がんかたうるふ 作家さんと大学生~はじめてのバレンタイン~(瀬戸内・現パロ) 忍者ブログ
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作家さんと大学生~~はじめてのバレンタイン~(瀬戸内・現パロ)

○作家の毛利さんと通い家政婦で大学生の長曾我部くんのゆるゆるライフ。
既にくっついてからのふたりの初めてのバレンタイン。でもやっぱりぐだぐだ。

時系列的には一番新しい話なので作家さんが色々と吹っ切れています。

後輩こと三成が普通に参戦していますが、だからといって特に修羅場になることはないのは何故だろう。もはや別名三成無双でいいんじゃないのかこのバレンタイン話。
大谷さんが石田さんを猫可愛がっています。黒田さんが通常運転です。


書いた人:みっしー



 *****
作家さんと大学生~はじめてのバレンタイン~(瀬戸内・現パロ)

~フォンダンショコラとホットチョコレート~













2月14日、日曜日の昼下がりのこと。


「…で、出直してきた方がよかっただろうか…」
 石田三成、18歳。
本命大学の入試を間近に控えた受験生。
 久々に訪れた知人宅のリビングで、高校の先輩(男)が知人(男)に押し倒されている現場に遭遇し、思わず口から出てきた言葉がそれだった。
「いや!!いてくれ!!っていうか助けろ!!石田ぁぁぁぁ!!」
 体格では遥かにのしかかる男を上回っているというのに、経験の差か、それ以外の何かが作用しているのか、悲しいかな、なすがままにされているのは三成の高校時代の先輩、長曾我部元親。
三成にとっては気心の知れた数少ない同年代の友人である。
 その元親ははたから見てもわかるぐらい非常に焦っていた。必死になって逃れようとしているがなかなかうまくいかない様子であー、だのうー、だののわめいている。
「…我は石田がいても一向に構わんが…」
 元親とは対照的に全身すらっとした細身の体型ながらも、どこにそれだけの力があるのかと思われる勢いで元親を翻弄する男は毛利元就。
三成の現在の親代わりであるいとこ、竹中半兵衛の大学時代の先輩であり友人だ。
そして竹中の友人であり三成を非常に可愛がってくれた大谷吉継の友人でもある。
竹中、大谷、毛利の三者は大学時代の友人だったのだ。最も三成は昨年の夏まで毛利にだけは会った事無かった。
 その毛利は涼しい顔のまま、突然訪れた闖入者に対しても動じる事は無くそのまま自分の望みのままに行動しようとする。
「あんたは少し自重しろおおおおおおお!!」
必死に叫ぶ元親だが、それに対して毛利はふん、言い口元をニヤリと歪ませると言った。
「我を本気にさせた貴様が悪いわ」
「俺のせいかあああああああ!?」
 第三者がいようがいまいがあまり変わらない二人を見て三成は必死に考える。
まず元親を助けた方が良いのではないか、とは決して思い至らないのが三成が三成たる所以である。彼はきっと、二人は同意の上でそうなったに違いない、そう信じている。
そもそもそう考えるのは元親と元就が紆余曲折の上にくっ付いた(と第三者からは思われている)経緯を全て(大谷経緯で)聞かされているから無理もないことなのかもしれないが。
 そして、考えた結果を口にする。
「…いや、やはりここは退席した方が…人の恋路を邪魔する者は呪われろ、と刑部も言っていたことだし…」
 それなんか違う。
本来のことわざとはやや異なるものを口にしているが、残念なことにそれを突っ込んでくれる人間は誰もいなかった。
「…ふむ、大谷にしてはまともな事を言う。続けるぞ、元親。」
納得した様子の元就は、人がいても構わないと宣言した通りに、本格的に事に及ぼうと手を伸ばしている。
「それは蹴られろだから!!呪われろじゃないから!?…っていうかこいつら誰か止めてくれぇぇぇぇ!!」

そしてその場には元親の絶叫が空しく響き渡ることになった。








 それから少しの後、リビングにはふて腐れた様子でコーヒーを啜る毛利と、若干やつれた様子の元親が気まずそうに並んで座り、二人の正面には三成がコーヒーに付けて出された角砂糖をぽりぽりと齧っていた。
「…おれもう石田の顔を見られねぇねぇ…」
「見ているではないか…全く、あれしきのことでためらうとは…」
 あまりに元親がわめくのとようやく石田が元親を助けた方が良いのではないかと思い至った事が原因で中断されたことが不満なのか毛利の顔は不機嫌そのものだ。最もここ数日はずっと不機嫌というか少々元気のない様子が目立っていたが、だからといって押し倒されて良い事はないと元親は思う。
「…いや普通ためらえよ…」
不本意ながらこの男に弄ばれ、対外的には付き合っていると思われているのが元親にとっては不本意でならない。だが苛つきよりも今は三成に見られたと言う恥ずかしさの方が先立っている。
最も目撃した三成は平然とした様子で先ほどと同じく角砂糖を齧っている。
「なんで角砂糖を齧るんだよ、お前…」
元親があきれた様子でたずねると三成はきょとんとした様子で言った。
「…?甘いものだからそのまま食べても良いだろう?」
そうだ、こいつは甘かったらなんでもいいんだった、と思っていたところ隣に座っていた毛利が言う。
「角砂糖を食べるのは無いだろう…黒砂糖にしておけ」
そう言いながらどこからともなく黒砂糖の塊を取り出し三成に手渡す。
突っ込みどころそこかよ、と思ったが突っ込めなかった。
元親が家政婦として来るまでの間、以前いた年配の家政婦さんの嗜好の為か黒砂糖丸齧りがデフォルトのおやつだったらしいのだから。
 そりゃあ元親がなんとなく作るお手軽おやつが重宝されるわけである。
そして三成は素直にそれを受け取る。
「うむ」
これはこれでうまい、とぽりぽり齧る三成と元就はどこか似通っていた。甘党だからだろうか。
「ところで石田…その塊はなんなんだ?」
そこでようやく元親は三成が大事そうに抱えていたピンク色の塊に目を向ける。中々の大きさだがどうやら三成は大事に大事に抱えてきたらしい。
「ああ…忘れるところだった。長曾我部、貴様に頼みがある。」
ようやく本題を思い出したかのように三成は元親に向き直り、至って落ち着いた様子で爆弾発言を投下した。

「これを貴様にやるから、私にバレンタインのチョコをくれないか」

 瞬間、その場の空気が凍る。
隣から感じる冷気の発生源に対し、元親は怖くて直視する事が出来ない。
毛利は、他者が思う以上にとても、いやすごく、嫉妬深い。それはここ数カ月の元親が身をもって知った事実だった。
「ももも…毛利さん…?ちょ、ちょっと頼むから落ち着け…?」
「石田…貴様いま、なんと申した…?」
 元親が止めるのも聞かずに、ゆらり、と他者が見ればひるむ様な毛利の絶対零度の瞳にも三成は動じない。
「…?長曾我部の作る菓子は非常に美味いので、作ってもらおう思ったのだ。…ただで作ってもらうというのもいささか心苦しいのでこれを持参したのだが…?」
私はなにか悪い事でも言ったのか?と不思議そうな眼で見つめる三成に、他意は一切無いに違いない。というかその瞳には『チョコが食べたい』という字がうっすら見えてきたような気が元親にはしてきた。
「バレンタインとはチョコを人に贈る日だと聞く。長曾我部が以前作ったチョコレートの菓子は絶品だったのでまた作ってもらいたいのだろうが…だめだろうか」
どうやら三成に他意は一切無く、純粋に元親が作ったチョコレート菓子が食べたいだけのようだと気がついた毛利は徐々に落ち着いていく。
それを見て元親はほっとした。怒りを持続されると矛先が向くのは元親に至るので勘弁して欲しいところなのだ。
「…構わねぇよ、まぁ簡単なのしか作らねぇけどな。それでいいのか?」
 元親の答えに三成は非常に嬉しそうにこくこくと頷いた。
甘いものが好きな三成だが、長年の餌付けの結果、元親の作る料理やお菓子は特に好んで食べている。それこそ尻尾があればばたばたと嬉しそうにふるだろう、と大谷が評するぐらいには元親と元親の作る菓子を好んでいる。最も去年の4月からは元親が大学進学の為に地元を離れてしまい、それを味わう機会も激減してしまったのだが。
(その為に昨年は荒れて酷かったとも後で聞いた。元親自身に責は無い、と思いたい。)
「待て、長曾我部。…その菓子、我も食えるのか?」
 甘いものと聞いて黙っていられるわけも無い毛利が話に加わる。
怒りが止まったためか、先ほど齧るのをやめたはずの黒砂糖を再びぽりぽりと齧り始めている。
本当に、食べ物、特に甘いものには目が無い男である。
「おう。さっきも言ったけど簡単なのしか作れないけどな。…甘いもん作っても、あんたにはやらないとか言ったら正直、祟られそうだぜ…」
「ほう、鋭いな。」
そう言うと毛利はニヤリと口元を歪め、非常によろしく無い笑みを浮かべる。
祟る気だったのか、というか毛利なら出来ても仕方がない気がする。大学時代から容姿がほとんど変わらぬあまり、昔の知人から現代に生きる妖精とからかわれる毛利である。
人外じみた何かが出来ても不思議ではない。
「ところで石田よ。その巨大な塊は何だ?まさか砂糖ではあるまい。」
「あんなでっかい砂糖の塊なんて俺は見た事がねぇよよ…」
 まさかの毛利のトンデモ発言に対し思わず元親は頭を抱える。というか何故、砂糖に見えるのだろうか。甘党か、甘党だからなのか。
それに対し石田はふるふると首を横に振る。年齢にはそぐわない振る舞いだが不思議と石田は行っても違和感は無かった。
「いやあれは…刑部が言うには岩塩らしい…」
「岩塩!?…なんつーもんを手で抱えてきたんだお前…」
「なんだ塩か…」
対照的な反応を返す毛利と元親だった。
「うむ…案外舐めてみたら甘いのではないかと期待してためしに舐めてみたら甘いのではないかと思ったがそんな訳は無く、私はとても損をした気分になったぞ…」
と石田はぼやく。
「いや、まず舐めるなよ」
 そもそも砂糖で糖分摂取する癖をやめろよ、と元親は言いたかった。しかし言ったところで改める男ではない事は長年の経験で知っていた。多分彼の従兄とその上司が言ったら止めるのかもしれないがあの二人は決して言わないだろう。大谷は論外だ。彼は三成を年の離れた兄弟かわが子のように可愛がっているため、三成自身に害が及ばない限りは野放しだろう。
自分も十分三成に甘いが、彼らはそれに輪をかけて甘い。
見知った顔を脳裏に思い浮かべて元親はため息をついた。





「受験勉強どうだ?順調か?」
「抜かりは無い。しかし最後まで油断はしない。半兵衛様も秀吉様も快く送り出して下さったのだ…その御恩に報いなくては」
「…相変わらず勉強は出来るよなぁ、お前…」
お菓子作りのための材料を探しつつ、元親と三成はキッチンで話を続けていた。
三成は自由登校期間になってからは本命大学の試験のために地元を離れ、知人である大谷の家に世話になっていた。ちなみに今日、毛利宅に入れたのも大谷から借りた合鍵を使用してのことである。大谷いわく「毛利はいても出ない事が最近は富にある。特に長曾我部がいたら尚更よ。だからな三成。チャイムを1度鳴らした上で出なければ上がりこんでも良いぞ…フォフォフォ」とアドバイスされたので忠実に実行した結果。とんでもないものを目撃するに至ったらしい。十中八九毛利への嫌がらせであることは間違いない。これであの二人は仲が良いのだから不思議なものである。
 毛利は、我関せずと言った様子でリビングにて本を読んでいる。次の仕事の資料とのことだが、どういう資料だ?と尋ねたらものすごい苦虫を潰したような顔で「…アラブの大富豪についてと豪華客船の構造について…」と言われた。
 どうやらものすごくやりたくない仕事であったらしい。
作家としてかなり幅広いジャンルを書いているらしい毛利は基本的に書きたいものを書きたいように書かせてもらっているようだが、稀に昔の付き合いとやらで断りきれない仕事を抱えてくる。
今回もどうやらそれらしい。

「そういやお前、どこ受けるのか全然聞いてなかったな。」
「私か?そういえば言っていなかったか…東○大学だ。」
-ドンガラガッシャーン。
衝撃のあまり手を滑らせた元親は金属のボウルを床に落としてしまう。
「…いまさらりと日本の最高学府の名前が出てきたんだけど…」
 確かに三成は元親の母校である高校において屈指の優等生だった。元親の母校は偏差値こそ結構高かったにも関わらず成績が良い人間と悪い人間とものすごく極端な所があった。わかりやすく言うと三成は前者で元親は後者だ。最も元親は理系を中心とした得意科目は学年1、2位で他はボーダースレスレという教師泣かせな生徒だったのだが。
「半兵衛様と刑部の母校と聞いてな。刑部からも、中々面白いところだぞ、と勧めてくれたのでな…そのまま選んだ。」
「…いや普通、最高学府はそんなに気軽に入れないから。お勧めされてじゃあそれで、って選べちゃう成績のお前がすごいから。」
一方、元親は心に何かひっかかりを感じていた。
「竹中さんと大谷さんの母校ってことは…」
あの二人と同じ大学だったということはもしかして、そう元親が思った時だった。
「なんだ、石田。貴様、合格したらば我の後輩になるのか。」
聞いてないような顔をして二人の会話に耳を傾けていた毛利がサラっとした顔で言った。
「やっぱりあんたもかああああああああ!?」
 最高学府出てる人間は他にもいた、すごい身近に。
しかし普段の毛利の言動や行動を思い返すに最高学府の卒業の人間って変人しかいないのではないだろうかと元親は考え、そういえば大谷さんも竹中さんも十分に変な人だった、という事に思い至る。
「うむ…まぁ、我はほとんどの情報を公開しておらぬ故。知るものはごく一部だろうがな。」
世間的には有名作家と称されるらしい毛利だがペンネーム以外の情報は全て非公開にしており、写真すら出回らないようにしている。授賞式などは嫌がってほとんど出ず、出版社のパーティなども同様らしい。全て大谷が裏で動いてくれているからな、と本人はかつて言っていた。大学の同級生にしても毛利元就が作家であるという事実を知っている人間は極めて少ないのだ。学年は違えど特に親しくしていた竹中、大谷の二人から情報を得なければ毛利元就があの作家であると言う事実にたどり着く事は出来ないだろう。
それほどまでに毛利は人の前に出ることを嫌がった。今でも嫌がっている。
そこまで嫌がる原因は何故なのか、元親は知らないが。
「面倒くさい」と本人は言っていたが案外それが正解なのかもしれない。何せ相手は毛利である。

「…そうか…半兵衛様と刑部の後輩と言う事は私は毛利の後輩にもなるのか…まぁ、それだけか。」
「それだけだ。特に気にすることもあるまい。」
「無いな。特にお菓子がもらえるわけでもないのだろうしな。」
「貴様にやる前に我が食うわ」
 なにこの頭脳は大人、体は子供じゃないけど勉強は出来る人たちなのに頭の悪いやり取り。
思わず元親は頭を抱える。
元親の中で最高学府のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく瞬間でもあった。

「あれ?そういえば家康は?あいつはどこ志望なんだ?」
しばらく顔を会わせていないもう一人の後輩を思い出して元親は尋ねる。
受験生には控えた方が良いかと思いメールもあまり送っていなかったので昨年の夏、会った所で元親の記憶は途切れている。
しかし三成は元親の問いに一瞬気まずそうに目線をずらすとこう言った。
「…知らん」
「へ…知らんって…聞いてねぇの?」
元親を境に右と左でくっついていた二人だ。
「菓子はどこだ」、「食えるなら何でもいいぞ」とそれは息のあったねだりようだった。
それもあり仲が悪かった訳ではないと思うのだが…と元親が思っていたところで三成が口を開く。
「…ワシと一緒に海外の大学に行かぬか、と繰り返し繰り返し訴えてきてな…あまりのうるささに、私は未来永劫日本国外に住む予定は無い、と伝えたところ今度はそれではだめなんだ三成では日本のどこの大学を受けるのだとうるさく、それを一喝し…結局、伝えていない…ことを思い出した。」
「…あいつ帰国子女だっけ?…それにしたってフリーダムな奴だな…。」
 元親にとっては小学校時代の後輩で三成にとっては中学時代の同級生、徳川家康。
元親にとは高校時代よくつるんでいた後輩の一人だ。その家康は幼少期を海外で過ごし、小学生の時に一時帰国。中学時代半ばに再度海外で暮らしたと言う家康にとっては日本の中はいささか堅苦しすぎるのかもしれない。
 家康は三成を気に入っているし、三成にしても家康は決して嫌いではないものの、自分の領域に踏み込まれる事を厭う三成にとっては許せない一線を軽々越えてしまう所だけは許せないらしい。
 それでも喧嘩しつつ離れないのだから仲は良いのだろう、多分。
「でも三成もちゃんと言っておけよ。言わないで後悔しても遅いんだからよぉ。」
「…それは分かっている。…忘れなければ言う。自由登校期間になってすぐにこちらに来てしまったから会う時間も無いのだ。」
ふて腐れたように言う三成はそれでも素直に頷いた。
 彼にとって信頼に値する年長者の意見は素直に聞く。その素直さが三成の長所でもあり短所でもあった。
そんな彼を見ていると自然と手がのび、元親は三成の頭を撫でていた。
「…長曾我部…私は貴様の妹ではないぞ…。」
あきれ半分、照れ半分といった様子で三成は言う。
「いや悪い。…なんつーか、撫でたくなった。」
「…意味がわからん。」
 しかし三成はそれでも拒否することなく、元親によって頭を撫でられ続けていた。元親にすると猫を撫でているような気分だったのだが、それを気にする男がそこにいた。
「…貴様ら…いい加減にせぬか…。」
絶対零度のブリザードの瞳が自分を見ている事に元親が気付く間際までそれを続けられていた。





 バレンタインのお菓子は三成いわく「以前作ってくれた温めると中からチョコが出てくるやつが良い」とのことでフォンダンショコラに決まった。
 食料庫と冷蔵庫を探し全ての材料がそろったのを確認した後で元親はオーブンを180℃に温める。
その一方でチョコとバターを湯煎して溶かしていく。卵に砂糖を入れて白っぽくなるまで混ぜていく、今日はハンドミキサーを使って混ぜてしまう。
そしてチョコとバターを混ぜ合わせていき、よく混ざったそれに卵生地を少しずつ丁寧に混ぜて行く。
そこから更にココアと薄力粉をふるいながら混ぜ合わせて行けば生地は完成だ。
出来あがった生地をマフィン型に入れてオーブンで焼き上げる。
更に粉砂糖を振りかければ完成だ。

「冷やして食ってもいいみたいだけどどうやって食う?」
 出来あがったフォンダンショコラを前に元親が二人に尋ねたところ「「いまここで」」と即座に返答があった。
…本当に、甘いものに関しては息が合う二人である。ならば善は急げとばかりに皿に載せ二人に手渡す。そしてすぐにコーヒーをいれるための準備をはじめた。
 既にその味を知っている三成は食べる前から期待の笑みが隠しきれずに零れている。そして毛利と三成、二人がそれぞれ口に入れた瞬間、一人は衝撃で目を見開き、一人は衝撃で笑みを浮かべると言う不思議な現象が起こった。
 最も元親が食べ物、特に甘いものを食べさせると二人ともこうなるので、あまり気にしない事とする。気にしたら負けだ、この二人には特に。
「なんだこれは…とろとろ生地だぞ…なんだこれは…!?美味し…!!」
「…チョコを溶かしただけのものとは一味も二味も違う…やはり美味…。」
 どうやら本人たちにとって甘くて美味しい物を食べた時に限って、この二人は感情表現が極めて豊かになるらしい。
「まぁ、菓子は逃げないからゆっくり食えよ…お前らはどっちも毎回早く食い過ぎ。」
しかし元親が言う端から二人はぺろりと平らげてしまう。
「美味なるものこそゆっくり食べることなどできぬわ。」
「甘いものは特にまた甘いものが食べたくなるからな。」
「…そこにちょっとしょっぱいものを挟めば延々と食べられるしな…。」
「…確かに終わりが見えないな…塩昆布とか…。」
 甘党二人の勢いは止まらずに淡々と食べ進めお代わりを要求してきたので、コーヒーと共にそれらを渡す。
残りは荒熱がとれたのを見計らって包んでから石田に持っていってもらおう、そう考えてながら元親は未だにケーキに食らいつく二人を見守っていた。





「世話になったな。」
「あれぐらいでいいならまた作ってやるよ。受験勉強、頑張れよ。」
「…また黒砂糖ぐらいなら分けてやらないこともないぞ。」
 おやつを食べてしばらく後、フォンダンショコラを入れた紙袋を抱えて三成は毛利宅を後にする所だった。笑顔の元親とは対照的にむすっとした様子の毛利はふんぞり返って三成に言い放つ。量が多くても少なくても元親のお菓子が他人に持っていかれるのはかなり不満らしい。結局毛利の分は残すこと、また新しく作ることを約束して事なきを得たのだが、そうでなければ『ころしてでも、うばいとる』とでも言っていたかもしれない。
 元親は時々本気で隣に立つこの男のことがよくわからなくなる。自分が作った菓子など大したものでもないだろうに、何故そこまで執着するのだろう、と。
 三成は三成で毛利の言葉が耳に入っているのかいないのか少しばかりほわほわした様子で袋を抱えている。大谷さんにも渡してくれ、と言ったが実際はどれだけが彼の口に入るのかは疑問だ。
何せ大谷は、三成に甘い。
 三成が少しでも物欲しそうな様子を見せれば間違いなく即座に分け与えるだろう。最も石田は誰彼かまわずではなく懐いた人間にしかそのような姿を見せないので大谷にとっては尚更可愛いのかもしれないが。
「では、失礼する。」
 そう言いながら丁寧にお辞儀をして石田は帰って行った。
ピンと背筋を伸ばして去っていく姿は先程までケーキを食べて微笑んでいた人間と同一人物とは思えない。
 きっと帰ってからも食べるんだろうなぁ、ケーキ。高校時代に「…ホットケーキ分が切れた!!メープルシロップがかかったホットケーキを所望するぞ長曾我部ぇぇぇぇ!!」と家に殴り込みをしてきたことを考えると、ちゃんと頼んでくる当たり色々と成長したんだなぁ、と元親はしみじみと思った。

 そんな事を考えながらリビングに戻った元親はふと隣の毛利が不機嫌満載なオーラを撒き散らしていることに気が付く。
「毛利?何かあったか?」
「…我の甘味が無くなった。」
どうやら石田がケーキを持っていってしまった事が毛利にとっては相当不満らしい。
「また作ってやるからむくれんなよ。…子供かあんたは…」
 そう呟いた一言が、毛利の何かに触れたのか、ふと自嘲的な笑みを浮かべ、小さな声で呟いた。
「子供…確かに子供のようだな。…本当にあやつのように振舞えたらどれだけ良いものか…」
「??どうかしたか?」
「…何でもない。」
その小さな小さな本音の呟きは元親にも聞かれること無く、飲み込まれてしまう。不機嫌さを潜めた毛利に違和感を感じつつも、ふと元親は思い出したかのように「あ、そうだ。」と呟いた。
「いいもん作ってやるから座って待ってろよ。」
「…?うむ…。」
 言うが早いが元親は台所に行くと、誕生日に毛利からもらい、今は最早定番となった黒いソムリエエプロンを身につけると実に手早く準備を始めた。
 先程のフォンダンショコラを作る際にあまったチョコレートを適当な大きさに砕きマグカップに入れる。
そこに先日おやつとして購入したマシュマロを入れ、牛乳を注ぎレンジで加熱した。
加熱が終わってしまえば、もう出来上がりだ。

「…?ココアか?」
元親が作ったココアに良く似た飲み物に毛利は訝しげな様子を見せる。
「似てるけどな。ホットチョコレートだよ。砂糖入れるなら入れて、飲む前に混ぜろよ。」
「うむ…。」
加熱された牛乳に浸されやわらかくなったマシュマロとチョコ、砂糖を毛利はスプーンでぐるぐるとかき混ぜていく。
なんとも不思議な飲み物が出来上がり、一口を口に含んでみる。
「…これは、美味いな…。」
「ココアにマシュマロ入れても美味いんだけどな、こっちもなかなかいいだろ」
そういう元親は同様のものを作ったうえで胡椒を入れた。香辛料として意外にいけるのだ。
「うむ、確かに美味なり…しかし何故、今これを作ったのだ?」
毛利がそう尋ねると元親は動きを止め「あー…」だの「うー…」いいながら頭を抱えている。しばらく続けていたかと思うと、ようやく決意したのか毛利へと話し出す。
「…なんかよ、今日だけじゃなくてここ最近、俺の気のせいじゃなかったらあんたが不機嫌っつーのか…なんか元気ねぇように見えて…でも直接聞くのも悪ぃかと思ってよぉ…あんた甘いもん好きだし。美味いもん食ったら元気になってくれっかな、って思ったけど…直に言ってりゃ世話ねぇよなぁ…。」
 恥ずかしそうに顔を赤らめ、そっぽを向きながらも頬を掻いて元親は言った。
「…そんな事を考えておったのか。」
少しばかり驚いたように毛利は呟く。
「…迷惑だったら悪ぃ。」
 元親は思う。
以前の自分ならば、そこまで毛利に踏み込むことは出来なかった。
いつからだろう。彼に振り回されるうちに、それが変わっていったのは。
未だに隣に座る男を「恋人」とは思えない。
それは慶次曰く、元親自身が恋を知らないからなのかもしれない。
確かに元親は誰かに恋をしたことは無いに等しい。だから何もわからないのかもしれない。
だけれども、人間として決して嫌いでない人間であることは以前から変わりが無いのである。
 この気持ちが恋なのか何かはわからない。だけれども、毛利を大切だと思う気持ちは何よりも強い、と元親は考えていた。
 しかしそんな元親の思いは、全く心配なかった事が判明する。
「…我が案じていたのは、そなたからはどうやったらバレンタインのチョコレートが貰えるか、よ。」
「………は……?」
しれっとした様子で毛利は答え、その答えは元親を黙らせるには十分だった。
「…そなたが色恋沙汰には疎いことは十分承知しておる。…だがバレンタインは特別な日であろう。なんとかしてチョコレートをもらおうにも、直接言うのも恥ずかしく、かと言って即物的な物言いでなければそなたには気づかれぬ、それでもチョコは欲しい。さて、どうしようかと思っているうちに当日になり、そうこうしているうちにそなたの鈍感ぶりにイライラしたから押し倒そうとしたら石田が来てあのザマよ。」
「おいイライラして押し倒すなよ、エロ親父」
 唐突に事に及ばれそうになった経緯は毛利の脳内沸点が突破したからだったらしい。余りの傍若無人さに元親は思わずため息をつく。
「そもそもそなたが鈍感な事が悪い。…最も、これを貰えたので帳消しだがな。」
そう言いながら、先程のホットチョコレートの残りを口を付ける。
「…俺、すっげー恥ずかしい奴じゃねーか…。」
「…素直に自白する羽目になった我のほうが恥ずかしいわ。」
 先程以上に赤面する元親とは対照的に平然とした様子の毛利。
 そして、毛利と元親の距離が更に詰まろうとしたその瞬間。
ピンポーン、とチャイムが鳴った。
それは、三成が訪問したときと似て非なる光景。
チャイムが鳴ったのは一度だけで、その後はドアが開き、誰かが入ってくる物音が聞こえてくる。物音、足音だけで誰が来たのかを判断してしまったらしい毛利は実に素早く動き出す。
「失礼するよ…ふぁー…寒いねぇ…って毛利ぃぃぃぃぃ!?なんだ!?小生が何かしたか!?」
「…地獄に堕ちるが良い…黒田」
 どこから持ってきたのか広辞苑を黒田めがけて振りかぶる毛利は表情からは、そうは見えないが怒っていた、相当に。
来客も去り、ようやく思い通りにいちゃつけると思った矢先の来客がよりにもよってタイミングの悪さには定評がある黒田である。
 原稿の進み具合を確かめに来たらしい黒田は、運悪く、今日がバレンタインデーであることを完全に失念していた。おまけに遅刻寸前に出社したためか携帯の充電は切れており、「ぬしは本当に使えぬ男よのう」と社長である大谷から静かに罵られた事を追記しておく。
「原稿を確かめに来ただけで何故じゃあああああ!!何故こんな目にぃぃぃぃ!!」
「担当ならば連絡ぐらいしてから来ればよかろう…はぁ、本当に気が利かぬ男よ」
 いつまで続くのかわからない作家と担当のやり取りが続く一方、ソファの上では赤面した元親が恥ずかしさの余りその体を縮めて座り込んでいた。




 毛利が念願の時間を過ごせるまで、元親がさらに赤面する事態まであと少し。





 まぁ、なにはともあれ、「恋人(仮)」な二人が初めて過ごすであろうバレンタインというこの日に祝福を。















○書き上がっての感想。
「なにこの石田無双」
今度は家康も含めてアニキを関ヶ原サンドにしたいです…。
PR
[446] [445] [444] [443] [442] [441] [440] [439] [438] [437] [436]
色々説明






拍手現在豊臣家転生パロ中学生編入ってます
(現在2本 家三 チカナリです)


注意事項
・フリーリンクじゃないです、基本的にはリンクはお断りしています
・ひっそりこっそりが信条なので、黙々と
・捏造、not公式のこばなしが多いので、スルー推奨


ラキドでは幹部全員を溺愛しておりますが、ベルナルドとイヴァンは特に偏愛。ばさらは家三とか奥州の愉快な仲間達と毛長がメインです。うずみさんが現在官三とか官佐にずっぽりとはまり中。
基本は、愛想のかけらもない「ネット怖い~」の書き手が二人で色々書いている場所です。


書いている人


みっし

・生真面目で堅物でムキムキな男性と一見そうじゃなくても根は真面目極まり ないキャラをこよなく愛している、がんかたうるふの片割れ。編み物とお菓子作りが趣味という、第三者曰く可愛らしい一面を持つ反面、パニクると踊ったり、オロオロしだして周囲は見ていて楽しいらしい。荒ぶる舞は、職場の名物だったりする……らしい。
イヴァンちゃんと片倉さんとシズちゃんとスカイハイさんと陛下を思いっきり愛している。好きなアニメは銀魂と最近はFate/zero。型月ファンというよりは元から虚淵ファンでうずみさんからオススメされまくった末にようやっと手を付けて完読した。ライダー組おいしいです。エクシリアではダントツで陛下が好き。陛下が使用可能になる完全版があるなら複数買いしても構わないとのたまう日々。バサラの好きキャラは片倉さん一強だったはずなのに最近はアニキも熱い。かっちり着込むキャラがすきだったはずなのにいきなり露出度が高いキャラを好きになったのは何故か悩む日々。二次元の向かう愛と同じぐらい甥っ子への愛を叫んでいる気がしてならない。



うずみ
・相方を愛しすぎている変な人。趣味は畑仕事に漬け物作り、好きな物は不幸属性の美人(男女問わず)。ばさらでは石田さんと黒田さんをこよなく愛していたり、赤い子めんこいにゃぁとたまに叫んでいる。

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ばさら垢できました
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