がんかたうるふ 月孤譚 間章「静動」 忍者ブログ
こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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ちょっとタイトルが変わりました。
次から8章です。



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 いい風が吹いたのと、波が荒れすぎず適度な強さを保ってくれたため、越後には存外に早くたどり着くことができた。荒海の航海に慣れている元親や部下たちは大丈夫だったのだが、毛利はかなり堪えたらしい。青ざめた顔で時折よろめき、だが一国の当主としての誇りを保つために元親に体を支えられるのを拒み。
 口から重苦しい息を漏らしながら、なんとか正座を維持していた。
 外には見事な雪景色が広がっているのだが、上杉家の謁見用の部屋からはそれを見ることができなかった。当主の性格をよく現した、一見簡素に見えるが実際は高価な装飾に彩られた部屋は、家格を考えると狭すぎると言ってもいい程。
 それは客人と距離を空けずに話としたいという上杉の考えからなのか。それとも近くにいる人間に不意に襲われても、簡単にはねのけることができるという自身故か。
 柔らかい笑顔からは、それを読み取ることはできなかった。
「えんろはるばるよくきたものです ちょうそかべ」
「アンタも変わらず達者そうだな。で、早速用件なんだがよ……」
「わかっております」
 白い僧衣をまとった上杉は、人であるのかを疑いたくなる程の美貌と神々しい雰囲気を纏っていた。自分の隣で一切血の気の感じられない唇を噛みしめ、小刻みな呼吸を繰り返している毛利へと慈愛に満ちた視線を向け、優しく語りかける。
「もうり よくたえぬきましたね」
「………これしきのことで崩れる我だと思ったか」
「ですがもうげんかいでしょう あちらにへやをよういしてあります いまはやすみなさい」
「我は大谷相手に石田の身の安全を保証することを約束している……徳川へと内通した我を石田の安全と引き替えに見逃したのは大谷よ。だから我は石田が安全だとわかるまでは休むわけにはいかぬ」
「お前、そんなことしてたのか!?」
「ついでに貴様のことも契約に含めておいてやった……ありがたく思え」
 その言葉が最後だった。
 彼の常人を遥かに超える忍耐力も限界に達したのか、長曾我部が支える暇もなく前へと体を倒した毛利を支えたのは前から手を伸ばした上杉だった。労るかのように背を優しく撫で、力の抜けた体を優しくその場へ横たわらせた。
 あの細い体のどこにそれだけの力があるのか。
 内心驚きを隠せない長曾我部へふわりと笑みを向け、上杉は今度は長曾我部へと目線を向けた。
「あわせたいものがおります」
「会わせたい奴? それよりこいつをさっさと布団にでも入れてやってくれよ」
「もうりはもうしんぱいはないでしょう めをあわせてはいけないものとめをあわせただけです びしゃもんてんのごかごのもと すぐによくなるでしょう」
「そりゃ、どういうことだ?」
「しってはならぬこともこのよにはあるのです ついていらっしゃい」


 おおたによしつぐがまっています。


「は、はぁっ!?」
「あなたたちのおとずれをまっております」
「いや、そうじゃなくてよ……なんでアイツが生きてんだ? 石田のヤツは知ってんのかよ?」
「しっておりますよ わたくしといしだはふみをかわすなかですから」
 軍神とあのツンツンした子供が文通。
 それだけでも驚くというのに、予想外の事態が多すぎて頭がついていかない。いきなり毛利は倒れてしまうし、大谷は生きていると事も無げな口調で上杉は言ってくる。
 あまりの驚きに開いた口が塞がらぬまま、長曾我部は思った。

 自分の知らない所で何が起こっていた? 

 その後元親は、五体満足とは到底言えぬが以前と全く変わらぬ大谷の毒舌をいきなり浴びることになり。その後目を覚ました毛利と大谷の間でなされた会話でも更に驚くことになるのだが。
 その話が家康へと伝わるのは、全てに片がついた後の事であった。









「病人の見舞いに病人が来よるか……やれ面白い」
「面白いではない、我を死ぬ目にあわせおって……この借りは高くつくと思え」
「その姿ですごまれても、誰も怯えはせぬわ」
「我も好きでこのようなことをしておるわけではない!」
「もうり おきてはなりませぬ」
「…………くっ…………っ!」
 起き上がろうとすると、上杉に上から頭を押さえ込まれる。
 目が覚めたら上杉の膝枕で横になっていた上に、いきなり目の前に床に横たわった大谷の姿。死んだと聞いていた彼がが生きてたと言うことは、上杉の忍びが彼の死骸を作り上げたということだろう。腕の立つ忍びならそれくらいのことは簡単に行ってみせるし、あの混乱の中で死体の検分を時間をかけて行えるわけがない。
 そう毛利は結論づけ、あっさりと大谷が生きていることを受け入れたのだが、連れはそうはいかなかったらしい。
 自分が目覚める前に大谷に言葉で散々打ちのめされたのか。長曾我部は虚ろな目と疲れ果てた表情のままこちらに助けを求めていた。
 上杉の膝に頭を預け、押さえ込まれているのか頭を撫でられているのかはわからぬ状態を不満に思いはしたが。触れてくる上杉の手の程よい冷たさと滑らかな感触は、毛利の体から重苦しさを徐々に取り払いつつあった。
 最初に体調の異変に気がついたのは伊達家を出てすぐのこと。
 最初は寝不足が祟ったのだろうぐらいに考えていたのだが、ゆっくり休んでも全身を締め付けるような奇妙な苦痛に苛まれ、それが数日続くに至って毛利は焦りと恐怖を感じ始めていた。
 これは石田だけではなく自分の身も危ない、と。
 心当たりがあるとすれば三成の足に絡みついていた、あの黒い影だけ。あれをずっと観察し続けていた自分だけが体の不調を感じ、共にいた長曾我部は何も感じていない。目を合わせてはいけない『もの』と目を合わせた、目を覚ました毛利に上杉はそう説明してくれたが。
 それが何を現しているのかを、自分の頭を撫で続ける軍神は教えてくれようとはしなかった。
 何ともいえないもやもやとした気持ちを晴らすことのできない毛利が今この場でただ一つ頼れるのは、側に寄り添い手を握っていてくれる長曾我部のぬくもりだけ。謀略と交渉にかけては他の国主に負けることはないと自負してはいたが、形のない恐怖へと導かれていく恐怖に一人では耐えられなかっただろう。
 時折手に力を込めると、まだ力を取り戻していない目が優しく笑ってくれる。
 それに力を与えられているかのように口は動き始め、頭には様々な思考が巡り始めた。
「…………大谷、石田のことはどこまで?」
「伊達で愛でられていることは知っておるわ。徳川と再会しておることもな」
「そうか」
「ぬしが上杉の膝で寝こけている間に三成の足の件も聞いておる」
「寝こけてなどおらぬわ」
「なかなかに愛らしい寝顔だった……太閤殿への冥土の土産になるだろうて」
 包帯に覆われた顔がくしゃりと歪むと、大谷は自ら片手で布団を摘み。

 その中を毛利へと晒してみせた。

「…………それは……………」
「我はもう長くない、という事よ。ここに来てからなかなか面白い思いをさせてもらったわ。このまま死んでも未練はない……と言いたいどころだが」
「石田か」
「どこの阿呆が三成にそのようなことをしたかもわかっておるが、今の我はそれを止めることもできぬ」
「では黙って見ていろと?」
「そこで死すのならそれが三成の定めよ……と言うとでも思うたか? 三成は我と違うて『守られて』おるのでな、心配はしておらぬよ」
 腐臭を感じなかったのは、上杉の人間に手厚い看護を受けているからなのだろう。
 喉元までこみ上げてきた熱い物をなんとか飲み下し、毛利はこらえていた息を吐いた。人は死へと近づくと体は病み衰え、そして壊れていく。
 だがあのような状態で生きているとは。
 未練と後悔が彼を生きながらえさせているのか、一瞬そう思ったが大谷は頭を振って静かに語り出した。
 横たわったままの二人の目線が、優しく絡み合う。
「我は三成に会わずに死ぬつもりであった。あの女忍びの話を聞けばそれくらいはわかる……三成は我に会わぬほうがよい」
「石田は貴様に会いたがっていた。あの己の生き方すら決められぬ子供を置いて逝く気だったのか?」
「あれは弱くはない。いずれ己の生き方をみつけることができるだろうて……上杉にも今後のことは頼んである。だがそれと此度の件は別の話」
 自らの未熟さで迷い悩むのは構わない、だがそれを邪魔する者は潰すべき。
 きっぱりとした口調でそう言い切った大谷は、布団を掴んでいた腕で頬をかきながらわずかに唇を歪めてみせる。笑おうとしたのだろうが、ほとんどの肉が失われた顔が笑おうとしても幽鬼の様にしか見えず。
 毛利は改めて、この男が死の世界に体の半分を引き込まれながら生きていることを理解した。
「我は貴様との約束を果たした……つもりだったのだがな。貴様の顔を見てわからなくなったというのが事実だ」
「あの戦を三成が生き延びたのなら誰にも殺されぬように守ること……その代わり我はぬしの裏切りを不問とする。それが東軍との偽りの戦いを行うことを決めたぬしと我が決めた約定であった。今の三成は殺されはせぬだろう、自ら死へと赴くかもしれぬが……だというのに、まだ約定は果たされていないとぬしは思うておると?」
「貴様は満足しておらぬだろう?」
「まあな」
 喉が引きつるような笑い声の後、大谷はわずかに目を細めた。
 その瞳に毛利を責めるような物は何も感じない。相も変わらぬ人を小馬鹿にしたようなしゃべり方に隠れているのは焦りだけ。

 三成を真摯に思い、願うのは彼の無事と幸福だけ。

 以前は決して見せなかったそれを隠せなくなってしまったのは、彼もこの上杉で様々な人に触れ、そして生きようとしたからだろう。奥州の地でゆっくりと何かを掴もうとあがいている今の三成の姿を見せてやれたら。
 彼の死出の旅への一番の餞となるだろうに。
 どうすべきか考えるために唇にわずかに力を込め、思考を巡らせようとしていると。後ろからあっさりとした答えが返ってきた。
「石田のヤツ、奥州からかっさらってくるか」
「……やはり……それがいいようだな」
「三成にこのような姿は見せられぬに決まっておるであろう」
「今は貴様の意見は聞いていない。上杉、文を出して石田をここに招くことはできぬか?」
「わたくしはつねひごろよりそうすることをすすめていたのです すぐにわたくしのつるぎにとどけさせましょう」
「我の願いは無視と言うことか……」
「何を言っている」
 今まで散々煮え湯を飲まされた大谷にようやく一矢報いることができた。
 その思いと、奥州の地で様々な感情を覚え直し、成長し直しているあのぶっきらぼうな青年のことを思い返しながら、毛利は大谷へとどめの言葉を放つことにした。
 握った手の先にある男の顔も、きっと同じように笑っていると確信して。


「貴様もあの小僧も喜ばせることができる……これほどの策はあるまい? 我もたまには人を喜ばせる策を練ってみたくなっただけよ」


 この後数日ですっかり体も癒えた毛利と長曾我部は手紙とほぼ同時に奥州へたどり着くために、行きと同じ海路をたどることになるのだが。
 当然毛利は元気いっぱいで、長曾我部と部下たちを大層困らせることとなった。







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8章がくるなあ……あとちょっとか。
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拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。

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