こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
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6/18
「じゃあこの件は俺が進めさせてもらう。それから次の議題だが……」
口ごもることもなく、話すべき事を一瞬でも忘れて会話が途切れることもなく。ベルナルドの議事進行はいつもと変わらぬスムーズさで進んでいた。
綺麗なグリーンの瞳からは悲しみや失望を読み取ることは出来ないが、誕生日の夜の一件がかなり堪えているのだろう。その頬からは更に肉が削ぎ落とされてしまったようにも見える。
今日は顧問もボスもいないということで、ホテルに頼んで用意してもらったアフタヌーンティーの一式は、丸テーブルの中央で皿を連ねた塔としてその存在を誇示しているが。誰もそれに手をつけようとはしなかった。
キラキラと輝く砂糖飾りのついたケーキや、食欲を誘う柔らかい香りを発するスコーン。アフタヌーンティーだというのにイヴァンの強い希望で用意された小ぶりなホットドッグさえあるというのに。
それに誰も手を伸ばさない上に、揺らめく湯気が薄らぎつつある紅茶にすら口をつけない。ジュリオは茫洋とした表情で膝に手をそろえて置いているし、イヴァンは何か言いたいことがあるのだろうが何かに気圧されたかのように動けないでいるし。ルキーノはたばこの煙をくゆらせたまま、無表情を貫いている。
そう、たった一人以外は。
「お前たち……今日は軽食があるから食べてくるなと言っただろう。せっかくホテル側で用意してくれたというのに」
「……………………」
小さくカットされたキューカンバーサンドイッチを口に運びながら、ベルナルドは議題をメモしているのであろう紙を確認している。別にジャンが怒られているわけでも恨まれているわけでもない、それは十分理解しているのだが。
時折ルキーノにだけ向けられる怒りによって研ぎ澄まされた目線は、その場にいる全員の食欲を奪い尽くしていた。自分に向けられていないのはわかっていても、側にいるだけで動きが制限されるレベルの恐怖。
攻撃対象であるルキーノが、この場から逃げ出さないのを褒め称えてやりたいくらいだが。今回の件について後片付けを手伝わされたイヴァンから聞いているジャンは、ルキーノの味方をしてやるつもりは全くなかった。まだ人の心の機微について学んでいる最中のジュリオでさえ、俺でもそんなことはしないと憤慨したくらいの最悪の失言。
酔っていたのはわかるが、言っていいことと悪いことがある。
せいぜいベルナルドのご機嫌取りに奔走して、苦労すればいい。大事な『ママ』を傷つけられたのだ、散々邪魔してやると思いながら、空腹のあまり暴れるている胃袋をなだめていると、ベルナルドの言葉がこちらに向けられた。
「イヴァンとジャン……お前たちカヴァッリ顧問のお孫さんとは知り合いだったな」
「お嬢がどうかしたのかよ?」
「いや、顧問から先日相談されたんだがな、身辺警護の者はつけているがやはりそれでも限界があるので、どうにかできないかとのことだ」
「過保護すぎんだよ、あのクソジジイ」
吐き捨てるように言ったジャンの隣に座るイヴァンだったが、目線はレタスとマスタードの色合いの対比が美しいホットドッグだけに注がれている。こういう時だけ無駄に空気を読まなくていいのにと思いはするが、さすがにこの状況で食べることが出来れば彼は今の段階で大人物と呼ばれているだろう。
空腹を押さえ込み、唇をとがらせているイヴァンは見ているだけで和むし、今日はこれをネタにして遊んでやろうとその時は思っていだのだが。
「だが前回の件もある……気を配っておいたほうがいいだろうな」
「俺の部下を回してもいいんだけどよ……お嬢が逆に困るぜ?」
「お前の部下につけ回されてみろ、まともな学校生活を送れなくなる。まあいい……俺の方でもいくつか手を打っておく、側で監視するだけが護衛じゃないからな……顧問とも相談しなければならないが」
「なあ、ジジイとお嬢のご機嫌伺いに行くなら届けて欲しいモノがあるんだけどよ」
「なんだ? かさばる物じゃなければ持っていくが」
「お嬢にバラが欲しいって言われててな……知り合いの花屋に野バラの鉢植え用意させたんで持って行ってくれよ。オレは忙しいから行けねえけどすまねえって言うのも忘れんな」
イヴァンを挟んで反対側に座るジュリオの頬が、わずかに引きつった。
先程からルキーノと共に一度も発言せず、お行儀よく座っていたジュリオだったが、今の発言にかなりの引っかかり、いや怒りを感じたのだろう。
ホットドックしか見ていないイヴァンにはわからなかっただろうが、その時ジュリオの唇は、
俺はもらったことがない
という言葉を口にしていた。
イヴァンが子供全般に甘いことをジャンは知っているし、嫉妬するだけ無駄だということも嫌になるほどわかってしまっている。が、ジュリオが同じあきらめの境地に達するかというのは別問題。
イヴァン、お前今思いっきりヤキモチ焼かれてるぞ。
そう耳元に囁いてやりたかったが、次にベルナルドが出してきた話題は、ジャンにそれを忘れさせてしまうほどの魅力に満ちあふれていた。ルキーノだけが顔を強ばらせたことに気がつきはしたが、それを気にとめておくことすら考えないほど魅力的な提案。
「それでだな、ようやく今日の本題に入れるんだが……俺たちの夏休みについてだな。本来なら8月にとりたいところなんだが……」
「新本部の絡みか」
「正解だよ、ジャン。8月の末に完成予定だから、9月の中旬に祝いをするにしても内装や家具の運び入れを考えると休めるのが今から7月中しかない」
「どんだけ休めんだよ……どうせ2~3日だろうが」
「去年からずっと働いてばかりだったからな……ボスと相談して一人1週間はとれるようにした。ただし、一人が休んでいる間は協力して穴を埋める必要があるわけだが……何か意見のある奴はいるか?」
夏休み、それも1週間も。
気がつけばベルナルドの代わりに電話番か、イヴァンの代わりにシマを見回るか。ルキーノには帳簿の作成や各種行事への参加を手伝わされ、ジュリオには……礼儀作法の基本をしっかりたたき込まれる毎日。
カポになるためには色々学び金儲けに励まなければいけないことはわかっている。だがほぼ休みのない状態で働き続けていれば、いくら働き盛りの若者でも休みが欲しくなるのが世の常。
他の幹部連中も同じ考えのようで、ふてくされた表情のルキーノですら、わずかに表情を和らげていた。
「反対するヤツがいるわけねーだろっ! で、休みはどう決めんだよ?」
「俺は……いつでも……いい」
「そんなの決まっているだろう? 一番上からだ」
指を組み合わせにっこり微笑むベルナルド、イヴァンが文句を言うかと思ったが、休みがもらえればもうなんでもいいらしい。
だから、ベルナルドが部屋の壁に貼られたカレンダーを見ながら、一番最初にこういった時、全員が耳を疑った。
「俺は7/2~7/8をもらおうかな」
「ダーリン、俺の聞き間違いかな……7/2からって言ったよな、今」
「ああ、そうだが」
「おいメガネ、まだそんなに暑くねーのに脳みそ腐ったのか?」
「独立記念日を……挟むのに」
7月4日はアメリカ合衆国の一番大事な祝日、独立記念日がある。
式典、パレード、パーティ、アメリカ中の賑やかなことが集まった、特別な日に休みなんて取れるわけがない。一日中行事への参加を義務づけられることがわかっているのに、この腹黒眼鏡は何を考えているのだろうか。
全員の目線を集めながら、笑顔を崩すことのないベルナルドは、厳かともいえる態度でこう宣言する。
「体を休めて独立記念日に参加したいだけだ、さすがにこの年になると大きな行事の前後には休みを取りたくなるんだ。お前たちも続けて休みを取りたいだろう?」
「自由に動ける立場になって、俺と顔を合わせないようにしたいだけだろうが……てめえの都合のくせにガキどもに恩を着せやがって」
「ルキーノ、お前の休みはどうする?」
「無視かよ……まあいい、俺はそうだな……7/23~7/29にしておくか」
その日付を聞いた時、ジュリオとベルナルドがわずかに指先を動かしたが、次の瞬間には二人とも何事もなかったようにカレンダーに目線を注いでいた。二人が同時に何を思いだしたのか、後でジュリオに聞いておかなければならないだろう。
結局休みはいつでもいいらしいジュリオは選ぶ権利を放棄し、一番最初に休みたいと主張したイヴァンが6月末からの休みをゲット。
「7/9からと7/16からか……どっちにするかな」
ジャンの目の前には二つの選択肢が用意されることになった。
ジュリオに感謝しつつ、どちらの方が自分がよりゆっくり休めるかを考える。ベルナルドの休みの直後の方が自分の仕事をベルナルドが見てくれる安心感があるので気兼ねせずに休めるが、休み明けのベルナルドと二人で完璧に仕事を片付けてから休むというのも魅力的ではある。
まあどちらの方がよりよい休みになるかはもう運まかせになるだろうし、ここは気分で選ぶのも手だろう。こういう時には、無駄に時間をかけて考えるよりもその時の直感を信じた方がいい。
「7/9からにしとくか。せっかく休めるんなら、楽しくやりたいよな~」
ベルナルドへの恐怖のためわずかに強ばってはいたが、ジュリオもイヴァンも顔が輝いていた。三人一緒に休めないのは残念だが、誰かの休みの時に時間をとるのは可能なはず。
さて、どんな楽しい少し早い夏休みを作っていこうか。
一人だけ笑顔のない、ルキーノのことは多少気になりはするが。
デイバンで一番怖いであろう恋人の機嫌を損ねたのだ。金銭面的に兵糧攻めにされたりしないだけありがたく思えとしか、今のジャンには言いようがないが。
ベルナルドもルキーノも、どちらもどことなく寂しそうに見えた。
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6/15~7/29までの期間の日常を毎日1つの話のペースで書き綴っていく、ちょっとおかしな本になります。ルキベルと年少組いちゃいちゃでお届けする予定ですが、昨日の字書き組(ゲスト様2名おります)の打ち合わせの結果、面白いことになりそうです。
確実に100P越えそうですが、なんとか500円以内に納められたらなあ……と思っております。
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色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
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うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
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ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
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