こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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書き上がりました、新しく投入した某薬の効果すごい。
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三成に会いたい、だが島津が側にいるのなら会いたくない。
微妙な気持ちを抱えたまま風呂の入り口の脇に座り込み三成を待っていると、後ろに巨漢の老人を従えた三成が、柔らかい足音を立てながら現れた。風呂上がり特有のほんのりと色づいた肌と濡れた髪は暖かい空気と共に、家康の鼻に三成の匂いを届けてきた。
甘く脳髄をとろかす、三成の肌の香り。
島津さえいなければ即座に三成に抱きつくのだが、あの老人と敵対して生き延びられる自身が家康には全くなかった。伊達主従は当然三成の味方、そしてこの老人まで三成を守る側になられてしまったら、確実に勝ち目はない。
せめて三成がこちらを向いてくれてば。祈るような思いで、白い夜着に着替え今まで着ていた衣類をまとめて手に持っている彼を見つめていると、ついと彼の顔がこちらへと向けられた。
「家康……何をしている」
「………み、三成を待っていたに………決まっておるだろう」
「そうか、手間が省けたな」
何の手間が、と聞く余裕はもう家康には存在していなかった。
その目の美しさ、そして強さ。
奥州に来てからの三成の目は、常に憎しみや殺意という紗幕に常に覆われていた。それでも三成は十分綺麗だったし、自分が彼をこうしてしまったという思いもあったのでそれが今の三成だと受け入れていたのだが。全ての感情の淀みを洗い流されたかのように瞳は澄み渡り。真っ直ぐに、だが激しさを伴わない眼差しは昔のように家康を見つめてくる。
風呂の中で何があったか、それを家康に推察する術はない。
だが三成の心に、島津は何かを与えたのだろう。負の感情を伴わずに三成が自分と相対してくれるのは本当に久しぶりで、彼と何を話せばいいのか、それ以前にどういう顔で彼を見ればいいのかすらわからない。
妙な気恥ずかしさで頭を抱えたくなるが、三成の姿は見続けたい。そんな家康の様子がおかしかったのか、三成はわずかに唇に力を込めて。
わずかに笑い声を漏らした。
「気持ち悪い顔をするな」
「そんなに気持ち悪い顔をしている……か?」
「ああ」
短くそう言い切ると、三成は表情を更に柔らかくした。
後ろにいる島津に小さく声をかけ何かを確認すると、まるで家康に無言でちかづいていき。
「三成!?」
寄り添うかのように、そっと隣に腰を下ろした。
触れあう肘と肘、伝わってくる風呂上がりの三成のぬくもり。風呂の中で何が行われ、そして三成はここまで態度を変えたのか。
「どうした?」
「いや、なんでもないぞ! 今の三成が綺麗すぎて色々な意味で儂が元気いっぱいだなんて事はないぞ、多分!」
「貴様の話はいつもよくわからん」
わずかに唇を尖らせて三成がそう呟くと、わずかに離れた距離で二人を見守っていた島津の老人の口から豪快な笑い声。
それで今の状況を改めて思い出したのか、三成は表情を戻し家康の瞳をじっと見つめてきた。
「貴様に付き合っていると湯冷めしてしまう、本題に入るぞ。家康………明日の朝私と戦え」
「別に儂は構わぬ」
「立ち会いは島津と伊達に行ってもらう」
「鬼島津が立ち会いか、それは心が高鳴るな。だが伊達も忙しいのであろう、別に立ち会いは二人も……」
「必要だから言っているのだ、伊達には私から話しておく」
「今までも立ち会いは一人だったではないか」
二人の人間の立ち会いが必要なのか。
そう問うと三成は、儚げな雰囲気を纏っていた表情を一気に引き締めた。
「貴様との戦いはこれで最後だ……どういう決着になるにせよ、私は己の天運と秀吉様のお導きに従おうと思っている」
「それは儂を殺すと言うことか」
「その時にならねばわからん。だが、私には心に決めたことがある……それだけは覚えておけ」
「易々と儂を殺せると思うな。儂も決めているのだ、三成を生かし儂も生き残る……それが儂の望みだ」
「貴様のあきらめの悪さは昔からだな……だからこそ、今一度……てみる気になったのだが」
目つきは鋭いが、唇は蕾が開くかの如く優しくほころんでいく。
ほの赤い唇を喜びという感情が飾り、湯上がりでも常人より血の気の薄い肌がゆるりと赤みを帯びていく。明日の戦いを思って興奮しているのか、それとも重要な所が聞き取れなかったが自分の言葉に何か感じる所があったのかもしれない。
だがそんなことは今の家康にとってどうでもいいことだった。
そこにいたのは今まで見た事がない、ぞくりとする程美しい三成。
見惚れる程の美、そして吸い寄せられる程の輝き。笑いかけてくれたわけでもないのに、鼓動が一気に跳ね上がり、果てがない程高まっていくのはきっと。
再度恋に落ちているから。
よほど呆然とした顔で三成だけを見つめていたのだろう。
嘲笑するかの如く唇を歪めた三成は、ぽふぽふと家康の頭頂部を数度平手で叩き、馬鹿めと口にし。
そしてそれで満足したかのように立ち上がった。
「いいか、明日の朝だ……今日は念入りに風呂で首を洗っておくことだな」
「三成はどこへ行くのだ?」
「伊達に明日の立ち会いを頼みに行ってくる、それと明日の準備か」
「準備……」
「最後の戦いにすると言ったはずだ」
それ相応の準備が必要、そう言いながら三成は島津と共に徐々に遠ざかっていく。
手を伸ばして彼の着物の裾を掴みたかったが、そんなことをすれば三成は機嫌を損ねてしまうかもしれない。昔から自分がしようとしていることを邪魔されると、三成はそれはもう凄まじい勢いで怒り始めたのだ。
それに三成が覚悟を決めたのなら、家康もそれに答えなくてはならない。
何かを終わらせ、何かを始めようとしている三成相手に死ぬつもりはないが。彼の覚悟を全て受け止めなくては、何も始めることができないのだ。
ぽつりと一人その場に残されたのに、昼程の寂しさは感じない。
むしろ、
「楽しみだな………三成の本気か」
彼が自分の全てを賭けて向かってくる、その事実が嬉しくてたまらなかった。
今までだって三成の本気だったのは間違いない。しかし彼の太刀筋に甘さや惑いがあったことを、彼の刃を受け止めてきた家康だけが知っている。
三成とは悩みの質が違うが、家康もずっと考え続けていたのだ。
二人で共に幸せになる方法を。
彼が何かを吹っ切ったのなら、自分も彼に豊臣狩りのことを伝え謝らなければならない。少しだけ自分に昔と同じ顔を見せてくれた三成の顔を再び悲しみと怒りで曇らせてしまうかも知らないが、偽りの平和の中で彼の笑顔を見るわけにはいかない。
「それも、明日次第だがな……」
背を預けている壁にこつりと頭をぶつけ。
そう独りごちながら、家康は明日の戦いについてゆっくりと思いを巡らせ始めた。
素足だと道場の床が冷たい、そう冗談めかして文句を言ったら道場でやる気だったのかと逆に驚かれた。
ここは戦場ではないと数多の人間に言われてきたが、常に身に纏っている陽光の色の戦装束。そしてこれもいつも持ち歩いている手甲を、指を動かすことで関節の噛み具合を確認する。強く指を動かすと、わずかなきしむ様な音を立てて鈍い色の金属の板の連なりは生き物のように蠢き始める。
この手甲で秀吉を打ち倒した、その事実を忘れないように遠出する時は必ずこの手甲を持ち歩くことにしていた。天下人ならそれにふさわしい豪奢な手甲を用意しなければならないのだろうが、装飾がほとんど剥げてしまい鋼の地色が見えているこれこそが今の自分にふさわしい気がするのだ。
広がる雪原にいるのは家康と、家康側の立ち会いとしてついてきた政宗のみ。
「三成は遅いな……」
「準備があるって言ってたからな。楽しいpartyにしたいんだろうよ」
「儂にはそのぱありいがどんなものかはわからんが、三成が楽しんでくれれば儂も嬉しい」
「これから殺し合いをするってのに、随分余裕だな」
「余裕などはない。だがな、三成が儂と決着をつけたいというのなら、儂はそれを受け入れなければならぬ」
「アンタ……いい顔になったな」
腕を組み、口から白い息を吐きながら政宗は満足げに頷いている。
政宗から見て自分のどこが『いい顔』になったのかはわからない。だが少しは自分も良い方向に変われたのだろうか。
それを政宗に聞いてみると、
「石田とやり合って生き延びたら教えてやるよ」
と、いたずらっ子のような笑み付きで答えてくれた。
家康側の立ち会いは政宗、三成側の立ち会いは島津。
つまりこれは東軍と西軍の戦の最終決戦と言う事になる。戦としての決着はついてしまったが、大将同士の戦いはあの時行われなかった。
今ここで、関ヶ原の戦は本当の意味で終わりを迎える。
国全部を巻き込んだ大きな戦だったというのに、決着が伊達家の屋敷の裏にある更地というのが何となく笑いを誘うのだが、ここ以外に二人が全力で戦える場所がなかったのだから仕方がない。雪が溶けたらここに蔵を建てるつもりだった小十郎は、また整地のし直しだと頭を抱えていたが、政宗の当主の権限で無理矢理押し切ったらしい。
雪と見まごうばかりの純白の着物の一揃えは、政宗なり覚悟の証。
「ほら………来たぜ、アンタの相手がな」
「そのようだな」
唇は笑いの形のまま、ゆっくりと家康から距離を取り立会人としての責務を果たそうとしている政宗に頷くことで礼とし、家康は降りしきる雪の中近づいて来る人影へと目線をやった。
見た事もない程大粒の雪が舞い降りてくる中、首元の布を引っ張って頭にかぶる。
「…………早かったな、家康」
「眠れなかったのでな」
「そうか、私は少し眠れた」
「それは羨ましいな」
軽口のような挨拶代わりの言葉の応酬。
近づく度に他愛のない言葉を重ね、互いとの距離を測る。
「それにしても三成、随分と物々しい格好だな。儂は伊達のお下がりのあの袴姿が気に入っていたんだがな」
「これは秀吉様に捧げる戦いだ、東軍の将に与えられた装束で貴様の前に立つわけにはいかん」
「だが儂は、その姿をまた見ることができて嬉しいと思っている。やはり三成にはその姿がいい」
「半兵衛様のお見立てだ、似合わぬ訳がなかろう」
さくさくと軽快に雪を踏みしめて、こちらへ向かってきていた三成の足がわずかに止まった。
焼け焦げ、各所が黒く染まる陣羽織。
秀吉からの賜り物だという見事な飾りが施された黄金の輝きを放つ太刀。
鞘に絡む飾り紐につけられた珊瑚の玉が縦横無尽に揺れ、あちこちにぶつかって硬い音をたてる中、三成からかなり距離を取ってついてきていた島津の姿もようやく家康の視界に入り始めていた。
あくまで見届け、手を出す気はない。
それを家康に伝えるためか、武器を一切持たず無言で政宗がいる場所へと歩んでいく巨漢の老人に、三成は無言で頭を下げる。そこに秘められていた年長者への尊敬の念と、祖父を慕う孫のような親愛の情に答えるためか。
雪よりも白い頭髪を持つ老人は、にかっと笑い手を上げ。
「きばりんしゃい」
どちらに言ったのかもわからぬ言葉を残し、政宗の後ろに己の場所を定めた。
互いに手を伸ばしても触れることができず、だがわずかな動きで相手の命を奪える間合いへと移動できる距離。そんな絶妙な場所で足を完全に止め、三成は沓にまとわりつく雪を地面を踏み固めることで払った。
わずかな重みも自分の動きを殺す、そう思っているかのように。
家康も頭を覆う布の上で積もり始めている雪を手で払い、三成をしっかりと見据える。
「これで最後、それで本当にいいのだな? 儂から全てを奪い取ると言っていたのに、何があったのだ?」
「貴様にはまだ教えぬ、知りたければ私を打ち倒すことだな。此度の戦いは、どちらかが死ぬか……それとも敗北を認めるかでしか終わらせぬ」
「ああ、わかっている」
覚悟を決めた三成相手に、殺さないために手加減をしようなどという甘い考えが通用するわけがない。敵だけでなく味方にまで凶王と呼ばれ恐れられた彼に、切り刻まれて終わることだけはしてはならないのだ。
自分と三成、両者を救うためにも。
「秀吉様の名において、貴様を斬滅する」
「では……儂は何と言えばいいのだろうな」
「何も言う必要はない、貴様は私に倒されるのだからな」
すらりと鞘から輝くような刃が引き抜かれていく。
雲の切れ間から刺すわずかな光を受け、己が太陽のように輝く刃に彩られながら、三成は軽く腰を沈めた。
秀麗な眼差しは家康だけを見つめ、そして口は戦いの開始を告げる。
「行くぞ家康!」
言葉と共に、三成の姿が消えた。
それが常人の範疇を超えた三成の脚力と技による移動によるものだと気がつく前に、体が勝手に動き始めていた。いつもであれば首を真っ先に狙ってくるというのに、雪の小さな一片すら真っ二つに断ってしまいそうな稲妻のような刃が襲いかかったのは、家康の右足であった。
野生の獣のように素早く、そして姿勢を低くし。腿をなぎ払おうと走り来る刃を手甲で何とか受け止め、自らも姿勢を低くし三成の頭へともう片方の拳を向ける。
「…………っ!」
だがそれに気づかぬ三成ではない。
家康の手に止められた刃先に力を込め、家康の手を支点として体の方向を変え、再度家康へと襲いかかった。家康に攻撃を阻止されて体を離し、家康からの鈍く重い一撃を躱すために距離を取る。
その全ての動きに無駄がない。
余計な物を一切持たぬその動きの美しさに、立ち会いをしている二人からも感嘆のため息が漏れ、家康の口からは当然の如く。
「三成は美しいな!」
という掛け値のない賞賛の言葉。
美しく、強く、そして悲しい存在である三成。だが今自分の体に刃を打ち込もうと使える限りの技を使い、刃の舞を繰り広げる三成からは悲しみを感じはしなかった。
息が上がり、口からは白い靄のような荒い息。
動きが速すぎるのでその体には一切雪が積もらず、彼の軌跡はわずかな足音でしか追うことができない。それだけの動きを行い、家康を焦らせる攻撃を繰り出し続けながら。
三成は笑っていた。
家康が望む月の光を思わせる花開くような笑みではない。
ギラギラと輝く眼差しは家康との戦いを心の底から喜び、命の全てを燃やし尽くすかのように叫び続ける。
「何故秀吉様を殺した! 何故豊臣に刃を向けた! 何故裏切った! 何故、何故、何故!」
私に何も話してくれなかった!!
悲鳴のような叫び、頬を濡らす涙。
「儂が弱かったのだ! 三成に言わねばならぬと思っていた……だが言えなかった!」
「何故だ! 貴様は己のやったことが間違っていると思っていたのか?」
「違う! 言えば三成が儂から離れていくと思っていたのだ! 秀吉に進言したなどと言ったら、三成は儂を嫌うのではと…………今だからこそわかる、あの時儂は三成に協力を仰ぐべきだったのだ!」
「秀吉様と呼べぇぇぇぇ!」
刃では家康に止められる、そう判断したのか。家康が渾身の力を持って首に迫る刃を止めている隙に、三成の足が軽く家康の足を払った。
足下が必要以上に軽くなり、次に感じたのは宙に浮くような感触。
体勢を立て直さねば、と思った時にはもう遅かった。
「これで終わりだ!」
軽やかに家康の体から離れた三成はあっという間に自分の間合いを形成し、あと半歩踏み出せば家康の首を簡単両断できる場所へと移動していた。
三成の言葉ではないがこれで終わりか。
斜め後ろへ倒れ込みつつある体は、無理矢理起こそうとすれば三成に無防備な体を差し出すことになり、このまま倒れ込んでも同じ事になる。相手が三成でなければどうにでもしてみせるが、これは諦めて首を差し出すべきか。
否。
ここで自分の生を諦めてしまえば、今までの行いが全てなかったことになってしまう。だから家康は叫んだ、己の全ての思いを込め、そして笑顔が消えた三成の顔をきっと睨み付け。
最後になるかも知れぬ言葉を、三成へと届ける。
「すまなかった三成! 儂はお前を信じられなかったのだ!」
迫る銀の輝き、目の前でひらめく光。
「………………………………」
どさりと雪原に身が投げ出され、背に痛みが襲う。
まだ自分の意識がはっきりしており、痛みがあるのは背だけという状況に驚きそっと首に手をやるが、そこに濡れた感触は存在していなかった。
代わりに気がついたのは、断ったまま自分を見下ろす三成の涼しげな目線。
「…………………三成…………何故……だ……?」
後半歩踏み込めば家康の首は簡単に切断できた、だというのに。
その半歩を、三成は踏み込まなかったのだ。
どうして、何故殺されなかった。
雪の冷たさで一気に冷え始める体を慌てて起こすと、顔から全ての感情を消し去ってしまった三成がすぐ側に立っていた。
「………私に………貴様は殺せない……聞いてしまったからな、貴様の後悔を」
「三成……」
「後悔するのなら、何故……そう聞くのは簡単だ。だがそれでも私は貴様にもう一度聞く」
ゆっくりと崩れ落ちるように三成は膝を折り家康の前に座り込んだ。
頬は涙で濡れ、鞘を履いた腰から硬く涼やかな音。三成の体が震えており、口からは堪えきれない嗚咽が漏れ始めていることに気がつき。
家康はそっと、三成に向けて手を伸ばした。
彼の体に触れた瞬間大きく怯えるかのように震えたが、そんなことは関係ない。寒さと疲れと、そして悲しみで震えている山猫を一匹抱きしめることくらい、今の家康でも簡単にできるのだ。
しっかりと捕まえ、ゆっくりと腕の中に閉じ込めていく。
「どうして……どうして……私を信じてくれなかったのだ……?」
「すまぬ、絆などと言いながら儂が一番全てを信じていなかったのだ!」
「私は、貴様を信じていたのだ……なのに貴様は裏切った……秀吉様まで……」
「儂がもう少し考えていれば、三成を信じてさえすれば、儂は……儂は……っ!」
強く体を寄せ合い、いつの間にか流れ始めていた己の涙を三成の体で拭う。
もう残っているのは互いの体だけ、そう思っているかのように三成の体を強く抱きしめ、そして彼の熱を自分に移そうとする。
そうすれば三成と同じになれる、そんな子供じみた願いを抱いたまま。
「家康………少し力を緩めろ……私はどこにも行かん………」
「だめだ」
「………………それと………泣くな……貴様の泣き顔は見苦しい……」
「それも断る」
未だやまぬ雪が徐々に二人の体を覆い尽くしていくのを感じながら、家康は三成を抱きしめる腕に更に力を込めた。
このまま二人で雪の中に消えてしまえば、彼に全てを告げなくてもすむのに。
そう思いながら。
_______________________________________
BGMは、この時にはこれを聞こうと最初から決めていたので、感無量です。SWORD SUMMITは別なシーンで聞いて書く。
BGM「Naked arms」T.M.Revolution
微妙な気持ちを抱えたまま風呂の入り口の脇に座り込み三成を待っていると、後ろに巨漢の老人を従えた三成が、柔らかい足音を立てながら現れた。風呂上がり特有のほんのりと色づいた肌と濡れた髪は暖かい空気と共に、家康の鼻に三成の匂いを届けてきた。
甘く脳髄をとろかす、三成の肌の香り。
島津さえいなければ即座に三成に抱きつくのだが、あの老人と敵対して生き延びられる自身が家康には全くなかった。伊達主従は当然三成の味方、そしてこの老人まで三成を守る側になられてしまったら、確実に勝ち目はない。
せめて三成がこちらを向いてくれてば。祈るような思いで、白い夜着に着替え今まで着ていた衣類をまとめて手に持っている彼を見つめていると、ついと彼の顔がこちらへと向けられた。
「家康……何をしている」
「………み、三成を待っていたに………決まっておるだろう」
「そうか、手間が省けたな」
何の手間が、と聞く余裕はもう家康には存在していなかった。
その目の美しさ、そして強さ。
奥州に来てからの三成の目は、常に憎しみや殺意という紗幕に常に覆われていた。それでも三成は十分綺麗だったし、自分が彼をこうしてしまったという思いもあったのでそれが今の三成だと受け入れていたのだが。全ての感情の淀みを洗い流されたかのように瞳は澄み渡り。真っ直ぐに、だが激しさを伴わない眼差しは昔のように家康を見つめてくる。
風呂の中で何があったか、それを家康に推察する術はない。
だが三成の心に、島津は何かを与えたのだろう。負の感情を伴わずに三成が自分と相対してくれるのは本当に久しぶりで、彼と何を話せばいいのか、それ以前にどういう顔で彼を見ればいいのかすらわからない。
妙な気恥ずかしさで頭を抱えたくなるが、三成の姿は見続けたい。そんな家康の様子がおかしかったのか、三成はわずかに唇に力を込めて。
わずかに笑い声を漏らした。
「気持ち悪い顔をするな」
「そんなに気持ち悪い顔をしている……か?」
「ああ」
短くそう言い切ると、三成は表情を更に柔らかくした。
後ろにいる島津に小さく声をかけ何かを確認すると、まるで家康に無言でちかづいていき。
「三成!?」
寄り添うかのように、そっと隣に腰を下ろした。
触れあう肘と肘、伝わってくる風呂上がりの三成のぬくもり。風呂の中で何が行われ、そして三成はここまで態度を変えたのか。
「どうした?」
「いや、なんでもないぞ! 今の三成が綺麗すぎて色々な意味で儂が元気いっぱいだなんて事はないぞ、多分!」
「貴様の話はいつもよくわからん」
わずかに唇を尖らせて三成がそう呟くと、わずかに離れた距離で二人を見守っていた島津の老人の口から豪快な笑い声。
それで今の状況を改めて思い出したのか、三成は表情を戻し家康の瞳をじっと見つめてきた。
「貴様に付き合っていると湯冷めしてしまう、本題に入るぞ。家康………明日の朝私と戦え」
「別に儂は構わぬ」
「立ち会いは島津と伊達に行ってもらう」
「鬼島津が立ち会いか、それは心が高鳴るな。だが伊達も忙しいのであろう、別に立ち会いは二人も……」
「必要だから言っているのだ、伊達には私から話しておく」
「今までも立ち会いは一人だったではないか」
二人の人間の立ち会いが必要なのか。
そう問うと三成は、儚げな雰囲気を纏っていた表情を一気に引き締めた。
「貴様との戦いはこれで最後だ……どういう決着になるにせよ、私は己の天運と秀吉様のお導きに従おうと思っている」
「それは儂を殺すと言うことか」
「その時にならねばわからん。だが、私には心に決めたことがある……それだけは覚えておけ」
「易々と儂を殺せると思うな。儂も決めているのだ、三成を生かし儂も生き残る……それが儂の望みだ」
「貴様のあきらめの悪さは昔からだな……だからこそ、今一度……てみる気になったのだが」
目つきは鋭いが、唇は蕾が開くかの如く優しくほころんでいく。
ほの赤い唇を喜びという感情が飾り、湯上がりでも常人より血の気の薄い肌がゆるりと赤みを帯びていく。明日の戦いを思って興奮しているのか、それとも重要な所が聞き取れなかったが自分の言葉に何か感じる所があったのかもしれない。
だがそんなことは今の家康にとってどうでもいいことだった。
そこにいたのは今まで見た事がない、ぞくりとする程美しい三成。
見惚れる程の美、そして吸い寄せられる程の輝き。笑いかけてくれたわけでもないのに、鼓動が一気に跳ね上がり、果てがない程高まっていくのはきっと。
再度恋に落ちているから。
よほど呆然とした顔で三成だけを見つめていたのだろう。
嘲笑するかの如く唇を歪めた三成は、ぽふぽふと家康の頭頂部を数度平手で叩き、馬鹿めと口にし。
そしてそれで満足したかのように立ち上がった。
「いいか、明日の朝だ……今日は念入りに風呂で首を洗っておくことだな」
「三成はどこへ行くのだ?」
「伊達に明日の立ち会いを頼みに行ってくる、それと明日の準備か」
「準備……」
「最後の戦いにすると言ったはずだ」
それ相応の準備が必要、そう言いながら三成は島津と共に徐々に遠ざかっていく。
手を伸ばして彼の着物の裾を掴みたかったが、そんなことをすれば三成は機嫌を損ねてしまうかもしれない。昔から自分がしようとしていることを邪魔されると、三成はそれはもう凄まじい勢いで怒り始めたのだ。
それに三成が覚悟を決めたのなら、家康もそれに答えなくてはならない。
何かを終わらせ、何かを始めようとしている三成相手に死ぬつもりはないが。彼の覚悟を全て受け止めなくては、何も始めることができないのだ。
ぽつりと一人その場に残されたのに、昼程の寂しさは感じない。
むしろ、
「楽しみだな………三成の本気か」
彼が自分の全てを賭けて向かってくる、その事実が嬉しくてたまらなかった。
今までだって三成の本気だったのは間違いない。しかし彼の太刀筋に甘さや惑いがあったことを、彼の刃を受け止めてきた家康だけが知っている。
三成とは悩みの質が違うが、家康もずっと考え続けていたのだ。
二人で共に幸せになる方法を。
彼が何かを吹っ切ったのなら、自分も彼に豊臣狩りのことを伝え謝らなければならない。少しだけ自分に昔と同じ顔を見せてくれた三成の顔を再び悲しみと怒りで曇らせてしまうかも知らないが、偽りの平和の中で彼の笑顔を見るわけにはいかない。
「それも、明日次第だがな……」
背を預けている壁にこつりと頭をぶつけ。
そう独りごちながら、家康は明日の戦いについてゆっくりと思いを巡らせ始めた。
素足だと道場の床が冷たい、そう冗談めかして文句を言ったら道場でやる気だったのかと逆に驚かれた。
ここは戦場ではないと数多の人間に言われてきたが、常に身に纏っている陽光の色の戦装束。そしてこれもいつも持ち歩いている手甲を、指を動かすことで関節の噛み具合を確認する。強く指を動かすと、わずかなきしむ様な音を立てて鈍い色の金属の板の連なりは生き物のように蠢き始める。
この手甲で秀吉を打ち倒した、その事実を忘れないように遠出する時は必ずこの手甲を持ち歩くことにしていた。天下人ならそれにふさわしい豪奢な手甲を用意しなければならないのだろうが、装飾がほとんど剥げてしまい鋼の地色が見えているこれこそが今の自分にふさわしい気がするのだ。
広がる雪原にいるのは家康と、家康側の立ち会いとしてついてきた政宗のみ。
「三成は遅いな……」
「準備があるって言ってたからな。楽しいpartyにしたいんだろうよ」
「儂にはそのぱありいがどんなものかはわからんが、三成が楽しんでくれれば儂も嬉しい」
「これから殺し合いをするってのに、随分余裕だな」
「余裕などはない。だがな、三成が儂と決着をつけたいというのなら、儂はそれを受け入れなければならぬ」
「アンタ……いい顔になったな」
腕を組み、口から白い息を吐きながら政宗は満足げに頷いている。
政宗から見て自分のどこが『いい顔』になったのかはわからない。だが少しは自分も良い方向に変われたのだろうか。
それを政宗に聞いてみると、
「石田とやり合って生き延びたら教えてやるよ」
と、いたずらっ子のような笑み付きで答えてくれた。
家康側の立ち会いは政宗、三成側の立ち会いは島津。
つまりこれは東軍と西軍の戦の最終決戦と言う事になる。戦としての決着はついてしまったが、大将同士の戦いはあの時行われなかった。
今ここで、関ヶ原の戦は本当の意味で終わりを迎える。
国全部を巻き込んだ大きな戦だったというのに、決着が伊達家の屋敷の裏にある更地というのが何となく笑いを誘うのだが、ここ以外に二人が全力で戦える場所がなかったのだから仕方がない。雪が溶けたらここに蔵を建てるつもりだった小十郎は、また整地のし直しだと頭を抱えていたが、政宗の当主の権限で無理矢理押し切ったらしい。
雪と見まごうばかりの純白の着物の一揃えは、政宗なり覚悟の証。
「ほら………来たぜ、アンタの相手がな」
「そのようだな」
唇は笑いの形のまま、ゆっくりと家康から距離を取り立会人としての責務を果たそうとしている政宗に頷くことで礼とし、家康は降りしきる雪の中近づいて来る人影へと目線をやった。
見た事もない程大粒の雪が舞い降りてくる中、首元の布を引っ張って頭にかぶる。
「…………早かったな、家康」
「眠れなかったのでな」
「そうか、私は少し眠れた」
「それは羨ましいな」
軽口のような挨拶代わりの言葉の応酬。
近づく度に他愛のない言葉を重ね、互いとの距離を測る。
「それにしても三成、随分と物々しい格好だな。儂は伊達のお下がりのあの袴姿が気に入っていたんだがな」
「これは秀吉様に捧げる戦いだ、東軍の将に与えられた装束で貴様の前に立つわけにはいかん」
「だが儂は、その姿をまた見ることができて嬉しいと思っている。やはり三成にはその姿がいい」
「半兵衛様のお見立てだ、似合わぬ訳がなかろう」
さくさくと軽快に雪を踏みしめて、こちらへ向かってきていた三成の足がわずかに止まった。
焼け焦げ、各所が黒く染まる陣羽織。
秀吉からの賜り物だという見事な飾りが施された黄金の輝きを放つ太刀。
鞘に絡む飾り紐につけられた珊瑚の玉が縦横無尽に揺れ、あちこちにぶつかって硬い音をたてる中、三成からかなり距離を取ってついてきていた島津の姿もようやく家康の視界に入り始めていた。
あくまで見届け、手を出す気はない。
それを家康に伝えるためか、武器を一切持たず無言で政宗がいる場所へと歩んでいく巨漢の老人に、三成は無言で頭を下げる。そこに秘められていた年長者への尊敬の念と、祖父を慕う孫のような親愛の情に答えるためか。
雪よりも白い頭髪を持つ老人は、にかっと笑い手を上げ。
「きばりんしゃい」
どちらに言ったのかもわからぬ言葉を残し、政宗の後ろに己の場所を定めた。
互いに手を伸ばしても触れることができず、だがわずかな動きで相手の命を奪える間合いへと移動できる距離。そんな絶妙な場所で足を完全に止め、三成は沓にまとわりつく雪を地面を踏み固めることで払った。
わずかな重みも自分の動きを殺す、そう思っているかのように。
家康も頭を覆う布の上で積もり始めている雪を手で払い、三成をしっかりと見据える。
「これで最後、それで本当にいいのだな? 儂から全てを奪い取ると言っていたのに、何があったのだ?」
「貴様にはまだ教えぬ、知りたければ私を打ち倒すことだな。此度の戦いは、どちらかが死ぬか……それとも敗北を認めるかでしか終わらせぬ」
「ああ、わかっている」
覚悟を決めた三成相手に、殺さないために手加減をしようなどという甘い考えが通用するわけがない。敵だけでなく味方にまで凶王と呼ばれ恐れられた彼に、切り刻まれて終わることだけはしてはならないのだ。
自分と三成、両者を救うためにも。
「秀吉様の名において、貴様を斬滅する」
「では……儂は何と言えばいいのだろうな」
「何も言う必要はない、貴様は私に倒されるのだからな」
すらりと鞘から輝くような刃が引き抜かれていく。
雲の切れ間から刺すわずかな光を受け、己が太陽のように輝く刃に彩られながら、三成は軽く腰を沈めた。
秀麗な眼差しは家康だけを見つめ、そして口は戦いの開始を告げる。
「行くぞ家康!」
言葉と共に、三成の姿が消えた。
それが常人の範疇を超えた三成の脚力と技による移動によるものだと気がつく前に、体が勝手に動き始めていた。いつもであれば首を真っ先に狙ってくるというのに、雪の小さな一片すら真っ二つに断ってしまいそうな稲妻のような刃が襲いかかったのは、家康の右足であった。
野生の獣のように素早く、そして姿勢を低くし。腿をなぎ払おうと走り来る刃を手甲で何とか受け止め、自らも姿勢を低くし三成の頭へともう片方の拳を向ける。
「…………っ!」
だがそれに気づかぬ三成ではない。
家康の手に止められた刃先に力を込め、家康の手を支点として体の方向を変え、再度家康へと襲いかかった。家康に攻撃を阻止されて体を離し、家康からの鈍く重い一撃を躱すために距離を取る。
その全ての動きに無駄がない。
余計な物を一切持たぬその動きの美しさに、立ち会いをしている二人からも感嘆のため息が漏れ、家康の口からは当然の如く。
「三成は美しいな!」
という掛け値のない賞賛の言葉。
美しく、強く、そして悲しい存在である三成。だが今自分の体に刃を打ち込もうと使える限りの技を使い、刃の舞を繰り広げる三成からは悲しみを感じはしなかった。
息が上がり、口からは白い靄のような荒い息。
動きが速すぎるのでその体には一切雪が積もらず、彼の軌跡はわずかな足音でしか追うことができない。それだけの動きを行い、家康を焦らせる攻撃を繰り出し続けながら。
三成は笑っていた。
家康が望む月の光を思わせる花開くような笑みではない。
ギラギラと輝く眼差しは家康との戦いを心の底から喜び、命の全てを燃やし尽くすかのように叫び続ける。
「何故秀吉様を殺した! 何故豊臣に刃を向けた! 何故裏切った! 何故、何故、何故!」
私に何も話してくれなかった!!
悲鳴のような叫び、頬を濡らす涙。
「儂が弱かったのだ! 三成に言わねばならぬと思っていた……だが言えなかった!」
「何故だ! 貴様は己のやったことが間違っていると思っていたのか?」
「違う! 言えば三成が儂から離れていくと思っていたのだ! 秀吉に進言したなどと言ったら、三成は儂を嫌うのではと…………今だからこそわかる、あの時儂は三成に協力を仰ぐべきだったのだ!」
「秀吉様と呼べぇぇぇぇ!」
刃では家康に止められる、そう判断したのか。家康が渾身の力を持って首に迫る刃を止めている隙に、三成の足が軽く家康の足を払った。
足下が必要以上に軽くなり、次に感じたのは宙に浮くような感触。
体勢を立て直さねば、と思った時にはもう遅かった。
「これで終わりだ!」
軽やかに家康の体から離れた三成はあっという間に自分の間合いを形成し、あと半歩踏み出せば家康の首を簡単両断できる場所へと移動していた。
三成の言葉ではないがこれで終わりか。
斜め後ろへ倒れ込みつつある体は、無理矢理起こそうとすれば三成に無防備な体を差し出すことになり、このまま倒れ込んでも同じ事になる。相手が三成でなければどうにでもしてみせるが、これは諦めて首を差し出すべきか。
否。
ここで自分の生を諦めてしまえば、今までの行いが全てなかったことになってしまう。だから家康は叫んだ、己の全ての思いを込め、そして笑顔が消えた三成の顔をきっと睨み付け。
最後になるかも知れぬ言葉を、三成へと届ける。
「すまなかった三成! 儂はお前を信じられなかったのだ!」
迫る銀の輝き、目の前でひらめく光。
「………………………………」
どさりと雪原に身が投げ出され、背に痛みが襲う。
まだ自分の意識がはっきりしており、痛みがあるのは背だけという状況に驚きそっと首に手をやるが、そこに濡れた感触は存在していなかった。
代わりに気がついたのは、断ったまま自分を見下ろす三成の涼しげな目線。
「…………………三成…………何故……だ……?」
後半歩踏み込めば家康の首は簡単に切断できた、だというのに。
その半歩を、三成は踏み込まなかったのだ。
どうして、何故殺されなかった。
雪の冷たさで一気に冷え始める体を慌てて起こすと、顔から全ての感情を消し去ってしまった三成がすぐ側に立っていた。
「………私に………貴様は殺せない……聞いてしまったからな、貴様の後悔を」
「三成……」
「後悔するのなら、何故……そう聞くのは簡単だ。だがそれでも私は貴様にもう一度聞く」
ゆっくりと崩れ落ちるように三成は膝を折り家康の前に座り込んだ。
頬は涙で濡れ、鞘を履いた腰から硬く涼やかな音。三成の体が震えており、口からは堪えきれない嗚咽が漏れ始めていることに気がつき。
家康はそっと、三成に向けて手を伸ばした。
彼の体に触れた瞬間大きく怯えるかのように震えたが、そんなことは関係ない。寒さと疲れと、そして悲しみで震えている山猫を一匹抱きしめることくらい、今の家康でも簡単にできるのだ。
しっかりと捕まえ、ゆっくりと腕の中に閉じ込めていく。
「どうして……どうして……私を信じてくれなかったのだ……?」
「すまぬ、絆などと言いながら儂が一番全てを信じていなかったのだ!」
「私は、貴様を信じていたのだ……なのに貴様は裏切った……秀吉様まで……」
「儂がもう少し考えていれば、三成を信じてさえすれば、儂は……儂は……っ!」
強く体を寄せ合い、いつの間にか流れ始めていた己の涙を三成の体で拭う。
もう残っているのは互いの体だけ、そう思っているかのように三成の体を強く抱きしめ、そして彼の熱を自分に移そうとする。
そうすれば三成と同じになれる、そんな子供じみた願いを抱いたまま。
「家康………少し力を緩めろ……私はどこにも行かん………」
「だめだ」
「………………それと………泣くな……貴様の泣き顔は見苦しい……」
「それも断る」
未だやまぬ雪が徐々に二人の体を覆い尽くしていくのを感じながら、家康は三成を抱きしめる腕に更に力を込めた。
このまま二人で雪の中に消えてしまえば、彼に全てを告げなくてもすむのに。
そう思いながら。
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BGMは、この時にはこれを聞こうと最初から決めていたので、感無量です。SWORD SUMMITは別なシーンで聞いて書く。
BGM「Naked arms」T.M.Revolution
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(現在2本 家三 チカナリです)
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みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
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