こちらはサークル「がんかたうるふ」のうずみとみっしの二人組が、ラッキードッグ1とばさらのこばなしを黙々と投下する場所です。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
書き終わりました(3/11 22:55)。
*****
「Hermony Loop」 火曜日 夜
その、聞き慣れた音が近づいてくるのを、ソファーに体を預け、ただ待ち続けていた。
こなれてきたドアの蝶番が鳴り、その後で体格の割に軽い、階段を踏みしめる音が連なる。ここから先の話はベルナルドとジュリオにだけ、というカヴァッリ顧問からの言葉で、幹部会が無理矢理解散させられたのはかなり前の事。
夜の闇が世界を覆い、ジャンの胸の中にわだかまるどす黒い感情も制御しきれなくなり始めた頃、ジュリオはようやく戻ってきてくれた。この家で会うことが出来るのは本当に久しぶりなのだが、再会を祝う言葉すら互いに出てこない。
「おかえり……どうだった?」
「……少し……落ち着いてから……話していいですか? 俺もまだ……落ち着かないです」
「そうだよな、悪い」
「いえ。俺が……弱い、だけです。ベルナルドは落ち着いて……ました……」
「そりゃあ……逆に心配だな」
己を落ち着けるため、ジュリオが愛用のネルをいつもより更におぼつかない手つきで準備し出すのを見守りながら、そっと独りごちる。
あの筆頭幹部様は内心でどれだけ混乱していても、外側にそれを出すことは絶対にない。自分が追い詰められるほど、どうしようもなくなって天を仰いで泣きたくなるほど。
あの男は平静を保とうとするのだ、見た目だけは。
彼が周囲に対して張り巡らせていたその壁を、ジャンは突き破ることが出来なかった。それが出来ていたらきっとベルナルドとの関係は今と違ったものになったのだろう。もしかしたら、ジュリオではなくベルナルドを選んでいた未来も存在していたかもしれない。
だが今のベルナルドはルキーノと寄り添う事を選んでおり、そのルキーノは今拘束されているのだろう、きっと。
口が細い専用のポットに使う分だけの料の水を入れ、湯を沸かし始めているジュリオの顔からは、どうやっても明るいニュースがあることは読み取れなかった。
「ルキーノは……カヴァッリ顧問の屋敷に……軟禁されています。日曜日まで、その状況は……続きます。疑いが晴れない……限り」
「そもそも、ルキーノは何の疑いをかけられたんだ? いきなり爺さんがとっ捕まえにくるなんて、穏やかな話じゃないんだろうな、当然」
「ボスへの……反逆の疑い……です」
「はぁ!? あいつに限ってそんなことないだろう! 自分の名付け親に噛みつくなんて、あの律儀な男がするわけがない」
「俺も、そう……思いたいです」
だが状況が悪すぎる、それがジュリオの意見だった。
ボスの身辺、特に過去の事を探る男たちの存在がほのめかされたのは先週行われた役員会でのことだったらしい。事態を重く見た顧問が独自に調査をして、発見した男はよりにもよってルキーノの腹心の部下たちだった。組織よりも自らの主人を重く見る男は何も語らず、ただ一つだけ口にしたのは、命令を下したのがルキーノであるということだけ。そして等のルキーノも、自分の行ったことの意味を語ろうとしなかった。
かくしてルキーノは部下に下した命令の意味を語るまで、軟禁されることになってしまったわけだ。
ジュリオの説明はたったこれだけだったが、そこに至るまでに何があったのか、それを想像するだけで背筋が寒くなってくる。組織にとって最高の存在であり、決して手出ししてはいけない人間の事を裏でこそこそとかぎ回っていた。おまけにそのことについて一切弁解も釈明もしないということは。
翻意があると思われてもしょうがない。
「ルキーノは……ボスが帰ってきたら二人きりでなら語ってもいいと……」
「そんなこと許されるわけないだろ!? それはあいつが一番わかってるはずだ」
「俺も、そう……思います」
「何考えてんだ、ルキーノの奴は! 理由は言いたくない、だけどオヤジと二人きりで話をしたいって……ガキのわがままかよ」
翻意があると疑われている人間が、二人きりの状態でカポに会えるわけがない。
武器を持ち込むことが出来なくても、ルキーノのあの体格だ。簡単にとはいかないと思うが、男一人殺すことは可能なはずだ。
「洒落になんねーな……マジで」
「来週の役員会では間違いなく……ルキーノの追放か罷免が話題になると……」
「その前にオヤジが帰ってくる、か。そういやオヤジと連絡ついたのか?」
「いえ」
「だろうな。ったく、あのオヤジは大事な時にどっかに行っちまう」
今日ばかりは自由奔放極まりないあの男を呪いたくなるが、今いない相手を怒鳴りつけることも出来ないわけで。部屋に徐々に広がりつつある香ばしいコーヒーの香りも、徐々にだが上達してきたジュリオのお湯を注ぐ姿も、今のジャンには何の慰めにもならなかった。
考えることはただ一つ、どうやってルキーノを救うか。
自分より遙かに頭のいいベルナルドも同じ事を今考えているのだろうが、彼と違う方向性で考えることだっけ、決して無駄ではないはず。そうでも思わなければ、この状況を乗り切る事なんて出来るはずがない。
「ジャン? 大丈夫……ですか?」
「あ、悪い。ちょっと考え事だ」
「明日は一日……カヴァッリ顧問がルキーノと話をするそうです……俺とベルナルドが会いに行けるのは多分……木曜の朝になると思います」
「会ってもいいのか?」
「俺とベルナルドが一緒で……顧問の部下を必ず同行させる……そういう条件ですが」
「あの爺さんがよくそれでいいって言ったな」
「頑張りました……ベルナルドが。俺では……無理でした」
「人には得手不得手ってやつがあるんだよ、お前はお前なりに頑張ったんだろ?」
入れたてのコーヒーを手に持ったまま、隣に腰掛けるジュリオの頭を優しく撫でてやる。
そう、自分には彼がいたのだ。
一人で悩むことも、追い込まれることもない。苦しみも悲しみも一緒に分け合って、そうして生きていけばいい。
ジュリオからコーヒーを受け取り、いつもより遙かに濃いそれを口に含みながら、ジャンは少しだけ気になっていたことを口にしてみた。
「そういや、あん時なんでお前とベルナルドだけだったんだ? 俺ら5人全員が幹部だってのに、爺さんは何を考えて……」
「イヴァン、です」
ジャンの疑惑、その疑問に答えるためにジュリオが静かに語り出した。
「今……イヴァンにわずかの疑惑も……かけたくない。そう言っていました……いい状態だからこそ、イヴァンを……守っておきたい、と」
「そういうことかよ。ならイヴァンより下の俺もダメって訳だ……爺さんも考えたんだな」
「はい、役員たちに……余計な口を挟ませないためには、ここまでしておかなければならないそうです」
「面倒だよなあ……ったく」
幹部の序列を考えれば、イヴァンを飛ばしてジャンに話を聞かせるわけにはいかないということなのだろう。幹部の中でも浮いた存在であり、そして状況次第では裏切ってもおかしくないと周囲に思われているイヴァンには何も聞かせないことで彼を守ろうとしている。
心情的には認めたくないが、彼にわずかでも悪い印象を植え付けないためには必要なこと。
「イヴァンには……ベルナルドが説明しています」
「爺さんに怒られるのは覚悟の上か」
「俺たちは5人でやっていくんです……だから話すべきだと俺も思いました。イヴァンのことは……まだ……あまり……ですけど」
「その割にこの頃仲がいいじゃないか」
「違います! 俺は……俺にはジャンだけです」
「友達を作るのも大事なんだぜ、ジュリオ」
途端に勢いよく首を振って否定し出すジュリオの姿があまりにも可愛らしく、隠そうとしても笑いがこみ上げてくる。
会えなかった、寂しかった。
だが会わない間にジュリオは自分が知らないうちにたくさんのことを経験し、その中で手に入れた宝物をジャンに見せてくれる。きっとジャンにはいい意味でも悪い意味でも内緒の事も増えていくのだろう。
だが様々なこととぶつかり、それを己の内に蓄えて輝きを増すジュリオは、ジャンをますます引きつけていく。
「俺はお前が好きだよ……もっともっと好きになれそうだ」
「…………ジャン」
甘い言葉と共にキスを交わしながら、ジュリオの煎れてくれたコーヒーの香りを存分に味わう。いつもより濃いめに入れてくれたのはきっと、疲れ切ったジャンと自分をコクのある苦みで奮い立たせるため。
ただお湯を注げばいいと思っていた、この部屋に引っ越してきた当時のジュリオならきっと。
そんなことを考えることも出来なかっただろう。
「ジュリオ……お前に頼むのは間違ってるかもしれないけど……」
「わかってます……ルキーノを、止めればいいんですね」
解け合ってしまいそうなほどふれ合い続けていた唇を離し、唐突にジャンが言い出したそんな言葉を、ジュリオは当たり前のように受け入れた。
「俺がルキーノに会いに行けないからな……お前に頼むしかない。ベルナルドのことも気になるし」
「……ベルナルドは俺を……ジャンを守ってくれました……正直、ルキーノはどうでも……いいですけど。でも、俺に出来ることは……します」
正直すぎるジュリオの発言に、思わず苦笑いが漏れる。
確かにジュリオにしてみれば、ベルナルドに恩はあるがそれに付随するルキーノはどうでもいい存在だろう。それでもベルナルドに恩を返すにはルキーノを助けた方がいいということを理解し、それに対応した動きができるようになった。
ジュリオはちゃんと成長し、人の痛みを知り、それを緩和させるために自分がどう動けばいいのかを理解できている。
「なんか俺、すっげえ嬉しい」
「ジャン……」
「お前と一緒にいられてマジで良かった」
座ったままのジュリオを抱きしめ、滑らかな頬に己の頬をすり寄せる。
外を見れば枯れていたはずの木々を、柔らかな芽が彩りつつある。絶望と苦悩という冬の時期を乗り越え、大きく伸びゆこうとするジュリオの姿は、ジャンにとって心強いものであった。
「腹が立ったらルキーノなんてぶん殴ってやれよ。まあ……ジュリオが本気で殴ったらまずいから、平手くらいでな」
「………どこを殴れば」
「顔は維持してやんないとな、あいつの仕事考えたら。下半身は早々に潰してやってもいいんだけどな……」
「やって、おきますか?」
「いや、ベルナルドに恨まれたくないしな。ま、あいつが馬鹿なこと言ったら殴ってやれよ」
「はい」
「えっと……ジュリオちゃん? なんだか顔がすごく輝いているような……」
「気のせいです」
言葉と共に離れた顔が再び近づいて、ジャンの意識とコーヒーで湿った唇を奪っていく。
何の躊躇もなく背中に回され、強く抱き寄せられるがままに任せながら、成長するのはいいことだが誤魔化すのが上手になるのはちょっと困ると思うジャンであった。
「何考えてんだよっ!」
イヴァンの声が全身に突き刺さるが、それを無視してシガーカッターを手に取った。
連立する電話の群れの中、心地よい葉巻の先をカットする音と怒鳴り散らすイヴァンの声だけが、ベルナルドの耳を刺激してくれていた。
「テメーが一人で全部背負って、いい子ちゃん気取りするつもりか!?」
「誰がいつそんなことを言った。俺はただルキーノの外回りを俺が代行すると言っただけだ」
「それで外も中も、テメーの仕切りになるってことか?」
「ルキーノが戻ってくれば、元通りあいつにやらせるさ。ルキーノが今動けないことを周囲に知らせたくないんだよ。あいつの姿がなくなったことに気がつかれるくらいなら、先にこちらで動いておくべきだ」
「オレが言いたいのはそんなことじゃねえんだよっ! 何でも一人でやろうとする、テメーのそういうところが気にくわねえんだ!」
一人で抱え込まずに仕事を割り振ればいい、イヴァンが言いたいのはそういうことだ。口は悪いが自分が身内と認めた人間には彼なりの優しさを示す、そんなイヴァンの言葉は嬉しかったが。
「黙れイヴァン、俺が決めたことだ」
ルキーノがいる時と違う動きを彼にさせるわけにはいかなかった。
ほんのわずかのイヴァンの粗暴な行動にさえ、役員会は追求してくるのだ。こういう状況になった今、ルキーノだけではなくイヴァンをも守る為にも。
矢面に立つのは自分でなければならない。
「…………後悔すっぞ、クソ眼鏡」
「後悔? そんなものをしている暇があったら、今できることをするさ。」
こちらに噛みついてきそうな勢いのイヴァンの視線を受け流しながら、窓際へと移動する。仕事の合間によく眺めるデイバンの夜景は、今日もいつもと変わらず。点々と闇の中に散らばるほのかな灯りは、絶望の中に広がるわずかな希望を表しているかのようだった。
視界の中にもう一つ、自らがつけた火を加える。
葉巻の先に灯った炎は、豊かな紫煙を吹き出しながら視界を少しずつ曇らせていった。
「オレがいるからか? だからジャンのヤローも……」
「そう思うなら、役員どもに文句をつけさせないくらい稼いでこい。ルキーノの馬鹿は俺が説得する、だからお前はいつもと変わらず、部下の尻を蹴飛ばして札束の山を手に入れてくることだな」
そう、ルキーノの説得を行うのはベルナルドでなければならない。
ボスの周辺を調べていた真意、それを問うカヴァッリ顧問に対し、ルキーノは黙秘を貫いている。彼が組織を裏切るわけがないし、情報を外部に流していた痕跡が一切ないことは、顧問の調べで明らかになっていた。
ならば何故?
それがわからなければルキーノを解放するわけにはいかないし、日曜日にボスが帰ってくるまでにこの件を終わらせなければ、役員会はルキーノに追及の手を伸ばすだろう。
ルキーノを説得し、事態を収拾する。
それは筆頭幹部であるベルナルドのやるべきことだった、そう。
筆頭幹部として。
「わかった、だけどよ……なんかあったらすぐに教えろよ」
「わかっているさ」
吐く煙はいつものように綺麗にたなびくことはない。
もしルキーノが本当に裏切るつもりだったとしたら、筆頭幹部としてルキーノを断罪しなければならない。そうであって欲しくはないが、覚悟はしなければならない。
その時、ルキーノとどう相対するかを。
「ルキーノに最初に会えるのは明後日の朝だ。すまないがイヴァン、この件は……」
「誰にも言わねーよっ! 少しは信用しろよ、このクソ眼鏡が」
「信用はしてるさ」
だが信じていても、愛していると言ってくれた相手でさえも。本音を明かしてくれないということを、ベルナルドは今日一日で嫌になるほど知ってしまっていた。
_________________________________________
火曜日昼で書いたジュリオとイヴァンのクリスマスの事件云々は既刊「Perfect Loop」で書かれていますが、特に気にするようなことではないです。
BGM「Lost in Love」 byみとせのりこ
PR
色々説明
拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)
注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨
ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。
書いている人
みっし
・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。
@3missiy3をフォロー
うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。ついったのフォローは下 のアイコンから。
@uzumi1250をフォロー
ばさら垢できました
こんな二人で、ここを更新しております。
ツイッターは基本鍵をかけていますが、フォロー申請してくださったらフォローさせていただきます。
カテゴリー
カウンター