を褒めるなんて槍がふるのではなかろうか。
そう思ったときだった。
「ところで…腹が減ったぞ。」
言った所で『ぐー』と空腹を訴える音が響き渡る。
音の発生源は間違いなく毛利だ。
寝る前に朝食を食べたというのに、もう空腹を訴える毛利の胃袋に驚きつつも、元親は、しゃがんでいた地面から立ち上がり言った。
「…あー、昼過ぎてたわ、悪い。すぐ作る。麺類でもいいか?」
「構わぬ」
そうして二人は母屋に戻ったのだった。
「…そんなにあちらが気になったか?」
昼食のぶっかけうどん(大盛り)を食べながら毛利が尋ねる。
「まぁなぁ。…っていうか一度もあっちの掃除してないし、やってみたいといえばやってみたい気も…でも仕事して本読んでってやってたら…だめだ時間が足りねぇ。」
毛利の書庫はかなりの種類があったし、整理すると共に蔵書類を見せてもらえたらそりゃ楽しいだろう。物置にしてもあれだけの物を片付けるのは大変だが非常に楽しそうでもある。問題は相当膨大な量であるのでさしもの元親も片づけには時間がかかることが容易に見て取れることである。本と本以外の物品の物量を考えるとどれだけのものを収めているのかと考えたら恐ろしい。
数日かかりきりでやって終われば良い方ではなかろうか。
うーんと唸りながら考える元親に対して、毛利は言った。
「なら簡単なことだ。貴様がここに泊り込めばよい。」
「へ?」
「こちらの客間か、向こうの客間か、どちらかは構わぬが好きなほうを使うが良い。」
「ええええええ!?ってちょっと待てよ!?光熱費とか水道費とかどうすんだよ!?」
思わず気にしてしまったのがその部分であるあたり元親に染み付いた主夫の性が見て取れる。
「今まで通り、家事さえこなしてもらえれば我は構わぬ。バイト代から引くこともせぬ。」
ちょうどあちらの書庫も整理したかったしな、と付け加えながら毛利はぶっかけうどんを食べ進めていく。
「ちょうど複数の締め切りも終わった。後は盆明けまでないのでな、そなたが出入りする分には構わんぞ。」
呆然とする元親に対して毛利は淡々と伝える。
―いやそりゃ泊り込みでやれるんなら願っても無いことだし、おまけにその間アパートの光熱水道費電気代全部浮かせられるとか夢みたいなんだけどあれこいつまえに人泊めるのやだから住み込みの家政婦にはしないっていってなかったけ?でもお得めっちゃお得超お得帰省の交通費捻出しても余裕で余らせる位にはできるんじゃねーか?あれでもおれ家事以外できないけど本当に泊まっていいのかでも家主がいいって言ってるしな、うん。―
この間、10秒。
「…よろしくお願いします。」
食卓テーブルに両手を突き、目の前の毛利に頭を下げる元親がいた。
色々気になることはあるが、生活費を安く上げられるのなら言う事は無い!!
元親の頭を占めているのはそれだった。
色々考えていることはあったのに、最終的にはそれだった。
うむ、と頷き、そして毛利はいった。
「ああ、言い忘れていたが、毎日のおやつも作るが良い」
「わーったよ」
どうせ甘党の毛利の事だから言うだろうとは思っていた。
それにこちらは昨年までほぼ毎日三人分のおやつを作っていたのだからあまり困る事は無い。その答えに対し毛利は「うむ」と満足げに頷いた。
そのあまりに満足げな様子に、実はこいつ、毎日おやつが食べたくて泊まっていいとか言い出したんじゃ…、と元親が疑念を抱くほどの満足げな様子であった。
あり得ないことがあり得ない毛利だけに十分ありうるなぁ、と元親は改めて思った。
そして食べる手を止めていたうどんに再び、手をつけ食べ始めた。
人間嫌いの作家さんが、どうして大学生は泊めようとしているのか。
生活費が浮かせる事に目がくらんだ大学生はその真意に何も気がつかぬまま。
それまでと少しだけ違う夏休みが始まろうとしていた。
○やっとここまできたー。
ということで次回から後輩コンビの上京編です。
ここまで長かった…。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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