がんかたうるふ 「輪舞~偽~」 大寒の刻~慶次~ その2 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き上がりました、次でこの章は終了です。



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 長宗我部元親が石田軍と同盟を結んだという報告がを受けた時、徳川家康は三成の味方が増える、そう言って喜んだらしい。
 友人に裏切られたというのに何故喜ぶのか、そして敵である石田軍に協力する戦力が増えれば己の身も危ないだろうに。

 徳川家康は笑い続けるのだ。

 全ての辛苦をなんでもないことのように受け止める彼の度量に惚れ込む者が増えるのと同時に、当然の如く身内からも不安を抱く者が出てくる。だがそれを押さえ込んだのも家康の大きすぎる度量であった。
 どのような遺恨が生まれようと、敵に回ろうとも絆の力で受け止めてみせる。
 当たり前のようにそう言いきった家康は、豊臣家と対立してから初めてとなるであろう苦境を軽々と乗り切ってみせたのだった。そんなものを見せられれば周囲の国守達が彼を畏れ、膝を折るのも無理はない。
 石田三成が恐怖と力で押さえ込むのとは正反対に、家康は己の力と可能性を見せることで勢力を広げていったのであった。


 前田家を除いては。








 三河の城の天守閣は、豊臣家の本拠地である大阪城よりも遙かに狭かった。
 畳もあちこちがすり切れ始めており、縁の刺繍も色褪せ。かつては見事であったはずの家紋が染め抜かれた座布団も、色が呆け始めている始末。
 だというのに城や家康への負の感情が湧いてこないのは、ここが優しい雰囲気を醸し出しているからだろう。武将の城だというのに、長年帰っていなかったふるさとに帰ってきたような、そんな安心感を与えてくれるのだ。
 大きな窓から差し込む光を存分に浴びられるこの空間は。
 その窓を支える枠には何か硬い物をぶつけたようなあとが幾重にも刻まれており。何故窓だけこんなに傷ついているのかを考えていると、城の主である青年がそこまで足を運び傷口を指で撫でながら答えてくれた。
「これは忠勝のつけた傷だ。うちは廊下が狭いのでな、忠勝が天守閣に入るにはこの窓を使うしかない。それでこんな傷ができるのだ」
「戦国最強の付けた傷か……入ってくるところを一度見てみたいよ」
「残念だが今は下で兵たちの修練を行っている、忠勝も前田殿に会いたがっていたのでな。あとで挨拶してやってくれるとありがたい」
「あの戦国最強が俺の名前を覚えていてくれてるなんて、なんだか気恥ずかしいよ」
「前田殿の強さは儂も敬服しておる。謙信公だけでなく前田殿も儂の味方になってくれる……前田家も儂を認めてくれた今、これほど嬉しいことはない。血の繋がった親類同士で争い合うことを、儂はさせたくない」
 まつを人質にとった男がいう言葉か、それが。
その言葉を家康にぶつけてやりたい気持ちを無理矢理抑え込み、慶次は気付かれぬように口元に力を込める。
 徳川家はまつを人質にとって恭順を求めてきたが、それはきっと家康が命じたことではない。徳川家内部に家康の命とは別系統で動く存在がいるのか、それとも何か別な存在が裏で糸を引いているのか。どちらにしても家康に今伝えれば、徳川家が内から崩壊する。
 だからまだ伝えてはなりませぬ。
 慶次に何度もそう言い含めてから使者として三河に向かわせた謙信の言葉に背くわけにはいかない。未だ行方のわからぬ姉のような存在の安否に心を痛めながら、慶次は足を崩したままじっと家康の全てを観察していた。
 自然体、その言葉が一番似合う男だ。
 常に飾らず、己の思いを素直に口にする。真っ直ぐで、素直で、だからこそ彼のために暗躍する存在が生まれるのもわかるような影のなさ。
 だがその明るさは強い影を生み出すのだ、まつを掠った存在のような。
 慶次の視線に気がついたのか、にこりとこちらに笑いかけてくると全ての窓を閉め切り。ゆっくりと窓の側から体を離しつつこちらに話しかけてきた。
「謙信公は息災か」
「相変わらず元気だよ。でも妙な胸騒ぎがするから越後から離れたくないって言って、俺を代わりに寄越したわけ」
「胸騒ぎ……?」
「理由はわからないけど、嫌な感じがするってさ。毎日ずっと雲を見てるか、写経とかしてるよ」
「上杉殿がそう思うということは、何かあるということなのだろうか?」
「さあね、謙信の考えることはたまによくわからないから」
 そんな感じで言葉を濁し、自分の前にきちんと膝を揃えて座った家康に慶次は無言で軽く頷いてやる。
 窓は閉めた、人払いも済ませている。
 能力の高い忍びを使われると話を聞かれてしまうかもしれないが、それだけの能力を持つ忍びでも徳川の本拠地に進入することは困難だろう。今ここにいるのは慶次と家康だけ、人前では言えないことも今なら伝えることができる。
謙信からの伝言、そして道中で再会した佐助の言葉。
 久々にあった彼は相変わらず素っ気ないのに、何かが大きく変わったような感じがした。武田の要である信玄が倒れたことも彼に大きな変化を与えたのだろうが、一番の要因は真田幸村なのだろう。
 正直、慶次はあの若者が羨ましかった。
 佐助に愛おしまれ、常に世話を焼かれ。慶次のように探しに行かなければ会えないということもなく、彼が呼べば佐助はすぐに姿を現す。どれだけ口説いても、甘い言葉で彼を酔わせても。
 結局彼は幸村の元へ帰っていくのだ。
 一度あの元気がありあまっている若者と腹を割って話さなければいけないと考えていたが、それすらも彼が石田軍と同盟を結んだことで遠ざかってしまった。そんな折、彼から会いたいと伝えてきてくれたのはとても嬉しかったというのに、頼まれたのがまつを掠った(と思われる)男への伝言とは。
 はっきり言って、いい気分ではない。
「まずは謙信からの伝言。越後周辺の石田軍につこうとしていた領主達は全て押さえたってさ、甲斐は一致団結して戦の準備に入ってる」
「真田幸村か。あの虎の子も大きくなったのだろうな……会うのが楽しみだ」
「東は相変わらずだよ。羽州の最上がおかしな動きをしているけど、多分あんたにつくんじゃなかって謙信は言ってる。でもあの男には注意した方がいい……狐だなんて言ってるけどね、あいつは毒蛇より始末が悪い。それと奥州の独眼竜は一度石田にやられてるからね、あいつの性格を考えると味方することはまず無いと思う」
「独眼竜……伊達政宗か、一度ゆっくりと話をしてみたいものだが。そして前田殿、大阪の情勢はどうなっている?」
「この間九州への進軍を終わらせて、大友家をほぼ滅ぼした状況だね。大友宗麟は幽閉してほぼ人質状態らしい、立花宗茂を隷属させるためにそうしたみたいだけど……今後それがどう出てくるかはわからないな」
「そうか……」
 空に輝く太陽に雲がかかったように、家康の声がわずかに曇る。
 何を聞こうとも、どんな苦境にあろうとも笑い続けてい彼とは思えない沈んだ面持ちを見せたのは一瞬のこと。すぐに己を奮い立たせるかのように顔を無理矢理動かし、人の心を浮き立たせるかのような笑みを浮かべて見せた時。
 慶次の口は自然と、その言葉が紡ぎ出されていた。
「石田三成は稲葉山城の側の別邸にいるよ」
「……………な…………!?」
「大友家との戦が終わった後体調を崩したらしくてね、療養らしいよ」
 戦続きだったから、少し休むんじゃないかな。
 そう続けようとした慶次の体が、急に揺さぶられた。きちんと正座していたはずの家康が身を乗り出し、慶次の肩を掴みそのまま強く引っ張る。
 その目に宿っていたのは、降り注ぐ日のような暖かな輝きではなかった。
「三成は病にかかったのか!? 血を吐いたりなどしていないだろうな!」
「誰に聞いたかは言えないけど……命に関わるような言い方ではなかったよ」
「三成は無事でいるのか? 怪我は?」
「俺は伝言を頼まれただけで、そこまで詳しいことは知らないよ…………痛いから、そろそろ離してくれないかな」
「………………ぁ…………すまぬ…………」
 全ての水を蒸発させ、人に乾きを与える凶悪な輝きが太陽のもう一つの顔。
 優しさという鎧をかなぐり捨て、己の欲望を剥き出しにした己を恥じたのか。ゆっくりと体を後ろへ引き、元通り背筋を伸ばして正座をし。
「儂は駄目だな……三成の話を聞くとどうも落ち着かなくなる」
 と、頭に手をやりながら小さな反省の言葉を口にした。
 ここで悪びれたように笑ってくれたりしてくれたら、慶次も見なかったふりをできただろう。だが目の前にいた家康は、全てを失いうちひしがれた老人のようであった。
 全ての希望を失い悲しみに打ち震え、未来を見ることすらできない。
 彼の笑顔は本心からのものではなく、周囲を鼓舞するための偽りのもの。頭に手をやっているのは、そうすれば顔が隠れるから。
 それが家康が覚えた、自分を慕ってくれる者に暗い顔を見せない術なのだろう。
 こうやって彼は自分の中に存在する感情の淀みを周囲に隠し、生き続けているのだろう。どういう事情があるのかはわからないが、家康の中には友であったという三成への思いが今もまだ燃え続けている。
 いや、それはまだ彼の根幹を成しているのだろう。
 敵になったというのに家康の心を支配しているのは三成で、そして家康は三成を忘れようとしていない。相手が敵に回ろうともその相手を思い続ける家康の愚鈍ともいえる一途さは、相手にしてもらっていないのに追いかけ続ける自分の阿呆さに似ている。
 だからこんな事を思いついたわけではない、と思い込みながら慶次は顔を見せようとしない家康へある提案をしてみることにした。
「…………家康、石田に会いたいかい?」
「今儂と三成が会えば、周囲の者は何を思う?」
「向こうも同じ考え方、今会って話をするのは互いにとって悪い結果しかもたらさない。石田軍と徳川軍の将として話をするのは、もう少し先がいいってさ」
「そうだな……それがいい……」
「だけど場所教えてもらったんだから、石田の様子を覗きに行くくらいはいいんじゃないかな?」

 慶次のその言葉に、ぴくりと家康の体が反応する。

「顔を見せない、話しかけるのもなし。どこかに影にこっそり隠れて、石田の様子を見てくるっていうのは? 稲葉山の別邸には行ったことあるんだろ? 俺も一度行ったことがあるけど、あそこなら隠れる場所は山のようにあるはずだし」
「………………会っても……いいのか?」
「なんで?」
「儂は秀吉を殺した…………理由はあった、だが儂は三成の大切な人を奪ってしまったというのに……」
「それは俺にとっても、だよ。秀吉は俺の友だった……家康、俺もあんたを恨んでないといえば嘘になる」
「では何故、儂を三成に会わせようとしてくれる?」
 秀吉を殺した、その事実は家康の心に大きな疵を残したらしい。
 どれだけ笑顔を作っても、人々に慕われても。その事実は彼を追い込み、大切な友人に会うことすら自らに禁止してしまう。
 額を地面にすりつけ、這いつくばって謝ることもできない程に。
 慶次だって家康を恨んでいないわけではない、秀吉のことだけではなく行方の知れないまつのこともあるのだ。彼によって自分の人生は狂わされつつあると言ってもいいだろう、しかし。

 三成に会いたい。

 そんな思いを素直に顔に出し、泣きそうな子供のような顔をした家康の顔を見てしまったら手を貸さないわけにはいかないのだ。
そしてそれを、佐助も望んでいる気がする。
「俺には俺の目的がある……ってことにしておこうか。それに謙信にもあんたの面倒を見てやってくれって頼まれてる。無理してるんじゃないかって、心配してたよ……謙信が」
「謙信公が……」
「療養って事は結構長い間いてくれるとは思うんだけど、早めに行った方がいいだろうね。俺が先に行くから、そうだな……家康は誰にも気付かれないように後から追いかけてくれるかい?」
「それは、忠勝に頼むとしよう」
「今回石田のことを教えてくれた相手に連絡を取るよ、きっと繋ぎをつけてくれるさ。だから安心して待ってな」
「…………感謝する」
もう家康は顔を隠していない。
 雲が過ぎ去り、輝きを取り戻した太陽のように。清々しい、偽りではない本当の笑顔を慶次に向け。

 三成。

 そう大切な人の名前を一度呼んで、彼に会うことのできる未来が瞼に映るとでも思ったのか。



 そっと、だが心底嬉しそうに目を閉じた。
























 稲葉山の別邸は、竹中半兵衛が没した場所でもあった。
 さすがに葬儀はここではなく秀吉によって大阪城で執り行われたが、あの時の秀吉の顔色は棺の中の半兵衛よりも青ざめていた気がする。半兵衛からの病が彼の体を急速にむしばみ始めていたのだと気がついたのは、秀吉の命を奪った瞬間。


 死に際の彼が感謝の言葉を述べながら地面に倒れ伏した時であった。


 必死の競争で駆けつけた三成に後を託す発言をし、涙で顔をぐしゃぐしゃにした三成の顔を死出の餞とし。自らの半身であった男の名前を最後の呼気と共に吐き出して逝った秀吉の顔を、家康は忘れることができなかった。
 嘆きながら主を抱きしめていた三成とあの時目線が重なっていれば。
 何かを伝えることができていれば。
 後悔に近い悲しみが胸にわだかまることもなかったのかもしれない。
 あれ以来彼に会う機会を作ることができず、そして自分から会おうとする気持ちすら後悔に押しつぶされ。そのくせ三成を求める気持ちだけが、日々強まっていくのだ。
 ほんのわずかだけ上にある彼の瞳が自分を見つめる瞬間が好きだ。
 自分のくだらない冗談に小さく笑ってくれる声が愛おしい。
 日々怪我が増えていく自分の手を包み込んでくれる細い指にもっと触れられたい。
 三成に会えない、彼の存在を感じられない。日々飢えていく心をあざ笑うかのように、家康の周囲に志を同じくする人間が増え始めた。
 人の世の常ではあるが、家康が将来手に入れるであろう力を求める人間の方が多いのは事実。
 だが数百年続く平和な治世を求める、真にこの国の現状を憂う人間もこの戦乱の世にはちゃんと存在したのだ。それは家康を喜ばせてくれたし、勇気づけてはくれたが。

 そのためには『凶王』の名を持つ愛しい人を倒さなければならない。

 家康の望む平和な世と相反する、力による治世を体現するかのような三成の残虐な行為。凶王三成による各国への無慈悲な侵略に関する情報を聞く度に、家康の気持ちはどうしようもなくざわめくのだ。
 平和を求める三成と、力によって全てを打ち砕く三成が相争う。
 安っぽい御伽草子よりも陳腐なこの物語のおおまかなあらすじを考えたのは、亡き竹中半兵衛なのは家康も知っている。だがいま実際に筆を執ってこの物語を紡いでいるのは一体誰なのか?
 それさえわかれば三成との和平の道も見つかるはず。
 そう思い人を差し向け調べさせてはいるが、良い報告はまだ受けていなかった。これだけの大がかりな策を同時に動かせるのは半兵衛意外には黒田官兵衛のみ、そう思い彼の周囲には特に多くの人間をつかせているが。
 官兵衛自身が腐りに繋がれた虜囚となってしまっている事を考えると、きっと。
「多分あんたの考えで正解。俺は昔の大谷さんは知らないけどね、あの人ならそれくらいやってのけるよ」
「やはりそうか。では儂は刑部と話をせねばならぬようだな」
「やめておいた方がいいよ。あんたの方が大谷さんのことを知ってるみたいだけどさ、今のあの人は正気なんだけど狂ってるっていうか……とにかく気持ちが悪いね」
「刑部が……?」
 稲葉山の別邸が間近に見える藪の中。
 家康は忠勝に途中まで送ってもらい、その後は馬を乗り継いでなんとか人に見つからずにこの別邸にたどり着くことに成功していた。先行していた慶次とも合流し、彼が先に話を通しておいてくれたという真田幸村の臣下である忍びと会うことができ。春の気配がまだ遠く、新芽すら出始めていない枯れ枝の藪に小さく体を屈めて隠れているのであった。日の光は優しく降り注ぐというのに風は冷たく、二人の男に挟まれているというのに家康の体を徐々に冷やしていく。
 猿飛佐助、という名前は風の噂で聞いたことがあった。
 幸村にはもったいない程の有能な忍びであり、彼に絶対的な忠誠を誓う姿は忍びでありながら臣下の鏡と言われる程。
 らしいのだが。
「うちの旦那はあまり物事深く考えないから気にしてなかったみたいなんだけどさ、俺様思い出すだけで鳥肌が立っちゃって……」
見る? と言わんばかりに忍び装束の袖をまくり上げこちらに見せつけてくる姿は、主との会話でもこの調子なのだろうなと家康に十分教えてくれた。真田幸村には数える程しか会ったことがないが、実直で素直な彼にはこんな従者が合うのだろう。
 彼と幸村が話しているところをいつか見てみたいものだ。
 そんなことを思っているはずなのだが、家康を挟むようにして座っている二人には家康が相当浮かれているように見えているらしい。
「家康……嬉しいのはわかるんだけどさ、もうちょっと落ちついたら?」
「儂は落ちついているつもりなのだが……」
「自分は落ちついているって言う奴程落ちついてないんだよ。ほら、口がにやけてる!」
 おどけるように横で頭を押さえながら座っている慶次に言われ、家康は慌てて顔に力を込めた。そう言ってくる慶次だが、藪から頭の先がはみ出そうになっており佐助に何度も注意されているのだ。
 佐助だけならもう門番と顔なじみになっているのでこの屋敷に入ることは容易いそうなのだが、慶次と家康の二人を連れて行けば間違いなく彼と武田軍は裏切り者扱いされてしまうだろう。そうしないために、佐助は色々と考えてきてくれたらしい。
「とりあえず徳川の旦那はこれ被って。あんたはこれ背負って、そうすりゃ旅の行商人っぽく見えるから」
「わ、わかった……」
「裏の勝手口から入れるように、もう話は通してあるから。俺様が合図したら勝手口から入ってきて、中で待ってる爺さんが案内してくれる」
「急に連絡したのに、よくそこまで手を回せたね」
 当然の慶次の疑問に、佐助は気恥ずかしそうに笑いながら答える。
「あんたが考えることくらいお見通し……と言いたいところだけど、これは黒田のおっさんが先に準備しておいたことなんだよね。いつ徳川の旦那がここに来てもいいように、屋敷の人間をちょっとずつ自分の配下に入れ替えてたんだよ」
「官兵衛が?」
「どうしても石田の大将とあんたを一度会わせたいってさ。あのおっさんのこと、俺様結構気に入っちゃったからね……うちの旦那のことも可愛がってくれてるし。協力してやるのも悪くないかなって思っちゃったわけよ」
 自分と三成が会う時のために、事前に準備をしていてくれた。
 そんなことが発覚すれ、今は手枷を嵌められ鎖に繋がれているらしい彼の立場は相当悪くなるだろうに。彼がどんな意図を持って行動しているか、それを佐助の発言から推察することはできなかったが。
 三成に会えるという好機を逃すつもりはない。
「どのような意図があったとしても……猿飛、儂はお前に感謝しよう」
「俺様があんたを石田の大将にぶった切ってもらうために連れて行くかもしれないのに?」
「前田殿が信頼している相手だ、儂が信じないでどうする」
「…………あんた、この大将に俺のことなんて言ったわけ?」
「石田の居場所を教えてくれた人だって言ったけど?」
 家康を挟んで、佐助と慶次が微妙な感情を含んだ視線で見つめ合っている。
 いや佐助は睨んでいるが、慶次は私情を多分に含んだ目線で愛おしんでいると言った方がいいのか。謙信が家康を気遣っていたとか色々言っていたが、もしかしたら慶次は単に佐助に会いたかっただけなのだろうか。
 さすがにそれを直に聞くわけにはいかないので、かなり曖昧な表現で問うてみる。
「前田殿は……猿飛と長い付き合いなのか?」
「結構長いよ。抱いたらその時の調子がわかるくらいには知ってるかな?」
「俺様もあんたが右の袋の付け根を舌でつつかれるのがいいって事くらいは知ってるけどね」
「そうなんだ、今度は教えてからしてくれると嬉しいよ」
「気が向いたらね」
「…………よく……わかった…………随分と仲が……良いのだな…………」
 知りたくもない爛れた世界の一端を見せられ、少し頭の芯がぐらついた感じがする。
 よくもまあ昼日中からこんな会話ができるものだと一度は思ったのだが。もし自分と三成がそんな関係だったら、昼だろうが夜だろうが周囲を気にせずにそんなことを語るのかもしれない。
 愛しい人が側にいれば、何も気にならないのだろう。
 そう思い直すと、心の中で彼らを一瞬でも軽蔑しかけた自分を叱責し、家康は二人の顔を交互に見ながらしっかりと頭を下げた。


「頼む、儂を三成に会わせてくれ」


 心の底からの願いを込めた言葉と共に。




























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ということで、次でこの章は終わって次はアニキのご登場になります。「雨水の刻 ~元親~」にお題はなりますが、ここから少しきつい展開に…………なるのかなあ。

もう最後のネタ晴らしをして土下座したくてしょうがないです。

チャット参加者とかついったのフォローさんは知っていると思いますが……


BGM「プラチナ」 by坂本真綾
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色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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