がんかたうるふ きみと、いっしょに~幼なじみの話~(現パロ・アニキと関ヶ原コンビ) 忍者ブログ
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 きみと、いっしょに~幼なじみの話~(戦国BASARA・現代パロディ・兄貴と関が原コンビ)

○パティシエ兄貴とその幼馴染の関が原コンビのお話。西洋骨董洋菓子店のパロディ要素を含みますのでご了承下さい。相方さん曰く、アニキヶ原。
関が原で兄貴をサンドしたいという欲望から生まれただけの話ですが、あまりサンドしていないのは気のせいだろうか。作中のゆかいなアニキキッチンは最近マイブームなもこずきっちんが元ネタです。

○CP要素は薄いんですが、アニキ右好きなので一応三親で家親ということにしておいてください。
そして連作なんですが、この後CPが変わっていきます。根底がアニキ右なのは変わりません。
それでもよろしければどうぞ。



書いた人:みっしー


最近自分のHNが みっしー なのか みっし なのかよくわからなくなりました。
まぁ大した違いは無い上にほとんど同じなんだけども。




 *****









 その手は、まるで魔法使いのようだった。

そう今でも家康は思う。きっと隣で見ていた三成も同じだっただろう。
無骨な手から生み出される、信じられないほどに繊細な菓子は、幼い二人を虜にした。
―どうしたら、あんな事が出来るのだろう。

憧れの眼差しで見ていた作り主は、二人に気づくと、とても楽しそうに笑った。

『な?すげーだろ!!』

きっとあの頃から、家康も三成も彼の虜なのだ。






「家康!!早くしないか!!時間になってしまうぞ!!」
「悪い!!当番なのをすっかり忘れて…」
「言い訳はきかん!!…残滅!!店にも寄らなくてはならんのに…」
「ちょ、待ってくれ三成!!」
 とある高校の放課後、二人の男子生徒が足速に校舎から出てきた所だった。
1人は銀髪で長身の細身の青年。もう1人はツンツンと立てられた黒髪が印象的な青年である。
前者の名前は石田三成、後者の名前は徳川家康。どちらも同じ高校に通う学生である。
幼馴染である二人は仲が良いのか悪いのかと尋ねられれば片方は「仲が良いぞ」と答え片方は「どうでもよい」と答えるだろう。
高校に上がってからクラスも離れてしまった二人が。実は幼馴染であることを知る者はあまりいない。
そんな二人が駆け足で校舎から出て行くのを生徒達は奇異の視線で見ていたが、二人はそれに気が付かず駆け抜けていった。



 そうして電車を乗り継いだ二人は、ややあって目的の店に辿りつく。
住宅街の真ん中にある不思議な洋菓子店『アンティーク』に迷わず足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ、お客様。…本日は一応定休日なんですがね。」
二人を迎えたのは、客商売には向かないのではないかと思われる、顔に傷持つ厳つい男だった。洋菓子店の店員らしく、黒いギャルソンエプロンに身を包んではいるが、どう見ても堅気の人間が纏う空気ではない。
「おお片倉殿はいつまでたっても恐ろしい顔だな!!」
「…ぶっ潰されてぇか、徳川の」
ぎろりと家康を睨むが家康は一切気にしない。この空気の読めなさは、まさに家康と言われる所以でもある。
一方の三成は、強面の男をあまり気にせず何かを探すように周囲をきょろきょろと見渡す。
「あー、チカさん言ってた通り本当に来たんだね。」
そう言いながら厨房から出てきたのは明るいオレンジ色の髪が印象的な青年だった。
こちらも同様にギャルソンエプロンを身につけている。
そうこうしているうちに奥から声が掛けられる。
「なんだテメェら…また来たのか。」
そう言いながら店舗の奥から出てきたのは、右目に眼帯をした細身の美丈夫だった。
本来ならハンデになりかねない眼帯すら彼の魅力の一つであるかのように、非常に人目を惹く男だった。
「おお独眼竜!!また来たぞ!!」
「…?誰だ貴様??」
「徳川はいい加減その呼び名を止めろ。あと石田は後で裏に来い。何回名前言えばわかるんだよ!!俺は、伊達政宗だっ!!」
怒り気味で怒鳴る青年は伊達政宗―実はこの店のオーナーでもある。
先の強面は片倉小十郎。
政宗の父の部下であり、政宗の右腕としてこの店を支えている。
オレンジ頭は猿飛佐助。
器用でなんでもこなせてしまうため、ホール係として重宝されている。
そして、この店で働く人間はあと二人いる。



「…うおおおおおおおお!!うまいでござるうううううううう!!」
どこからともなく、恐らくは厨房の方から咆哮のような声が響き渡る。
「…またか。」
「…あっちゃー…」
「あいつがいると厨房内の温度絶対上がるよな…」
呆れたような様子で三人はため息をつく。
「真田殿は相変わらずだなぁ!!」
厨房内で吠えているらしい、青年の名は真田幸村。
この店のパティシエ見習いで先の佐助の幼馴染である。


「ワシらも覗いて良いか?政宗殿?」
「おお、覗くだけにしておけよ。入ったら絶対熱すぎるほどに熱いから。」
オーナーである政宗に断りを入れ、二人は厨房に近づき、覗き込む。気のせいか、政宗が言ったように熱気を感じる気がしない、訳でもない。確かにそこでは一人の男のせいで非常に暑苦しい場になっていた。

「これほどまでに美味なおケーキ様に出会えるとは…某…!!感服いたしましたぞ元親どのおおおおおおお!!」
「…落ち着け真田…お前、相変わらず感動の仕方が雄雄しいよな…。」
コックコートに身を包み、感激のあまり涙を流す茶髪の青年とそれを宥める銀髪の青年の姿が見て取れる。
「元親ー!!来たぞ!!」
「菓子…!!」
家康と三成の声に気が付いたのか、くるりと後ろを振り向き、元親と呼ばれた青年は笑顔を見せる。
「おう!!よく来たなテメェら!!」
彼こそが、アンティークが誇る名パティシエ。


そして、家康と三成が慕ってやまない長曾我部元親、その人だった。







 徳川家康と石田三成は家が隣の幼馴染であり、二件の近所に長曾我部家、即ち元親の家があった。とは言っても元親と二人の年齢差は軽く一回りあったので気軽に遊んでいたわけではない。
知り合ったのは、ある年のクリスマスがきっかけだった。

『元親くんってお菓子作りが得意なんだって、だから連れてきちゃった。』
ケーキ作ってもらおうね、そう言って、憮然とした表情の元親を無理やり引っ張ってきたのは石田の兄である半兵衛だった。半兵衛と元親は年が近く、そして同じ高校に通う同級生ではあったが、あまり仲が良くはなかったと思っていただけに家康も三成も驚いた。
元親の手には購入してきたと思しきケーキの材料が入った袋が抱えられている。あまり接した事の無い、近所の怖いお兄さんを前に二人は萎縮し、元親自身も突然連れてこられて困惑した様子だった。
『…おい、半兵衛。こいつらもいるなんて聞いてねぇぞ。』
『あれ?そうだったっけ?まぁいいじゃない。善は急げだよ。』
優美な美人だが一度決めたらいけいけどんどんで怖いもの無しの半兵衛を止められる人間などいようはずもない。幼子だった家康と三成は訳がわからずぽかんとし、ただ1人元親だけがため息をついて従った。
『…わーったよ。』
 そう言いながら元親のお菓子作りが始まったのだった。

 

 そこから元親は憮然とした様子からは考えられないほど慣れた手つきで元親はお菓子を作りあげていく。最初はスポンジケーキ、次はシロップ、次は生クリームの泡立て、デコレーション用イチゴのカット。
それはあっという間の出来事で、特に見る間に整えられていくデコレーションに二人は感嘆の声を挙げた。
『すごい!きれい!』
『おいしそう…』
二人の声に気がついたのか、元親は作業の手を止め、二人を見て笑って言った。
『な?すげーだろ!!』
普段の怖いお兄さんからは考えも付かない優しい微笑と、作り上げた見事なケーキを見て、家康と三成はすっかり元親に懐いてしまったのだ。



『もとちか!!もとちか!!あそぶぞ!!』
『だーっ!!家康!!うるせぇ、また脇に抱えんぞ!!』
『あれはたのしいから歓迎するぞ!!』
『…いや歓迎すんなよ!!』
『……(わたしもやってほしい…)』
『…三成は大人しいから肩車な。』
『ワシは!?なんでワシではだめなんだ!?』
『お前は動きすぎるから怖いんだよ!!』
『……(なぜ…肩車…)』



 このように、学校帰りの元親を待ち伏せして二人で飛び掛る程度に慕っていた。
元親当人はどうだったかは知らないが、色々言いながらも最終的には面倒を見てくれていたり、しょっちゅうお菓子を作ってくれた辺り、嫌がってはいなかったのだと思いたい。
家康も三成も元親が好きだった。
ずっと一緒にいたかった。
だがそれは、高校卒業と同時に起こった元親の家出という形で、叶わぬ物となった。
行方はようとして知れなかった、ということを家康達は後から聞かされた。
家出した元親はある日突然帰ってきたらしいが、またすぐにいなくなったようだ、と近所の噂で聞いた。

こうして、長曾我部元親という人間は二人の前から姿を消してしまったのだ。




それからしばらく後の話。





 元親がいなくなって10年、家康と三成は高校生となっていた。
高校に進学しても付き合いはあったが、学内ではそれぞれの人間関係があり学内でつるむことはあまりなくなっていた。最も自宅は隣なので必然的に顔を合わせる機会は多く、また休日などは行動を共にする事もあった。



「『アンティーク』?」
「うむ。最近出来た割に評判が良いらしい。」
「で、ワシに一緒に行け、と?」
「仕方あるまい。兄上は仕事だし刑部は甘いものが嫌いと来ている。貴重な日曜日を付き合わせてもなんの罪悪感もない貴様が適任だ。」
「…ワシが暇であるといわんばかりの物言いだな…それ。まぁ実際暇だがな。」
「ならば問題あるまい。」

 休日の昼下がり、家康と三成は目的のカフェ兼ケーキ屋を目指して歩いていた。自宅からは電車を乗り継ぎ、時間にすると1時間ほどの距離だが、甘いもの好きな三成は暇を見つけては食べ歩きをしているためあまり気にならない距離らしい。
ちなみに1人で行かない理由は、1人だと限られた個数しか味わえないから、とのことで大体事情を知る家康を道連れにしている。
「しっかし三成は本当に甘いものが好きだなぁ。ワシとて嫌いではないがお前には負けるよ。」
「…どれだけ食べた所で、あの味が食べられる訳ではないのだがな…」
「…まぁ、な」
 三成の言わんとしていることはわかる。
三成は、元親の作ってくれたケーキと同じものを探し続けているのだ。
幼い頃、家康と三成にとっては魔法使いだったあの手が作り出したお菓子の数々は、未だに二人の心に消えない思い出となって今でも残っている。
「…もう一度食いたいなぁ…元親の作ってくれたホットケーキ…すんごい重ねてくれたよなぁ…」
「…私はロールケーキを所望する…ふわふわのスポンジにたくさんの生クリーム…色々食べたがアレに並ぶものも中々無い…」
 幼少期にあんなに美味い物をたべさせてもらったお陰で普通のものじゃ満足できない体になってしまったのだ、二人とも。
どれを食べてもそれなりに美味しい。だけれどもあくまでもそれなりに、なのだ。
幼い頃の思い出を美化しすぎている感は否めないがそれでも二人は我慢できない。
どうしてくれよう。
いなくなってしまった元親を恨むわけではないが、どうしようもない事実に二人は軽くため息をついた。



 そうしているうちに目的地にたどり着く。
本当にケーキ屋があるのだろうか、と思われるような住宅街の一角にその店はあった。
「三成ー?本当にここなのか?」
「ああ、元骨董品店と聞いていたから間違いないだろう。」
『アンティーク』と英字で刻まれた看板を前に男二人は立ち尽くす。
思いっきり洋風な建物の入り口は可愛らしく飾り付けられており、非常に敷居が高い。男子高校生二人には、特に。とはいえ甘味に目がくらんでいる三成には関係が無いのかも知れない
「オープン12時、クローズ24時って…随分と長いなぁ。」
「深夜営業のケーキ屋とは珍しいな。」
しかし躊躇する家康とは対照的にどんなケーキがあるのか楽しみにしている三成は迷うことなく入り口に足を踏み入れるので家康も慌てて跡を追った。



「いらっしゃいませ、お客様。店内でお召し上がりでしょうか?」
「そうだ」
「…………はい。」
店内に入った二人は、まずはじめにホール係であろう人物と出くわした。
オールバックに流した髪、厳つい顔、薄く見える傷跡、長身とそのガタイの良さが際立つその人物は、どう控えめに見てもカフェの店員には見えなかった。
―ヤクザだ、明らかにヤの付く自由業だこの人ー!!
内心慌てふためく家康とは対照的に、ケーキで頭が一杯の三成はあまり人の顔が目に入っていないらしい。
訂正、三成は基本的に人の顔と名前を一致させられない男である。
家族と幼馴染、友人ぐらいは覚えているが、あまり会話しない同級生はもちろん芸能人などは一切覚えない。よって今この瞬間も、顔なんて飾りです、という勢いで認識していない可能性が非常に高かった。
「かしこまりました。ただいまお席にご案内致します。」
そんな家康の内心など気が付かない強面の男は二人を席に促す。
三成と、気後れしながらも家康もそれに続いた。
昼下がりのこの時間、そこそこの客の入りである。年齢層は幅広いようで家康達のような高校生からデートと思しきカップル、はたまた老婦人のお茶会らしき催し事などが行われていた。同時に思ったよりも拾い空間であることに家康は驚いた。

「オーダーが決まりましたらベルを鳴らしてください。それでは。」
二人を席に促し、そう伝えると強面は去っていった。
「…三成、今の男の顔見ても何も感じなかったのか…?」
「…?店員だろう?他に何がある?」
「…いや、三成に聞いたワシが悪かった。すまん、忘れてくれ。」
やっぱり認識していなかったらしい。
ある意味うらやましいと思う家康であるが、三成からすると家康のほうが無神経で鈍いとのことだ。わけがわからん、と正直に伝えるとものすごい顔で睨まれたので二度と言わないよう気をつけることにしたのは記憶に新しい。

「何にするか…今月のおすすめか…いや基本も捨てがたい…」
メニュー表を見て真剣に吟味する三成を前に家康も何を注文するか決めることにした。
「…おお三成これは良いぞ!!お勧めプレート、お好みのケーキ1つと焼き菓子、アイスまで付いてくるぞ!!」
「…なに…コストパフォーマンスを考えると確かに得か…ではそれにしよう。」
「ワシもそれで」
家康がベルを鳴らして店員を呼ぶと、今度は先ほどとは異なる明るいオレンジ色の髪を持つ青年がやってきた。即座に注文を終え、店員が去ったのを確かめると三成はじっくりとメニュー表に目を通し始めた。
曰く、次はどれを食べるのか決めるのを想像するのが楽しいらしい。
そんな三成を見やりつつ家康は店内を見渡す。
元骨董品店というだけあって店内の内装はどこか重厚で、ただのケーキ屋らしからぬものがある。
だが全体的にセンス良くまとまっているのは経営者によるものなのだろうか。
さっきからお冷やを出されたグラスだって、明らかに気軽に買えるものではない。
まさかそれまで骨董品を使っているのだろうか。
何とも不思議な店だなぁ、とそんな事を考えているとオレンジ髪の店員が注文した物を運んでくるところだった。
どうやら自分で思っていた以上に家康はぼんやりと過ごしてしまったらしい。
店員は何ともにこやかに、そして軽やかにやってくる。
動きも機敏だし、先ほどの強面店員よりはよほど客商売には向いていそうだなぁと家康は勝手に思っていた。

「大変お待たせいたしました。こちら、ご注文のお勧めプレートとドリンクセットで間違いなかったでしょうか。」
「違いない。」
「はい。」
「ではごゆっくりお召し上がり下さい。」

店員が去った後、改めて家康はやってきたプレートを見る。
「…これは、美しいなぁ。」
色とりどりの果実で飾られたそれはまるで宝石箱のようだ。
「食べるのがもったいないほど…って三成!!もう食べるのか!?」
「…?そうだがどうかしたか?」
「…いや、相変わらず余韻も何もないなぁ、と思って」
と言いながら家康も食べ始める。
「…………これは」
「……………」
三成、無言で頭を震わせている。
なんというか、それだけ美味しかったのである。
本格的な洋菓子ではあるのだが、どこか取っつきやすい味になっており非常に食べやすい。
本当に、美味しいケーキだったのである。
そして人間は本当に美味しい食べ物を食べた瞬間、言葉を失う者であり、家康と三成もそれに当てはまったのであった。
「…本当にうまいなぁ…このケーキ!!」
ようやく家康が発した一言がそれだった。
最も三成は無言で感激しながらも黙々と食べ進んでいる。
「アイスも手作りなのか?だとしたら期待できるな!!…これだけ美味いんだからクッキーも美味いんだろうな…ってどうした三成!?何かあったか!?」
先にクッキーを食べ始めた三成が、ぽろぽろと涙を流すのに気づいた家康は慌てて声をかける。
「……な、じ」
「は…?」
そんなに感動するほど美味かったのか、と家康が思い始めた矢先、三成はぽつりと呟いた。
「おなじ、だ……」
そう言って泣き続ける三成に家康は慌てふためくが、そんな折店員が気づいたらしく二人に声をかける。
「お客様!?どうされました?何処か具合でも?」
強面店員が慌てて駆け寄るが、彼に対して三成はぎろりと眼光鋭くすると言った。
「…これを作った人間を呼べ…」
「…は?で、ですが…」
「いいから呼べ…!!」
泣きながら睨みつける三成の迫力に押されたのか、店員は厨房まで行くと1人の男を連れてきた。
白いコックコート姿の彼が恐らくこの店のパティシエなのだろう。
慌てて引っ張られてきているので顔は見えないがかなりの長身であることは見て取れた。
「なんだよ片倉さん!!俺、今回は何もやってないけど!?」
「俺だって知るか!!菓子作った人間呼べってご立腹なんだよ!!」
そんなことを話しながらやってくる人間の顔を見やる。強面店員と、もう1人。
「…え…?」
―まさか、まさか。
心臓が撥ねる、心が躍る。
―まだ待て、『彼』と決まった訳じゃない。だけれども、あの姿は。
撥ねっぱなしの銀髪と左目を覆う眼帯と、青い右目のあの姿は―
「…もとちかあああああああああああ!!」
「…貴様あああああああああああああ!!」
「な!?」
『それ』が『彼』であると気づいた瞬間、店員により前に押し出された『彼』に家康は飛び掛っていた。三成も飛び掛っていた。
あのときよりも成長した体であることをすっかり忘れて。
―ガッターン


「…いってえええええ…右手使えなくなったらどうしてくれんだよ…」
「もーとーちーかー!!いつからここにいたんだー!?」
「いつ帰ってきたのか正直に言わないと残滅するぞ貴様あああああああ!!」
「…お前らとりあえず長曾我部の上から退け、潰れてるぞ。」

 地面にのびる元親と右から犬のようにじゃれ付く家康、左から犬のようにキャンキャン吠えながら抱きつく三成。
たしかに二人が幼かった10年前ならばほほえましい光景だっただろう。
だが今はそれから10年後である。
さしてあの頃と変わらない元親とは対照的に、家康と三成はすくすくと縦にも横にも成長した。
結果、ガタイの良い男に男二人が抱きつくという異様な絵面が誕生していた。
片倉が声をかけなければ、ずっとそのままだったかもしれない。




「…死ぬかとおもった。」
「いや~悪い悪い!元親だ、と思ったら体が勝手に動いていてなー。」
「…黙ってそこにいた貴様が悪い…」
あれから三人は、強面の男―片倉というらしい―の配慮で奥の休憩室に案内されていた。
元親も休憩を取っていなかったということで急遽休憩時間にしてもらったらしい。
というわけで三人は改めて10年分ぶりの再会を懐かしむこととなった。
二人の前にいる元親は一見するとあの頃とさほど変わらない印象を人に与えている。

しかしどことなく雰囲気が違う。
上手く言えないが、なにか違う。そう家康は感じた。

二人を前に元親は笑う。
「しっかし二人ともでかくなったよなぁ…俺も老ける訳だわ。っていうかクッキーのレシピは確かに昔、作ってた奴そのまんまだけど…まさかそれで気付くとはなぁ…」
しみじみとそういう元親に対し、家康は長年抱き続けてきた疑問をぶつけた。

「なぁ…元親は、なんで家出したんだ?」
10年前、突然いなくなってしまった年上の幼なじみを、家康も三成もずっと捜し続けてきた。
三成などは感激のあまり未だに目に涙を浮かべている。
どうして、なぜ、元親はあの日いなくなってしまったのだろう。
それはずっと思っていた事だった。
家康からそう問われると、元親は一瞬気まずそうな様子を見せたがぽつりと話しはじめた。


進路を巡って親と喧嘩していたこと。
卒業式の日に色々あって家を出たこと。
それからフリーターまがいの事をして生活をしていたが、数年後に縁あってフランスに行く事になったこと。
そこで菓子店に勤めることになり数年間修行した後帰国したこと。
色々な店を転々とした末に、高校の同級生が開いたこの店のパティシエとなったらしいこと。
それが数ヶ月前の事だということ。



「黙ってたのは悪かったよ…」
バツが悪そうな様子で元親は目をそらして言う。
「元親…おじさんとおばさんは…知ってるのか?」
「…一応連絡入れたぜ?でも俺勘当されてるから、この店には来ねぇだろうけどなぁ。」
興味も無いだろうし、と元親は寂しげに笑う。
 そういえば元親の両親は、彼の趣味については昔から良く思っていなかったはずだ。だからこそ元親は石田家を借りたり、それ以前は学校の家庭科室を借りて調理していたと半兵衛から聞いた。
そして、あまり仲が良いとは言えない家族関係だった、ということを後から知った。
―だからあんなに、つまらなさそうにしていたのかな。
一人でいるときに元親がしていた表情を思い、なんとなく合点がいった。
そして同時に二人で悲しくなったことを思いだした。

「元親…ひとついいだろうか。」
そこまで口を開かなかった三成が、ようやく涙を拭き、そして言った。
「貴様がここの店に勤めていることは分かった。…ならば私は、私たちはこの店に来ても良いだろうか」
「…かまわねぇよ。ま、お代は頂くけどな。」

しょうがねぇなぁ、と笑う元親を見ていると、尋ねたい事も聞きたいことも、もっとたくさんあったはずなのに、何故か言葉は飲み込まれた。

ただ、元親がいて良かった、とただそう思った。


この後休憩室に乱入してきた店長、伊達政宗と一悶着あったり、他従業員を紹介してもらったりと一騒動あったのだが、それはまた別な話である。





「…で、俺に魚切らせて何すんのお前ら…これ刺身?」
そう言いながらも注文どおりに白身魚を薄切りにしてくれる元親は本当に律儀である。


 今日はアンティークの定休日、だが新作の試作をするという元親はアンティークにいると話を聞き、前々から約束していた二人は学校が終わると共にアンティークに押しかけたのだった。謎の食材と道具を携えて。
 元親の他の従業員も何だかんだで新作を楽しみにしていたためか皆来ていた。
今は店舗の方にて打ち合わせをしており、厨房には元親、家康、三成の3人しかいなかった。


「うん、すまないな元親…ここでオリーブオイルだ!!」
言いながらどこから取り出したのかわからないオリーブオイルをかける家康。
その一方で三成はどこから取り出したのかわからないハーブ類を思いっきりうえから振り掛ける。
「ちょっとまて、何かおかしいぞお前ら。」
「…塩は、高いところから振れば振るほど良い…打点は高く!!」
「それでは駄目なんだ!三成!!…やっぱりここは掛けオリーブオイルの後の追いオリーブオイルで!!」
「ちょっとまてええええええええええええ!!お前らでなにやってるんだよ」
料理をしているつもりだろうが明らかに何かがおかしい。
「いや~最近朝の情報番組の料理コーナーが面白くてな…一回やってみたかったんだ!!オリーブオイル!!」
「…わけのわからないハーブを多量に使えて満足したぞ、私は。あと打点。」
二人とも妙にやりきった感のあるきらきらとした目で見つめられて元親は呆気に取られる。
「…そういうのは家でやれ。」
「怒られるから嫌だ!!」
「うむ。」
実にきっぱりと拒否した。
「怒られるような行為だってわかってんならやるな!!ったく…まぁ味付け変えれば食えないことはないか…それにしたってオリーブオイルかけすぎだろう」
「本家はもっとすごいぞ!!」
「ああ、家康の言うとおり、本家はもっとすごい。」
「…どんだけオリーブオイル好きなんだよ!!本家…全く想像できねぇ…。」
そう言って苦笑する元親だが、どこか楽しげな様子が隠せない。それは昔、二人にお菓子を作ってくれるときに見せていた表情とよく似ていた。

 家康や三成が、元親と会いたくて仕方がなかったように、元親も、少しは二人と会いたかったと思ってくれたのだろうか。
そうならいい、そうだったらいい。



何故、元親を見るととても楽しくなるのか。
どうして離れた事を思い出すととても悲しくなるのか。
どうして彼の笑顔を見るととても、うれしく感じるのか。
どうして、ずっと一緒にいたいと思うのか。

二人は知らない。


家康も三成も、それが恋であることにまだ気付いてはいなかった。













○とりあえず第一弾。
第二弾はまた時系列が変わります。
PR
[470] [469] [467] [464] [462] [460] [458] [456] [455] [454] [453]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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