こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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八章はその7か6で終わるよ~
なんで7か6なのかは、理由はまた後日書きます。
なんで7か6なのかは、理由はまた後日書きます。
*****
「酒の注ぎ方というものを卿は理解していないようだな……石田殿の方がよほどわかっている。ついでに言われてもらえば、色気の欠片もない」
こちらに向けて伸ばしていた杯を手元へ戻し自ら酒をつぎ始めた松永を、政宗は殺意のこもった目で睨み付けた。三成の部屋にほど近いが、オイ値が今眠っている部屋からは遠い客間では政宗が松永の酒の相手をさせられていた。酒を水のように飲み干す上に、まったく様気配の見えない最低最悪の客人の相手をすることで政宗は思いっきり疲れ果てていたが、三成に相手をさせるわけにはいかなかったのだ。
あれだけの大事の後、そして三成本人はすっかり疲れ果てていた。。
三成は最後まで松永の相手をすると言い張ったが、酌をしながら舟をこいでいる彼を見て、松永自身が三成を解放してくれた。そのかわりに部屋まで自分が連れて行くと主張し三成を咲き抱えようとしたので、慌てて周囲の人間が止めることとなった。
そして今は政宗が松永の相手をしている。
どういう意図があったにせよ、彼のおかげで三成とお市が救われたのだ。今まで散々な目にあわされたとしても、礼は尽くさなければならない。勿論、明日の朝には追い出す予定ではあるのだが。
酒の肴をもう少し都合してくると言ってこの場から立ち去った小十郎が少しでも早く帰ってくる事を祈りながら、政宗は手酌でぐいぐいと酒を飲み干している松永の様子を観察する。殻になった大量のお銚子は几帳面な性格故か綺麗に並べられ、杯に注ぐ酒は口に運ぶ肴の量に合わせて時には多く、時には少なく注がれている。
そういえば自分も肴を口に入れた後の酒の量は決まっていることを思い出す。
小さな杯に入れた酒を一度で飲み干す気持ちの良さ。それを演出してくれるのは、ついだ者の心遣いなのだと松永の動き気がつくと、その松永本人から言葉が返ってきた。
「今までは酒をつがれるだけだったのかね? 酒をつぐという行為はなかなか難しいのだよ。どれだけの量を注ぐか、相手の酒量が過ぎていないか、それを考えなければならないというのに………卿の注ぎ方では、人死にが出るだろうな。注ぐだけ注いで、相手の様子は顧みず。それでは酒も楽しめないというものだ」
「悪かったな、そう思うならさっさと寝ろよ。それと、日が昇ったら出て行け」
「石田殿が私について来るというのなら、喜んで出て行かせてもらうが」
「なあ………アンタは何故あの時俺たちを助けた?」
あざけるような声でそう口にし、手酌で酒を口に運び続ける松永に、政宗は先程から一番気になったことについて聞くことにした。今までは酌をすることに神経を集中させていたが、本人からそれを拒否され少しだけ余裕が生まれたのだ。なにせこの招かざる客人ときたら酌のために体を寄せると肩を抱こうとしてくるし、おまけにその手が体のきわどい所を触ろうと蠢き始めるのだ。三成にも当然同じ事をしようとしていたはずなのだが、彼が触られて嫌な顔をしていたという記憶が政宗にはなかった。
酒を注ぐという行為の上手い下手には、きっと注ぐ相手のいやらしい手を避ける技も含まれるのだろう。あの豊臣軍で生き延びるにはそういう能力も必要だったのかと、おかしなところで三成に感心しつつ。
政宗は松永に笑われながら大きく彼と距離を取った。
もうあんな触られ方をしたくなかったし、小十郎に見られたら後から何を言われたりされたりするかわからない。
「………助けたつもりはないよ」
「アンタのやったことは必然的に石田を助けた、それには感謝する……だがなあんたの意図が読めない」
「私の物になるべき『宝』を拾い上げた……それだけだよ。あのまま冥府へと落としてしまうには勿体ない宝だったのでね」
「あれが冥府だった……アンタはそう思ってるって事か」
「入り口ではあっただろう。考えても見るがいい……『この世』と『あの世』の境をこの世に顕現させることができる力、その意味と恐ろしさを」
くいと杯を傾け、酒を飲んでいるとは思えない程冷めた瞳で松永はこちらを見つめてくる。
死んだ人間が生き返ることはない。
だが死者の世界という物が本当に存在し、今自分たちが生きている世界との境界に門を作ることはできるのだとしたら。
「………怖い話だな、そりゃ」
「そうであろう? だから私は力を貸したのだよ」
「強い力だから欲しいって事か?」
その政宗の直球過ぎる問いに、松永は笑いながら首を振る。
「そういう力がこの世にある……その事実と力の主が存在すること自体が面白いのだ。この世を覆す可能性のある存在が失われる……これほど惜しいことはない」
「なるほどな。石田の境遇に同情して、なんて安易な理由じゃなかったわけだ。それで徳川に行かせた理由がわかったぜ………アイツが戻って来なきゃ、また戦乱の世ってやつが帰ってくるからな」
「卿の察しの良い所は嫌いではない、だが一つ忘れていることがあるようだがね」
「忘れてること?」
一体自分は何を忘れている?
小十郎が酒の肴として用意していった川魚の刺身を指で摘んで口に入れながら、政宗は自分が何を忘れているのかを考え始めたが。
松永が先に答えを言ってくれた。
「私が石田殿を気に入っているということだよ。面白いではないか……天下人への憎しみと愛情を心に抱え持ち、その天下人に愛を捧げられている……実におかしなものだと思わないかね? あの二人の間には様々な感情が入り乱れ、近づきたくとも近づけないのだよ。それを見守る方が面白いだろう」
「最低だな、アンタ」
「卿にそう言われるとはな……私にとっては最高の褒め言葉だよ」
政宗には松永の思いが全く理解できない。
好きあっている二人が幸せになれないのはおかしいし、邪魔する物があればそれを壊してしまえばいいというのが政宗の考え方だ。だが家康と三成の間にあるのは、決して壊すことのできない憎しみという暗く深いもの。
長い時間をかけて忘れていくしか、解決する方法はないのだ。
はたして三成が今回の件についてどういう決着をつけるのか。家康に抱きかかえられ部屋に戻っていった三成に聞くのは明日にしようとは思っているが。
左近を殺されたことで三成の中に産まれた新たな憎しみは、二人の間を再び引き裂くことになるだろう。
「…………………面倒なことばかりだな」
「だがそれがいいのだろう?」
思わず独りごちると、出来の悪い息子を見守る慈父のような目で松永がこちらを見つめてきた。この男に同情されているのか、そう思うと苛立ちが増し刺身を口の運ぶ回数が増えていく。
と、そこに小十郎の声。
「政宗様……飲んでおいでですか?」
「この男の前で飲むわけない。どうした、何かあったか………って、あったようだな」
手には漬け物を盛り合わせた大皿を持ち、頭の上に派手な色の鳥を乗せ。
真面目な顔でこちらへと近づいて来る小十郎に、政宗は笑っていいのか真面目に話を聞けばいいのかわからなくなってしまった。小十郎の性格から考えれば真面目に何かを伝えようとしているのだろうが、頭に乗せた鳥の豊かな冠毛が小十郎の動きに合わせて揺れ、ついでに小十郎の髪の毛を嘴で摘んでいたりする。
松永ですら一瞬顔を強ばらせた後後ろを向いて肩を震わせ始めたのだから、政宗だって笑い出したいのだが。
「政宗様?」
「………い、いや………なんでもない………」
「先程この鳥が文を届けてくれまして、長曾我部殿が明日の朝にはこちらに到着するそうです」
「why? 今度は何をしに来やがった」
「石田殿を越後までお送りしたいと……この季節に陸路では逆に遅くなってしまうと」
「そりゃありがたいが、石田のヤツの準備が間に合わないだろ」
「………石田殿には先程風呂場の前でお会いしました。長曾我部殿の件をお話ししましたら、すぐにお市殿の部屋に行きまして。明日の朝には二人で長曾我部殿の舟に乗るとのことです」
「急にも程がある、まずは俺に相談しろよ……」
即断即決は三成の長所でもあり最大の短所だったりするのだが。
それにしても決めるのとその後の行動が早すぎる。理由は考えずともすぐに出てくるが、一時の別れを惜しむ時間すら与えられないとは。
「権現殿に会いたくないとはいえ、素早いものだ。私が越後までお送りしても良かったのだが」
「アンタに任せると、越後に行く途中で行方不明になりかねないんだよ」
「それには同意です。さて政宗様、私は石田殿の荷物を整理させていただきますので。松永殿のお相手をお願いします?」
「………ah? 小十郎、オレがどうなってもいいのかよ………、おい」
「私の政宗様なら、大丈夫でしょう?」
さらっと政宗の不満を受け流すと、小十郎は頭に鳥を乗せたままあっさりと部屋から消え去って、いや逃げ去っていった。
後に残された政宗は朝まで松永の酒の相手をさせられることになるのだが。
自分が起きていて良かった、この男の相手をしていて良かった。そう思わされるのはこれから数刻後のことになる。
目が覚めると独りだった。
三成を抱きかかえて部屋に運び、彼が布団の中で心地よさそうな寝息を立て始めたのを確認して自分もその横で眠りについたのだが。部屋にあるのは数少ない三成の私物と、そしてほのかに部屋を照らす灯籠の明かりだけだった。
三成はどこへ行ったのか。
自分が横で眠っているのを見て、どこかへ行ってしまったのだろうか。そうであれば三成を捜して話をしなければと考えてはいたのだが、体は布団から出たがってはくれなかった。三成に会えばまた彼に責められる、笑って欲しいと望んでいるのに、彼の笑顔は常に自分が奪っているということを思い知らされる。
だから会いたいけれど会いたくない。
布団の中で時々体制を変えながら、どうすべきか思い悩んでいると三成はあっさりと己の部屋へと戻ってきた。
「なんだ、起きたのか」
「どこへ行っていたのだ?」
「風呂だ……あとはまあ……準備だな」
「準備?」
「それについて話がある」
いつもの格好のまま布団の中で眠っていた家康とは違い、三成は夜着に着替えていた。
手には風呂上がりだからか手ぬぐいを何枚か持ち、小さな壺のような物を指にはさみ。今の心情を顔に全く出さぬまま布団まで近づいて来ると、そのまま家康が寝ている布団に潜り込んできた。
「三成?」
「貴様を許したわけではない、許す気もない。それを理解した上で私の話を聞け」
「あ、ああ……」
風呂上がりの三成の体はいつもより張るかに暖かい、そして良い香りがする。
通常ならそんな三成が自分とお名布団に入っていると言うだけで興奮が収まらないのだが、先に許したわけではないと言われてしまったら嬉しい気持ちも失われてしまう。それでも三成の話はちゃんと聞こうと、同じ布団の中で横たわる三成へと目を向けた。
綺麗な、自分だけを映してくれる瞳。
だがその奥にはさらなる自分への恨みと憎しみが詰め込まれていることから、家康は逃げるわけにはいかなかった。
「貴様が左近を直接殺したわけではない、それはわかっている。だが貴様が豊臣の人間を狩ることを命じなければ、左近は死なずに済んだ。その事では一生貴様を恨んでやる、貴様の腸を引きずり出して、地面にぶちまけてやりたいくらいだ」
「そうだな、全て儂が悪い」
「…………だが恨むなと言われた………憎しみで自らの人生を汚すのではなく、新しい生きる道を見つけてみろとも言われた………だから貴様は殺さない」
誰に言われたか、そんなことは聞かなくともわかっていた。
あの光の中で家康も見たのだ。三成を護り、短い時間で注げるだけの愛情を注いで去っていった秀吉と半兵衛の姿を。三成を愛おしんでいた彼らが、今の三成を不幸にするための復讐を勧めるわけがない。
そしてそれに自分は救われた。
三成の中では様々な思いがくすぶっているようだが、彼はそれを家康にぶつける気は無いらしい。時折不本意そうに唇を噛むが、ゆっくりと考えながら話を進めていく。
「せいぜい私を満足させる国を作れ、次に私と会う時までな」
「刑部の所に行くのだったな」
「ああ、そしてそれから先……私が貴様を許せるようになるまで……私は貴様に会うつもりはない。貴様に会わず、私は私の生き方というものを探してみようと思う。お市の面倒も見てやらねばならない、貴様と遊んでやる暇はないのだ」
「…………三成」
「貴様は良き国を作れ、私はそこで生きる。もし私たちの道が再び混じり合う時があれば……」
その時は貴様の物になってやろう。
淡い光の中で、真剣そのものの三成の瞳が家康をじいっと見つめた。
様々な帆戸に出会い、様々な経験を重ね。そして三成は決めたのだ、家康と袂を分かつことを。
思えば家康が三成に与えた物は、悲しみと憎しみだけだった。
左近を直接ではないが殺してしまい、三成をまた泣かせた家康には彼の側にいる権利はないのだろう。側にいても彼を追い込み、傷つけることしかできないのなら、側にいないのが一番いい。
だが三成は言ってくれた、貴様の作った国で生きる、と。
もし自分が万人が幸せに暮らせる国を作れば、そこで三成は幸せになってくれる。そう思えば、今後の三成がいない人生を生きる事ができるかもしれない。
それを正直にそのまま口にすると、自分だけを見つめ続けていた三成の顔が急に強ばり、
「……危うく忘れる所だった」
そう言いながら、急に布団の中で体を起こした。
途端にまくれ上がる布団と、家康に襲いかかる冷気。一体三成は何を思いだして突飛な行動を起こしたのかと彼に抗議すると。
「家康、貴様私を抱く気はあるか?」
「許せる物なら抱く気は満々だが……って、三成!?」
「ならば私を抱け。貴様との約束をいつ果たせるかわからんからな………先払いだ、受け取っておけ」
見れば布団の上で膝立ちになり、手早く帯をほどいた三成は夜着を肩から落とすとあっというまに一糸まとわぬ姿になってしまった。
情緒もへったくれもないとか、できれば自分が脱がせたかったとか。まあ色々と邪な方面での苦情が浮かびはしたが、灯籠の優しい光に照らされた三成の体の美しさが家康から言葉を奪い去ってしまった。
細く、だがしなやかな体。
指で感触を確かめたくなるような針のあるきめ細やかな肌。
このような美しい物に自分が触れていいのか、触れたら汚れてしまわないか。体を起こすことも忘れ、息を呑みながら魅入っていると苛立ったような三成の声。
「私では、満足できぬか!?」
「いや、そうではなくてな」
「やはり男の体は駄目だというのか! この腰抜けめ!」
「別な意味で腰は抜けてるがな……」
乾いた笑いを漏らしながら、そっと三成へと手を伸ばす。
膝へと指が触れた瞬間小さく体を揺らした三成、そんな姿を見て家康は覚悟を決めることにした。あの三成が自ら誘ってくると言うことは、よほどの覚悟の上なのだ。
それこそ家康にもう一生会わないかもしれない、そう思っているのかもしれない。
ならば、彼の思いに自分は答えてやるべきだろう。三成の中には自分への憎しみと同じ強さで、自分への愛情が満ちている。
自ら服を脱いだくせにどうしていいかわからいのか。家康から視線を外し戸惑った表情で目を瞬かせる三成へ。
家康は招くように手を差し伸べた。
_______________________________________
間に合うのか、書き上がるのか、
ひいひいいいながら書いていますが、松永さんは全員じゃない所が松永さんだと思います。
だいすきだ~!!!
BGM「星の謡」 by Kalafina
こちらに向けて伸ばしていた杯を手元へ戻し自ら酒をつぎ始めた松永を、政宗は殺意のこもった目で睨み付けた。三成の部屋にほど近いが、オイ値が今眠っている部屋からは遠い客間では政宗が松永の酒の相手をさせられていた。酒を水のように飲み干す上に、まったく様気配の見えない最低最悪の客人の相手をすることで政宗は思いっきり疲れ果てていたが、三成に相手をさせるわけにはいかなかったのだ。
あれだけの大事の後、そして三成本人はすっかり疲れ果てていた。。
三成は最後まで松永の相手をすると言い張ったが、酌をしながら舟をこいでいる彼を見て、松永自身が三成を解放してくれた。そのかわりに部屋まで自分が連れて行くと主張し三成を咲き抱えようとしたので、慌てて周囲の人間が止めることとなった。
そして今は政宗が松永の相手をしている。
どういう意図があったにせよ、彼のおかげで三成とお市が救われたのだ。今まで散々な目にあわされたとしても、礼は尽くさなければならない。勿論、明日の朝には追い出す予定ではあるのだが。
酒の肴をもう少し都合してくると言ってこの場から立ち去った小十郎が少しでも早く帰ってくる事を祈りながら、政宗は手酌でぐいぐいと酒を飲み干している松永の様子を観察する。殻になった大量のお銚子は几帳面な性格故か綺麗に並べられ、杯に注ぐ酒は口に運ぶ肴の量に合わせて時には多く、時には少なく注がれている。
そういえば自分も肴を口に入れた後の酒の量は決まっていることを思い出す。
小さな杯に入れた酒を一度で飲み干す気持ちの良さ。それを演出してくれるのは、ついだ者の心遣いなのだと松永の動き気がつくと、その松永本人から言葉が返ってきた。
「今までは酒をつがれるだけだったのかね? 酒をつぐという行為はなかなか難しいのだよ。どれだけの量を注ぐか、相手の酒量が過ぎていないか、それを考えなければならないというのに………卿の注ぎ方では、人死にが出るだろうな。注ぐだけ注いで、相手の様子は顧みず。それでは酒も楽しめないというものだ」
「悪かったな、そう思うならさっさと寝ろよ。それと、日が昇ったら出て行け」
「石田殿が私について来るというのなら、喜んで出て行かせてもらうが」
「なあ………アンタは何故あの時俺たちを助けた?」
あざけるような声でそう口にし、手酌で酒を口に運び続ける松永に、政宗は先程から一番気になったことについて聞くことにした。今までは酌をすることに神経を集中させていたが、本人からそれを拒否され少しだけ余裕が生まれたのだ。なにせこの招かざる客人ときたら酌のために体を寄せると肩を抱こうとしてくるし、おまけにその手が体のきわどい所を触ろうと蠢き始めるのだ。三成にも当然同じ事をしようとしていたはずなのだが、彼が触られて嫌な顔をしていたという記憶が政宗にはなかった。
酒を注ぐという行為の上手い下手には、きっと注ぐ相手のいやらしい手を避ける技も含まれるのだろう。あの豊臣軍で生き延びるにはそういう能力も必要だったのかと、おかしなところで三成に感心しつつ。
政宗は松永に笑われながら大きく彼と距離を取った。
もうあんな触られ方をしたくなかったし、小十郎に見られたら後から何を言われたりされたりするかわからない。
「………助けたつもりはないよ」
「アンタのやったことは必然的に石田を助けた、それには感謝する……だがなあんたの意図が読めない」
「私の物になるべき『宝』を拾い上げた……それだけだよ。あのまま冥府へと落としてしまうには勿体ない宝だったのでね」
「あれが冥府だった……アンタはそう思ってるって事か」
「入り口ではあっただろう。考えても見るがいい……『この世』と『あの世』の境をこの世に顕現させることができる力、その意味と恐ろしさを」
くいと杯を傾け、酒を飲んでいるとは思えない程冷めた瞳で松永はこちらを見つめてくる。
死んだ人間が生き返ることはない。
だが死者の世界という物が本当に存在し、今自分たちが生きている世界との境界に門を作ることはできるのだとしたら。
「………怖い話だな、そりゃ」
「そうであろう? だから私は力を貸したのだよ」
「強い力だから欲しいって事か?」
その政宗の直球過ぎる問いに、松永は笑いながら首を振る。
「そういう力がこの世にある……その事実と力の主が存在すること自体が面白いのだ。この世を覆す可能性のある存在が失われる……これほど惜しいことはない」
「なるほどな。石田の境遇に同情して、なんて安易な理由じゃなかったわけだ。それで徳川に行かせた理由がわかったぜ………アイツが戻って来なきゃ、また戦乱の世ってやつが帰ってくるからな」
「卿の察しの良い所は嫌いではない、だが一つ忘れていることがあるようだがね」
「忘れてること?」
一体自分は何を忘れている?
小十郎が酒の肴として用意していった川魚の刺身を指で摘んで口に入れながら、政宗は自分が何を忘れているのかを考え始めたが。
松永が先に答えを言ってくれた。
「私が石田殿を気に入っているということだよ。面白いではないか……天下人への憎しみと愛情を心に抱え持ち、その天下人に愛を捧げられている……実におかしなものだと思わないかね? あの二人の間には様々な感情が入り乱れ、近づきたくとも近づけないのだよ。それを見守る方が面白いだろう」
「最低だな、アンタ」
「卿にそう言われるとはな……私にとっては最高の褒め言葉だよ」
政宗には松永の思いが全く理解できない。
好きあっている二人が幸せになれないのはおかしいし、邪魔する物があればそれを壊してしまえばいいというのが政宗の考え方だ。だが家康と三成の間にあるのは、決して壊すことのできない憎しみという暗く深いもの。
長い時間をかけて忘れていくしか、解決する方法はないのだ。
はたして三成が今回の件についてどういう決着をつけるのか。家康に抱きかかえられ部屋に戻っていった三成に聞くのは明日にしようとは思っているが。
左近を殺されたことで三成の中に産まれた新たな憎しみは、二人の間を再び引き裂くことになるだろう。
「…………………面倒なことばかりだな」
「だがそれがいいのだろう?」
思わず独りごちると、出来の悪い息子を見守る慈父のような目で松永がこちらを見つめてきた。この男に同情されているのか、そう思うと苛立ちが増し刺身を口の運ぶ回数が増えていく。
と、そこに小十郎の声。
「政宗様……飲んでおいでですか?」
「この男の前で飲むわけない。どうした、何かあったか………って、あったようだな」
手には漬け物を盛り合わせた大皿を持ち、頭の上に派手な色の鳥を乗せ。
真面目な顔でこちらへと近づいて来る小十郎に、政宗は笑っていいのか真面目に話を聞けばいいのかわからなくなってしまった。小十郎の性格から考えれば真面目に何かを伝えようとしているのだろうが、頭に乗せた鳥の豊かな冠毛が小十郎の動きに合わせて揺れ、ついでに小十郎の髪の毛を嘴で摘んでいたりする。
松永ですら一瞬顔を強ばらせた後後ろを向いて肩を震わせ始めたのだから、政宗だって笑い出したいのだが。
「政宗様?」
「………い、いや………なんでもない………」
「先程この鳥が文を届けてくれまして、長曾我部殿が明日の朝にはこちらに到着するそうです」
「why? 今度は何をしに来やがった」
「石田殿を越後までお送りしたいと……この季節に陸路では逆に遅くなってしまうと」
「そりゃありがたいが、石田のヤツの準備が間に合わないだろ」
「………石田殿には先程風呂場の前でお会いしました。長曾我部殿の件をお話ししましたら、すぐにお市殿の部屋に行きまして。明日の朝には二人で長曾我部殿の舟に乗るとのことです」
「急にも程がある、まずは俺に相談しろよ……」
即断即決は三成の長所でもあり最大の短所だったりするのだが。
それにしても決めるのとその後の行動が早すぎる。理由は考えずともすぐに出てくるが、一時の別れを惜しむ時間すら与えられないとは。
「権現殿に会いたくないとはいえ、素早いものだ。私が越後までお送りしても良かったのだが」
「アンタに任せると、越後に行く途中で行方不明になりかねないんだよ」
「それには同意です。さて政宗様、私は石田殿の荷物を整理させていただきますので。松永殿のお相手をお願いします?」
「………ah? 小十郎、オレがどうなってもいいのかよ………、おい」
「私の政宗様なら、大丈夫でしょう?」
さらっと政宗の不満を受け流すと、小十郎は頭に鳥を乗せたままあっさりと部屋から消え去って、いや逃げ去っていった。
後に残された政宗は朝まで松永の酒の相手をさせられることになるのだが。
自分が起きていて良かった、この男の相手をしていて良かった。そう思わされるのはこれから数刻後のことになる。
目が覚めると独りだった。
三成を抱きかかえて部屋に運び、彼が布団の中で心地よさそうな寝息を立て始めたのを確認して自分もその横で眠りについたのだが。部屋にあるのは数少ない三成の私物と、そしてほのかに部屋を照らす灯籠の明かりだけだった。
三成はどこへ行ったのか。
自分が横で眠っているのを見て、どこかへ行ってしまったのだろうか。そうであれば三成を捜して話をしなければと考えてはいたのだが、体は布団から出たがってはくれなかった。三成に会えばまた彼に責められる、笑って欲しいと望んでいるのに、彼の笑顔は常に自分が奪っているということを思い知らされる。
だから会いたいけれど会いたくない。
布団の中で時々体制を変えながら、どうすべきか思い悩んでいると三成はあっさりと己の部屋へと戻ってきた。
「なんだ、起きたのか」
「どこへ行っていたのだ?」
「風呂だ……あとはまあ……準備だな」
「準備?」
「それについて話がある」
いつもの格好のまま布団の中で眠っていた家康とは違い、三成は夜着に着替えていた。
手には風呂上がりだからか手ぬぐいを何枚か持ち、小さな壺のような物を指にはさみ。今の心情を顔に全く出さぬまま布団まで近づいて来ると、そのまま家康が寝ている布団に潜り込んできた。
「三成?」
「貴様を許したわけではない、許す気もない。それを理解した上で私の話を聞け」
「あ、ああ……」
風呂上がりの三成の体はいつもより張るかに暖かい、そして良い香りがする。
通常ならそんな三成が自分とお名布団に入っていると言うだけで興奮が収まらないのだが、先に許したわけではないと言われてしまったら嬉しい気持ちも失われてしまう。それでも三成の話はちゃんと聞こうと、同じ布団の中で横たわる三成へと目を向けた。
綺麗な、自分だけを映してくれる瞳。
だがその奥にはさらなる自分への恨みと憎しみが詰め込まれていることから、家康は逃げるわけにはいかなかった。
「貴様が左近を直接殺したわけではない、それはわかっている。だが貴様が豊臣の人間を狩ることを命じなければ、左近は死なずに済んだ。その事では一生貴様を恨んでやる、貴様の腸を引きずり出して、地面にぶちまけてやりたいくらいだ」
「そうだな、全て儂が悪い」
「…………だが恨むなと言われた………憎しみで自らの人生を汚すのではなく、新しい生きる道を見つけてみろとも言われた………だから貴様は殺さない」
誰に言われたか、そんなことは聞かなくともわかっていた。
あの光の中で家康も見たのだ。三成を護り、短い時間で注げるだけの愛情を注いで去っていった秀吉と半兵衛の姿を。三成を愛おしんでいた彼らが、今の三成を不幸にするための復讐を勧めるわけがない。
そしてそれに自分は救われた。
三成の中では様々な思いがくすぶっているようだが、彼はそれを家康にぶつける気は無いらしい。時折不本意そうに唇を噛むが、ゆっくりと考えながら話を進めていく。
「せいぜい私を満足させる国を作れ、次に私と会う時までな」
「刑部の所に行くのだったな」
「ああ、そしてそれから先……私が貴様を許せるようになるまで……私は貴様に会うつもりはない。貴様に会わず、私は私の生き方というものを探してみようと思う。お市の面倒も見てやらねばならない、貴様と遊んでやる暇はないのだ」
「…………三成」
「貴様は良き国を作れ、私はそこで生きる。もし私たちの道が再び混じり合う時があれば……」
その時は貴様の物になってやろう。
淡い光の中で、真剣そのものの三成の瞳が家康をじいっと見つめた。
様々な帆戸に出会い、様々な経験を重ね。そして三成は決めたのだ、家康と袂を分かつことを。
思えば家康が三成に与えた物は、悲しみと憎しみだけだった。
左近を直接ではないが殺してしまい、三成をまた泣かせた家康には彼の側にいる権利はないのだろう。側にいても彼を追い込み、傷つけることしかできないのなら、側にいないのが一番いい。
だが三成は言ってくれた、貴様の作った国で生きる、と。
もし自分が万人が幸せに暮らせる国を作れば、そこで三成は幸せになってくれる。そう思えば、今後の三成がいない人生を生きる事ができるかもしれない。
それを正直にそのまま口にすると、自分だけを見つめ続けていた三成の顔が急に強ばり、
「……危うく忘れる所だった」
そう言いながら、急に布団の中で体を起こした。
途端にまくれ上がる布団と、家康に襲いかかる冷気。一体三成は何を思いだして突飛な行動を起こしたのかと彼に抗議すると。
「家康、貴様私を抱く気はあるか?」
「許せる物なら抱く気は満々だが……って、三成!?」
「ならば私を抱け。貴様との約束をいつ果たせるかわからんからな………先払いだ、受け取っておけ」
見れば布団の上で膝立ちになり、手早く帯をほどいた三成は夜着を肩から落とすとあっというまに一糸まとわぬ姿になってしまった。
情緒もへったくれもないとか、できれば自分が脱がせたかったとか。まあ色々と邪な方面での苦情が浮かびはしたが、灯籠の優しい光に照らされた三成の体の美しさが家康から言葉を奪い去ってしまった。
細く、だがしなやかな体。
指で感触を確かめたくなるような針のあるきめ細やかな肌。
このような美しい物に自分が触れていいのか、触れたら汚れてしまわないか。体を起こすことも忘れ、息を呑みながら魅入っていると苛立ったような三成の声。
「私では、満足できぬか!?」
「いや、そうではなくてな」
「やはり男の体は駄目だというのか! この腰抜けめ!」
「別な意味で腰は抜けてるがな……」
乾いた笑いを漏らしながら、そっと三成へと手を伸ばす。
膝へと指が触れた瞬間小さく体を揺らした三成、そんな姿を見て家康は覚悟を決めることにした。あの三成が自ら誘ってくると言うことは、よほどの覚悟の上なのだ。
それこそ家康にもう一生会わないかもしれない、そう思っているのかもしれない。
ならば、彼の思いに自分は答えてやるべきだろう。三成の中には自分への憎しみと同じ強さで、自分への愛情が満ちている。
自ら服を脱いだくせにどうしていいかわからいのか。家康から視線を外し戸惑った表情で目を瞬かせる三成へ。
家康は招くように手を差し伸べた。
_______________________________________
間に合うのか、書き上がるのか、
ひいひいいいながら書いていますが、松永さんは全員じゃない所が松永さんだと思います。
だいすきだ~!!!
BGM「星の謡」 by Kalafina
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
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